【EXTRA】海に溶ける、
FateのSSです。
エクストラのサーヴァント取替えもので、
今回はメルブラのリーズバイフェが召還され、聖杯戦争を戦い抜くものです。
「それに、私は努力する健気な娘に弱いんだ。
君のためならば、この身を彼女以外と契約する立場へ堕とすことも許されよう」
パリン、と世界が割れる音がする。
おごそかな声から一転、少しだけお茶目さを見せた声は、輝く天蓋から声の主と共に舞い降りた。
「――さて、こんなことは初めてで緊張するな。
問おう、貴女が私の奏者となるべき人か?」
一つに束ねられた銀髪が砕けた硝子と共に舞う。
黒を基調にした礼服を纏い、髪色と同じ銀の瞳は凪いだ海のように揺らぐことなく、自分の事を見つめている。
そして何より目を引いたのは、彼女が手にする巨大な盾。楽器のような形のそれは、彼女の背丈を超える程の大きさだが、
一人の少女がそれを手にすることへ何故か違和感を持つことがなかった。
まるでその盾が彼女を選び、持つことを許したかのようにさえ思える。
銀色の騎士、信者、調停者。そんな幾つかの印象を思い浮かばせるが、
その全ては清らかで、彼女が守護を司る者なのだと雄弁に語っていた。
――嗚呼、彼女ならばこんなにも弱く、
譲れないものを守れず、ただ抱えてうずくまるしかない自分でも助けてくれるのだろうか。
疼く左手の甲を抑えながら、最後の力を振り絞って彼女の質問に頷いた。