ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

キリスト磔刑 ‐ 秋色のアルザス(4)

2012年09月21日 | フランス

 コルマールの旧市街の芝生の広場の一角に、ウンターリンデン美術館はある。
 その一室に架かっているのが、16世紀に活動したドイツの画家マティアス・グリューネヴァルト(1470-1528 /ルネサンス)が描く、ドイツ絵画史上最も重要な作品のひとつとされる「イーゼンハイムの祭壇画」。

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 美術館が開くのを待っているのか、美術館の前に置かれたベンチに数人が腰掛けている(上/左・中)。
 小さな庭に古い井戸(上/右)があってその傍らが入口、開館を待っていた人たちと一緒にエントランス・ロビーに足を向けた。

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 ところで、この美術館、1232年に建てられたドミニコ派修道院を改修したものだそうで、館内には葡萄の圧搾機(上/左)や酒樽(上/右)が遺され、この地が古くからワインの醸造地であることを窺わせる。

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 記憶が薄れているが、ロビー(上/左)から回廊(上/中・右)に出て直ぐ、数段ばかり下がった部屋だったように思う。に、採光溢れる礼拝室があって、その中央に大きな祭壇画(下/左)が置かれている。
 そして、その奥の壁にも聖人の像が並ぶ祭壇画?(下/右)があって、「えっ、どうしてふたつ?」と素朴な疑問が浮かぶ。

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 左翼と右翼からなる三連画の祭壇画は多く見かけるが、ここの祭壇画は、幾つもの翼を持つ複雑な構成になっていているらしく、展示はそれを分解、それぞれが独立して見られるよう工夫してあるのだそうだ。
 その中央にあるのが、この祭壇画のメイン・パネル、「キリストの磔刑」。

 十字架上のキリストをテーマにした絵は、それこそ綺羅、星の如くあるが、印象に残るのはスペイン絵画史上に並び立つ三巨人、エル・グレコ(1541-1614/マニエリスム)、ベラスケス(1599-1660/バロック)、そして、ゴヤ(1746-1828/ロマン主義)描くところの「キリストの磔刑」。

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 グレコの「キリストの磔刑と2人の寄進者」(上/左・ルーブル美術館蔵)、青い色調のなかで遥か遠くを見つめる表情に苦悶も悲嘆もなくあるのは希望。

 ベラスケスの「サン・プラシドのキリスト」とも称される「キリストの磔刑」(上/中・プラド美術館蔵)は、頭に輝きを放つイエスは全てを超越した神の子であることを。

 また、ゴヤのそれ(上/右・プラド美術館蔵)は、苦悶の表情を浮かべながらも天を仰ぎ父なる神に訴える姿をそれぞれに表し、そこには理想化された美が窺える。

 三つの傑作を見てから<グリューネヴァルト>の、「キリストの磔刑」を見れば、彼が如何に生々しくこの場面を捉えたかが理解(わ)かる。
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.516

 ※ 前号、秋色のアルザス(3)へは、<コチラ>から入れます。

コメント (1)
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