ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

ツリー・オブ・ライフ

2011-09-08 22:05:59 | 映画

テレンス・マリック監督のツリー・オブ・ライフをみました。

正直、あんまり期待してませんでした。テレンス・マリック監督の作品はシン・レッド・ライン以来です。1998年の作品だからなんと13年w。映像は綺麗なんだけど難解というイメージがあり。

イメージとおりでしたーw。

でもちょっと印象違った。面白かったです。自分が歳をとっていろんな経験をしたから、なのかな。だとすると嬉しいことです。

オブライエン家の長男ジャックの成長物語とも言え、宗教映画とも言え、ファミリー映画とも言え。次男が19歳で他界したという連絡が、お母さんのところに届いたところから物語ははじまります。次男の死が一家のターニングポイントとなりました。父親は厳格すぎた育て方を悔い続けています。母親は激しいショックをうけます。敬虔なクリスチャンで神を信じる人生を送る彼女は、幸福をもたらすはずの神と非常な現実の運命のギャップに迷い続けますが、神を信じることで立ち直ります。長男ジャックは、父との確執と、思春期ゆえに弟につらくあたった関係を改善できないまま弟に先立たれてしまった喪失感から、ビジネスの成功の裏で贖罪の意識を持ち続けています。オブライエン家の時間は、次男が死んだときから止まっている。

ストーリーは、日々悩み続けるジャックが、仕事中に少年時代を回想していくという構成です。宗教的なテイストを感じるのは、巻きもどる先がはるか宇宙の誕生から始まるところに因があるんだと思います。やがて地球ができ、生命が生まれ、そしてジャックがこの世に生を受け、愛されて育ち、そして弟ができる。壮大な天地創造から、ひとりの少年の物語に。

幸せな家庭にひびが入るのは、父親の支配性が顔を出しはじめてから。父親は音楽家を目指していましたが、道なかばで挫折。比較的不自由ない生活を送ってはいますが、失意はくすぶっていた。その想いを三人の息子たちに託してしまいます。とくに長男への期待が大きすぎた。息子たちには重すぎました。優しい母親は慕われますが、息子たちには成長するに従い、父親に支配される母親の姿を疑問に思いはじめ、疎まれるようになります。

ラストは、伝説巨人イデオンの最終回のような感じです。受け取りかたはいろいろでしょう。つまり、よくわかんないw

父親はブラッド・ピット。マッチョなイメージにするためにちょっと太めにしたのでしょう。すっかりオッサンですw

母親役のジェシカ・チャステインがめっちゃ綺麗です。グゥイネス・パルトロウのような、気高い美しさです。劇中20歳以上歳をとるんですが、全然かわらないw。まあ、リアリスティックを追求する作品ではないので、これでよいです。ことし出演作品が多く、スターダムにきている俳優さんかもしれませんね。

長男ジャックの成長後は、ショーン・ペン。ほとんど、いやまったくセリフはなく、ひたすら苦悩のシーンのみ。あ、電話かけてるシーンと打ち合わせのシーンでちょっと喋ったw

次男役のララミー。エップラーがめっちゃブラピに似てます。そういえばジャック役のハンター・マクラケンもショーン・ペンに似てる。このあたり、注目ですよw

ドラマのはなしとすると、よくある家族問題です。父親、母親、ジャックの懺悔を、それぞれの目線で描くシーンを紡いでいきます。このよくある話をドラマチックにするのは、テレンス・マリック監督独特の映像表現。自分はシン・レッド・ラインで経験済みなんですが、13年前より先鋭的になってました。当時はなかったCG技術を使っているというのも理由でしょう。監督の映像は、とてもシャープです。陰影がはっきりしている。自然の美しさだけじゃなく、ビルなどの人工物の美しさも表現しています。監督の美に対する価値観が伺えます。ジャックの回想を天地創造まで遡るあたり、監督の美意識を強烈に感じます。正直、ひとつ一つの映像芸術の目的はよくわかりません。監督の自己満足ですね。でも、それでいいと思います。映画は半分ビジネスですが、もう半分アートですから。日本で、これだけ大きく配給されるアート作品はないと思います。このあたり、アメリカの懐の深さを感じます。

それでいて、未熟あるいは独善的な監督が撮る先鋭作品に比べ、はるかにわかり易いですし、エンターテイメントでもあります。ジャックが少年独特の反抗期に入ったときの心理的なスリル感は、商業映画として十分に楽しめます。

率直なところ、もっと小さな劇場で十分だと思います。映像は極めて美しいので大画面のほうがいいのですが、ターゲットとする観客のストライクゾーンがあまりにも狭すぎる。観念性が強すぎ娯楽性が薄いので、やっぱりよくわかんない作品です。というわけで、観るひとを選ぶ作品ですから、たとえばブラピやショーン・ペンの名前でチョイスされるかたにはとりあえずオススメしないでおきますw

ただ、純粋に美しい映像を楽しむかたとテレンス・マリックファンのかたには十分楽しめる作品だと思います。あと、ジェシカ・チャステイン!