あさまだき、すだく蝉の声で目が覚める。
この23日は、二十四節気のひとつ大暑、いよいよ夏本番で、小暑から大暑を経て立秋までの一月が暑中、見舞状を出すならこの間だ。
大暑の数日前に、九つある雑節のひとつ土用がはじまり大暑のあいだじゅう続く。
土用のあいだの丑の日が、今年は7月19日と31日の二回あって、後ろの日を二の丑というらしい。
土用の丑の日に鰻を食うようになったのは、平賀源内よろしきことは知るところ。
夏場、とんと売れなくなった鰻屋の親父、「何とかなりまへんか」と多趣多芸な源内先生に相談したところ、「本日丑の日」と店先に掲げるようのたまったとか、これが見事にヒット、まあ、コピーライターの走りですかね。
夏バテ防止のため鰻を食することは古くからあったよう。
万葉集の編纂に係わったともされる大伴家持先生自ら、
石麻呂に吾(あれ)もの申す夏やせに よしといふものそ鰻(むなぎ)取り食(め)せ (十六巻-3853)
痩(や)す痩すも生けらばあらむをはたやはた 鰻(むなぎ)を漁(と)ると川に流るな (同巻-3854)
と、戯れている。
ところで、昔より、何かにつけ角突き合わすこと多き東と西、鰻の蒲焼の食し方にも及ぶ。
東が、背から開き蒸してから焼くと油が抜けて美味と威張れば、そんな阿呆な、腹開きにして蒸さずにまま焼くと油がのって美味いんやと西。
西海辺りは日和見気質なのか、背開きで蒸さずに焼くとか。
何れにしても箸にのっかるこの鰻、その主流は養殖だそう。
本装と偽装の境目は微妙らしく、ヨーロッパなどの沿岸にたどり着いたシラスウナギを、中国や台湾の露天の池に掘り込み、ある程度大きくしたものを国内の生簀に移し育てれば、立派な国産品とも聞く、が、その真偽のほどは定かでない。
ただ、鰻の養殖業者が偽装騒ぎを起こしたのはつい先のことだが、この国の住人、最近の政権党の総裁騒ぎも然り、何事に限らず騒ぎ立てるのも早いが忘れるのも早い。
その陰でモラルなき何処かの経営者がほくそ笑む、ゆめゆめご油断召さるな。
ここ暫く嫌なことが続き、うっとうしい空模様と歯痛とが相俟って心身の塩梅がよろしくない、鰻でも食って元気出すか!勿論、腹開きの。