二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

ヴァルハラの乙女 第13話「過去」

2014-07-19 11:46:21 | ヴァルハラの乙女


「ねえ、トゥルーデ。
 宮藤さんとロンドンまで行ってみたら?」

たっぷり朝食を頂き、午前に任務を終え。
ミーナの執務室まで書類を届けに行った際にこんなことを言われた。
というより、何故にそこにあの主人公、宮藤芳佳の名前が出るのだろうか?
しかも、ロンドンまで行くなんて【原作】で何かイベントでもあったか……?

待て、あれか?
郵送できない重要書類。
さらにロンドンまで行かないと出来ない打ち合わせがが幾つかあったはず。
戦う以外の軍隊の仕事を経験させるため、宮藤はわたしの仕事の手伝いでロンドンまで着いて来るのか。

「ああ、宮藤に仕事を教える、という認識でいいのだな?」

「トゥルーデ、貴女ね……働くものいいけど休暇が必要よ。
 貴女と宮藤さんは軍の福利厚生制度で休暇を取らなくてはいけないのよ」

思わずあっ、と声を漏らし気づいたが遅い。
わたしの返答に、ミーナは呆れつつも苦笑した。
そういえば、意外と福利厚生に気を使う軍隊は制度として一定期間勤めたら必ず休暇が出たな。
戦線が安定しているブリタニアではこうして休暇が出るのだが最近は【原作】の事ばかり考えていたから忘れていた。

だが、何故にわたしと宮藤なんだ?
出来れば彼女にもっと親しい人、坂本少佐やリネットで組み合わせ方がいい気がする。

「わたしは別に良いのだが、
 宮藤には出来ればここで親しい人。
 少佐やリネットで行かせた方がいいのじゃないか?」

「私も始めそう考えたけど……少佐やリネットさんは時期がずれているし、シフトの都合上無理なのよ」

む、休暇の日程にシフトの都合か……なら仕方がないな。
休暇、休暇か、そうだな、久しぶりに羽を伸ばすのも悪くない。

「なら仕方がないな。
 で、何時から休暇を取ればいいのだ?」

「出来れば今週中、それも明日からでもいいから取ってほしいの」

ミーナは少し困った顔で御免なさいね、と言いつつ急な予定を伝えた。
しかし明日からでもいいからとは本当に急だな、まあ配置のシフトの都合もあるからやむ得ないな。

「了解した、では明日から宮藤とデートをしてくるよ」

「あらあら、宮藤さんをちゃんとエスコートしてね、トゥルーデ。
 あと、これは休暇申請に必要な書類だから直ぐに書いて私に渡してね」

了承の意を込めて敬礼する。
そして、ミーナから必要な書類を受け取り執務室を後にした。
さて、また書類、書類と、休暇一つにしろ書類を作るのは今では慣れたけど面倒だ。

だけど、それが規則だからやむ得ないな。
さてさて、どう過ごそうかロンドンの休日を……ん、人影?

「おう、バルクホルン大尉、休暇だってな?」

廊下の曲がり角からシャーリーが現れた。
その際相変わらずでかい胸部が揺れたものだから、
一瞬そっちに眼が行ってしまったけど君が何故わたしの休暇を知っているのですかね?

「ああ、そうだがそれが?」
「あーいや、こういって何だが買出しを頼めるかな?」

手短に用件を尋ねると、彼女は手を合わせて頼んできた。
何の用かと思えば買出しか、たしかに基地内にも売店の類はあるけど、
それも限られているから、手に入らないものもあるから仕方ないな。

「別にその程度ならかまわない」

「マジか、いやあ、ありがたい!
 おーい、みんなーいいってさー」

その程度の頼みごとなら、と即答したが……みんなとは?
あ、あれ?廊下の曲がり角からぞろぞろと501の隊員が来るのだが?

「バルクホルン大尉ーお菓子買ってきてー!」
「あの、大尉。その、申し訳ないですが買ってきてほしい書籍が…」
「大尉ー、少し頼みがあるんダ」

一体全体どこから聞きつけたのか、
シャーリー、ルッキーニ、ペリーヌ、エイラといった501の隊員が押し寄せ、口々にお願いを口にしている。

どうやら少なくても、買出しという予定が一つ埋まったようだ。



※  ※  ※



そして週末。
太陽が水平線から出たばかりの早朝に、
基地の入り口で坂本少佐、シャーリー、ルッキーニが
ロンドンに出かけるバルクホルン、芳佳を見送るため基地の入り口に集まっていた。

「いいか、宮藤。
 この間まで民間人だったとはいえ、今は扶桑皇国海軍の軍曹だ。
 その事を忘れず、扶桑皇国の恥とならないように行動するのだぞ」

「はい、坂本さん!」

坂本少佐は休暇だと言うのに芳佳に対して軍人の心構えを説いていた。
しかし、これは自分が付き添い出来ず、アドバイスするしかない坂本少佐なりの心配が現れたのだろう。

「おう、宮藤。楽しんでこいよ!」
「芳佳!お菓子お願い!」
「はい、シャーリーさん。それにお菓子の事は忘れないからルッキーニちゃん!」

シャーリーが芳佳に休暇を楽しむように激励し、
ルッキーニは購入を頼んだお菓子を改めて懇願し、芳佳はハキハキとこれに答える。

これから、初めての海外旅行とも言える経験を、それも同郷の坂本少佐とではなく、
彼女から見てガイジンさんであるバルクホルン大尉と行くのにあまり緊張感は見られなかった。

「バルクホルン、宮藤の事を頼む」
「分かっています、少佐。どうかご安心を」

これなら大丈夫だなと、坂本少佐が内心思いつつ、
今回の足であるキューベルワーゲンの傍に立つバルクホルンに対して改めて芳佳を頼む。
バルクホルンは至極真面目な態度と言葉で、坂本少佐に芳佳をエスコートすることを誓う。

「さて、そろそろだな。
 宮藤、バルクホルンの車に乗れ」

「はい、坂本さん」

坂本少佐に促され、芳佳がワーゲンの助手席に乗る。
車を運転するバルクホルンも運転席に座り、慣れた手つきでエンジンを始動させる。
バルクホルンは坂本少佐と目線を合わせ、芳佳は任せたとの意を込めて軽く会釈した後に、車を発進させた。

「芳佳ー!頼んだよー!」
「楽しめよー」
「宮藤、気をつけるんだぞ!」

ルッキーニ、シャーリー、
坂本少佐が手を振り、声を出して見送る。

「みんなー、行って来まーす!」

対する芳佳も身を乗り出して、後ろを振り返り手を振る。
しばらく芳佳は手を振っていたがやがて基地から遠ざかり、バルクホルンと芳佳は基地を後にした。



※   ※   ※ 
 

 

「バルクホルン、ゲルトルート・バルクホルン大尉だ。
 貴官の訓練には坂本少佐と交代で担当することになっている。
 宮藤芳佳軍曹、貴官を第501戦闘航空団の一員として入るのを歓迎しよう」

芳佳が初めて501の隊員として自己紹介した際にバルクホルンは芳佳に対してこう言った。
初対面で行き成り胸を揉んできたルッキーニや、芳佳の胸のサイズを聞いてきたシャーリーと違い固い対応であった。

そのせいか芳佳のバルクホルンに対する第一印象は、同じカールスラント人のエーリカの性格に、
部隊長でもあるミーナの大人びいた態度と比較すると、真面目で遊びがない『典型的カールスラント人』であった。

また、坂本少佐と共に芳佳とリネットに厳しい訓練を施しているため、
芳佳のバルクホルンに対する印象はさらに『鬼教官』という名が記録された。

加えて、何時も機械を弄るシャーリーに昼寝を楽しむルッキーニにエーリカ。
何をしているか良く分からないエイラに、サーニャと軍の基地にしては意外とのんびりした空気が漂う中、
書類を片手に基地を歩き回るバルクホルンの姿は目立っており、芳佳はよりバルクホルンに対して真面目で堅物という印象を与えた。

「車酔いとかは大丈夫か?」

「いえ、大丈夫です。
 車なんて私達が空に飛んでいるよりも遅いですし!」

ロンドン行きの車中、
バルクホルンは芳佳に車酔いの可能性を尋ねた。
しかし、空母『赤城』による一ヶ月もの航海に耐え、
時速数百キロの速さで空を駆けている芳佳に車酔いなどなく、元気にその可能性を否定した。

「ん、そうか。
 だけど、酔ったら言ってくれ。
 念のためにその準備はしておいたから」

「あははは、大丈夫ですよ。バルクホルンさん」

確かに、バルクホルンは堅物だ。
しかし口うるさく規則規則と口出したりすることはない。
厳しい人であるが、こうして年長者の余裕と気遣いを見せる。

それだけではない。
芳佳はバルクホルンが銀髪紫眼と扶桑では、
中々見られない容姿を持つ、エイラを弄っている姿を見たことがある。

芳佳からするとエイラは美少女に属しているが、何を考えているのか良く分からない不思議さがあり。
そんな彼女を弄る姿はバルクホルンが、ただ真面目なだけの人間ではないのは明白だ。

しかし、それでも芳佳はバルクホルンについて詳しく知っていない。
友人となったリネットと違い、バルクホルンとの関係は未だ上司と部下、教官と訓練生のままだ。

「さて、宮藤すまないが、
 ロンドンに向かう前に少し寄らなければならない場所があるんだ。
 何、30分も掛からない、だから車で少し待っていてくれないか?」

「え、あ、はい!」

と、バルクホルンとの関係を考えた芳佳は、
思考に沈んでいたため、突然の言葉に驚くと同時に、バルクホルンの意外な言葉にも驚く。
わざわざ寄り道をするなど、バルクホルンらしくなく、芳佳は興味を抱き返答した。

「問題ありません、バルクホルンさん」
「そうか、すまないな」

しばらく車を走らせる。
その間、お互い特に話すことなく黙々と時間が流れる。
流れる風景も変わらずにいたが、20分程だろうか。

進路上に樹木と塀に囲まれた、何らかの施設が目に入る。
バルクホルンはその施設に隣接する駐車場に車を入れて停止した。

「すまない、直ぐに帰ってくる。だからここで待っていてくれ」
「はい、分かりました」

バルクホルンは芳佳に車上で待機することを頼むと、制帽を被り車から離れた。

しばらく芳佳は大人しく車の中で待機する。
しかし、好奇心、それにバルクホルンを知りたい、
という欲求が抑えきれず芳佳は座席から立ち上がり呟いた。

「行ってみよう」

そして、車から降りてバルクホルンが通った道を駆ける。
大きな石造りの門を抜けると一面に周囲には延々と墓石が並んでいた。

「……お墓?」

扶桑とは違う形式の墓石が延々と並んでいる。
芳佳は予想外の光景にしばし声を失うと同時に墓場にしては、
まったく同じ白い墓石が並んでいることに違和感を感じ取った。

おまけに、この墓場の奥に船を模した巨大な記念碑のような物が建っており、
欧州の宗教感覚について芳佳は勘違いを起こす寸前であったが、見覚えのある後姿に思わず声を出した。

「バルクホルンさん!?」

バルクホルンだ。
後ろ姿でしか見えないが、
軍服を羽織った栗毛の少女姿は間違いなくバルクホルンだった。
そして芳佳の声に気づいた、バルクホルンが振り返る。

「あ、ああ。宮藤か、
 面白くも何ともないここに来ることはないのに、な」

自分の名を呼んだ人物が芳佳であるのを確認した、
バルクホルンは勝手についてきた事に怒らず、苦笑を以って芳佳に対応した。

「その、すみません……バルクホルンさんの事が気になってつい……」

「さっきのは軍隊の命令ではないから別にいいさ。
 さて、宮藤。突然だが、宮藤は何のために空を飛ぶことを目指したんだ?」

「それは……」

バルクホルンの問いかけに一瞬、芳佳は考え込む。
しかし、実戦を経験してもなお父親との約束。
ウィッチとしての力をみんなのために使うとの約束を守ることに変わりはなかった。

「守りたいからです、この力をみんなの役に立てたらな、と思ったんです」

「そうか、守りたい、か。変わらないのだな。
 宮藤、確かにわたし達ウィッチの力はネウロイに対する切り札だ。
 けど、それにも限界がある。覚えておくのだ。ここにある墓は全部ネウロイとの戦争でなくなった無名戦士の墓だ」

「ネウロイと……」

延々と続く墓石。
この全てがネウロイと戦い、
死んだ者達の墓である事実に芳佳は言葉を失う。

「そして、ネウロイからすれば無防備な銃後の市民との区別なんてない。
 兵士だけでなく、ここには身元が不明な一般市民、大人だけでなく子供も眠っているのだ」

バルクホルンが綴る言葉に、
芳佳は口を閉じて聞く以外のことができなかった。
自らが口にした「みんなを守る」、それがどれほど難しいのか強く感じとった。

そして、それは自分には難しいのでは?
そう自信が揺らぎ、自然と視線が下に下がった所で、芳佳は気づいた。
バルクホルンの背後、船を模した記念碑、否。慰霊碑に真新しい花が献花されているのを。

と、同時に思い出す坂本少佐の言葉。
すなわちバルクホルンはネウロイとの戦争で身内を失っているという事実を。
芳佳の視線に気づいた、バルクホルンが淡々と事実を口にした。

「この慰霊碑はネウロイに撃沈されたヴィルヘルム・グストロフ号に乗った避難民を慰霊するものだ。
 約1万人もの避難民を乗せたこの船に、妹のクリスも乗ってブリタニアに避難しようとしたけど、
 途中でネウロイに襲われ船は沈没……犠牲者は9千人、海事史上最大の犠牲者を出してクリスは今もバルト海の底で眠っている」

「バルクホルンさん……」

バルクホルンは悲しみや怒り、など感情を露にせず事実を伝える。
一見、身内を失ったことは過去の出来事と感情の整理が出来ているように見えるが、
芳佳はそれが逆に身内を失った事実に今も耐えているように思われた。






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オススメSS とある無力の幻想郷~紅魔館の佐天さん~

2014-07-17 07:14:21 | おススメSS

とある無力の幻想郷~紅魔館の佐天さん~

ハーメルンのSSです。
「とあう魔術の禁書目録」はSSの題材によくされています。
その中でも、佐天涙子はメインキャラの友人でしかないですが、

とある系のSSではよく改変ネタで主人公として活躍するパターンがあります。
無能力者であるため、新たな能力を得て成長する話しが数多くあり、
今回は東方の世界へ幻想入りしてしまい、新たな能力を得て学園都市に帰還して……。


突然真面目な表情をするレミリアに緊張する涙子。

「貴女、実は純粋な人間で無くなることが可能だわ」
「……は?」
「簡潔に言うと、貴女はまだ人間で、貴女の腕と眼はまだ本当に貴女のものじゃないのよ」

 涙子は頭の上に疑問符を飛ばしまくりであった。

「私たちの腕を貴女に上げると決めた日、実は霊夢が来ていたのよ」
「霊夢さんが?」
「そう、そして博麗の結界術で私たちの腕と眼に宿る妖魔としての血を封印しながら貴女へ移植した」

 涙子も徐々に理解の兆しは見せているのだが、やはりわけがわからない点がいくつか存在していた。
幻想郷に数か月住んでいる涙子だが向こうの世界とこちらの世界での相違点がありすぎてさすがにすべてを把握できる涙子ではない。
そもそもこの技術自体、そうそう知っている妖怪がいるわけでもないのだから当然だ。

「とにかく、貴女の眼と腕にはたしかに妖怪と悪魔の血があるのだけれどまだその力は封印されているの……そして私たちとの繋がりもまだ貴女の体の眼と腕にある」

封印を施した腕と眼を移植して直、レミリアと美鈴の眼と腕は繋がっている。
確かに佐天涙子の移植は成功しているのだから肉体的なつながりは一切無い、そのはずが見えない何かでまだ繋がっているレミリアと美鈴。
霊夢が人間としての佐天涙子を保つために行った封印が原因だと言っていたのだから間違いは無く、
レミリアと美鈴の二人自身も涙子が人間として生きたいというのならば涙子が死ぬまで片目、片腕の生活ぐらいどうということはないと思っている。
それでもここで封印のことを話したのは間違いなく―――この先、必要になることがあるかもしれないからだ。

いや、涙子には必ず必要になると“能力を使わなくても”レミリアにはわかっていた。




佐天涙子メインの改変SSはいつも腕やら何やら失っている気がする(汗)






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弓塚さつきの奮闘記録外伝 「午後12:00」上

2014-07-13 11:22:54 | 連載中SS


国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
と、有名な文学作品のフレーズがあるが――――ドアを抜けるとカオスであった。

「あは、オバサンなかなかやるね」
「あ゛!?この糞餓鬼がぁーーー!!」

金髪の少年と、
桃色の髪を持つ少女が互いに宝具と魔術をぶつけ合う。
流れ弾が喫茶店の床や机を破壊し、破片があたりに散乱する。
おっかしいなぁ、ボクはヒロインの座を狙う化け猫退治を依頼されたはずだけど。

というか、桃色の少女はもしかしてキャス狐か?
うぉおおお、リアルキャス狐キタコレ!

なんだ!あのけしからんスタイルは!!
アルクェイドさんやシオン、秋葉さんとか美少女は見慣れているけど、
流石かつて帝に魅入られた絶世の美女、キャス狐マジ美少女。

そして、隣にいる学生服の少年はそのマスター、ザビエルだな。
エクストラエンドならば4畳半アパートであんな美少女と同居してるんだよな……爆せリア充。

「あ、あのー喧嘩はその、本当によくニャイから辞めませんか―――って今掠ったニャーー!!?」

なんか足元から声が聞こえるから視線を向けると、いた。
本当にそれは奇妙な生き物であった、なぜなら見た目は動物の属するにも関わらず人語を解していた。

それだけなら、魔術の世界ならばさほど珍しくないが、問題はその造形だ。
2速歩行で人間の服を着て、頭にこれまた人間のような髪を生やしていた上に、その顔が実に奇妙であった。
神の造形ミスを疑いたくなるようなアンバランスな配置、特にその瞳は宇宙人グレイのごとく顔の面積の多くを占めていた。

早い話美少女マンガの大きな瞳をしたヒロインがそのまま三次元に登場したらどうなるか?
そんな思考実験的代物がボクの視線の先に存在しており――――ネコアルクはグロイというよりクリーチャーだった。
それこそ、クトゥルク神話で出てくるようなクリーチャー並に見るに耐えられるものではなく、ボクのSAN値が一瞬急降下した。

体温が一気に低下し、ガチガチと恐怖で歯が鳴る。
心臓もまた恐怖と極度の緊張で暴発寸前で今にも暴発し、その動きを止めてしまいそうだ。

また、冷や汗も流れる。
息もひゅーひゅーと吐くだけでうまく呼吸することが出来ずにいる。

化け物、血を吸う鬼になってもなんて様だ。
今は奴は自分を見ていないがもしもこちらを向いた時、ボクは正気でいられるだろうか?
あの、大きな瞳が自分の姿を捉えた時、果たしてボクは――――。

「弓塚さん、どうかしましたか?」
「…………っ、あ、い、いや何でもない!」

ヤバイ、琥珀さんが呼びかけていなかったら本気であのままSAN値直葬しそうになった。
というか、何でこいつだけ二次元的描写に忠実なんだ!!?

今まで見たことなかったグロイ、
キモイと皆が口を揃えていたけどその気持ちが分かるよ……。
で、リーズバイフェはこれをキモ可愛いと申すとか、訳が分からないよ。
少なくてもシオンよりも芸術のセンスはあるというのに、どうしてアレを好むのか理解不能だ……。

「さて、弓塚さん。あのお二方を止めましょう!」

なんて考えていたら琥珀さんが両手に注射器を挟みそう言った。
……え゛冗談ですよね琥珀さん、あれをボクが止めろと?

「当然じゃありませんか、アーネンエルベを守るために弓塚さんを雇ったんですから」

何を言っている?と言わんばかりに返された。
あ、あのー琥珀さん相手はどちらも神話世界の住民ですよ?
片や古代メソポタの英雄、片や国を傾けた傾国の美女にして最強の魔、勝てるわけないでよー。
リアルに二次元的表現を再現したせいでクトゥルフ生物みたくなったネコアルクを相手にするよりましかも知れないけど。

「まあ、確かに元悪神とはいえ今は正義の味方症候群の肉体を借りているだけの抜け殻。
 弱体化しているよーだが、マジモンの神の類を相手にするのは少しどころかオレの自滅技でもキツイぜ」

気だるげにアヴェンジャーが呟いた。
どうやら、この全身刺繡男は意外とまとものようである。
よし、このままアヴェンジャーと共同戦線を張り逃げてしまおう。

「ケケ、だがオレは別にかまわないぜ」

あ、アヴェンジャー、この戦闘狂がぁー!!

「アハ、大丈夫ですよ弓塚さん、
 赤信号、皆で渡れば怖くない、という言葉があるじゃないですか」

色々一杯な自分に対して、
琥珀さんは向日葵のような笑顔を浮かつつそう励ました。
だけど、琥珀さん赤信号を渡ったら普通に車に轢かれますがな……。

「覚悟を決めろ、吸血鬼。
 アーネンエルベで素敵なパーティーをしようぜ」

某ソロモンの悪魔のような言い回しでアヴェンジャーがニヤニヤと話しかける。
逃げようにもさり気無く琥珀さんが退路を絶っており、前方は子ギルとキャス狐が絶賛戦闘中だ。

あー分かった、分かりましたよ畜生!
英霊2人を張り倒すだけの簡単なお仕事をこなせばいいのですね!

「あーもう、分かりましたよ琥珀さん、行きますよ。
 ええ、行きますからその怪しいお薬を準備しないでください」

「おやおや、違法じゃなないお薬ですから大丈夫ですよ?」

注射器を自分に刺す素振りを見せていた琥珀さんは、
何のことかしら?と人懐っこい表情と共に惚けて見せた。
…………一体どういう薬を注射する気だったんだ?

「カカ、話しは纏まったようだな、んじゃ一番乗りはオレだ」

「ちょ、アヴェンジャー」

隣のコンビニに行って来るのノリで、
ボクが止めるより先にアヴェンジャーが突撃した。
何の考えなしにカチコミするなんて何時も皮肉っている正義の味方同様正気じゃないな!!

「オレにも混ぜさせ…」
「あ゛何ですか?」
「君、邪魔だから」

そして案の定というべきか、
アヴェンジャーが2人に飛び込んだ瞬間、
キャス狐の魔術に子ギルの宝具が飛来し、アヴァンジャーの周囲は粉塵に包まれる。

ボクは粉塵にむせるる。
そして粉塵が晴れた先にいたはずのアヴェンジャーはいなかった。

いや、視線を天井に向けるといた。
アヴェンジャーはカニファンのランサーと同じく天井に突き刺さっていた。

アヴェンジャーが死んだぁあぁぁああ!
というか全身刺繡で無くなっているから衛宮士郎に戻っている……衛宮士郎も死んだ!この人でなし!

「あー何ですかそこの方々、私の喧嘩を邪魔するつもりですかー?」

アヴェンジャーが突撃したせいで、
最悪なことに今度はボクの方にタゲられた。
子ギルも興味津々といった感じで宝具がこちらに向いている。

逃げようにも狭い喫茶店。
ゆえに、前に進む以外道はないのだ――――畜生、やってやる!







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ヴァルハラの乙女 第13話「ロンドンの休日」上

2014-07-12 18:33:15 | 連載中SS


「ねえ、トゥルーデ。
 宮藤さんとロンドンまで行ってみたら?」

たっぷり朝食を頂き、午前に任務を終え。
ミーナの執務室まで書類を届けに行った際にこんなことを言われた。
というより、何故にそこにあの主人公、宮藤芳佳の名前が出るのだろうか?
しかも、ロンドンまで行くなんて【原作】で何かイベントでもあったか……?

待て、あれか?
郵送できない重要書類。
さらにロンドンまで行かないと出来ない打ち合わせがが幾つかあったはず。
戦う以外の軍隊の仕事を経験させるため、宮藤はわたしの仕事の手伝いでロンドンまで着いて来るのか。

「ああ、宮藤に仕事を教える、という認識でいいのだな?」

「トゥルーデ、貴女ね……働くものいいけど休暇が必要よ。
 貴女と宮藤さんは軍の福利厚生制度で休暇を取らなくてはいけないのよ」

思わずあっ、と声を漏らし気づいたが遅い。
わたしの返答に、ミーナは呆れつつも苦笑した。
そういえば、意外と福利厚生に気を使う軍隊は制度として一定期間勤めたら必ず休暇が出たな。
戦線が安定しているブリタニアではこうして休暇が出るのだが最近は【原作】の事ばかり考えていたから忘れていた。

だが、何故にわたしと宮藤なんだ?
出来れば彼女にもっと親しい人、坂本少佐やリネットで組み合わせ方がいい気がする。

「わたしは別に良いのだが、
 宮藤には出来ればここで親しい人。
 少佐やリネットで行かせた方がいいのじゃないか?」

「私も始めそう考えたけど……少佐やリネットさんは時期がずれているし、シフトの都合上無理なのよ」

む、休暇の日程にシフトの都合か……なら仕方がないな。
休暇、休暇か、そうだな、久しぶりに羽を伸ばすのも悪くない。

「なら仕方がないな。
 で、何時から休暇を取ればいいのだ?」

「出来れば今週中、それも明日からでもいいから取ってほしいの」

ミーナは少し困った顔で御免なさいね、と言いつつ急な予定を伝えた。
しかし明日からでもいいからとは本当に急だな、まあ配置のシフトの都合もあるからやむ得ないな。

「了解した、では明日から宮藤とデートをしてくるよ」

「あらあら、宮藤さんをちゃんとエスコートしてね、トゥルーデ。
 あと、これは休暇申請に必要な書類だから直ぐに書いて私に渡してね」

了承の意を込めて敬礼する。
そして、ミーナから必要な書類を受け取り執務室を後にした。
さて、また書類、書類と、休暇一つにしろ書類を作るのは今では慣れたけど面倒だ。

だけど、それが規則だからやむ得ないな。
さてさて、どう過ごそうかロンドンの休日を……ん、人影?

「おう、バルクホルン大尉、休暇だってな?」

廊下の曲がり角からシャーリーが現れた。
その際相変わらずでかい胸部が揺れたものだから、
一瞬そっちに眼が行ってしまったけど君が何故わたしの休暇を知っているのですかね?

「ああ、そうだがそれが?」
「あーいや、こういって何だが買出しを頼めるかな?」

手短に用件を尋ねると、彼女は手を合わせて頼んできた。
何の用かと思えば買出しか、たしかに基地内にも売店の類はあるけど、
それも限られているから、手に入らないものもあるから仕方ないな。

「別にその程度ならかまわない」

「マジか、いやあ、ありがたい!
 おーい、みんなーいいってさー」

その程度の頼みごとなら、と即答したが……みんなとは?
あ、あれ?廊下の曲がり角からぞろぞろと501の隊員が来るのだが?

「バルクホルン大尉ーお菓子買ってきてー!」
「あの、大尉。その、申し訳ないですが買ってきてほしい書籍が…」
「大尉ー、少し頼みがあるんダ」

一体全体どこから聞きつけたのか、
シャーリー、ルッキーニ、ペリーヌ、エイラといった501の隊員が押し寄せ、口々にお願いを口にしている。

どうやら少なくても、買出しという予定が一つ埋まったようだ。



※  ※  ※



そして週末。
太陽が水平線から出たばかりの早朝に、
基地の入り口で坂本少佐、シャーリー、ルッキーニが
ロンドンに出かけるバルクホルン、芳佳を見送るため基地の入り口に集まっていた。

「いいか、宮藤。
 この間まで民間人だったとはいえ、今は扶桑皇国海軍の軍曹だ。
 その事を忘れず、扶桑皇国の恥とならないように行動するのだぞ」

「はい、坂本さん!」

坂本少佐は休暇だと言うのに芳佳に対して軍人の心構えを説いていた。
しかし、これは自分が付き添い出来ず、アドバイスするしかない坂本少佐なりの心配が現れたのだろう。

「おう、宮藤。楽しんでこいよ!」
「芳佳!お菓子お願い!」
「はい、シャーリーさん。それにお菓子の事は忘れないからルッキーニちゃん!」

シャーリーが芳佳に休暇を楽しむように激励し、
ルッキーニは購入を頼んだお菓子を改めて懇願し、芳佳はハキハキとこれに答える。

これから、初めての海外旅行とも言える経験を、それも同郷の坂本少佐とではなく、
彼女から見てガイジンさんであるバルクホルン大尉と行くのにあまり緊張感は見られなかった。

「バルクホルン、宮藤の事を頼む」
「分かっています、少佐。どうかご安心を」

これなら大丈夫だなと、坂本少佐が内心思いつつ、
今回の足であるキューベルワーゲンの傍に立つバルクホルンに対して改めて芳佳を頼む。
バルクホルンは至極真面目な態度と言葉で、坂本少佐に芳佳をエスコートすることを誓う。

「さて、そろそろだな。
 宮藤、バルクホルンの車に乗れ」

「はい、坂本さん」

坂本少佐に促され、芳佳がワーゲンの助手席に乗る。
車を運転するバルクホルンも運転席に座り、慣れた手つきでエンジンを始動させる。
バルクホルンは坂本少佐と目線を合わせ、芳佳は任せたとの意を込めて軽く会釈した後に、車を発進させた。

「芳佳ー!頼んだよー!」
「楽しめよー」
「宮藤、気をつけるんだぞ!」

ルッキーニ、シャーリー、
坂本少佐が手を振り、声を出して見送る。

「みんなー、行って来まーす!」

対する芳佳も身を乗り出して、後ろを振り返り手を振る。
しばらく芳佳は手を振っていたがやがて基地から遠ざかり、バルクホルンと芳佳は基地を後にした。





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おススメSS 【ネタ】【東方×銀英伝(一部)】古明地文里の優雅な日々

2014-07-09 22:39:13 | おススメSS

【ネタ】【東方×銀英伝(一部)】古明地文里の優雅な日々

憑依ネタのSSを紹介します。
しかし、今回は現実から二次元の世界へ転生憑依すのではなく、
東方の古明文理に銀河英雄伝説のヤン・ウェンリーが憑依する、と珍しいSSです。
戦闘シーンは一切はありせんが、どこか型月を思わせるような文章の構成と合わさって地雷要素な設定にも関わらず純粋に楽しめます。

しかし更新速度は非常に遅く、まだ2話だけでエタる可能性が非常に高いですがそれでも今後に期待。



さて。
かつて、古明地さとりが現世に絶望し、ほかのさとりたち同様に自らを失おうとしていた時。
出会った霊魂は、もはや消え去らんとしているところであった。無理からぬことである。
まずもって、死に方が良くなかった。宇宙の只中で、出血多量により徐々に死に至るなど、その時点でかなりの負荷である。

そうでなくとも、このヤン・ウェンリーという一人の優秀な提督には、随分と負担がかかっていた。
彼自身はのらりくらりとかわしているつもりであり、周囲もそうしていると見ていたが、それでも彼のなすべきことは多く、そのどれも大変な労力を要することはいうまでもない。

そしてそもそも、死した魂という枠でありながら、世界を超えてしまったこと。
彼の世界にいうヴァルハラへ逝けなかった時点において、その魂が真っ当に還ることなどありえない。
そして魂というやつは、聖書が教えるほど頑強ではない――。

ゆえにその魂は、さとりへ完全に同化した。
あの歴史と平和と怠惰を愛し、民主制とひとりの養子、
妻と友人たちを守るために戦った若き提督の知恵も記憶も喜怒哀楽もなにもかも──愛という感情すらも、さとりは受け取ってしまったのだ。

ヤン・ウェンリーという個は、喪われた。古明地さとりという個も、完全なものはもはやそこになかった。
そこに在るのは、そのどちらでもある存在。

ヤンの知と精神力はさとりのもつ欠陥を埋めた。
声なき声を時に受け止め、時に無視し、時に頭を掻いてごまかして、
そしてその心情を汲み取って、先を見据えた策を打つ。ヤンの得意分野である。

そもそもさとりが是非曲直庁に入り込んだのは、その知によるところが大きい。
是非曲直庁はつまるところ裁判所と刑務所の運営団体であり、相手がさとりであろうとなんだろうと公平に扱う。
それどころか、それまで嫌われ迫害された分同情的ですらあった。まずそれだけで、入り込む価値が十二分にあった。

もとより、さとりは事務仕事の類を苦にしない。自らの先が長いことも知っている。
ならば、寄らば大樹の陰である。是非曲直庁という大樹を頼るのに、少々の労を惜しむ理由はなかった。

財政改革の間隙を縫って地霊殿管理官の職を掠め取ったのは、さとりの読心能力がうまく働いた結果だった。
そのまま切り捨てるのはいくらなんでも無責任が過ぎると騒ぐ反主流の一派につき、
自らその処理役に名乗りを上げることで、地霊殿への永住権を手に入れた。
幹から離れれば、面倒な権力闘争に巻き込まれることも少なくなる。何をためらうことがあろうか。

旧地獄の妖怪たちとうまく住み分けてみせたのは、宇宙艦隊の変わり者やあらくれものを扱ったという経験が背後にあった。
幸運なことに、流入した妖怪たちの中には、原始的ながら力をもとにした秩序が生まれていた。
そういった手合には最初から意図も何も全て吐いてしまったほうがいいと記憶から引き出したさとりは、うまくその協力を得ることに成功する。

結果として、妹を世話しつつ時折いくらかの竹簡を送り、
それ以外は概ね読書に励む生活という天国がさとりのものとなったのである。








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