習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『キング・オブ・エジプト』

2016-09-16 19:26:40 | 映画

 

これもまた食傷気味のSFX大作だ。だが、飽きずに見たのは、これが可能性を秘めた作品かも、という一縷の期待があるからだ。それと、少しお疲れ気味なのであまり小難しい映画は勘弁、との思いもある。アホなアトラクション映画は見たくない。ちゃんとした娯楽活劇を見たい。昔ならスピルバーグが作ってくれた。でも、彼は今はもう『インディー・ジョーンズ』は作らない。

技術の進歩はどんな奇跡も可能にした。驚くべき映像もただのCGだと思ってしまいそれだけでは醒める。9・11以降現実を見てもこれは映画ではないか、と思ってしまうのが日常だ。そんな時代に映画が提供するべき娯楽とは、どんなものか。

 

こういう「おバカ」な映画を本気で作ること。それを信じること。アレックス・プロヤスならそんな冒険を見せてくれるのではないか、と期待したのだ。古代エジプトを舞台にしたノーテンキなアドベンチャー映画。主人公はちゃちなコソ泥。でも、彼には壮大な夢がある。大好きな恋人を幸せにすること。そのためなら、なんでもする。ということで、冒頭で彼は、バザールでかわいい服を盗んでくる。彼女へのプレゼントだ。なんだか、しょぼいけど、このしょぼさがいい。やがて、彼は彼女のために悪の神で暴君、セトと戦うことになる。

 

ちゃらいだけの青年がこの世界を牛耳る神と戦い、勝つのか? 彼女のためならどんなことでもへっちゃらさ、と彼のスタンス実に軽快。おまえは植木等か、と突っ込みを入れたくなるほど調子のいい男なのだ。彼の相棒となる(というか、彼が相棒になるのだが)天空の神ホルスも、こんなおバカな青年をなぜか信頼することになる。これはなんと『太陽の王子ホルスの冒険』なのだ! 高畑勲のホルスは僕が子供のころ見た映画の中でも一番のお気に入りだ。(ホルスと、『空飛ぶゆうれい船』は幼少期に映画館で見た僕の原点となる映画なのだ。東映マンガまつりと東宝チャンピオンまつりは子供の頃の、夏と冬の楽しみだった。)

 

すさまじいCGによる洪水のような怒濤の映像。素直に今回は「すごい、すごい、」と子どものようにはしゃいで、楽しんだ。この映画をしらけることなく見ることが出来たのは、主人公が悩まないし、考えないからだ。考えなしに行動する。そして、なんだかわからないうちに上手くやる。悪は滅び、善は栄える。めでたし、めでたし。単純バカ。2時間7分何ひとつ考えず、楽しめる。そんなことって、今時なかなかないことだ。それだけ、この映画はよく出来ていた、ということだ。さすがに『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』とまでは、言わないけど、近年にないおバカな大作映画を堪能した。

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『四月は君の嘘』 | トップ | エイチエムピー・シアターカ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。