二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

【予告】ヴァルハラの乙女 第26話「芋大尉の朝」

2016-05-31 22:21:43 | ヴァルハラの乙女
「おはよう、トゥルーデ」
「こちらこそ、おはようミーナ」

昨夜の夜食は終わり、朝が来た。
起床ラッパと共に目覚め、自室での腕立てを終え、
いつも通りて食堂に向かう道中でミーナと出会った。
表情もまた何時ものように人を安心させる爽やかな笑みを浮かべている。

しかし、よくよく見ると書類仕事をしていたのか、目元がやや疲れているように見える。
現に仕事の事前確認でもしていたのかミーナの手には書類を挟んだボードがあった。

「あ、これね。
 御免なさいね。
 普段食堂までは持って行かないけど、
 食事を終えたら直ぐに格納庫に保管してある部品を見ておきたいから」

こちらの視線に気づいたミーナが書類を隠すように持ち直す。

「あ、いや。すまない。
 単に珍しいな、と思っただけだ」

気を使われたので謝罪の意を表明する。
別に食事の場に仕事の事を持ち出したことにワタシは気にしていない。
むしろ、20にもなっていないのにここまで熱心なのに感心したいくらいだ。

前世でミーナ位の歳だったころなんて阿保な学生だったし……。
その後もやっぱり阿保な社会人だったし、頭が上がらないというか…。

「ところでトゥルーデ。
 ルッキーニさんを見なかったかしら?
 さっきシャーリーさんがあの子を探していたのだけど見当たらないらしいわ」

脳内で阿保な前世の自分を殴る妄想が浮かびあがっていた中。
ミーナがルッキーニの行方を尋ねて来た。

「施設の外に作った秘密基地にでも隠れているじゃないのか。
 あるいは木の上か、格納庫の梁とかに寝ているのでは?」

ミーナの質問にワタシは一般論で対応した。
これまでの彼女の習性からすれば自室で寝ているなんてことはまずない。
大抵は木の上や梁、それに秘密基地で寝泊まりしている。

自室にいない。
とはいえルッキーニが寝る場所は大体限られているし、
起床時間になればサボタージュすることなく素直に食堂に来る。

にも拘わらず行方が知らないとは、

「珍しいな、シャーリーも知らないなんて」

「ええ、そうよね。
 ルッキーニさんの事を一番よく知る彼女が分からないなんて珍しいわ」

そしてさらに珍しいのはシャーリーがルッキーニの居場所を知らないことだ。
まさかあまり考えたくないことだが……。

「脱走か?」

「以前は母親に会いたい、という理由であったけど。
 シャーリーさんが来て以来はそうしたことはなくなったからないと思うわ」

「まあ、確かに……」
















 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おススメSS 人間強度が下がらなかった話

2016-05-29 23:54:00 | おススメSS

人間強度が下がらなかった話

化物語のSSです。
主人公の阿良々木暦が「友達がいると人間強度が下がる」と痛い発想に至らなかったら?、

という趣旨のSSで高校の当初から老倉育との付き合いがあり、
さらには同じ作者の作品である刀語の要素を混ぜたらどうなるか?
どのように思考や発想が変わるのかを描写すべく試みている実験的SSと言えます。

阿良々木兄弟のシスコン、
ブラコンもしっかり描写されていますし、
基地○な……突拍子もない主人区の発想とそれを表現する文体もしっかりしており、
まだ読んでいる途中ですがなかなか面白いです、ぜひ見てください。




さてさて、暦が迎えに来た相手は”老倉育おいくら・そだち”。
銀髪の長いツインテールの女の子だ。
顔のつくりは違うが、髪の色や感じは「劇ナデ」の頃のルリルリの髪型と言ったらイメージし易いだろうか?

さてこの暦と育、実は中学卒業までは同棲……いやいや同居していた仲だった。
より正確に言うと、育は”ある事情”があり阿良々木家に保護されていたのだ。
だが、高校入学の際に育は、

『いつまでも居候じゃ、私自身が駄目になる!』

と一念発起。
入試で優秀な成績を示し見事に私立直江津高校の特別奨学生の座をゲットし、
更には阿良々木夫妻よりアドバイスを受け、様々な社会福祉制度を活用し高校入学を機に自活を始めたのだった。
それがもう、

「もう2年か……」

「何が?」

「いんや。育が独り立ちしてから」

遅咲きの桜の花びら舞い散る通学路、阿良々木暦と老倉育は高校最後の春を迎えていた。
いや、もちろん留年しなければだが。



「はぁ~」

と可愛い顔台無しになるくらいに溜息を突く育に暦は不思議そうな顔をして、

「溜息を突くと幸せが逃げるという都市伝説があってだな」

「別に今は十分すぎるほど幸せだから少しぐらい逃げても文句はないけどさ……この二年間、よくも飽きもせずに毎日私を迎えにくるわね?」

「別に毎日じゃないだろ? 土日祝日、春夏冬の登校日を除く長期休暇のときは普通に育を放置してるしさ」

「それって逆に言えば、学校がある日は、雨の日も風の日も雪の日も毎度毎度私を迎えに来てるってことでしょーが」

「雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ、以下略。そんな人に僕はなりたい」

グッと拳を握り締める暦に、

「日本最高の吟遊詩人を馬鹿にするなっ!」

”ぽこっ”

「OUCH !」

暦の頭から妙に軽い……じゃなかった。小気味のいい音がする。

「そーだーちー! 僕こそいつも言ってるだろ!? 木刀で人の頭をドツくなって! 僕の頭は夏の浜辺に置かれたスイカじゃないんだ!」

今更だが、育は現代日本を生きる女子校生が持つには少々不似合いなものを携行していた。
別に隠す必要もないので簡単に言えば、”刀袋”だ。
正絹銀糸芯入の中々に本格的な代物で、名前に因んでではないだろうが袋の絹地は酢橘すだち色で、彼女の髪色を連想させる銀糸の刺繍が入っていた。

暦の言葉を信じるならば、中身は真剣ではなくどうやら木刀らしい。
ただし、育は剣道部には在籍していない筈だが……

「木刀言うなっ! この刀には立派な【王刀おうとう”鋸”】という立派な銘がある……確かに見た目はただの木刀だけど」












コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おススメSS 歴女(ハウスシェア・転載)

2016-05-28 08:00:01 | おススメSS

歴女(ハウスシェア・転載)

ガールズ&パンツァーに登場する歴女チームのカバさんチームのSSです。
戦車道が復活する直前に出会った時の話と、カバさんチーム視点から見た大洗の戦車道が描かれています。

話の展開としては日常系で、まだ3話だけですが今後に期待できます。


「砲塔が回らないな」

「象みたいぜよー」

「ぱおーん」

「たわけ! 三突は冬戦争でロシアの猛攻を押し返したすごい戦車なのだ! フィンランド人に謝りなさい!」

「「「すみません」」」

なお、正しくは冬戦争ではなく継続戦争で、
このことを帰ってからなんとなく不安になって資料を見なおして気付いたエルヴィンは、夕食時にみんなに謝罪して訂正した。

指差していた方は南だったが、これは特に訂正しない。
地球は丸いのだから、どこを指してもそう間違いではあるまい。だいたい船の上なのだし。

こうして見つけた三号突撃砲を(エルヴィンにとっては念願のドイツ戦車である)我がものとし、
翌日の練習試合で初めて戦車を動かした彼女らは、
いよいよ戦車道を本格的に始めることになるのだが、その前に決めなければならないことがあった。

「いや、意外と戦車道、奥が深いぜよ」

学園艦の浴場でのんびり湯に浸かりながら、おりょうが声を響かせた。浮き上がる胸を左衛門佐が横目で見る。

「ポジションとリーダーを決めろって、教官が言ってたが……どうする?」

「えーと、三突は4人で動かすなら、車長、操縦手、砲手、装填手、だったな」

「さすがエルヴィン。詳しいな。車長はエルヴィンでいいんじゃないか? 戦車、一番詳しいだろ?」

「まぁ……そうかもしれないが。戦車道で使う戦車は二次大戦のものまでだし」

「異議なしぜよ」

「うむ。初代ローマ皇帝も、適材適所の人材配置をしてローマ帝国を作り上げたのだ」

「では謹んで拝命するが……でもリーダーはカエサルがやってくれ」

「ええ?」

帽子の代わりに手ぬぐいを頭に載せたエルヴィンが言って、カエサルは顔をしかめた。

「嫌か」

「嫌ってわけじゃないけどさ……」

「戦車道取るときにも、
 カエサルはちょっと歯切れ悪かったよな。何か気がかりなことでもあるのか?」

左衛門佐が湯船を泳いでカエサルの肩を抱く。

「気がかりっていうか……私、実は昔、
 ちょっとだけ……一日だけくらいだけど、戦車道覗いたことあるんだよ」

「へぇ」

「その時さ、ホラ、戦車道って一応体育会系だろ?
 で、車長の指示で動くわけでさ、命令には絶対服従ーみたいなこと言われたんだ。それが嫌ですぐやめちゃったんだけど」

カエサルは口元までぶくぶくと湯船に浸かる。
あまりいい思い出ではない。

そういう競技だよ、と言われたが、
親友が誰かの指示に従っているのが、当時の幼い鈴木貴子には面白くなかったのだ。

もちろん、車外の様子を把握できるのは車長で、
操縦手や砲手は独自の判断ができるほど外の様子を知ることができない以上、
当然の役割分担だとは思う。そのくらいは解るのだが。

「私ら、そういうの、やだなって」

カエサルは言ってから、なんだかせっかく戦車道で盛り上がっていたところに水を差した気がして、湯船に潜った。
しかし、カエサルは、やっとできたこの3人の親友に、友情以外のものを持ち込みたくなかったのだ。
それほど彼女は、この4人組を大切に思っていた。

一年を同じ家で過ごして、生徒会のイベントにも一緒に参加して、
庭で七輪を出してサンマを焼いたり、テレビのチャンネル争いで喧嘩をしたり、お菓子をわけあったり。

せっかく築いたものが変化してしまうことを、鈴木貴子は恐れたのだ。
苦境は友を敵に変える、とガイウス・ユリウス・カエサルは言った。嫌いな言葉だ。








ガールズ&パンツァー 角谷 杏 抱き枕カバー







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【完成】ヴァルハラの乙女 第25話「そのころパスタ娘は」

2016-05-25 23:48:51 | ヴァルハラの乙女

バルクホルン、シャーリー、そして芳佳が食堂で夜食を取っている中。
わずかな明かりしか灯していない格納庫に小さな人影が動いていた。

より具体的に描写すると日に焼けた肌、
短いツインテールに縞パン…ではなく縞ズボンを履いた少女が格納庫で人を探していた。

「シャーリー?
 ねえ、シャーリーいないのー?」

501で最も年少のルッキーニだ。
彼女もまた小腹を空かして消灯時間に起きてこっそり夜食を食べた人物である。

そのまま寝る気にはなれず、
いつもなら格納庫でユニットの整備をしているシャーリーと遊ぼうと、
格納庫に来訪したが食堂にいることを知らずルッキーニは探し回っていた。

「シャーリーがいないなんて…。
 まだ眠くないのに、もう、つまんなーーい!!」

天井までよじ登って探してもシャーリーが見つからず諦めたルッキーニが駄々をこねる。
ミーナがいれば子供は黙って寝る時間と諭すような時間帯であったが、
昼間や夕方に寝た分まだまだ元気なルッキーニは退屈していた。

「あーこうなったらサーニャと遊ぼうかな…。
 でもサーニャの夜間哨戒が終わって戻ってくるのは朝だしなぁー」

格納庫の梁の上に寝ころびながらルッキーニが呟く。
夜に活動しているのは基本サーニャ・V・リトヴャク、サーニャだけだ。

実のところルッキーニとサーニャとの接点は割とある。
夜遊びの時間と哨戒のために夜の格納庫で待機しているサーニャとの時間が同じで話す機会があるからだ。

シャーリーと違って大好きな胸は薄いが、
それでもシャーリーと違う優しさを持つサーニャのことをルッキーニは好感を抱いていた。

「退屈だなーーー」

寝がえりし、呟く。
周囲に面白いことや、面白い事を起こしてくれる人物はいない。
その事実を享受しつつ、しばらくルッキーニはぼんやりと時間を過ごす。

しかし、時間が5分進んだ時。
ルッキーニはこの退屈な時間を乗り越える策を唐突に閃いた。

「そうだ!
悪戯しちゃおう!」

そうと決まれば行動は早く、
早速ストライカーユニットの発進を補助する始動機に駆け寄り、武器ラックを開く。

「ふふふん、みーんな入れ替えちゃお!」

通常始動機の傍に各人の武器弾薬が即座に取り出せるように武器ラックが設置されおり、
例えばバルクホルンの場所にはМG42機関銃、ルッキーニ自身はM1919A6機関銃がある。
緊急発進のたびに武器を取りに行く面倒を省き、各人の武器を即座に取り出せるようにしているのだが…。

「ミーナ隊長の銃を私のと交換してー。
 シャーリーのを芳佳のと交換しちゃおーう」

ルッキーニに悪戯で全て無駄に成りつつあった。
鼻歌と共に心行くまでこの悪戯を楽しんでいるが、
武器管理担当者の許可なく所定の位置の変更は重大な規則違反。
という事実をルッキーニが知っていれば、このようなことはしなかったであろう。
何しろミーナ隊長のお尻への平手打ちと頭への拳骨の痛さはこれまで十分痛感しているのだから。

そして格納庫でそんな作業を始めて20分後。
ついにルッキーニは目的を完遂していしまった。

「できたーー!!」

ガッツポーズと共に喜びの声を上げる。
目的を達成した満足感と何かに夢中になれた充実感でルッキーニの心は高揚する。
満足げにストライカーユニットを固定する始動機を眺めるが、ふと気づく。

「うーん……全部交換したのはいいけど、
 一目見た感じじゃ分からないし面白くないなぁー」

武器を全て交換したはいいが、
元々武器はラックの中に入っているので、
一目見て周囲を驚かす悪戯としてのインパクトに欠けている。

そうルッキーニが考えと時、さらに閃きを得た。

(ストライカーユニットの位置も全部変えちゃえ!)

そう決断するとストライカーユニットのロックを解除。
自身には魔法力を発動させ、金属の塊であるユニットを軽々と持ち上げる。
そして、ユニットをそれぞれの定位置から外れ、出鱈目に配置させて行く。

ルッキーニは悪戯をさらに楽しんでいるが、
再度の管理規定の違反で謹慎処分、減給、そして鉄拳。
のトリプル罰則がミーナから受けることが決定していたが、気づいていない。

「あ~雨が降っても気にしない~。
 や~風が吹いても気にしない~。
 な~槍が降っっても気にしない~。
 ふ~吹雪が降っても気にしない~。
 な~何があっても気にしない~」

エイラが一人で呟いていた歌を歌いながら、
ルッキーニはバルクホルンのユニットの固定を外し、
代わりに運んできたシャーリーのP51ムスタングのユニットを始動機に装着させようとする。

しかし、

「うにゃ…?」

ルッキーニは鼻に違和感を感じる。
埃が溜まりやすい格納庫を歩き回ったためだろう。

「へっくしゅ!!」

そして耐えきれず当然くしゃみをした。
思わず手に持っていたシャーリーのユニットを手放してしまうほど派手にだ。

そう、手放してしてしまった。
しかもルッキーニは魔法力を発現させている状態であり、
力加減なんてまったくできておらず、真っすぐバルクホルンのユニットに投げ出され。

結果、派手な衝突音が格納庫に響いた。

「うにゃーーーー!!?
 どどどどど、どうしよう!!」

部品や破片が盛大に散らばり、
油が床を濡らす大惨事に流石のルッキーニも、
自分がやらかしたことを理解し恐慌状態に陥る。

(このまま知らんぷりしちゃおっかっ…!
 あううう、でもミーナ隊長に直ぐに分かっちゃう)

このまま放置しても、
こんな事をする人間はルッキーニだけで、
即座にミーナが真犯人を見つけ出すことが安易に想像できた。

(部品とか油はお掃除すれば誤魔化せるけど、
 壊れちゃったストライカーユニットだけは何にもできない!)

床に散らばった部品や零れた油については掃除すれば誤魔化せたが、
壊れたユニットだけは誤魔化す手段が思いつかなかった。
 
「う、ううううう~~~」

何か手段はあるはずだから、考えるべき。
そう思い、考えるが策は思いつかず思考の迷路に入る込む。

(いっそ、正直にシャーリーにバルクホルン。
 そしてミーナ隊長に謝ろうかな、痛いのは我慢して)

万策尽きたとルッキーニは諦め、
正直に起こった事を報告し、謝ることを考えた。
第三者から見れば下手に誤魔化しや逃げるよりもそれは正しい選択であった。

のだが、

(……そういえば予備の部品があったよね?)

ふとルッキーニはそれぞれにユニットで保管している予備部品の存在を思い出す。

(そうだよ、自分で修理しちゃえば良いだ!
 それなら見た目だけじゃなく中身も誤魔化せる。
 ユニットを弄るなんて何時も見ているシャリーのを真似すれば良いだけだし)

導き出された回答にこれなお尻を叩かれず済むと歓喜する。
が、素人が弄ってユニットの性能が可笑しくなる可能性についてルッキニーは気づいていない。

加えてプロの整備士が真っ先にユニットを弄られた形跡を発見し、ミーナに報告される可能性。
備品管理担当のバルクホルンが予備の部品が消えたことを気づき、犯人を探し出すこともルッキーニは考慮していなかった。

(よ~し、早速ユニットを修理しなくちゃ。
 じゃないと、ミーナ隊長に怒られちゃうし……)

どう足掻いても事が露見することは免れず、
正直に謝る方が正しいのだが、子供にはそこまで考えが及んでおらず。
ユイット破壊を誤魔化すべくルッキーニはまず床を掃除するためにモップを手にした。












コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

GATE~続いたネタ30 夢幻会、彼の地にて戦いけり

2016-05-23 23:54:02 | 連載中SS

「高速に乗れたし……何とか撒けたみたいだ」

伊丹のその一言で車内で緊張が解ける。
溜息や姿勢を崩すなどをして思い思いに力を抜く。

「富田、次の休憩所で一度休むことにするからよろしく」

「大丈夫ですか、隊長?
 向こうは旅館をあんな形で襲撃してきたような人間ですから、
 休んでい居る所をまた襲撃してくる可能性があるのではないでしょうか?」

「んー確かに予想外だったけど、
 ロウリィ、それに特殊部隊同士で潰しあって、
 実行部隊が一度どこも壊滅状態に陥っていると思う。
 動きたくても動けないとはずだから大丈夫、大丈夫」

「分かりました、
 では次の休憩所まで隊長は休んでいてくださいね。
 元という字が付きますが、奥さんが心配しているのですから」

「へいへい」

運転席に座る富田の言葉に伊丹は苦笑し、
隣で自分の腕をしっかり掴んでいる元妻に視線を向けた。

「ん……」

だが梨紗は明日の特地帰還のための「仕込み」
を終えたことによる安心感とこの騒動の疲労で既に寝息を立てていた。

「なんで離婚なんて言い出したんだろうな…?」

それでも自分の腕を離さないことに伊丹は思わずつぶやく。
離婚したにも関わらずこうも心配し、心配される事実に伊丹は理解できなかった。

「…朴念仁」

「何か言ったかクリボー、あ、ウリボーだっけ?」

「ウリボーでもクリボーでもない!!」

「あ、ちょ!暴れるな!?
 俺けが人、一応けが人だから!」

「その程度、かすり傷じゃないですか隊長。
 これからの人生は小野田さんにがいる方向に足を向けて寝る、
 なんて事はできない事を肝に銘じて下さいね、いいですか、隊長!」

旅館が襲撃を受けている最中、妻が狙われているのを察した伊丹が妻を庇おうとした正にその時、
別の部屋に宿泊していた小野田が襲撃者を射殺したよって伊丹は銃弾を掠めたかすり傷程度で済んだ。
その事実を出汁に栗林が上官に向かって小野田に感謝するようにとの要求を突き付け言い放った。

「分かった、分かっているから、栗林!」

「ならいいです。
 隊長でもわかるように言って、
 なおも分からなかったら殴っていた所です。
 ああ、それと私は寝ませんが隊長はしっかり休んでいて下さいね、
 部隊指揮官は休めるとき休んで貰わないといざ指揮する時に不調だなんて困りますから」

尊敬しない上司の言いたいことが言えたことに満足したのか、栗林は席に戻った。

「……心配されているなぁ、俺」

あまり尊敬を受けていない上司であることを自覚している自分が、
富田、栗林とそれぞれ違う形で気を使われたことに伊丹は苦笑を小さく漏らす。

(しかし、富田には今晩再度の襲撃される可能性を否定したけど本当は違う。
 例えば増援が来ないという保証はないし、今もなお後ろから追跡され休憩所で襲撃される。
 という可能性だってある…それに例え今晩は再度来ないとしても翌日には再編を確実に完了しているはずだ)

今晩の戦闘で明らかに各国の戦力は目減りした。
しかし、これを根拠に安心するほど伊丹はお気楽な性格ではなく、
予備兵力がいる可能性と兵力を再編し、明日からの襲撃を懸念していた。

ここまで思考を走らせた後。
指揮官は例え嘘を承知でも部下の戦意を損失させないためにあえて悪い情報を与えない。
という話を特殊作戦群での座学で聞いたことを思い出し、

(俺みたいな不真面目な人間がここまで考えさせるなんて超過勤務だな。
 代々柄じゃないし、柳田に残業代や各種手当を出してくれるように頼んでみるか)

こんな事はもっと真面目な人間に任せるべきだ。
と、内心で感じつつ対価として手当や残業代を請求したい気持ちになる。

チラリと後部座席に座る栗林を見る。
追跡を警戒し不審な車両がないか後ろをしっかりと見張っている上に、
いつでも銃を引き抜くことができるような態勢であり、頼もしい事この上ない。

(問題は賓客を確保するのが無理。
 と判断され、護衛もろとも抹殺を図られたら手の打ちようがない)

が、そんな栗林を見ても伊丹は懸念を感じていた。
これまで相手は同じく狙っていた相手との交戦もあったが、
賓客を確保する、という最終目標がある以上どうしても行動に制限があった。

だが、賓客が日本政府との間でパイプが構築されるのを黙ってみるくらいなら、
賓客を暗殺し講和への糸口を破壊、自衛隊を異世界との戦争で泥沼に嵌まらせる。

そう考えそうな国を伊丹は最低2か国ほど知っており、頭を悩ませていた。

(梨紗は「明日銀座から国会に登場した異世界の3人娘が帰る」
 という話をあちこちばら撒いたから、当日銀座は人が集中し安易な工作活動はしにくいはずだ)

ゆえに元妻に現在注目の的である3人に関する噂を流し、
3人を一目でも見ようと集まる人々を隠れ蓑にして特地に帰還することを考えていた。
人が集中していれば、安易な拉致や暗殺などが発生する可能性が低下する可能性を伊丹を賭けていた。

(どのくらい集まるかが不安だけど、後戻りはできない。
 何せ自衛隊の施設に逃げてもピニャ殿下がアメリカに引き渡されるだけ。
 日本が打てる手は「賓客が疲労を理由に一足先に特地へ帰還した」と強弁するしかない)

普段なら何と言われようが逃げ出していた伊丹だが、
防衛大臣直々の要請を無視する程腐った人間ではない。

不真面目なのは自覚しているが、
与えられた使命と命令をそれなりにこなして来たつもりだ。
ましてや、異世界と日本を巡る運命が自分の動きで決まるのだから。

(やれやれ、この俺が日本の運命を握っているなんてまるで主人公みたいじゃないか)

いつも愛読している二次元の世界のような展開。
この事実に伊丹は苦笑というより何故自分がそうなったのか呆れを覚えた。

(まあ、何にせよ……。
 今晩が無事過ぎれば明日が勝負だ。
 少し、休むか、流石に眠くなって、来た)

と、ここまで内心で色々考えて来たが、
流石に眠気が強くなり、思考が徐々に定かでなくなりつつあり、
伊丹はそれに逆らわず体の力を抜き、瞳を閉じて眠りについた。
 












コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする