習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『狼少女』

2007-05-17 19:47:18 | 映画
 昨年《もうひとつの『3丁目の夕日』》と評判を呼んだ『狼少女』をDVDでようやく見た。こういうマイナー映画がお金のかかる時代劇(といっても、昭和時代)に取り組むなんて珍しいことなので、ちょっとわくわくした。

 見世物小屋を舞台にした少年時代の感傷を、若い監督(深川栄洋)がどんなふうに見せてくれるのか。単なるノスタルジーではない「ひとつの世界」を提示できたならいいな、と期待した。敢えてはっきりした時代設定をせず、漠然と「昔、昭和という時代時代がありました」というスタンスで見せていこうとするのはいい。昭和を昔話として語ろうなんていうそんな時代が来てしまったのだ。それはそれで驚きだ。

 ただ低予算映画の悲しさか、無理してるけど安っぽい。美術に潤沢な予算を割けないから、リアリティーの欠如は避けられない。お話自体の作り方もかなり甘くて、説得力がない。見ていてだんだん飽きてくる。緊張感のない映画なので、退屈する。せっかくの心意気がここまで失速したのはなぜだろうか。この映画の主人公たちにはほんとの意味での痛みが感じられない。すべてが絵に書いた世界の出来事でしかない。だから、本気に見れないのだ。

 ラストなんて安直過ぎて笑ってしまう。大林宣彦監督の『転校生』(今年リメイクが公開される)を見て別れのシーンについてもう少し勉強してから、映画を撮って欲しい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あさのあつこ『ラストイニング』 | トップ | 『青春金属バット』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。