習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『女帝 エンペラー』

2007-05-17 23:19:37 | 映画
 この安直な邦題は、それだけで見る気力を損なってしまうが、実はシェイクスピアの『ハムレット』を五代十国時代の中国に移し変えたこの壮大なスペクタクル巨編は、『リア王』を戦国時代に置き換えた黒沢明の『乱』を思わせる大作である。これは安っぽいB級映画ではなく、重厚でため息が出るほど美しい映像詩でもある。  スタイリッシュなアクションのすばらしさ(ユエン・ウーピンだ)と豪華な美術が融合した一大絵巻物は見 . . . 本文を読む
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『青春金属バット』

2007-05-17 20:21:19 | 映画
 この鬱屈したドラマは彼らの閉塞感を見事に捉えており秀逸である。熊切和嘉はぐちゃぐちゃな生活のスケッチを淡々と見せていきながら、たまりにたまったそのエネルギーが一気に暴走していく、というようなよくあるドラマとしてこの映画を見せたりはしない。  熊切監督は主人公3人の破滅的な行動を静かに見守りながら、ラストまでクールな視線を崩さない。坂井真紀のアル中の巨乳女は、ずっと暴れ続け、それが日常だ。そんな . . . 本文を読む
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『狼少女』

2007-05-17 19:47:18 | 映画
 昨年《もうひとつの『3丁目の夕日』》と評判を呼んだ『狼少女』をDVDでようやく見た。こういうマイナー映画がお金のかかる時代劇(といっても、昭和時代)に取り組むなんて珍しいことなので、ちょっとわくわくした。  見世物小屋を舞台にした少年時代の感傷を、若い監督(深川栄洋)がどんなふうに見せてくれるのか。単なるノスタルジーではない「ひとつの世界」を提示できたならいいな、と期待した。敢えてはっきりした . . . 本文を読む
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