二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

駆逐艦『神風』の記録~艦隊これくしょん転生憑依物(完成)

2014-03-30 20:04:27 | 習作SS

リンガ泊地。
南海の太陽と空が地面を照らす中。
水兵服に手には銃を持った歩哨が「鎮守府」と書かれた建物を警備している。
歩哨に立つ兵士は一寸の隙のない表情で警備しており、まさにそこが軍事基地であることを強調していた。

しかし、そんな軍事基地の敷地内に少女の姿と声が聞こえる。
いや聞こえるだけではない、実際に見られた少女が小学生程度であった事実を見る人によっては驚愕しただろう。

だが、基地にいる誰もがその光景に疑問の余地を抱いていない。
むしろ彼女からが軍人から敬礼を受ける身分で垢抜けない少女は人々からこう呼ばれた――――艦娘と。

彼女達こそ人類の生存を脅かす『深海棲艦』に対する数少ない切り札であり、希望であった。
特に長らく続く戦争で人類側の困窮度合いは増すばかりな現状ではなおさらである。

ゆえに、彼女らに一定の敬意と尊敬を人々は払っており。
ごくまれに不届きな行為を試みた輩には情けと容赦、慈悲の心を持ち合わせていない。

そんな中、詰襟式の白い海軍第2種軍装を着用した、
提督と呼ばれる肩書きをいただく50代の男性は自らの執務室で、
本土から今度着任する予定の艦娘について記載された書類を眺めていた。

駆逐艦『神風』

『神風』型駆逐艦の1番艦で『峯風』型駆逐艦を改良させたものである。
しかし、特型駆逐艦以前の艦娘ゆえに火力を始めとする性能には疑問点がつく。
正直もっといい艦娘はいないのかと嘆きたくなるが、戦況はそれを許してくれない。

提督も参加したサーモン海域の『戦艦棲姫』『飛行場姫』との戦いで始まった際限なき消耗戦。
これにより多くの熟練の艦娘を喪失し、新たに艦隊に編入した艦娘はその練度の低さでさらに消耗。
結果、俗に『捨て艦戦術』と呼ばれる統帥上の外道を以って辛うじて撃退に成功する。

だが、さらにサーモン海域の北方で、
『戦艦レ級』が登場したことで更なる悪夢の消耗戦が開始された。
開幕航空戦、開幕雷撃戦で容赦なく先手を取りその火力は高速戦艦の『金剛』すら一撃で大破に追い込まれる。

航空戦では正規空母2隻で『烈風』を満載しても制空権すら取られる恐れがあり、
潜水艦で雷撃しようにも爆雷攻撃が可能であるため、やはり逆に沈めれられかねない。

以来、幾多の艦隊が水底へ沈んで多くの命が失われた。
そして今やフィリピンのレイテ島に深海棲艦が出現しており、
近々これに対する攻勢として『捷号作戦』が発動される予定である。

・15cm9連装対潜噴進砲
・10cm連装高角砲
・五式40mm単装機銃

その他装備も輸送されるが、現在の『神風』の装備は以上のようなものだ。
雷装を降ろして対空、対潜重視の装備で対艦戦では不安が残るがそれは特型駆逐艦。
あるいは、強力な雷装を有する『北上』『大井』の重雷装艦に任せると割り切ればいい。

元々特型駆逐艦と比べれば正面火力でやや劣る。
『神風』のモデルが激戦地で派手に活躍したエピソードはなく、
長らく地味な船団護衛についていたからなおさら地の火力能力値は低い。

しかし『神風』のモデルはかつての戦争末期に、
散々日本の軍艦を沈めたアメリカ軍の潜水艦を逆に追い詰めた経緯から、
初期の能力値において対潜、索敵が高めであり、長所が生かせると考えることが可能だ。

また、最後の水上戦闘であるペナン沖海戦に参加して生き残る。
加えて巡洋艦『足柄』の乗員約800名と輸送していた兵士400名を単艦で救助。
しかも終戦時南方で稼動状態であった唯一の軍艦として生き残ったためか回避性能が高い。

装備の質も悪くない。
『15cm9連装対潜噴進砲』は対潜装備として現状で最高の攻撃力を有する。
『10センチ連装高角砲』は対空対艦戦闘をこなせる駆逐艦に搭載可能な砲であるし。
そして、『五式40mm単装機銃』は防空能力として近年配備が開始された『3.7cm FlaK M42』に匹敵する性能がある。

おまけに練度、俗に言うところレベルも高い。
長らく船団護衛に従事していたことを差し引いてもこの点はありがたい。
連合艦隊に所属する艦娘全体の数こそ増加中であるが、レベルは相次ぐ消耗戦で低下に歯止めがとまらない。

高レベルの艦娘を育成するまでには長い訓練と実戦経験が必要となる。
訓練すれば割り当てられた資材は消耗するし、実戦に出ればレベルの低さから途中で沈没する危険性をはらんでいる。

そんな中で貴重な高レベルの艦娘をこちらに配属されたのはたとえ駆逐艦でもありがたい。
後はどのように人材活用するかであるが、そこは提督の腕の見せ所であろう。

「失礼するわ、提督。今いいかしら?」

ノック、そしてドアの向こうから声が響く。
提督は「入れ」と潮風で枯れた声で入室を許可した。

「整備補給に関する報告書が完成したわ、それともう直ぐ昼よ」

銀髪の、光の差し込む角度によっては蒼銀髪にも見える少女。
否、ただの少女ではなく特型駆逐艦の5番艦の艦娘にして秘書艦の『叢雲』が書類を手にして入室した。

「ご苦労、昼食は直ぐに食堂に行く。叢雲は先に行くように」
「わかったわ、でも早くしないと金剛が騒ぐわ。まったく戦艦は大飯食らいね」
「『赤城』に『加賀』よりはましだろう」
「……それもそうね」

別の鎮守府所属であるが『ボーキサイトの女王』と恐れられる『赤城』
『赤城』に隠れて目立たないがやはり燃費が悪い『加賀』の2人の食いっぷりを知る提督と艦娘は遠くを見るように眼を細めた。

まあ、と提督が言葉を続ける。

「腹は減っては戦は出来ぬ。
 という言葉のように今は食うことが優先だ。
 食える間に食って、来るべき日に備えおくだけだ」

「レイテ島ね、各鎮守府の総力を挙げて攻撃すると言ったけど……あら、艦隊に新しいメンバーが加わるの?」

「うむ、『神風』型駆逐艦の1番艦だ。他にも新装備が来るそうだ」

提督が叢雲に書類を見せる。
叢雲はんー、と書類を眺めてしばし熟考する。

「ここの鎮守府では特型以前の駆逐艦はいなかったわよね?巡航速度とかその辺の調整が必要よね」

姉妹艦。
という言葉があるように、同型艦の建造そして艦隊を固めるのがベストだ。
なぜならその方が同型ゆえに補給整備に掛かる負担は少なくなる。
また、同型艦ゆえに隊列が組みやすく、統一的な艦隊運用がしやすくなる。

しかし、ここに別の艦。
それも旧式ともいえる艦娘がくるとなれば、実際に訓練して修正してゆく以外ない。

「負担を押しかけるようですまないが、その点は訓練で調整していってくれ」

「別にいいわよ、任務なんだし……というか『紫雲』、
 それに『一式徹甲弾』なんていつもはケチ臭い補給がここに来て随分と大盤振る舞いじゃないの?」

「戦況が厳しい今だ、単なる自棄か面倒事を押し付ける気だろうな」

提督がデスクから葉巻を取り出しすと、
シガーカッターでタバコ葉で閉じられた吸い口を切り落とす。
続けてライターで火を起こそうと試みたがどこにおいたか忘れてしまい一瞬困る。
しかし、叢雲が火がついたライターを差し出したことで解決された。

「煙はこっちに吐かないでよね」
「ん」

いきなり吸わず、先に先端部が均等に着火させてゆく。
葉巻の内部がゆ湿り気を帯びた熱気で温められたのを感じた後。
さらに回転させながら遠火で点火し全体的に熱が通り香りが漂ったところで初めて吸い始めた。

喫煙者にしか分からない芳醇な香りが胸を満たす。
提督は皺と日焼けで鬼瓦のようになった表情を緩ませた。

「…煙がこっちにこなくても匂うわね。
 北上さんも偶に吸うけどなんで喫煙家はこの匂いがすきなのかしら?」

「言っておくがあっちは蒸気タバコだから害はあまりない。
 ニコチン抜きの香りを楽しむ物だが、こっちは大人の味である葉巻であると言っておこう」

「はいはい、提督が喫煙家なのは分かっているけど吸いすぎないようにね」

喫煙者として蒸気タバコと葉巻の違いを熱弁する提督だが。
どっちも喫煙者に過ぎない叢雲からすれば違いなどどうでもよかった。
娘、下手をすると孫ほどに歳が離れた少女に喫煙者の考えを理解してもらえず、内心少し落ち込む提督。

今度来る艦娘が喫煙仲間であるといいな。
等と考えた時にデスクの上に置いた黒電話が鳴り響いた。
直後、鎮守府全体を揺るがすサイレンの音が支配する。

「どうした……っ!そうか。
 よし確か第6駆逐隊が哨戒中だったな、現場へ急行するように。
 こちらも急いで出撃する。ああ、それと目的は敵の撃破でなく味方の収容であることを伝えてくれ」

「昼食前だといのに…!!提督、敵の陣容は?」

「詳しい型は不明だが、重巡洋1軽巡洋1駆逐艦4。典型的な深海棲艦の哨戒部隊だ。
 現在本土から来た輸送船団が襲撃を受けているので『神風』を筆頭に護衛の艦娘が戦闘中だが……急がねば」

「了解っ!第11駆逐隊を率いて出撃するわ!」

叢雲脇を締めた海軍式の敬礼を提督にすると、執務室から飛び出した。
護衛の艦娘は駆逐艦、それも『松』型か海防艦では巡洋艦相手には厳しい。
リンガ泊地周辺に出没する最近の深海棲艦の動向としては『潜水カ級』か『駆逐イ級』が数隻出る程度だ。

それも夜間に隠れて出るというのに、昼間から巡洋級を引き連れた部隊が出た事実。
これはレイテ島の深海棲艦の勢力が拡大したためかもしれない。

「予想以上に戦力が揃っているかもしれないな……」

あの悪夢が再び再現されなければいいのだが、とサーモン海域の事を思い出しつつ提督は呟いた。



※  ※  ※



「あ、」

何が起こっているのか分からない。
前後の記憶があやふやで、恐らく口に出来た言葉喘ぐ様な言葉であろう。

何故自分が口にした言葉が分からないか?
というのも聴覚、視覚、嗅覚と必要な感覚情報が遮断され判断できなかったからである。
しかし、何となく体に感じる感覚からどうやら自分は落下しているらしいことだけは掴めた。
突然わけの分からない状況に追い込まれ、喚き散らしパニックにならないのは自分でも驚きだ。

頭はどうしてこうなったか記憶を探る。
探れど探れど前後の記憶にぽっかりと空白が開いているため何も分からない。
幸い、というべきか自分の名前は記憶しているため自分が何者かは分かっていた。
そこから連想的にこの状況と当てはまるものを考えてみたが、やはり思いつかない……くそ。

それよりもジェットコースター。
あるいは紐なしバンジージャッンプをしているような感覚。
しかし同時に地面に向かって落下している感覚がない奇妙な感覚を覚える。

気持ち悪い。
今すぐ吐きたい気分に陥る。
何よりも冷たくて肌寒く、体に受ける圧迫感が余計に気持ち悪い。

あれ……冷たいだと?
感覚が戻ってきている!?
そして、徐々にだが視界が映し出されつつあった。

完全に視界が開いた時、ボクはどうも青い水の中にいた。
口に感じる潮辛さからどうやらここは海の中らしい。

……ファーイ?
ようやく思い出した記憶では直前に海に行った記憶なんてないぞ。
そもそも海なんて仕事で港湾に行くことはあっても泳いで遊ぶことなんてずっと無かったし。

というか息苦しい。
おまけに徐々にだが沈んでいる気がする。
…………じょ、冗談じゃないぞ、このまま溺れて死んでたまるか!

くそ、動け。
何が起こったか分からないけど、ボクは生きたいのだ!
まだ見ていないアニメや遊んでいないゲーム、書いていないSSがあるんだ。

生きることは決して楽じゃなかったけど。
そうした楽しみも生きていなければすることが出来ないのだから。

ああ、くそ駄目だ。
足取りは重いし、意識が朦朧として来た。
このままここで溺れ死ぬのが定めなのか?

おぼろけだけど、白い光が視界を満たしている。
ボクは神道だけどもしかすると天使、あるいは死神の使いでも来たのかもしれないな。
転生することがあれば出来れば今の記憶と経験を引き継げるように頼んで見るか。
そうすれば次の人生は今よりもさらにうまくいくかもしれない――――待て、少しずつだけど浮上している?

足の方から体全体を押し上げる浮力を感じる。
そして、だとすると今見える光は太陽で、あれに向かって泳げば海面に出られる。

だったら、ここで諦めてたまるものか。
手を伸ばし、足を動かし最後の力を振り絞るだけだ!
動け、動けぇぇぇぇ!!

眼を見開き、海面へ手を伸ばす。
足から謎の推進力を感じるが今は無視してただ海面を目指す。

朦朧とする中、何度も意識を失いそうになる。
が、ボクの努力をいるかも知れない神様が認めてくれたようで海面に浮上できた。

「ぶはぁっ!!」

空は青く、海も綺麗な蒼色をしており南海特有の暖かい空気が肌を刺激する。
だけど、ボクは景色を鑑賞するより先に面一杯空気を吸う事が大事であった。
全身に力がみなぎり酸素のありがたみに浸る暇もなく、続けて腹からありったけの海水を吐き出す。

「うえ、うぇええっぇええ!!」

ビシャビシャと音を立てて胃の中身が出る。
しばらく、胃液交じりの海水を吐き続けた後ボクはようやく周囲を見渡し始める。
ふと、風に乗って漂う異臭に気づいてその方角に顔を向けると。

「なん……だ、これは……?」

炎上する船舶に海面に重油が広がる。
周囲には非難したと思われる救命ボートが漂い、自分と同じように海に漂う人もいた。

一見それが船舶同士の事故にありふれた光景のように見えたが。
ただの事故でないと知ったのは、周囲を走り回っている化け物をボクが眼にしたからだ。

「――――――」

全長25メートルはあるだろうか。
黒く硬い外装を有し、大きな歯と眼を光らせたもの。
ボクのあらゆる知識の中から如何なる生物に例えようがない化け物がいた。
それが海上を滑るように動いており、口から光線を放ち船を攻撃して最中であった。

そんな予想外の光景に呆然としているとさらに驚愕の光景を眼にした。
その化け物の周囲の海上でくるくると回っている人物たちを目撃する。

人間よりも遥かに巨大な化け物相手。
ましてやどう見ても大人とはいい難い人物たちから盛んに砲火が飛び出し、化け物を一方的に攻撃している。
怒り狂った化け物はその人物たちに光線を浴びせるが、直ぐに避けてはさらに砲火を浴びせつつあった。

『この雷様に敵うとでも思ってんのかしら!』
『魚雷装填です……照準よし、撃ちます!』
『バァーニングラァーーブ!!』
『主砲。ほーげき、開始!!』

栗毛のセーラー服の小学生程度の幼い少女。
巫女服を改造してコスプレのような服装をした少女。
他にも白い帽子を被った銀髪の少女などおりボクは彼女たちを知っていた。

というか、え、えええ!!?

「アンタ、大丈夫!」

呆然としているボクの目の前に蒼銀髪の少女が現れる。
服は白のワンピース、手には槍のようなものを手にしていた。
スカートから突き出ている細い足と黒のストッキングが服装が白いおかげで映える。

というか、凄い美人さんだ。
整った顔に、金眼に光の角度によっては蒼銀髪に見える髪といい凄い美人だ。
ぜひお近づきになれたら……じゃなくて、彼女とは二次元でしか知らないが、恐らく彼女の名は。

「……叢雲……なのか?」
「っ…!!よかった意識はあるようね、安心しなさい神風。直ぐに引き上げるから」

…………。
………………はい?

「かみ、かぜ?」
「アンタの名前でしょ?」

思わず鸚鵡返しに名前を答えたら。
叢雲は「何言ってんだコイツ?」みたいな表情をされた。

手を動かし自分の顔に触れる。
その感触は少女特有の柔らかい肌に小ぶりな顔であった。

いやいや、落ち着け。
クールになれ自分、そうだ胸とか体全体を見れば間違いだって分かる!
顔の感触なんて触れただけじゃ分からないしな!それ、どれどれ…………あれ?

どう見ても少女の肉体をしていました。
ウェブ小説定番のTS転生憑依です、本当にありがとうございました。

「いや、アンタさっきから何やっているの?」

衝撃的な事実のあまり叢雲の突込みが頭に入らない。
認めたくないが認めざるを得ない事実としてボクは『艦これ』世界にいるらしい。

しかも提督とかじゃなくて『艦娘』としてだ。
そんな馬鹿な話があってたまるかと思いつつ意識が再度遠のく。

「……っ!!しっかりしなさい神風!!みんな引っ張るわよ!!」
「は、はい!神風さん手を握ってください!」
「頑張って……」
「ひ、ひっぱりまーす!」

これが夢だといいな、と彼女らのやり取りを聞きつつ意識が閉じた。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヴァルハラの乙女 第9話「変化Ⅱ」Ⅰ

2014-03-28 23:29:44 | 連載中SS

警報が響く。
ネウロイの接近、戦場が向こうからやってきた音だ。

怖くて、怖くてたまらない。
頭を押さえて縮こまりたくなる。
じっとその場で眼をつむり嵐が過ぎ去るのを待ち続けたい、そうリネット・ビショップは思った。

「低空から接近したから発見が遅れたですって…っ!!」
「うへぇ、本当かんべんしてよなー」
「て、敵ですか!?」

待機室に設置してあった電話に応対するミーナ。
ミーナの言葉に対する反応はそれぞれで、エイラは面倒くさそうに反応し、芳佳は見るからに動揺していた。
そして3者の反応を他所にミーナは受話器を置くと、エイラ、芳佳、リネットの3人の方へ向き直る。

「坂本少佐の方は全力で向かっているけど……間に合いそうにないわ。
 エイラさん、念のためもう一度聞くけどサーニャさんはやっぱり出られない?」

「まぁムリダナ、夜間哨戒で魔力を使い切ってる。
 仮に無理に出撃させても寝不足で墜落しかねないぞ」

どこか棒読みな口調で指でバッテンを作りムリダナ(・×・)と呟くエイラ。
エイラの言葉にミーナは表情を曇らせたが、直ぐに軍人としての決断を下した。

「……やむ得ないわ、皆行くわよ」
「しょうがないなー、行くぞ宮藤、リーネ」
「は、はい。頑張ります!!」

やれやれ、と言いたげに立ち上がるエイラ。
続けて緊張しつつも立ち上がる芳佳であったが。

「ん?おいおい、大丈夫かよリーネ?」
「ああ、は、はい!大丈夫です!」

リネットだけは違った。
2人続いて立てることが出来ずにいた。
口こそは問題ないと言っているが、青白くなった表情に身体は震えが止まらない。
どう見ても出撃していい状態ではなかった。

「……リネットさんは待機ね」
「…………はい」

ミーナがそんなリーネを見て、ただ一言だけ言葉を発した。
リネットはミーナに対して申し訳ない気持ちと、自分のこの体たらくに泣きたくなった。
これでは駄目だと頭では理解していても、心と体は付いてゆけていなかった。

(どうぜ私なんて――――)

黒い、鬱屈した感情が心を満たす。
頭を下げ、眼をきつく瞑り何もかもから逃れたい衝動に教われた――――しかし。

「リーネさん!」

前から声をかけられる。
リネットは顔を上げて声の主の人物を眼に入れる――――宮藤芳佳だ。

「あのねリーネさん、一緒に出撃しよう」





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヴァルハラの乙女 第8話「変化」

2014-03-25 22:03:15 | ヴァルハラの乙女

「ネウロイ1が真っ直ぐ、ここ501の基地を目指して進撃しています」

ミーナの言葉にやや場がざわめく。
緊張に周囲が走るが顔色を変えないミーナ、
そしてその隣で鞘に入れたままの扶桑刀を床に突き立て屹然と立つ坂本少佐。
そんな2人の様子を見た501の隊員一同の動揺は収まり、安心した。

「今回は宮藤さん、リネットさんがいるので編成を少し変えます。
 坂本少佐率いる部隊は出撃、私が率いる部隊は予備として基地で待機します。少佐、説明を」

「指揮官は私、坂本美緒。前衛はバルクホルンとエーリカ。
 後衛はシャーリーとルッキーニ、ペリーヌが私の直衛に着いてもらう」

「私、エイラさん、宮藤さん、リネットさんは待機室で待機します。
 何か質問は――――ないわね、では出撃組は坂本少佐の指揮に従い速やかに出撃してください」

一斉に起立、そして敬礼と共に了解!と声が響く。
待機組を置いてゆく形で出撃組は駆け足で格納庫へと走って行った。

「おう、ルッキーニ、ペリーヌ。競争しようぜ!」
「いいよ!シャーリー!」
「…別にわたくしは自分のペースで走りますわ」

廊下を駆け抜けつつシャーリーがルッキーニ、
ペリーヌに競争を持ちかけた、ルッキーニは乗り気であるが、
金髪金眼の少女、ペリーヌ・クロステルマンはそんな2人を呆れ気味に答え、拒絶した。
そんな態度に悪戯スイッチが入ったシャーリーは、悪い笑みを浮かべてルッキーニに話しかけた。

「ノリが悪いなー残念だぜ。どうやら残念なのは胸だけじゃないようだぜルッキーニ」
「ペリーヌは胸が残念賞だから空気抵抗が無いのにねー、残念だねー」
「な、なんですってええええーー!?」

ドヤ顔で自らの胸を揺らしたところで、
ペリーヌの頭の何かが弾け、米神に青筋を立てジャッキーニのコンビを追いかける。

追いかけられる側は釣れた釣れた、と喜びながら追いかけられる。
そしてぎゃあぎゃあ言い争いながら駆け抜けてゆく3人とは違い、エーリカ・ハルトマンは眠たげであった。

「あーもう、うるさーい。眠いーお腹すいたー」

走りながら大きな欠伸を漏らす。
起きることが極端に弱い彼女からすれば早朝に警報でたたき起こされ、
朝食を食べる暇も無く、こうして走らされることは苦行に等しいものであった。

「エーリカは何時もそうだな…これを後で食べろ」
「わぁ、さっすがトゥルーデ!ありがとうー!」

そんなエーリカを見て「またか」
と口にしつつも、隣で走っていたバルクホルンが乾パンとチョコレートを差し出した。

エーリカは歓喜し戦友であるバルクホルンに感謝の言葉を口にした。
もっとも、バルクホルンの後で食べろという忠告は聞かずに早速乾パンとチョコレートを頬張りだす。

「走りながら食うなんて子供か?」
「ピチピチの16歳の子供だもん!」
「そうだな」

エーリカの反応に苦笑交じりバルクホルンは同意した。
しかし、エーリカは直後長年の戦友が物思いにふけたため息を吐いた瞬間を見逃さなかった。

それが、いつも戦場に行く前の緊張とはまた違うとエーリカは感じた。
直感が戦友が何かを隠している気がして、気付けば口を開いた。

「どうしたの、そんな憂鬱そうな顔をして?」
「わかるのか?」

眼を見開きバルクホルンが少し驚いたように答える。

「もう何年一緒に過ごしているから、
 そのくらいわかるよ、それこそミーナやトゥルーデの生理の周期も分かっているし」

「そりゃどうも、最後のは余計だけど」

一体いつ知ったのだか、バルクホルンは呟く。

「でさ、トゥルーデは何に悩んでいるの?」

エーリカが問う。
その問いかけにバルクホルンはやや間を空けてから答えた。

「…ネウロイの動きが少し気になってな、」
「ネウロイの動き?確かに直接ここに来るなんて珍しいけど、気になるの?」

ネウロイは夜襲や朝駆けこそしてくるが、
意図した戦術戦略は行動は基本とらず、ごくまれに迂回する程度である。
基本は質と量に物を言わせた蹂躙戦で、ブリタニアでの戦いは大型ネウロイが散発的に襲撃する程度だ。

「まあ、な。もしかするとこのネウロイは囮でないかと考えたからさ」
「囮?ネウロイが?トゥルーデは心配性だね」

そして、今回は毎度標的にされるロンドンではなく、
ここ501の基地を目指している点は確かに珍しいが深く考えることは無い。
というのがエーリカの意見である、なぜならたかが大型ネウロイ1機ならたどり着く前に叩き落すことが可能であるからだ。

その言葉に「そうだな、」と再度バルクホルンは口にした。
エーリカは戦友は未だ納得しておらず、戦友の態度から説明できない違和感を感じ取る。
そう、まるで自分だけが未来を知っていると言いたげな態度であった。

(私も考えすぎかな?)

より正確に言えば考えすぎ、
というよりそれは妄想の類だとエーリカは思った。
確かにゲルトルート・バルクホルンは昔から周囲とは何か違っていたが、それだけだ。

仮に戦友が自分とは違う存在であったとしても、
エーリカ・ハルトマンにとってバルクホルンは戦友であることに変わりない。

だから、これは考えすぎ。
そして問題などまったくない、それがエーリカ・ハルトマンが出した結論であった。



※  ※  ※




5人の少女と共に空を飛んでいる。
魔法力の保護があるとはいえ高度が高いためやや肌寒く、昇りたての朝日が眩しい。

時刻が約6時半と早めの時間ということもあるが、
出撃前にペリーヌと騒いで疲れたルッキーニ、朝が弱いエーリカなどは欠伸や眼を擦るなど睡魔と格闘している。

「……どう考えても妙だ」

現在坂本少佐の指揮下でネウロイに向かっており、その編成は【原作】と変わらない。
変わっている点といえば宮藤芳佳、リネット・ビショップの2人が始めから待機することになった点だ。
これは、わたしがいざと言う時には2人を出撃することを強く主張した影響である。

そこまではいい。
しかし、問題は【原作】では囮であるはずのネウロイの航路が違うことだ。
通常はロンドンを狙って来る航路をネウロイは通るのだが今回は501の基地へ真っ直ぐ向かってきている。

このネウロイが囮かもしれないとエーリカに言ったが、
考えすぎと言われたように、周囲を説得可能な材料はなく結果【原作】同様の編成で出撃した。

あるいは、もしかすると今自分が向かっているネウロイは囮ではなく、
【原作】では本命であったネウロイが始めからこっちに来ているのかもしれない。

だとすれば、見つけ次第即座に撃墜してしまえば何も問題ないが、
問題はそのネウロイは本体から分離、高速で離脱することが可能で取り逃がす危険性がある。
最大速度がどれだけ出るのか分からないが、【原作】のシーンを見ると時速800キロは出ていた気がする。

「まずいな。いや、待てよ」

となれば、それこそシャーリー位しか追いつけない。
しかし、逆に考えるとミーナ、エイラの2人だけで対応したのとは違い、
ここでは坂本少佐、ペリーヌ、シャーリー、ルッキーニ、わたし、エーリカの6人がいる。

加速する前に撃墜すれば問題ない。
そう、ここで撃墜してしまえば何も問題ない。
だから、今は今出来ることに集中しよう。

「こちら坂本少佐、間もなくネウロイと接触するはずだから、各隊員は周囲への警戒を怠らないように」

インカムから坂本少佐の指示が届くと全員周囲に視線を動かす。
誰も私語を発せず、戦場の緊張した空気がしばらく流れる。
10分ほどだろうか、先頭で魔眼で捜索していた坂本少佐が叫んだ。

「見えた!前方11時の方向、高度1500にネウロイだ!」

その言葉に釣られ、わたしもその方角に視線を向ける。
――――たしかにいた、【原作】では本命であったネウロイの姿が。
【原作】から隔離した事実をこの瞬間、わたしは目撃することとなった。

くそ、そういうことか!?

「前衛のバルクホルン、ハルトマンは突撃しろ、
 後衛のシャーリー、ルッキーニはネウロイ前方に回り込め!」

だが、それでやることは変わらない。
坂本少佐の命令が下ると考えるよりも早く体が動いた。

魔力をユニットに注ぎ込み全速で降下、
MG151を構え照準にたっぷり収まる距離まで詰めてゆく。
ネウロイは直前になって、ようやくこちらのに気付いたが、遅い。

わたしとエーリカがネウロイと交差する寸前に息を止め、引き金をゆっくりと引いた
そして、マズルフラッシュに肩に強い反動、発射音の爆音が耳に響いた。

MG151は口径が20ミリと大きく、
しかも連装ゆえに反動も酷い物であったが魔力で強化された筋力はしっかりと反動を抑えていた。

数発に一発の割合である曳光弾が光のシャワーとなりネウロイの背後に降り注ぐ。
低空、そして奇襲の一撃ゆえに鉛弾のシャワーは数秒しか用意できなかったネウロイに打撃を与えたらしく、金属を引きずったような悲鳴を挙げた

さらに再度攻撃態勢に映るべく緩やかに旋回しつつ上昇。
首を後ろに回して様子をみると、シャーリー、ルッキーニが回り込んで逃げ道をふさぎ、
坂本少佐、ペリーヌがネウロイに追従する形で攻撃をしかけており、ネウロイは一方的にボコボコにされている。

このままここで撃墜可能か?
一瞬、そんな言葉が頭に思い浮かんだが、

『くそ、このネウロイは足が速い!』

インカムから少佐の悔しげな音声がもれる。
確かに今はネウロイをうまく叩いているがまだまだ飛んでおり、
しかも、高度が海面ギリギリまで降下したため下方からの攻撃は難しく速度が速いせいで徐々に離されている。

「エーリカ!もう一度いくぞ!」

このままではいけない。
そう思い、再度ネウロイを叩くべく降下、斜め後方から銃弾を浴びせる。
標的が大きいゆえに面白いように当たるがまだ落ちず、低空のため外れた弾が海面に水柱を作る。
苦手な海水を浴びたせいか、ややよろけるがそれでも飛び続けている。

ここまで叩いてもコアはまだ露出しておらず、
それどころか速度はさらに加速しており取り逃がす可能性と、
コアを破壊しない限り再生するため内心で苛立ちと焦りを覚えたが、
ネウロイを通り過ぎて後ろを振り返った瞬間、ネウロイは頭から海面に突っ込んだ。

「コアを破壊しないで堕ちた!?」

エーリカが驚く。
わたしも一瞬何が起こったのか分からなかったが、これは好機であった。
ネウロイが必死に空に浮かび上がろうとしているが、苦手な海に漬かったせいで海面に浮かぶだけで手一杯だ。

『いや、だいぶダメージを受けていたら堕ちたのだろう、
 よくやってくれたバルクホルン、エーリカ。よし皆、ネウロイは浮いているだけだ。全員攻撃!』

それが合図となり、
身動きが出来ないネウロイにわたし達は容赦なく銃火を浴びせた。
命中するたびに連続して白い結晶のような物が飛び散り、ネウロイが悲鳴を轟かす。

そして、一瞬ネウロイから赤い宝石のようなもの、コアが露出。
わたしがコアの存在を認知した瞬間、誰かが放った弾が当たりネウロイは砕け、崩壊した。
懸念事項の実にあっけない最後であった。

「これで……」

これで終わりだ。
後は新手がこない限り帰るだけだ。

『なんだって……っ!』

しかし、インカムを抑えた坂本少佐が驚きの声を挙げた。
いやな予感が走る、可能性としては一度考えた可能性が思い浮かぶ。

『皆聞いてくれ、基地にネウロイが来ている……ミーナ達が迎撃のため間もなく接敵するようだ』

そう、そもそも「囮」はおらずどいちらも本命という可能性を。
【原作】からさらにずれた事をわたしは悟った。




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「すき家」の変化

2014-03-23 20:48:49 | 日常



バイトが大量に辞めたたため、各地でパワーアップ工事中(笑)の中、
こちらでは営業時間を短縮させることで何とかやり過ごそうとしている模様。
ただし店員は大抵1人で2人以上見かけることはなく、パワーアップ工事がいつされるか楽しみです。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヴァルハラの乙女 第8話「変化」Ⅲ

2014-03-22 21:36:48 | 連載中SS

5人の少女と共に空を飛んでいる。
魔法力の保護があるとはいえ高度が高いためやや肌寒く、昇りたての朝日が眩しい。

時刻が約6時半と早めの時間ということもあるが、
出撃前にペリーヌと騒いで疲れたルッキーニ、朝が弱いエーリカなどは欠伸や眼を擦るなど睡魔と格闘している。

「……どう考えても妙だ」

現在坂本少佐の指揮下でネウロイに向かっており、その編成は【原作】と変わらない。
変わっている点といえば宮藤芳佳、リネット・ビショップの2人が始めから待機することになった点だ。
これは、わたしがいざと言う時には2人を出撃することを強く主張した影響である。

そこまではいい。
しかし、問題は【原作】では囮であるはずのネウロイの航路が違うことだ。
通常はロンドンを狙って来る航路をネウロイは通るのだが今回は501の基地へ真っ直ぐ向かってきている。

このネウロイが囮かもしれないとエーリカに言ったが、
考えすぎと言われたように、周囲を説得可能な材料はなく結果【原作】同様の編成で出撃した。

あるいは、もしかすると今自分が向かっているネウロイは囮ではなく、
【原作】では本命であったネウロイが始めからこっちに来ているのかもしれない。

だとすれば、見つけ次第即座に撃墜してしまえば何も問題ないが、
問題はそのネウロイは本体から分離、高速で離脱することが可能で取り逃がす危険性がある。
最大速度がどれだけ出るのか分からないが、【原作】のシーンを見ると時速800キロは出ていた気がする。

「まずいな。いや、待てよ」

となれば、それこそシャーリー位しか追いつけない。
しかし、逆に考えるとミーナ、エイラの2人だけで対応したのとは違い、
ここでは坂本少佐、ペリーヌ、シャーリー、ルッキーニ、わたし、エーリカの6人がいる。

加速する前に撃墜すれば問題ない。
そう、ここで撃墜してしまえば何も問題ない。
だから、今は今出来ることに集中しよう。

「こちら坂本少佐、間もなくネウロイと接触するはずだから、各隊員は周囲への警戒を怠らないように」

インカムから坂本少佐の指示が届くと全員周囲に視線を動かす。
誰も私語を発せず、戦場の緊張した空気がしばらく流れる。
10分ほどだろうか、先頭で魔眼で捜索していた坂本少佐が叫んだ。

「見えた!前方11時の方向、低空にネウロイだ!」

その言葉に釣られ、わたしもその方角に視線を向ける。
――――たしかにいた、【原作】では本命であったネウロイの姿が。
【原作】から隔離した事実をこの瞬間、わたしは目撃することとなった。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする