昨年2本の傑作映画をものにした吉田恵輔監督の最新作だ。今彼は絶好調で脂が乗りきっているはず。だから僕も今はまずこれを見ないわけにはいかない、と思いさっそく劇場に行く。だけど、途中からなんだかこれは違うぞ、と思うことになる。描かれる怖さがなんだか少しずれている気がするから、怖くないしリアルではない。
イベント会社に勤める田母神(ムロツヨシ)と、まるで売れてないYouTuberのゆりちゃん(岸井ゆき . . . 本文を読む
何なんだろうか、このとんでもない緊張感は。彼らが働くスクラップ工場がやけにリアルだ。そこでの日常描写にまず圧倒される。これがこの工場を描くドキュメンタリーであってもいいくらいの面白さだ。ここでの日々を淡々と描くドキュメンタリー映画。そんなのもあり、と思わせる。もちろん、そうではないけど。
映画はそこで働くふたりの男が主人公。彼らが遭遇する事件を通してふたりの日常が壊れていくさまが描かれていく心理 . . . 本文を読む
言わずと知れたアガサ・クリスティの名作小説の舞台化。アガサ本人により戯曲化されたテキストを使う。総勢11名に及ぶキャストが事件と向き合う堂々たる大作だ。そういえば劇団往来が一昨年同じくアガサ・クリスティの『ナイル殺人事件』を上演したが、あの作品には乗り切れなかったことを思い出す。笑いとシリアスのバランスが悪く、全体の構成にも破綻があった。往来らしいテイストが本格ミステリとうまく溶け合わなかったこと . . . 本文を読む
タイトルは「はらだたしさ」ではない。「はらただしさ」だ。要するに「腹立たしさ」ではなく「腹正しさ」なのだが、そこに何を込めたのか。これはあきらかに読み間違いを誘因する。ここに生じる「正しさ」とは何か。それを考察する芝居なのか。
客席は四方囲み舞台。中央で演じられるのだが、一方向だけ椅子が5つ並べてある。気づくと、そこに5人が座っている。同じようなTシャツ姿だ。僕は最初、まるで気づかなかった。それ . . . 本文を読む
今回の万博設計はなんとひとり芝居である。しかも、役者経験はほとんどないダンサー、槙なおこの単独主演(ひとり芝居だから「単独」は当然だけど)である。公演には彼女のSoloーDramaと銘打たれている。しかも脚本はイトウワカナ、で橋本匡市は演出に専念。彼の企画というより槙さんの企画でそれにイトウさんが乗っかり、橋本さんが請け負った、というような立ち位置だったのではないか。橋本さんの方から出た企画ではな . . . 本文を読む