早春の梅がおわりはじめると、早咲きの桜が満開を迎えました。盛春はもうすぐそこまできてます。
東京に春がやってきました。
2019年Jリーグのホーム開幕戦でございます。毎年この日は沸き立つ気持ちを抑えるのが難しいのですけど、今年はとくに、二試合待たされましたから余計ワクワクします。
ホーム開幕戦に迎えますは、スペインブームにあいのりしている鳥栖。You'll Never Walk Alone♪
アクシデントで難儀しましたけど、最終盤に2ゴールを重ね、からくも勝ち点3を積みました。
東京は三試合連続同じ布陣です。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは彰洋。CBはヒョンスとモリゲ。SBは成と諒也。CMは洋次郎と拳人。メイヤは右に建英左に慶悟。2トップはディエゴと謙佑です。
鳥栖はミッドウィークのカップ戦のテストを経て、布陣を変えます。シフトはスクウェア型の4-4-2。GKは拓生。CBは祐治と藤田。SBは右に原左に三丸。CMは秀人と義希。メイヤは右に夢生左に松岡。2トップはトーレスとチョ・ドンゴン。
どうやら今年は、二年前ほどからJ2で試みられていたスペイン化が成果をみせるにつけ、ついにJ1でもスペイン化がブームとなりつつあるようです。神戸がやたら目立ちますけど、鳥栖もその先駆者のひとり。ただし、鳥栖のそれは神戸のように徹底したものではなく、またセレッソのようにチームスタイルへの適合性を検証したわけでもなく、ただスペイン産のピースをあてはめただけのように感じます。すくなくとも現時点では。
鳥栖はまちがいなくトーレスのチームです。本来のトーレスがチームの軸になり得る選手なのかは分かりませんけど、トーレスだけが抜きん出ているので致しかたないかなと思います。ところが鳥栖のスタイルはトーレスを活かしきれてないような気がします。トーレスの本質は、むしろ東京のようなカウンターサッカーにあるのだろうと思います。
Jのスペイン化は、スペインというよりバルサ化といった方が適切かもしれません。スペインのなかでもバルサのメソッドは異質です。バルサ化に徹するのであればよいのですけど、とりあえずスペイン人を集めておけばバルサ的なサッカーができるだろうというのは大間違い。バルサ的なサッカーでのアタッカーはアジリティが不可欠。ビッグマンのトーレスを軸に据えるのであれば、トーレス自身がなにを好むかはさておき、バルサ的な要素をむしろ排除したほうが良いだろうと思います。
カレーラスさんは鳥栖をバルサ化しようとしているわけではないと思いますけど、少なくとも方向性としては、トーレスを活かせるカウンターサッカーではなく、ポゼッションスタイルに向かおうとしていると思います。ところが開幕を迎えて、ポゼッションを実現するためのアタッカーが不足してしまいます。そこでカレーラスさんは、成績が思いのほか伴わないこともあり、守備の安定を図ったと思います。これが中途半端でした。
守備を安定させるために4+4の2ラインを低めに設定します。でも攻撃方法は相変わらずポゼッションスタイルのまま。これではトランジションポイントからゴールへの距離が遠すぎますから、必然的に鳥栖の攻撃は遠目から見え見えの大振りパンチをやみくもに出す程度になります。鳥栖の攻撃におよそ迫力を感じなかったのはこのため。
さらにゾーンを軸とする守備は、チームとして試合のリズムを掴むまでのチューニングの時間を要します。東京はこれを狙います。鳥栖のゾーンの距離感があやふやになっていることを受け、バイタルエリアに入れ替わりたちかわり人を入れ、基点を作ることに成功します。
東京が狙い通りにオープニングブローを決めていれば、この後の展開はこれほど難儀せず、もっと気持ち良い試合になったと思います。その意味では、守備隊形が整わないなか、急造の最終ラインとなった祐治と藤田の局面でのがんばりが、試合の流れを作ったとも言えます。
鳥栖の攻撃は、トーレスと夢生に依存します。重心が低いためSBを攻撃で使えません。松岡はどうやらドリブラーアタッカーなのではないかと思いますけど、ドリブルのスタート地点が低いため有効な攻撃を見せられません。今日の唯一の攻撃ルートが夢生。夢生がポジションを細かく変えて基点となることで、いちおう攻撃をしてるっぽい形はできます。でも夢生にボールが渡る位置がまだミッドサードで、さすがの夢生もどうしようもなかったと思います。なので、とりあえずトーレスに出す選択しかなかったのでしょう。トーレスも夢生からボールが出てくることがわかっているようです。序盤の鳥栖が、夢生のアーリークロスに頼っていたのはこのため。
ところが時間を追うごとに鳥栖の守備隊形が整います。これには鳥栖の工夫も奏功しました。中盤の構成を少しアジャストします。秀人と義希を縦配置し、義希を前目に出します。これにより、分断されていたトーレスと中盤の間にハブができます。中央を流動的に動く義希のポジショニングを目標とすることで、夢生と松岡の動きが有効になります。加えて、中央に基点ができるのでSBが攻撃参加できるようになります。鳥栖の攻撃が活性化します。
当然、鳥栖は中盤にリスクを負います。ただでさえバイタルエリアを使われているのに、秀人の一枚にするのですから。でもそこはさすが秀人。むしろ一人になったほうが、受け持つエリアを整理できたのではないかと思います。やがてこのリスクテイクはリスクの表面化をみることになるのですけど、この時点では秀人の獅子奮迅の守備に支えられて、鳥栖がアタッキングサードに進入できるようになります。
東京はこれを落ち着いて受けます。むしろ歓迎したのではないかと思います。鳥栖が守備重視を徹底してリトリートすると厄介なのですけど、前に出てくれるなら本来の東京のサッカーをやればいいわけですから。東京はリトリートします。鳥栖に変わって4+4のラインを形成します。さらに、トップを縦に配置します。ディエゴを中央において姿を晒す一方、謙佑に裏を狙わせる作戦に切り替えます。ディエゴが秀人を引き受け、さらに謙佑が祐治と藤田を脅威を与え続ければ、そのうち建英と慶悟が躍動するスペースができるという算段だと思います。
実際、謙佑が鳥栖陣深くを脅かす良いアタックを何度か見せていたのですけど、ここで東京の思惑に反するアクシデントが起こります。足を痛めた謙佑が下がります。代わって田川が同じくトップに入ります。謙佑は直前の攻撃のときのコンタクトが原因だと思いますけど、軽度の打撲であることを祈ります。
これで流れが変わります。田川には酷なことでした。今年の東京のカウンターサッカーは一見するとシンプルですから、スピードのある選手なら割とはまり易いのかなと思っていたのですけど、謙佑に失礼な解釈でした。ディエゴとの役割分担やパス供給者との呼吸など、実は複雑なコンビネーションのうえに成り立っているシンプルさなのでしょう。一方田川は、裏を狙わずボールを受けようとします。これでは東京に推進力をもたらしません。田川のキャラクターをまだつかめていないのですけど、田川自身もまだ東京でのプレースタイルを掴みきれていないんじゃないかと思います。
こうして、東京が鳥栖に攻めさせつつイニシアチブを握っているにもかかわらず、有効なカウンターを見せられないという、なんとも自滅的なもどかしい展開に入っていきます。前半はもんもんとしたスコアレスのまま終了。
後半に入り、健太さんがアジャストします。ディエゴと田川の役割を整理します。ディエゴをフル稼動させて、広範囲にポジショニングさせます。これで基点ができるようになり、東京はふたたびバイタルエリアを使えるようになります。試合が少しだけオープンになってきます。
そこでカレーラスさんが動きます。夢生に代えてクエンカを左メイヤに投入します。松岡が右に回ります。クエンカはこれがJリーグデビュー。クエンカにボールを集めて、独力で状況を作ってもらおうという意図だと思います。クエンカのコンディションが上がってスタートから使えるようになれば、左右のバランスがよくなり、鳥栖の攻撃力は上がるでしょう。でもクエンカもまた本来はハイスピードな展開のほうが適しているように見えますから、やっぱり攻撃スタイルそのものの見直しが必要な気がします。
直後に鳥栖にもアクシデントです。秀人が二枚目の警告を受け、退場します。オープンファイト上等のどつきあいを挑もうとした矢先、鳥栖はシスト変更を余儀なくされます。ドンゴンを右メイヤに下げ、4-4-1です。
これを受け、健太さんが動きます。田川に代えてジャエルを同じくトップに投入します。数的優位にたったからというよりかは、ジャエルの実戦テストを兼ね、後半の闘いかたの実現にフィットする布陣にモードチェンジしたのだと思います。東京はジャエルを真ん中に置いて動かしません。ジャエルはまだコンディションが整いきってはいないのでしょう。ベビーメタル系の選手にありがちですけど、エンジンがかかるまでにアイドリング期間が必要だと思います。噂にきくディフェンダーをなぎ倒すパワーをはやくみたいものです。
いったん暫定のシフトで危機を脱したカレーラスさんが動きます。ドンゴンに代えて福田を投入します。同時にシフトを4-3-2に変更します。アンカーは義希。IHは右に松岡左に福田。2トップはトーレスとクエンカです。
東京はこの作戦に戸惑います。中盤の局面だけをみると2on3の数的不利ができてしまいます。さらに、鳥栖が数的不利となったためにかえって攻撃方法をカウンターに整理できたことも奏功して、この試合はじめて鳥栖にイニシアチブが渡ります。
でも、チーム全体の数的不利を完全に払拭することはできませんでした。カウンターを仕掛ける続けるにはクエンカのコンディションが上がっておらず、トーレスもまた東京守備陣にフラストレーションを溜めていたようです。鳥栖のカウンターに、無心な爽快さが感じられません。
一方東京は、ディエゴを左サイドに出して基点とすることで重心を上げ、攻撃ルートを確保します。これで中盤での数的不利を解消します。さらに慶悟に中央よりで仕事させ、サイドへのパス供給ルートを増やします。この作戦で、鳥栖の一縷の望みを断ちます。
それでも鳥栖は、最後の希望として勝ち点1狙いに切り替えます。サイドを明け渡してでも中央に人数を配置することで、最終局面の防御を強化します。そこで健太さんが動きます。洋次郎に代えて晃太郎を左メイヤに投入します。慶悟がCMに回ります。晃太郎と慶悟にバランスをとらせることでリスクマネジメントをしつつ、ディエゴと建英のフリーなポジショニングでチャンスメークの機会を増やそうという意図でしょう。
ほぼワンサイドマッチとなりつつもなかなか鳥栖の堅城をこじあけられなくて、このままドローで終わっちゃうのかなという気持ちになってきた最終盤、ついに鳥栖城を攻略します。
88分。慶悟の右CKの崩れから。なお攻め込む東京は左に展開。諒也のクロスアタックも拓生に防がれますけど、さらに東京は攻撃権を持ち、今度は右から攻めます。モリゲと建英でワンプッシュしてから、右ライン際でボールを持った慶悟はルックアップ。ディエゴとジャエルがゴール前に揃っているのをみて、アーリーを上げます。これは鳥栖のディフェンダーに当たってファア側に流れます。そこにつめていたのは諒也だけでした。諒也の左足シュートは三丸がカットしようとしますけど、威力が勝りゴールに収まります。東京1-0鳥栖。
オウンゴールでも勝ちは勝ちだからまいっかと思っていたら、最後の最後でクルエルのオンステージが待っていました。
アディショナルタイム+3分。彰洋のGKから。中盤の鍔迫り合いは鳥栖がやや優勢に押し込んだすえ、モリゲに渡ります。モリゲはリスクをきらって前線にクリア。これがジャエルに収まります。ジャエルはダイレクトでディエゴにはたきます。ディエゴは交錯しながら後方の晃太郎に落とします。この時左前方にフリーで建英がいるのをみていた晃太郎は、ダイレクトスルー。カウンターが発動します。2on2。建英はペナルティエリアに入って少しスローダウン。まっすぐ戻る藤田と三丸に対し、スウィープしながはフェイドアウェイするジャエルを見て、高速のセクシーグラウンダークロスを拓生とDFの間に通します。ピンポイントで受けたジャエルは冷静に流し込むだけ。東京2-0鳥栖。
カレーラスさんが最後のあがきです。原に代えて陽平をトップに投入します。おそらくシフトを3-3-1-2に変更したのだと思いますけど、確認するまでもなく。
鳥栖の最後のあがきも空転でおわり。このまま試合終了。東京2-0鳥栖。
やっぱりカウンターでは何枚も東京が上手。建英とジャエルのホットラインはこれからも楽しみです。先週ゴールにつながった拳人の電光石火の攻撃参加は今日も出ました。諒也もアグレッシブにゴール前につめる攻撃力を身につけてくれてます。もっと速くもっと強くもっと激しく。新しいオープニングCGで標榜する通りのカウンターに磨き上げ、幸せなシーズンを見せてくれそうな予感がしました。眠らない街♪
とはいえ、繰り返しになるけど、あらためてレギュラーとバックアップメンバーの質のギャップを浮き彫りにした試合でもあります。ポテンシャルがあっても試合に出続けないとギャップは埋まりません。今日はうまくいかなかったけど、田川だけでなくバックアップメンバー全員にいろんな機会でチャンスを与えてほしいなと思います。ジャエルの初シュワッチと諒也のシュワッチ。
連勝で、シーズンを順調にスタートすることができました。次は絶好調の名古屋。現時点でのホントの状態をチェックする相手に最適なタイミングでぶつかることができます。まるとヨネとの再会も楽しみ。