※ ドイツ/ドレスデン国立美術館編 ‐ 中欧美術館絵画名作選(4)
ドイツ・ルネッサンスからスタートした名作選の旅。
「また彼なの!」という声が聞こえてきそうだが仕方がない、ドイツ美術史上最大の画家を避けては通れない、しばしお付き合いを。
と、ここまで書けばもうお分かり頂けたと思う。
アルブレヒト・デューラー(1471-1528 )、その彼の 「聖母の七つの悲しみ」(上段/左)が今回の作品。
エルベ川沿いの町ヴィッテンベルクの城内聖堂のためにフリードリヒ賢明公の委嘱によって描かれたとされる本作、「聖母の七つの喜び」が描かれた右半分は失われたという。
ところで本作、中央部の 「聖母」(上段/中)、切り離されたときに18センチ短くされたらしい。は、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークが収蔵している。
その中央部の聖母は、彼の直筆とされているが、他の七つの場面は、構図、色彩、タッチなどの違いから、彼の工房で描かれたという説もあるようだ。
ちなみに、聖母七つの悲しみとは、レンブラント(1606-1669/オランダ絵画黄金期)の 「<キリストの神殿奉献>」(デン・ハーグ/マウリッツハイス美術館蔵)でも書いたが、本作に沿って再度書けば、向かって左側上部から反時計回りに 「受難の予言」(中段/左)、「エジプト逃避」(中段/中左)、「神殿での見失い」(中段/中右)と続き、下部に 「十字架の道行」(中段/右)が。
さらに、右側の下部から 「十字架へのはりつけ(下段/左)」、「磔刑(たっけい)」(下段/中左)、そして 「哀悼」(下段/中右)へと続く。
聖母の磔刑後の悲しみを、胸を貫こうとする金の剣で表した中央部がぽっかりと欠けた本作、しかも、助手たちの手になるかも知れないのに、悪びれることもなく展示するのが聊か可笑しい。
もとの作品(上段/右)をどうしても見たいとなれば、面倒でも二つの美術館を訪ねなくてはならない。
16世紀半ばにヴィッテンベルクで宮廷画家を勤めていたクラナハ(父)の手に渡ったとされる本作、そんな面倒なことをしでかしたのは、多分、息子のクラナハ(子)というから迷惑この上ない。
元の姿に戻せばいいのだろうが、苦労して手に入れた傑作、「こちらが譲るって? とんでもない!」ということなのだろう、同じ国の国立美術館にしてこれ、困ったものである。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1096
※ 「クラナハ(父) ‐ アルテ・マイスター(2)」へは、<コチラ>からも入れます。