
佐賀県唐津市 「 旧・唐津銀行本店 」

2階まで達する3連の大アーチ

玄関の左右をエンタシスの柱頭の部分にはヴォリュートが施されている

緑青葺きの通風口が可愛らしい

教会を思わせる屋上部の塔屋

壁に沿って折れた木製の階段

吹き抜けになった空間を演出する2階の回廊

屋上の塔屋につながる螺旋階段

屋内の柱にもヴォリュートが施されている

各室に備えられている暖炉

唐津銀行時代のプレート

佐賀銀行唐津支店時代のプレート
鬼才・辰野金吾のエッセンスを故郷に飾る美麗建築
所在地 / 佐賀県唐津市本町1513
竣工 / 1912年 ( 明治45年 )
設計者 / 田中 実 ( 辰野金吾に師事、清水建設技師 )
明治中期以降、唐津市に石炭産業の発達と鉄道の普及は空前の繁栄をもたらした。
「旧唐津銀行本店」は、市民生活や産業界を財政面で支える金融機関として、
また、急速に流入する西洋文化の象徴として大島小太郎により建設された。
平成9年まで金融機関として利用され続け、株式会社佐賀銀行より唐津市に寄贈された。
唐津の近代化を象徴する建物である。
実際に設計を行った田中実は、辰野金吾の愛弟子であり、
唐津銀行創始者の大島小太郎と藩校の同級生であった辰野がその設計を田中に任せ、
監修として関わったといわれている。
建物の外壁は、赤レンガ調タイルと白御影石とのコントラスト、アーチ窓、
御影石バルコニーや、歯飾付き銅板製の三角屏風。
正面から見ると目につくのは、2階まで達する3連の大アーチが、
額縁で彩るように窓周りを飾る。
屋上部には塔屋があり、凝った意匠の緑青葺きの明り取り屋根が可愛らしい。
玄関の左右をエンタシス ( 中ふくらみの円柱 ) で飾り、
柱頭の部分にはヴォリュート ( 渦巻き飾り ) が施されている。
「 辰野様式 」 の外観を色濃く残している。
特に各室に備えられている暖炉が、石炭を燃料として用いられていたことは、
地域産業を背景としたものと考えられる。