ナショナル・ギャラリーの旅に出たのは、年が明けて月も半ば、<ターナー展>(14/1/11-4/6・朝日新聞など主催)が神戸で催されたのがきっかけだった。
その彼、英国の風景画家ウィリアム・ターナー(1775-1851/ロマン主義)で、旅を終えるのが相応しいと思う。
水彩技法をも駆使した独自的な風景表現は、モネ(1840-1926/フランス)など印象派の画家やその様式の形成に大きな影響を与えたとされ、小ブログでも、<マルモッタンとテートブリテン>などで紹介した。
その彼の、「解体のため錨泊地に向かう戦艦テメレール号」が今回の絵。
彼は、クロード・ロラン(1600-1682/フランス/古典主義)から大きな影響を受け、旅を重ねる途中、壮大な景観や厳しい天候をスケッチしたとされている。
そのロランの「<海港 ‐ シバの女王の船出>」の傍らに架けることを条件に、本作を寄贈したとされている。
戦艦テメレール号は、1805年のトラガルファー沖の戦いで名を馳せたが、時は流れナポレオン戦争当時の戦艦はその殆どが老朽化、蒸気機関船にとって代わられつつあった。
彼はテムズ川を小旅行中、その勤めを終えて売却、解体されるために引かれていくテレメール号に出会う。
影のようにぼんやりとしたテレメール号、対照的に炎と煤を吐き出しているずんぐりとした黒い引き船を、赤く燃え立つ夕日を背景に描いている。
とまれ、沈みゆく太陽がひとつの時代の終わりを告げ、水面に反射する青ざめた月が別の時代の到来を暗示している。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.875
※ ロンドン・ナショナル・ギャラリーの旅(41)へは(コチラ)から入れます。
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