二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

ヴァルハラの乙女 第14話「ロンドンの休暇」Ⅰ

2014-07-31 21:54:15 | 連載中SS

ああ、くそ。
失敗したなぁ…。

あの時、これから遊びに行くという時に、
墓参りなんて宮藤には見せたくなかったけど、
こちらの言いつけを破って本人が着いてきてしまったのは、仕方がないといえばそうかもしれないけど。

できればあの子にそうした所を見せたくなかった。
とはいえ、それは既に終わった過去の話であり今はブリタニア首都、ロンドンにいる。

あの後、
動揺している宮藤を手を引っ張り、
有無を言わずキューベルワーゲンに乗り込むとロンドンまで直行。

しかし、途中で兵士を満載した軍用トラックの群れに引っかかる。
渋滞で速度が低下した上に、ウィッチがいることを知った兵士の一部がナンパして来た。

この姿になって以来。
美少女なせいでこの手の輩には多少慣れているとはいえ、不愉快なものであり無視を決めたが、
宮藤にちょっかいを出して来たので、こちらの将校としての階級を出すと相手の上官、小隊長が慌てて謝罪に来た。
小隊長は少尉、そしてこちらの大尉といえば約250名を指揮する中隊長クラスの階級なのだから、向こうが青くなるのは当然だ。

とまあ、トラブルはあったが無事ロンドンに到着。
そのまま車でロンドン塔、バッキンガム宮殿、時計塔といったロンドンの名所を回る。

わたしにとってはもう見飽きた場所であるが、
初めての海外旅行なためか、宮藤は楽しんでくれたので、
こちらとしても、ガイドに思わず熱が入り、久々の休暇を楽しめた。

「……ふむ」

そして、現在はかのネルソン提督を記念したトラファルガー広場にいる。
ここもまた観光名所ゆえに、トラファルガー広場は休日ということもあり少し混雑している。

それだけなら、観光地ではありふれた光景だがその観光客の大半が軍人であった。
見たところリベリオン、扶桑、ブリタニアそして我がカールスラントの兵士と実に国際色豊かである。

自分と同じ休暇でロンドンに来たのは想像できるが、少し多すぎる気がする。
以前兵站将校と話しをしたが、作戦開始前に英気を養うべく、こうして休暇を与える事があるらしい。

と、なると恐らくだが、大陸反攻作戦。
史実で言うところのノルマンディー上陸が近いのは本当なのだろう。

「バルクホルンさん!」

っと、宮藤に呼ばれた。





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弓塚さつきの奮闘記外伝 「正午12:00」

2014-07-29 21:10:57 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
と、有名な文学作品のフレーズがあるが――――ドアを抜けるとカオスであった。

「あは、オバサンなかなかやるね」
「あ゛!?この糞餓鬼がぁーーー!!」

金髪の少年と、
桃色の髪を持つ少女が互いに宝具と魔術をぶつけ合う。
流れ弾が喫茶店の床や机を破壊し、破片があたりに散乱する。
おっかしいなぁ、ボクはヒロインの座を狙う化け猫退治を依頼されたはずだけど。

というか、桃色の少女はもしかしてキャス狐か?
うぉおおお、リアルキャス狐キタコレ!

なんだ!あのけしからんスタイルは!!
アルクェイドさんやシオン、秋葉さんとか美少女は見慣れているけど、
流石かつて帝に魅入られた絶世の美女、キャス狐マジ美少女。

そして、隣にいる学生服の少年はそのマスター、ザビエルだな。
エクストラエンドならば4畳半アパートであんな美少女と同居してるんだよな……爆せリア充。

「あ、あのー喧嘩はその、本当によくニャイから辞めませんか―――って今掠ったニャーー!!?」

なんか足元から声が聞こえるから視線を向けると、いた。
本当にそれは奇妙な生き物であった、なぜなら見た目は動物の属するにも関わらず人語を解していた。

それだけなら、魔術の世界ならばさほど珍しくないが、問題はその造形だ。
2速歩行で人間の服を着て、頭にこれまた人間のような髪を生やしていた上に、その顔が実に奇妙であった。
神の造形ミスを疑いたくなるようなアンバランスな配置、特にその瞳は宇宙人グレイのごとく顔の面積の多くを占めていた。

早い話美少女マンガの大きな瞳をしたヒロインがそのまま三次元に登場したらどうなるか?
そんな思考実験的代物がボクの視線の先に存在しており――――ネコアルクはグロイというよりクリーチャーだった。
それこそ、クトゥルク神話で出てくるようなクリーチャー並に見るに耐えられるものではなく、ボクのSAN値が一瞬急降下した。

体温が一気に低下し、ガチガチと恐怖で歯が鳴る。
心臓もまた恐怖と極度の緊張で暴発寸前で今にも暴発し、その動きを止めてしまいそうだ。

また、冷や汗も流れる。
息もひゅーひゅーと吐くだけでうまく呼吸することが出来ずにいる。

化け物、血を吸う鬼になってもなんて様だ。
今は奴は自分を見ていないがもしもこちらを向いた時、ボクは正気でいられるだろうか?
あの、大きな瞳が自分の姿を捉えた時、果たしてボクは――――。

「弓塚さん、どうかしましたか?」
「…………っ、あ、い、いや何でもない!」

ヤバイ、琥珀さんが呼びかけていなかったら本気であのままSAN値直葬しそうになった。
というか、何でこいつだけ二次元的描写に忠実なんだ!!?

今まで見たことなかったグロイ、
キモイと皆が口を揃えていたけどその気持ちが分かるよ……。
で、リーズバイフェはこれをキモ可愛いと申すとか、訳が分からないよ。
少なくてもシオンよりも芸術のセンスはあるというのに、どうしてアレを好むのか理解不能だ……。

「さて、弓塚さん。あのお二方を止めましょう!」

なんて考えていたら琥珀さんが両手に注射器を挟みそう言った。
……え゛冗談ですよね琥珀さん、あれをボクが止めろと?

「当然じゃありませんか、アーネンエルベを守るために弓塚さんを雇ったんですから」

何を言っている?と言わんばかりに返された。
あ、あのー琥珀さん相手はどちらも神話世界の住民ですよ?
片や古代メソポタの英雄、片や国を傾けた傾国の美女にして最強の魔、勝てるわけないでよー。
リアルに二次元的表現を再現したせいでクトゥルフ生物みたくなったネコアルクを相手にするよりましかも知れないけど。

「まあ、確かに元悪神とはいえ今は正義の味方症候群の肉体を借りているだけの抜け殻。
 弱体化しているよーだが、マジモンの神の類を相手にするのは少しどころかオレの自滅技でもキツイぜ」

気だるげにアヴェンジャーが呟いた。
どうやら、この全身刺繡男は意外とまとものようである。
よし、このままアヴェンジャーと共同戦線を張り逃げてしまおう。

「ケケ、だがオレは別にかまわないぜ」

あ、アヴェンジャー、この戦闘狂がぁー!!

「アハ、大丈夫ですよ弓塚さん、
 赤信号、皆で渡れば怖くない、という言葉があるじゃないですか」

色々一杯な自分に対して、
琥珀さんは向日葵のような笑顔を浮かつつそう励ました。
だけど、琥珀さん赤信号を渡ったら普通に車に轢かれますがな……。

「覚悟を決めろ、吸血鬼。
 アーネンエルベで素敵なパーティーをしようぜ」

某ソロモンの悪魔のような言い回しでアヴェンジャーがニヤニヤと話しかける。
逃げようにもさり気無く琥珀さんが退路を絶っており、前方は子ギルとキャス狐が絶賛戦闘中だ。

あー分かった、分かりましたよ畜生!
英霊2人を張り倒すだけの簡単なお仕事をこなせばいいのですね!

「あーもう、分かりましたよ琥珀さん、行きますよ。
 ええ、行きますからその怪しいお薬を準備しないでください」

「おやおや、違法じゃなないお薬ですから大丈夫ですよ?」

注射器を自分に刺す素振りを見せていた琥珀さんは、
何のことかしら?と人懐っこい表情と共に惚けて見せた。
…………一体どういう薬を注射する気だったんだ?

「カカ、話しは纏まったようだな、んじゃ一番乗りはオレだ」

「ちょ、アヴェンジャー」

隣のコンビニに行って来るのノリで、
ボクが止めるより先にアヴェンジャーが突撃した。
何の考えなしにカチコミするなんて何時も皮肉っている正義の味方同様正気じゃないな!!

「オレにも混ぜさせ…」
「あ゛何ですか?」
「君、邪魔だから」

そして案の定というべきか、
アヴェンジャーが2人に飛び込んだ瞬間、
キャス狐の魔術に子ギルの宝具が飛来し、アヴァンジャーの周囲は粉塵に包まれる。

ボクは粉塵にむせるる。
そして粉塵が晴れた先にいたはずのアヴェンジャーはいなかった。

いや、視線を天井に向けるといた。
アヴェンジャーはカニファンのランサーと同じく天井に突き刺さっていた。

アヴェンジャーが死んだぁあぁぁああ!
というか全身刺繡で無くなっているから衛宮士郎に戻っている……衛宮士郎も死んだ!この人でなし!

「あー何ですかそこの方々、私の喧嘩を邪魔するつもりですかー?」

アヴェンジャーが突撃したせいで、
最悪なことに今度はボクの方にタゲられた。
子ギルも興味津々といった感じで宝具がこちらに向いている。

逃げようにも狭い喫茶店。
ゆえに、前に進む以外道はないのだ――――畜生、やってやる!



※  ※  ※



少女が2人歩いていた。
その事実だけなら、どこにでもある現象であったが、
2人はこの国ではいわゆる「ガイジンさん」である上に2人揃って美女と来た。

1人は金髪碧眼の少女。
ネクタイを外す習慣が根付いて久しいこの国の習慣に反するように、
この暑い時期にブラウスの襟元をリボンできっちり結んでいた。

にも関わらず汗をかかず涼しげな表情を浮かべている事実から、
少女は体を鍛えている事が推測される、現に歩き方も武術を嗜む者特有の体のブレがない動きをしている。

そして、見た目から年は高校生にようやく届くと思われるが、
中性的な顔立ち、愛らしいと表現するより凛々しい顔つきで、どこか剣を連想させた。

もう1人の少女もまた美少女であった。
ただし、先の1人より女性らしい顔つきをしている。
体の方も女性らしさに溢れており、たわわに実った双球が服の下から突き出ていた。

また碧眼の少女よりも感情表現が豊かで、
紅い瞳はクルクル動き、表情が話すたびに変わった。

そして、美少女たちの正体は、
碧眼の少女は英霊のセイバー、紅眼の少女は真祖の姫アルクェイドであった。

「で、セイバー。
 夏のプリズマ、秋のUBWといい今年の型月はFateアニメ祭りね。
 おめでとー、いいなー私のほうはエクストラで友情出演して以来暇よー」

アルクェイドが夏、秋と連続してFateシリーズが放映されることに、
セイバーに賞賛を送ると同時に、いつまでたってもリメイク版が出ない自分の現状を嘆いた。

「ありがとうございます、アルクェイド。
 ですが、いずれ月姫のリメイク版もでるはずですから、アルクェイドも大丈夫です」

「何年先の話になるか分からないけどねー。HFが劇場版で放映される予定だし」

セイバーが慰めの言葉を綴るが、
アルクェイドは頬を膨らませて不貞腐れる。

無理もない。
これまで小出しに月姫の続編やリメイク版の情報は出たが、
続々と各種メディアで展開するFateとは違い、月姫には動きがまったくと表現していいほどない。

幾ら月姫が2000年に登場した古い作品とはいえ、
2004年にアダルトゲームとして登場したFateも今年で10年。
Fateシリーズはその勢いが減速することなく、未だ根強い人気と派生作品は増殖が続いている。

しかも、月姫よりも古い。
始めはウェブ小説でしかなかった空の境界に至っては劇場で全話が放映されている。
型月3大ヒロインとして、そして月姫のメインヒロインとしてアルクェイドはまったく面白くなかった。

「き、きのこがダークソウルに飽きるのに期待しましょう」

「飽きる何て期待はしてないわよ、セイバー。
 あの暗黒世界観、一撃死上等の鬼畜設定とか、きのこの好みにドンぴしゃりだし。
 例えるなら、八極拳神父に穴を埋められて、思わず気持ちよすぎてダブルアヘ顔ピース状態のケリーのように」

「ちょ…!?アイリスフィールみたいな例えはよしてください!
 貴女は、貴女だけはそうではないと私は信じていますから、もっと言葉を選びなさいアルクェイド!!」

セイバーが苦し紛れな慰めの言葉をかけたが、アルクェイドは腐ったネタを吹っかけた。
ゼロ以来増えたホモォなネタを混ぜている所から見るに、アルクェイドは相当不貞腐れているようだ。

そして、セイバーはドラマCDで守るべき主君ともいえる存在が、
アイリス腐ィール、すなわちホムンクルスならぬ、ホモォクルスへ進化した事を知るだけに慌てる。

「ああ、そういえば。
 秋に放映されるUBWなら定番のアッー!チャー×槍(意味深)だけでなく、
 肉塊×ワカメの触手プレイ、金ぴか×狂戦士のリョナプレイな組み合わせもできるわね」

「……っ!!」

駄目だ腐っていやがる。
早急に何か話題を変えなければ。
さもなければ、よりアルクェイドが腐界の深みに入り込んでしまう。

冷や汗を流しつつセイバーは内心で独白する。
何か、何か話題を変えられるものはないか!!?
セイバーは周囲を見渡すが、何も――――いや、あった。

「きょ、今日は月がきれいです……ではなく、暑いですね。
 アルクェイド、アーネンエルベに着きましたし、まずは冷たい物でも飲みましょう」

「え、あっ、ちょっと!
 まだ、ゲイ♂ボルクが主人公の……」

アルクェイドの腕を掴み、
セイバーは強引に喫茶アーネンエルベに入店する。
最後の不穏な台詞については、聞こえなかったフリをして。

同時に、これ以上腐った話しを聞かずに済む。
そう安心したが、アーネンエルベの有様に驚きの声を挙げた。

「な、なんなのですかこの惨場は?
 というか、シロウ!しっかりしてください!」

虎の着ぐるみが頭から床に突っ込み、
セイバーのマスターである衛宮士郎が天井に突き刺さりぶら下っている。
他にも桃色の髪をした少女に、妙にカレーが匂う筋肉質の男が床に倒れていた。

当然のことながら喫茶店の内装はボロボロで、
まるで戦争でも起こったかのごとく廃墟当然の有様であった。

「うっわ、何このカオス?
 というか、そこの着ぐるみはさっちん?」

セイバーの後ろからアルクェイドが顔を覗かせ、アーネンエルベの有様に眉をしかめる。

一体何があったのか?
そんな疑問が2人の中に疑問として浮かぶが、手がかりはない。
振り子時計が正午12:00の鐘を鳴る中、2人は途方に暮れた。





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おススメSS 【EXTRA】海に溶ける、

2014-07-27 07:38:31 | おススメSS

【EXTRA】海に溶ける、

FateのSSです。
エクストラのサーヴァント取替えもので、
今回はメルブラのリーズバイフェが召還され、聖杯戦争を戦い抜くものです。

「それに、私は努力する健気な娘に弱いんだ。
君のためならば、この身を彼女以外と契約する立場へ堕とすことも許されよう」

パリン、と世界が割れる音がする。
おごそかな声から一転、少しだけお茶目さを見せた声は、輝く天蓋から声の主と共に舞い降りた。

「――さて、こんなことは初めてで緊張するな。
 問おう、貴女が私の奏者となるべき人か?」

一つに束ねられた銀髪が砕けた硝子と共に舞う。
黒を基調にした礼服を纏い、髪色と同じ銀の瞳は凪いだ海のように揺らぐことなく、自分の事を見つめている。
そして何より目を引いたのは、彼女が手にする巨大な盾。楽器のような形のそれは、彼女の背丈を超える程の大きさだが、

一人の少女がそれを手にすることへ何故か違和感を持つことがなかった。
まるでその盾が彼女を選び、持つことを許したかのようにさえ思える。

銀色の騎士、信者、調停者。そんな幾つかの印象を思い浮かばせるが、

その全ては清らかで、彼女が守護を司る者なのだと雄弁に語っていた。

――嗚呼、彼女ならばこんなにも弱く、
譲れないものを守れず、ただ抱えてうずくまるしかない自分でも助けてくれるのだろうか。

疼く左手の甲を抑えながら、最後の力を振り絞って彼女の質問に頷いた






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駆逐艦『神風』の記録~艦隊これくしょん、転生憑依物 第5話「第二試練」

2014-07-25 22:35:00 | 連載中SS

時間は少し遡る。
鎮守府正面海域では2人の艦娘が高速で動き回り、戦っていた。
見たところ15程度の歳で蒼銀髪を持つ艦娘の名は叢雲で、彼女の表情は真剣であれどもどこか余裕を感じさせた。

もう一方の艦娘、銀髪で小学生高学年程度の幼い少女の容姿をした少女、
神風は表情は常に無表情なため、感情こそ読み取れないが時折口元を強張らせ、視線も怪しく余裕がないように見えた。

それもそのはず、
叢雲は初めて人類の前に現れた5人の艦娘の1人であり、
激戦続く深海棲艦隊との戦いで今日まで沈まずに生き残った歴戦の兵士である。

対して神風は記憶を喪失し、戦い方を亡失してしまった者だ。
ゆえに、神風の余裕のなさは当然であり、この戦いに負けるのは間違いないだろう。

が、

――――なかなか、しぶといわね。


叢雲は未だ持ちこたえる神風を前にそう独白した。
確かに、神風は長い軍歴の割には弱く、戦い方を忘れてしまったのは事実である言うほかない。
始めの反航戦で行き成りこちらが放った1発を貰った上に、その後の動きも妙に違和感を覚えるものであった。

「つっ!?」

神風の発砲。
同時に悪寒を感じ取った叢雲は咄嗟に身を屈める。
直後、放射線状の弾道を描いた模擬弾が屈める前にあった頭の場所を通過した。

叢雲が頭を上げるより先に、さらに数発模擬弾が飛来。
咄嗟に感で回避機動とり防御壁を展開、周囲に水柱が立ち全て回避したと思われたが、
水柱がなくなった後に現れた叢雲には小破判定の被害を受けていた。

「……やるわね、神風」

そう、時間と共に神風の動きは洗練されつつあった。
始めは海の上を走ることもどこかぎこちないものであったが、今は違う。
護衛任務から始まる便利屋にして高速で海上を機動し、戦艦を喰らうdestroyer、一人前の駆逐艦娘だ。

(これなら、私たちと一緒に戦えそうね)

少なくとこれなら戦闘に連れて行っても大丈夫だろう。
このまま続けば自分が勝つであろう事は分かっているが試験は合格である。

なぜなら、ここまで持ちこたえた事実。
そして徐々に洗練されつつある戦い方は実戦に参加しても遜色がないものだ。
この事実に、叢雲は神風が使えるかどうか見る役割を終えられた事に一安心する。

だが、叢雲が安心した直後。
彼女の金眼は鎮守府正面海域の水平線上に見慣れぬ人影を捉えた。
始めは哨戒部隊が帰還した、と思ったが直ぐに哨戒部隊にしては数が多い点に気づく。

さらに、蒼い空と蒼い海の狭間に浮かぶ人影に違和感を覚えるよりに先に人影から閃光が走る。
空気を切り裂く音と同時に、叢雲と神風の周囲に無数の水柱が立ち上った。

「なっ!?」

叢雲が驚愕の声を挙げる。
たしかに、鎮守府正面海域には敵が出没することはあるが、精々駆逐級だ。
だが、今この瞬間受けている攻撃は敵の主力部隊の物でまさかの展開に叢雲は驚きを禁じえなかった。
とはいえ、歴戦の艦娘である叢雲は直ぐに気を取り直し神風に呼びかけた。

「神風っ!!直ぐに鎮守府へ転進するわ、急いで!!」

臆病とは無縁の叢雲だが、
ここで突撃しても轟沈するだけであることを承知していた。
おまけに、今は自慢の酸素魚雷も含めて模擬戦の最中だったせいで模擬弾しかない。

ゆえに、ここは転進。
もとい戦略的撤退するのが正しい選択。
神風は叢雲の言葉が聞こえたようで無言で頷く。
叢雲と神風は鎮守府へ向けて180度転換、最大戦速で撤退を試みた。

鎮守府にも砲弾が降り注いでいるが、
ここにいても玉砕するだけであるのは明白。
2人は後ろを振り返らず、水飛沫を立てて海面を駆け抜ける。

ところが、自分達が逃げているのを捉えたのか、
深海水平線の先に見えた人影と異形の影が急速に自分に近づいてきた。

叢雲の舌打ちと同時に発砲の閃光と砲煙。
周囲に無数の水柱が再度立ち上る。

「くそ……」

悪態をつく叢雲。
直ぐに反転し、最大戦速で突撃。
敵の戦列に自慢の酸素魚雷をぶち込みたい気分だが今は何もできない。
模擬弾では駆逐級の装甲を貫通することは出来ず、派手な装飾を施すだけ。

おまけに厄介なことに駆逐艦が数隻進路の前方に回り込みつつある。
回避すれば鎮守府から遠ざかり、後方から追撃してくる敵の餌食となってしまう。
加えてここで戦闘して手間取ると後方から追撃した部隊と挟み撃ちされかねない。

どうすればいいか?叢雲は刹那の時間悩む。
が、先程から無言を貫いて神風が叢雲を決断させた。

「やる、しか、ない」

相変わらず聞きづらい言葉であったが、
その言葉に込められた意思は確かなものであった。

「そうね、正面突破。
 それしかないわね、神風」

叢雲が神風の言葉に同意を表明した。
時間が掛かる?別に敵の撃破ではなく突破だけなら問題ない。
それに、鈍速の戦艦や鈍亀の潜水艦にはない最大の武器、駆逐艦の足の速さがある。
と、ここまで考えたところで駆逐艦娘の血が騒ぐというべきか叢雲は妙な高揚感に満たされた。
神風も同意しているようで、叢雲の横にいた彼女は不器用な笑みを浮かべていた。



※  ※  ※



さて、色々調子こいて叢雲と戦っているのだが、
叢雲さん、すみません貴女を甘く見ていました、勝てるわけありません常識的に考えて。

というか、強ぇーーー!?
反航戦で行き成りこっとは一発もらったし、
こっちは弾幕はパワーだぜ!と言わんばかりに撃ちまくっているけど……全然当たらない。
叢雲はこっちの弾道を読んでいるようで、回避機動と障壁を張ることで避け続けている。

しかも、こっちが幾ら追いかけても追いつかない。
かつて世界がその性能に注目した特型駆逐艦の最大速度は38ノット。
対する神風型駆逐艦は睦月型以前のオンボロで、出せる速度は37.3ノット。

たかが、0.7ノットの差、されど0.7ノット。
叢雲は何時でも好きな位置から一方的に攻撃できるのに対して、
こっちは常に受身の態勢で、対応しなければならない場合が多くなってしまう。

性能差でも負けているなんて、これ無理ゲーな気がしてきた……。
だけど、だからと言ってここで諦めるわけには行かない。

ここで逃げたところで、元の世界に帰れることはない。
それに、艦娘である以上、いつかはこの戦争に参加しなければならない。
だったら、腹を括ってここで戦った方がまだマシかも知れない。

っと、ここだ!

「……そこ」
 
とっさに10cm連装高角砲を構え連射。
砲火が眩しく、眼がチカチカするがかまわず撃ち続ける。
こちらの砲撃を確認した叢雲は、乙字に回避機動を取るが未来位置を予想した放った砲弾が叢雲の進路上に続々と落下する。

全てを回避できないことを悟った叢雲は障壁を張ったが、
連続して数発命中し、障壁が割れて叢雲本人に命中弾を与えることに成功した。

たしかに、性能差、経験値的にはこちらが劣勢だ。
唯一叢雲に勝るものは10cm連装高角砲の連射性能だけだ。
けど、こいつのお陰で何とかここまで善戦できている。

10cm連装高角砲は多くの駆逐艦が装備とする、
12.7cm連装砲と比較すれば威力、さらには水上での目標に対する命中精度は劣る。
だが、時速数百キロで飛行する航空機用を補足することを目的としていただけに連射速度は速い。

つまり、その気になれば弾数で打ち勝てるわけである。
機動力は向こうは上だが、攻撃の際にはどうしてもこちらに接近する必要がある。

だから、叢雲は近づいたら即座に弾幕を張れば、何とかなる。
始めは戸惑う所もあったが、徐々に戦い方のコツも掴めて来た気がするからなお更だ。
とはいえ、状況がこれで挽回されるような事はなく相変わらず自分の方が劣勢だ。

そんな感じでひぃひぃ言いながら叢雲と戦ってたわけだが、
――――水平線の向こうから轟いた砲撃音と同時に周囲に着弾。
何が起こったかは、未だこの世界に慣れていない自分でも分かった。

そう、深海棲艦が鎮守府に攻めてきたのだ。
そんな状況はボクでも分かったけど……なんで鎮守府正面海域なのにガチ編成なんですかー!?

前世は眼鏡を必要とする程度に視力が悪かったが、
旧軍の見張り役の『暗闇で距離1万メートルのマストを見分ける』ことが出来るレベルに視力が良いため、
水平線の遥か向こうから接近しつつある、敵の陣容をはっきりと区別できたのだが。

重巡洋リ級1、軽巡洋ホ級2、駆逐イ級3。

合計6隻を一つとした部隊が複数、こちらに向かいつつあった。
鎮守府正面海域といえば駆逐級1だけだが、どう見ても平均的な水上打撃部隊です。
戦艦級がいないだけ、マシかも知れないけど駆逐艦娘2人でどうしろと、本当にありがとうございました。

ど、ど、どうする!?
こっちは訓練用の模擬弾しかないから、戦うことなんて出来ないぞ!
おまけに天龍のように近接戦闘用の武器なんてないし、近づかれたら対抗できない。
格闘技なんて、昔合気道を嗜んだ程度だったし……そもそもあいつ等に効くのか、合気道が?

「神風っ!!直ぐに鎮守府へ転進するわ、急いで!!」

なんてパニック状態であったけど、叢雲が撤退を指示。
そして、着いて来い!とばかりに鎮守府へ向けて走りだした。

色々テンパッていたけど、叢雲の言葉に正気を取り戻す。
うむ、難しい事なんて考えずに始めから逃げればいいだけだった、では逃げよう!

…って、うぉ!?

「…っう」

さらに周囲に着弾。
巨大な水柱が立ち上がり、降り注ぐ海水が顔を濡らす。

直ぐに拭うが、海水の塩辛さが顔に沁みる。
が、海水の塩辛さのみということはまだ被弾していない証拠。
先行している叢雲も被弾していないようでまだ大丈夫そうだ。

しかし、それでも不味い。
最初のものより散布界がずっと縮まっている。
もう1,2回の砲撃で夾叉(きょうさ)されそうだ。

「くそ……」

叢雲が顔を横に向けて、悪態をつく。
釣られて顔を横に向けると――――いた。

全長25m程の異形の化け物。
海面スレスレを飛行するように航行する駆逐イ級が数隻いた。
こちらと平行して進んでおり、まだ距離はあるが徐々に自分達の進路の前に出る航路を描いていた、

確かにくそ、と言いたくなる。
このまま進めば水上砲撃戦で最強の陣形、T字を描かれてしまう。
こっから航路を変えれば後ろから追撃してくる敵と今は横に平行して進んでいる敵と挟み撃ちにされてしまう。

ここは――――突破するしかないようだ。

「やる、しか、ない」

自然とそんな言葉が漏れた。

「そうね、正面突破。
 それしかないわね、神風」

こちらに振りかえった叢雲が賛同を表明した。
その表情は待っていました!とばかりに溢れんばかりの実にいい笑顔であった。
獲物を見て喜んでいる獣のような、実に攻撃的なものであったが。

だが、強行突破することがこれで決まりだ。
正直言えば緊張するし、今すぐ逃げ出したい気持ちはある。

現に手を見れば僅かだが震えている、
初めての実戦、本当の戦争に参加しているのだからしかたがない。
別にドンパチ遣り合うわけではない、落ち着いてやればきっとうまくいくだろう。

「…はぁ」

息を吸い、ゆっくり吐く。
この動作の数を数える、1…2…3…4…。
よし、ほんの少しだけだけど落ち着いて来た――――行こう。

「い、行こう」
「はっ、いいわ。着いてらっしゃい!」

海面を駆ける。
相変わらず後ろから砲弾が落下し続けるが無視する。
それより徐々に近づく駆逐級進路の前方に出るため、衝突する恐れがある。

いや、叢雲は進路を変えていない、このまま進撃する。
駆逐級が咆哮し砲撃を仕掛けるが当たらない。

緊張と恐怖に耐え――――抜けた!
直ぐ脇を髑髏を模した駆逐級が直ぐ脇を通り過ぎた。

振り返らなくても、分かる。
後は鎮守府までこのまま逃げるだけだ。

「神風!」

叢雲が叫んだ刹那、
背中を強打され、嫌な音が鳴る。
そして、体が宙に浮き視界が真っ白になり、意識が一瞬だけ途切れた。
その後、重力にしたがい落下するが、体が腕一本も動かない。

あ、やばい。
もしかすると背中の骨がやられたのかもしれない。

「…っと、しっかりしなさい!」

落下した自分を叢雲がキャッチしてくれたので、
海面に叩きつけられることはなかったが、こっちは相変わらず意識が朦朧としている。
叢雲が心配してくれているが、それに答えることができない。

「やばっ…!」

視界もおぼろけなため、
よく分からないが囲まれているらしい。

ああくそ、全て僕のせいだ。
自分尾命は惜しい、けどこの状況だと2人で生き残るのは難しい。
だとしたら、せめて叢雲だけには生き残ってほしい。

「み、見捨、てろ」

「アンタ、馬鹿なの?
 この私に味方を見捨てて逃げる、なんて言葉は存在しないのよ」

抱えた叢雲は即座に否定した。
見捨てない、その言葉は

そしてごめん、叢雲。
足手まといになった挙句、巻き込んでしまって。

連続して爆散。
閃光が暗くなりつつあった視界を照らす。
生き残った一部が反転し、逃亡を試みるが同じく爆散した。
海面は爆発した駆逐級の炎が立ち上り、その炎の中から敵とは違う人影が入る。

「まったく、世話がやけるねー。
 お待たせー、水雷屋のアイドルことスーパー北上さまだよー」

間が伸びた声、どうやら北上さまが来たようだ。
助かった…感謝の言葉を伝えたい所だがもう意識を保つのが限界だ。

少し、寝よう。










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おススメSS ぼくは異世界で付与魔法と召喚魔法を天秤にかける

2014-07-21 15:36:30 | おススメSS

ぼくは異世界で付与魔法と召喚魔法を天秤にかける

新たになろうから書籍化される作品を紹介します。
お題はなろう恒例の異世界転移ものですが、今回は少々毛色が違います。

主人公はいじめの主犯を落とし穴で殺すべく行動に出るが、
落とし穴に落ちたのは、醜悪な豚鼻の人型生物、オークだった。
それは、学校丸ごと異世界へ転移した結果、オークが押し寄せ、生き残るためのサバイバルの始まりだった……。

本作品の特徴として性的描写が割りと多めで、
某エロパロの漂流教室みたいな感じて息子が……げふんげふん。
露骨な描写こそありませんが、異種物とかラノベにして大丈夫か(汗)
という心配はありますが7月30日発売の書籍版はそこらへんは何とかするでしょう、今後の展開に期待。





もちろん、彼女が無事であることは喜ばしいことなのだが……。
ぼくたちは、これからどうなってしまうのだろう。

「カズさん、どうしたんですか」

ぼくはそんなに難しい顔をしていただろうか。
きょとんとした表情で、アリスが見上げてくる。
ぼくは、内心の動揺を押し隠し、そんな彼女に笑いかけた。

「きみが、ずいぶん扇情的な格好だな、って」
「え? あ、そのっ、これはっ」

ようやく自分の格好に気づいたのか、アリスは顔を真っ赤にして、慌てて手足で急所を隠した。
でも、アリス、知っているだろうか。
男は、そうして羞恥にもだえる様子を見ると、余計に興奮する生き物なんだぞ。

「ええと……あの、でも、見たいですか」
「そりゃ、まあ」

ぼくは照れくさく笑いながら、そっぽを向く。
むしゃぶりつきたいです、という本音は紳士的に押し隠す。
だがアリスは、上目遣いにぼくを見つめ、口をひらく。

「カズさんなら……いい、です」

情けないことに、ぼくは思わず、生唾を飲み込んでいた。
そんなぼくの様子を見て、アリスは身を縮め、恥ずかしそうにしつつも、ぼくから目をそらさない。

「あー、いいか、アリス。男ってのは、そういうこといわれると、狼になっちまうもんで……」

アリスの手がすっと伸びて、ぼくの手をつかんだ。
引っ張られる。
気づくとぼくは、アリスに覆いかぶさるかたちになっていた。
桜色の唇が、目の前に迫る。
口づけ。

「狼さんは、どこですか」

はい、ここです。



いいのかなぁ(汗)



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