二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

第2話 運命へ(改定版)

2012-11-29 23:51:59 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

あれから一晩が経過した。
あの後大人しく自宅に帰ったおかげかいつもの日常を無事に過ごせた。

夜7時のニュースと新聞では現代の吸血鬼事件がにぎわせていたのが、
まだ死亡フラグが健在であることを証明し、表向き親と最近物騒だねーなどと人ごとのように話していたけど。

チキンハートな自分として内心はビビっていました。

しかし、ニュースや新聞を読んだ所生存フラグへの希望をボクはついに見つけた。
報道によると事件の発生現場は大抵繁華街の路地に裏道といった場所であり、今住んでいる住宅街では一件も発生していない。
考えて見れば型月世界の神秘の秘匿とは『別に一般人を殺してもいいよ、でも限度は守ってね。それ以外は基本表に出さなきゃおK』

な感じで聖堂教会を例外に魔術師的外道を積極的に討伐しているとはいいがたく。
実に一般人にとって優しくない仕様であるが、逆にここまで報道されてしまえば神秘秘匿のために容赦なく殲滅することに躊躇しない。

よって、ここまでしでかしたロアが少しでも理性的なら生存のために身を隠す必要があり。
吸血行為も第四次聖杯戦争でキャスターたちが家に押し入ってまでする真似はせず、繁華街でゲリラ的にするにとどまるはずだ。

以上からボクの死亡フラグ回避の道は

『夕方の内に帰る』

『繁華街に寄らない』

『夜は出かけない』

これらを守るだけで十分だ。
いやーよかったよかった、これで一安心。
それに長年の懸念が晴れたせいか、身体が軽い・・・こんな気分は初めてだ。もう、何も怖くない。

・・・む、曲がり角にいるあの後ろ姿は志貴か。
ちょうどいい、この清々しい気分を挨拶と共に彼に表現しよう。

「おはよう!!志・・・」

「う、うわあああああ―――!!!」

「え、えええ!??」

元気よく朝の挨拶をしたとたん、
志貴はなぜか悲鳴を挙げて鞄すら持たずに学校の方向へと走り去った。
解せ・・・あれ、というか道の角からこちら側に出て来たあの金髪の人って。

「むー、余計な手間を取らせてー。あ、貴女は。」

「・・・どうも、お早うございます。」

やっほー、と手を振って来たのでこちらも挨拶する。
どうやら志貴といい、乾といい。自分は運が悪いのか良いのか良く分からないが、
原作キャラとの邂逅フラグが立ちやすく、今度は真祖の姫様と邂逅フラグが立ってしまったようだ。

「ねえ、あなた。あの殺人鬼の知り合い?」

しかも開口一口目に原作イベントについて聞かれた。
整いすぎた顔から表現された表情は『好奇心』といった所だろうか、こちらの顔を覗きこむ。

「えーと、少なくとも志貴とはただの友人で殺人鬼なんてぶっそうな人物ではないですけど」

「・・・・・・ふーん、へー、そうなんだー」

起こるであろう真実を話すわけにいかず当たり障りのない事実を述べたが、
吸血鬼は朱色の瞳をスッと半眼にし、じろじろとボクを品定めするがごとく見つめる。
志貴によって得た感情で表現されるのは『猜疑』といったところだろうか。

アレ、これは・・・もしかして地雷を踏み抜いた?
こっちが『嘘は言ってないが事実を言ってない』なマーボー神父な発言だと見破られた?
まさか本当の事を言ってないから好感度低下、真祖による死亡フラグが成立・・・な、わけないよね、ね?

「ま、いいわ。それよりこれ、忘れて行ったから渡しておいてね。」

こちらの不安を余所にそう言いパッと離れると、
はい、と鞄をこちらに渡しさっさとその場から立ち去ろうとした。

・・・よかった、即座の死亡フラグじゃなくて
後日、ルート分岐でここの好感フラグがなかったせいでタイガー道場行きにならないと言えないが。

「あ、あと。」

くるりとこちらに振り向き。
紫色のスカートが花のように広がり、収まる。
見返る美人というべきか、一瞬二次嫁が三次になってもこんなに素晴らしいのかと感動したが、相手は向日葵のような笑顔で。


「私を殺した責任とってもらうんだからね、って伝えておいてね。」


などと物騒極まりないことをのたまわった。






そんな感じで登校中に原作キャラと遭遇し、
彼女との約束を守るべく学校についてからさっそく志貴の元に向かった。

彼女と話し込んだせいで学校についたのがギリギリだったが、
志貴は授業のために教室に待機しており、却って手間が省けたかもしれない。

「・・・・・・・・・・・・」

問題があるとすれば、恐らく。
と、いうよりどう考えても真祖の姫に遭遇したせいで、
なんだが話しにくい空気を纏っており、どのように話を始めるべきか分らない。

いや、漢は度胸だ。
あ、今はぴちぴちのJKだがここは度胸だ。
うむ、空気を読まずに話しかけてみよう。

「志貴・・・・」

「うわああああ!!」

「うぉ!!?」

こっちの予想に反して随分と反応してきた。
いきなり叫ばれたので思わずびっくりしてしまった。
まあ、それより、

「志貴、鞄。道端に落ちていたか拾っておいた。」

「あ、あああ・・・・。」

顔が青ざめたままおそるおそると鞄を受け取る。

「ところで、志貴」

「なんだ弓塚?」

「金髪赤眼の女性が『責任とってもらうだからね』とか言ってたけどあれはなんだ?」

志貴は聞いた瞬間さらに顔が真っ青になった。
貧血で倒れることもあるから慣れているとはいえ、リアルで血の気が引く顔は見てて面白くない。

はぁ、そうだな。
これ以上朝からシリアスなのは嫌なので・・・・。


「まさか・・・金髪巨乳ヒロインをゲットしたのか?」

「なんでさ!!」


軽―い、冗談を言ったおかげか先ほどまでの憂鬱な空気が取り払われた。
でも傍で聞き耳を立てていた奴、なんだかんだと中学以来の付き合いがある乾有彦にはばっちり聞こえたようである。

「おい遠野!今のどーいう事だ!説明しやがれこの~。」

「まて有彦、説明って・・・・!?」

このこの、と志貴の首をじゃれあうように軽く締め付け。
それに志貴が反論するなどいつものごとく、二人仲良くわいわいと騒いでいる。

うむ、志貴が先ほどまで纏っていた暗い空気は取れたようでよかった、よかった。

『あー、そこのお前ら3人。仲がいいのはいいが授業を始めるぞー』

などと2人を観察していたがここで第三者の介入。
担任のやる気のない声がホームルームの始まりを告げた。

むう、もうそんな時間か。
では何時もの日常に戻るとしよう。






午前の授業が終わり、
がやがやと騒がしくなった教室を後にし。
さっそく『いつも通り』シエル先輩と食堂で昼食を食べに行く。

その間有彦が先輩に積極的にアプローチし、
先輩が軽く流すなどこれまた『何時もの日常』が演出された。

「シエル先輩、カレーが好きなのですね。」

「ええ、それはもう。」

「先輩、ささ、どうぞ。こちらっスよ。」

ボケっと窓の外を見る志貴と、予め有彦が確保してくれた席へ座る。
隣の席にシエル先輩を誘導させるのは無駄に抜け目ない行動と言える。

「なあ、二人ともこの先輩と知り合いなのか?」

「はぁ、おいおい、遠野。朝といい今日は貧血が一段と酷いな。」

「酷いです!!遠野君はもしかして私のこと忘れちゃったんですか?」

あれ?なんて首を傾げる志貴を横目で見ながら手早く蕎麦を啜る。
シエル先輩はガタリ、と立ち上がりウルウルとした瞳で志貴の眼を上目で覗きこむ。
女性にまじかに見つめられてややたじろぎ。

「すみません、どうも自分は忘れっぽくて」

「もう、しかたがないですね」

今度は忘れないでくださいね、と言い再度食事に戻った。
一連の動きは全く特別な意味のある動作でなかったが、こっそり注視していたボクは。
先輩の眼が一瞬だけ光ったような気がした。これもまた原作通りと言うべきか、今のは志貴に偽の記憶を埋め込んだのだろう。
そして、次に起こるであろう原作のイベントは、


『ニュースです。本日明朝―――河原で一連の連続殺人事件と思われる死体が発見されました―――。』


テレビから流れた音声にボクらだけでなく食堂にいた全員が注目する。
それによるとまたもや全身から血が抜かれたらしく、食堂はヒソヒソとその話題について交わされる。
また視線を正面のシエル先輩にずらすと、顔は普通だが眼がなんとなく鋭い輝きを放っている。
一方、志貴は『殺人』の言葉に反応し、椅子から立ち上がり嫌な汗が出ていた。

「おい、遠野またどうした?ま、それよりぶっそうだなおい、夜遊びできねーじゃないか。」

一人空気を読まずに呑気にのたまう人物がいるが、ある意味これも普通の反応かもしれない。

「なあ、弓塚」

「なんだ?」

志貴の不安交じりの問いに蕎麦を食べ終え、お冷やしを軽く含んでからに答える。

「弓塚が見たのは金髪赤目の女性だったんだよな?」

念入りに、自分が殺人を犯した揚句。
相手が復活した現実を確認したいのか朝の件について聞いてきた。
否定したい気持ちは分るが、というか自分がもし志貴だったら同じことをするだろう。

が、事実は事実ゆえに。
それにここで否定した所で意味はないので事実を述べた。

「そうだけど?それがどうした。」

「いや、なんでもない・・・・悪い、俺は先に戻ってくる。」

殺してしまった人が生きている可能性に相当ショックを受けたみたいで、
そう言うなり頭を押さえ、ふらつきながら教室へ行ってしまった。

「大丈夫か、アイツ?」

何時もの事だけどよー、とぼやきつつ志貴を見送る。
シエル先輩は・・・あれ、なんかボクに対して妙に怖い顔をしていたような。

「シエル先輩?」

「へ?あ、な、何でもないですよ。
 それより弓塚さんが見た女性とは金髪赤眼の方なんですよね?
 その方と、弓塚さんはどういう風に会ったのか聞かせてもらえませんか?」

『先輩らしい』口調で朝の出会いについて聞かれる。
が、表情こそ『噂に興味津々な』女学生らしいが内容が内容だけにやっぱり眼が笑っていない。
なんだか、朝といいまた妙なフラグが立ったのでなく地雷な意味で踏み抜いた気分だ。

「ええ、志貴が通学途中鞄を落としたらしく、
 それを拾った女性がボクに自分の代わりに渡すように頼まれたのです」

「そうですか・・・ありがとうございます、弓塚さん」

先輩はボクの発言を聞いて、表面上納得したようだが納得していないようだ。

まぁ、あらかじめ知っている自分は兎も角。
真祖の姫は基本ガイアの戦闘マシーンゆえに感情的な行動などない。
と、いうのが裏の業界の常識ゆえにだろう。

「先輩、それよりも昼休みも終わりそうですし。はやく出ましょう」

「おっと、もうこんな時間ですか。ええ、そうしましょう」

これ幸いとばかりに切り上げを催促し、今日は解散となった。
後、有彦が性懲りなく先輩にアピールしていたが、またまた先輩に流され玉砕した。

「いや、まだまだだ。俺は諦めない、俺は何度でも蘇るのさ!!」

「いや、諦めろよ」





などなどと時間は経過し放課後となった。
中学こそガチの運動部に所属していたが、高校は運動系でも同好会程度のものに所属しているのと。
早期帰宅を学校側が強く推奨したため、早めに帰宅できる喜びと共に校門へと歩いていたら昼食時にさき抜けした志貴を見つけ。

志貴が有明家から遠野家へ引っ越したため、家の方角が同じなので。
一緒に帰ることを提案したら志貴はあっさり承諾した。

・・・もしもの護衛という実に情けない下心が良心を著しく傷つけたが。

そこで有彦が「ラブラブだな~」などと煽ってきたので、
笑顔で今まで告白してフラれた相手の女性の経歴、その様子を淡々と述べたら。
「ちくしょー!!何故知ってるんだぁー!?」と、泣きながら帰って行った。

元男ゆえに、どうしても女子同士の友人関係における習慣に馴染めず。
志貴や有彦のような男子との付き合いが深く、女子同士とあまり深い友達付き合いができてない自分だが。
これくらいの情報は聞けるのさ、有彦君。

というか、おまえが有名すぎるのがいけない。
女子の間では意外と高感度が高いけど、ネタ扱いされているぞ。
次はどんな風にナンパして来るのか、どんな風に告白してくるか楽しんでいたし。

「――――――でさ、門限は7時なんだよね、これが」

「ん、おおう。そりゃ大変だね」

っと・・・いかんいかん、話している最中なのに回想に嵌ってしまった。

「じゃあ、その秋葉さんに交渉とかしてみたのか?」

「いやーそれが、秋葉の奴全然話を聞いてくれなくて・・・」

話の内容は『久しぶりに会った家族とその生活』についてだ。
意外と遊び人貴質な志貴はあまりに厳格に決まった生活に愚痴を零し、それをボクが聞くという形で。

そんな感じで、ただ何気ない会話を楽しみながら暗くなりつつある街の中を歩く。
日々変わらぬ日常、変わらぬ日々、どれもボクにとって満足するもの。

だが、そんな至福の時間も終わりは告げられる。
帰る方向は同じでも場所は違うので分れなければいけない。

「じゃあな、また明日。」

「ん、また明日。」

分かれ道でさよならの挨拶を交わす。
お互いこうして挨拶を交わすことは日常の一部となっているが、
今夜からボクの行動しだいで夢幻として終わってしまうかもしれない。

いや、それだけでない。
ゲームでさえも選択肢しだいで簡単に死んでしまう。
まして今あるのは確かな現実、ゆえにボクが無事でも彼が選択肢を誤ればこうして会えることはなくなってしまう。

「ごめんな。ボクは何もできないけど死ぬなよ、志貴」

ボクは志貴の未来の可能性を知っている。
でも、だからと言って彼に教えること助けることはしない。

これ以上ボクの行動で蝶の羽ばたきが何を起こすか分らないことも確かだが。
第一にボクは巻き込まれて死にたくない、これが我が身可愛さで批難されて当然であることは承知している。

承知した上でボクはもし志貴が死んでしまったならば。
わが身の可愛さのあまりにボクが志貴を見捨てたという事実だけは絶対忘れない。

絶対にだ。

「さよなら、志貴。また明日」

遠くに去りある彼の背中をボクは最後まで見届け。
それからボクは冬の速い夜のせいで月が出つつある中、帰路を急ぐ。

ふと、見上げたお月さまは三日月。
満月とは程遠かったが、

――――その形がこれからの運命を嘲笑う口に見えた気がした。

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ガールズ・トータルウォー~転生魔砲少女の憂鬱

2012-11-27 22:27:20 | 習作SS


『天佑、今まさに我らの手にあり。祖国に誓ってこれを殲滅すべし』


これは連合艦隊が蓬莱島に上陸中であった<人類共和国連邦>の船団を確認した時に発したものである。

人と魔族の未来を掛けた総力戦、トータルウォーは<魔界皇国>による奇襲攻撃からすでに数年。
物量格差で徐々に<魔界皇国>当初の勢いは失い、ついに絶対防衛圏とした領域にまで追い詰められる。

むろん<魔界皇国>はこれに対して総力を挙げて反抗した。
が、いかせん既にこの戦争を左右する航空兵は消耗しつくしひよっ子ばかり。
<魔界皇国>が誇りとする連合艦隊は数にて倍近い戦力を相手とせざるをえない状況。
エリートを自認する参謀達は、どんなにあがいても勝てないことに頭を掻き毟るほかがなかった。

ゆえに、だ。
弧状列島の本土から見て南。
南国の楽園として知られてきた蓬莱島に<人類共和国連邦>が侵攻を開始した時。

<魔界皇国>海軍は一つの決断を下した。
すなわち、局地的制空権を確保した状態で艦隊によって直接脆弱な輸送船団を叩くと。

既に魔界の空の住民である竜種や翼人の優位は発達著しい飛行機械にとってかわられた中。
<人類共和国連邦>の航空戦力は脅威を通り越して畏怖の念を抱かざるを得ないような状態。

そんな中でなけなしの艦隊を突撃させるのは、無謀を通り越して何か。
将兵からは艦隊特攻、艦隊殴り込みなどと揶揄し、自虐するほど。

だが、それも戦場の霧を味方につけ。
当事者たちの義務に伴う以上の努力と幸運を味方につけたことでついに彼らは辿りついた。







ドロドロ、と砲声が海の彼方からか鳴り響く。
同時に闇の中、砲火の光が切り裂きそれは徐々に近づきつつある。

まるで子供の頃、あれほど怖がっていた雷のようであるが。
それが、本当に雷であったならばどれ程よかっただろうか。
それが、本当に魔物だもが率いる艦隊でなかればどれほどよかっただろうか。

名もなき兵士は思った、一体何時からだ。
創造主に愛された我ら<人類共和国連邦>がこのような罰を受けるようなことをしたのは。

口の悪い下士官はこう言った。
そりゃ、おまえさん神様とやらは死の配分も平等だからなと。

責任を負わされた士官らはこう思った。
神様でもなんでもいい、とにかくに現状を何とかしろと。

「ファック、魔女の大鍋だ!!!」

蓬莱島攻略の全権を握っているスミス中将がどうしようもない事態に罵声をあげる。
彼の眼前にはもはや指揮不能な情勢と手の施しようがない現実が広がっている。

もとより撤退作業というものは極めて困難な代物であると理解していたが。
船に人員を積みこむ作業というものは統制が極めて困難な代物であり。

ましてモンスターどもの艦隊襲来の報は管制を逃れ、恐怖と混乱で逃げまとう船が後を絶たず。
結果、怪しげな代物をを一緒くたに煮込む魔女の大鍋のごとく、無秩序が広がっている。

さらに悪いことにただ尻尾を巻いて全力で逃げればいいというわけでなく。
砲身が擦り切れるまで叩きこんだはずの蓬莱島の防衛施設が再度砲火の産声をあげており。
海上と陸上からの挟撃を狙って大規模な攻勢が開始され、その防衛のための殿と支援も必要だ。

「司令!先ほど味方の護衛が全滅しました!!」

「なに・・・?」

確かに耳を傾ければ海の果てから聞こえていた砲声が止んでいる。
これを敵の撤退だと歓喜するのはよほどの馬鹿か楽観主義者ぐらいだろう。

これは単に部隊を統制するために集結を図っているだけであり。
あるいは目標であるこちらとの距離を図り射撃データーを取っているだけだろう。

集結を図っているならば最低でも30分ほどの時間がかかるはず―――。

「発砲炎確認!!弾着来ます!!!」

「くそ、全員対ショック体勢!!」

気休めにしかならないが、幸運を祈りつついるかもしれない神を信じてわが身を隠す。
輸送艦を通信統制用に改造したこの艦では駆逐艦の豆鉄砲でも天国行きは確実な代物。
ましてバトルシップ、奴らが誉とする噂の新鋭戦艦の全力射撃に耐えるなど本当に幸運を祈りざるをえない。

10秒、20秒が静かに経過。
何も起こらないことに未熟な新兵の一人は安堵し、
笑みを浮かべて頭を上げ、そんな馬鹿を罵声しようとスミスは思ったが。

「っく!?」

弾着、衝撃で海面が揺すられ艦が翻弄される。
そして運悪く命中した艦の破片が艦橋に飛び込み、愚かな新兵の脳漿をぶちまけた。

「輸送船<自由>号轟沈!!」

「艦尾損傷!水密区間が衝撃で破られつつある。ダメコン急げ!!」

「敵、駆逐艦戦隊が突撃してきます!!」

次々に報告されるのはどれも悪いもので、阿鼻叫喚の地獄の釜が開きつつあった。
無論これに対してただ指をくわえて待っているわけでなく、義務を果たしている。

しかし、恐らくそれは全て無駄に終わる。

相手はちょび髭伍長の田舎海軍に、規模の割にプライドは異常に高いライミーの海軍と違い。
開戦以来我がネイビーを散々教育してきた最強の海軍、全滅は決定事項だ。

「止めろ!!体当たりしてでも止めるんだ!!」

そして、今度もまた対<魔界皇国>の戦争スケジュールが遅れるのは確実だろう。
再度この地に足を付けるには、共和国が誇る生産性を以ても最低でも三カ月は掛るに違いない。
再び大量産された死体袋に兵士の親は泣き暮れ、本国の政治屋はまた顔を蒼くするだろう。

たしかに戦争は、戦略的に我々が押している。
しかし、戦術的にみればむしろ負けているのはこちらで。

硝煙の香りも知らないイエローペーパーが、
呑気に占領統治における『民族の適切な掃除』や得られる利権を語っているが。
彼らの本国に辿りつくにのに一体どれほどの血の代価を差し出すことになるだろうか?

自分は軍人だ。
政府の言に従うのは暴力装置である軍人の義務だ。

あえて声を大にして言いたい。
もう、そろそろ終わり方を見据えるべきではないか?

だいたい――――。

「敵、航空魔術師来ます!!」

人類の未来と解放のためにやって来た正義の軍が悪魔に捧げれる生贄の役と化しつつある中。
電探をにらんでいた士官がさらなる絶望の来訪を報告し、刹那艦橋は閃光に染まった。

血漿と共に飛び散る人だった部位。
飛び散る破片が散弾となり艦橋内の人員を殺傷し悲鳴が挙がる。
かろうじて艦橋を照らしていた非常灯は消え、明かりは戦場で広がりつつある炎だけ。

炎が照らす先に映っていたのは血の海と断末魔のうめき声。
加えて、艦自体不気味な爆発音を共にして徐々に傾きつつあり。
艦の運命について悪い予告が各部署から艦内通信で届けられるが誰も応じない。

そしてそんな地獄の中、スミスは幸運を勝ち取っていた。
多くの人員が散弾となった破片に切り裂かれ、血の海に沈んだ中。
彼は腕にガラス片を受け、衝撃で背中を打ったことを除き五体は無事であった。

「あぁ・・・」

しかし、彼にはもはや生への執着はない。
耐えがたいほどの虚無感、脱力感が心を支配し。
この事態を招いた責任としておめおめと生き残る気はなかった。

いつも引きつれている部下の声はなく。
砲声と爆音が奏でる戦場音楽を静かに鑑賞する。
不思議なことに休日に聞く音楽のように心が安らぐ。

ふと、顔を横に向け外を見る。

そこは、一方的な虐殺の場で豚殺場であった。
補給物資を積み込んだ艦が爆沈し周囲を巻き込む大爆発や大火災を起こす。
沈みゆく輸送船から兵士が海へと身を投げるが、突入した駆逐艦の機銃掃射で血の海が作られる。
中には砲弾を使うのが億劫なのか、重巡洋艦が体当たりで輸送船を沈めてしまう。

戦艦群は散々空襲を受けて仕返しとばかりに、
鬱憤を晴らすために上陸している部隊へと砲撃を開始。
共和国連邦が多大な努力を以て集めた物資と兵士は消滅しつつあった。

月しか明りがないはずの夜が上陸地点が炎上したことで周囲はまるで昼間のように明るく。
それはスミスが艦橋に散らばる赤い肉の塊に、赤い水たまりが手に取るように分るほどだった。

地獄絵図

この言葉がこれほど似合う情景はなく。
一瞬、自分は実の所死んでおり地獄の審判待ちでないかと疑ってしまい。

直後、視界に映った少女の姿に息を飲む。

月のような金眼に何処までも純白な髪。
野暮ったい、生産性重視の黒い航空兵用の軍服が却って少女の純白を強調する。

だが、頭から突き出ている獣耳が自分たちの敵である魔物である証拠。
魔物の中には吸血鬼を始めとして見た目と年齢が比例しない場合が多々ある。

ゆえに、少女もまたその可能性が十分ある。
それにアレは恐らく自分を攻撃した敵に違いない。
無駄だと分っていても死んだ者、死にゆく者のせめて一矢報いねばならない。

が、アンティーク調の鍵を模した魔法の媒体に乗った少女は美しかった。
スミスは相手が殺すべき敵であることを忘れて呆然と見上げる。

例え見た目ミドルスクールに入りたての。
童話の世界の住民としていそうな少女が戦場の先頭に立っている現実だとしても。

「せよ――――皇国の――――」

おまけにただのひよっ子でなく航空魔術師の指揮官らしい。
地図を投影展開させ、無表情に部隊に指示を下していく様は歴戦の士官のようだ。

いや、正しくは戦闘機械のようだというべきか。
幼い少女に関わらず大の大人でも怯むような戦場で戦う。

これを本国の政府の手先と化したお花畑な市民運動家は喜んで<皇国>の残虐性を宣伝するだろう。
結局のところ自分たちの政府が彼らをそこまで追い詰めたという真実は見ないふり、あるいは知らぬまま。
そのせいで聞いたところ、奴らはずいぶん前から適正がある者を軍に放り込んでいたらしい。

「―――――?」

こちらの視線でも感じたのかふと、少女はこちらを見下ろす。

「―――――」

「な、」

笑っている。
いや、正しくは微笑んでいると言うべきか。
ほぼ無表情ながらもこんな地獄の中で彼女は微笑んでいた。

狂っている、確実に狂っている。
死者を生産し続けるこのクソな戦争の中で笑うなどまともな精神じゃない。
しかもその対象が、思春期の青臭い少女と来たものだ。

もしや、これが今の時代の流れなのか?
だとしたら自分が知らぬ間に世界は随分と変わってしまったらしい。
男は女子供を守るべきと考える自分にとって暮らしにくいものになったものだ。

ところが、どうしてだろうか。
そんな彼女がとても愛しいものと捉えている自分がいる。

ああ、何て夜だ。
こんなにも美しく愛らしい存在がいたとは――――。

それが彼がこの世で最後に懐いた感情であった。


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第1話 始まり(改定版)

2012-11-22 23:31:14 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

諸君、私はウェブ小説が好きだ。
諸君、私はウェブ小説が大好きだ。
諸君、私はウェブ小説を愛している。

な○うが好きだ 理想郷が好きだ はてな○ンテナが好きだ
ハー○ルンが好きだ シル○ェニアが好きだ にじファンが好きだ
裏道○道が好きだ SS速報が好きだ 帝国諜報局が好きだ

自宅で 通勤途中で
勤め先で 学校で
病院で 駅で
車で 飛行機で
飲食店で 電車で

この地上で行われる ありとあらゆる場所で読むウェブ小説が大好きだ

もしもの展開で新たに始まる物語が好きだ
原作では救われなかったキャラが救われた時など心がおどる

アンチキャラを撃破するのが好きだ
悲鳴を上げて 許しを請い、
オリ主もDANZAIでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった

チートオリ主が原作の世界を蹂躙するのが好きだ
恐慌状態の原作ファンが既に自分だけの世界に浸っている作者を何度も何度も罵倒している様など感動すら覚える

世界観設定の甘さを吊るし上げていく様などはもうたまらない
泣き叫ぶ作者が 読者の情けない突っ込みととともに
金切り声を上げる言葉のシュマイザーにSSをばたばたと辞めるのも最高だ

哀れな作者が 稚拙なSSながらも健気にも連載していたのを
ひたすらアンチし作者の心を木端微塵に粉砕すさまなど絶頂すら覚える

アンチに感想覧を滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に書いたSSが蹂躙され 心が犯され殺されていく様は とてもとても悲しいものだ

世界観に押し潰されて殲滅されるのが好きだ
信者に追いまわされ 害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ


諸君 私はウェブ小説を 万人が納得できるSSを望んでいる
諸君 私に付き従うウェブ作家諸君
君達は一体 何を望んでいる?

更なるSSを望むか?
情け容赦のない 糞の様なウェブ小説を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし 三千世界の鴉を萌え殺す嵐の様な小説を望むか?

「 SS!! SS!! SS!! 」

よろしい、ならばSSだ

我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとする握り拳だ
だがこの暗い闇の底で幾年もの間 堪え続けてきた我々に ただのSSでは、ウェブ小説ではもはや足りない!!
 
ウェブ小説を!! 一心不乱のSSを!!

我らはラノベ作者にもなれない半端もの。凡庸なオタクにすぎない
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している
ならば我らは諸君と私で総兵力100万と1人の紳士集団となる

我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう
髪の毛をつかんで引きずり降ろしパソコンを開けさせ思い出させよう

連中に恐怖の味を思い出させてやる
連中に我々のSSを思い出させてやる

現実と電子世界のはざまには
奴らの哲学では思いもよらない小説があることを思い出させてやる

ネットに漂う名もなきオタクの紳士集団で世界を萌え尽くしてやる

「上級紳士より全紳士へ」

――――状況を開始せよ




「などとそんな風に言える状況であったならば。どれほどよかっただろうか」

朝日が差し込む廊下の窓際で思わずため息をつく。
こんな行為などごくごく当たり前の動作に過ぎないが、
窓に映った姿がいやようなく変わってしまったのを自覚せざるを得ない。

ツインテールでまとめた茶色っぽい髪。
憂鬱そうな表情をしているが、可愛らしい顔であることに間違いない少女。
服装は青いリボンを首元に締め、黄色いセーターを羽織っており。


どう見ても型月名物幸運Eのランサー兄貴とならぶアンラックキャラ、弓塚さつきであった。


「はぁ・・・」

どうしてこうなったかは未だわからない。
よくこうした憑依転生系では転生トラックに自称KAMIやらの悪戯がデフォだが。

生憎そのような展開はなく、徐々に思い出す形で気付いたらこうなっていた。
完全に思い出したときのボクの反応は『ひゃっはーー!!憑依だぁーーー!!』とはならず。


「さっちんとか、どう見ても死亡フラグです。本当にありがとうございました。」


と頭を抱えて一晩ほど悩んだが、
フラグが立たないように原作開始時には外出を控えればいいこと気付き。
以後、なぜか中学から同じクラスの遠野志貴、志貴とダラダラとつるみつつ今日にいたるのだが。

「おや、こちらにいましたか。おはようございます弓塚さん。」

「おはようございます『シエル先輩』」

黒髪の眼鏡をかけた『先輩』に挨拶する。
今まで留学生などいなかったはずだが、不思議なことに違和感を感じない。
始め『先輩』と挨拶した時に思わず「なんで青髪じゃないんですか?」と聞きそうになったが。

よくよく考えてみれば自分のやや茶髪な髪はともかく、
青髪や桃色の髪など二次元的表現の一つにすぎないことに遅まきながら気付かされた。
だがそれより問題は『シエル』という名前は間違いなく本編の開始というわけでり。

最近「体内の血を抜かれた殺人事件」がニュースで流れていたので用心して、
夜外に出歩かないようにしていたが、どうやら前世の記憶通りであり死亡フラグ回避的に成功しているようだ。

「遠野君はまだかな?」

「たぶんもうすぐですよ、志貴はいつも遅いですからね。」

「そうですか・・・・。」

中学のころ男女の体格差があったにも関わらず、
高校と比べれば体力がまだまだなかったせいかしょっちゅう倒れ。

当時自分が保険委員長であったためよく、彼を背負って保健室に放り込んだものである。
そのため、彼との間に『名前を呼ぶ』というフラグが立ったが今の所恋愛フラグない、というか立つはずがない。
たぁまぁーにドキッとされるがニコぽなどTS系ヒロインには効かない・・・はずだ。

「やっぱ早く来すぎましたねー」

と、シエル先輩が言いつつ窓から顔を出す。
体をひねるさい胸が強調するように突き出て、
つい凝視してしまうのは女性の身になってもやむえないはずだ。

「どうしましか?」

「いえ、なんでもありません。」

あやうく「バストサイズはいくつですか?」と聞きそうになった。
しかし、フランス人だからやっぱり胸が大きいのだろうか?

「それより志貴が来ましたよ。」

「あ、そうですね。チャオー。」

なにか放っておけない後輩に対して嬉しそうに手を振る。
志貴も不思議そうに首をかしげつつも挨拶代りに軽く手を振った。

「じゃ、先輩。そろそろお先に失礼します。」

「お疲れ様、お昼にまた会いましょう。」

「はい!」

『また』昼に会う約束をして軽く頭を下げ、教室へ向かう。
今日も『いつも通りに』有彦と志貴を加えて4人で一緒に食堂で食べる事になった。

それにしてもあるはずのない植えられた記憶と知ってはいるが、
実に奇妙なものだなと回想しつつボクは教室へと急いだ。








「ここまでは、原作通りか。」

時間は飛び、夕暮れの街中を歩きながらぽつりと呟く。
あの後しばらくして教室で志貴が貧血で倒れ、早退していった

もし忠実に原作通りなら三咲自然公園でアルクウェイドを17分割しているだろう。
だが、この時間帯はすでに遅いのでたぶん今頃遠野邸に回収されたか公園で気絶したままかもしれない。

「君子危うきに近寄らず、買い物を済ませたし、手早く帰りますか。」

買い物袋をガサガサと揺らしながら帰路へ急ぐ。
付近に小さいころよく行った例の公園があり、興味をそそられることは確かなのだが無視する。
ここで何か介入するのが憑依者の特権なのだが、生憎ボクはその気はない。
ぶっちゃけ言うと自分はチキンですし、火中の栗を拾う勇気なんてないので悪しからず。

あれ?

「きゃっ!!」
「あた!!」

少しばかり考えこんでいたせいで人にぶつかってしまった。
こちらはどうとことはないのだが相手は派手に転び悲鳴を上げた。

頭思いっきりぶつけたけど・・・・大丈夫かな。

「あ、す、すみま・・・・・。」

慰謝料や賠償金という単語がぐるぐる頭の中で回転しつつも
まず先に「すみません」と言いおうとしたが、言い終える前に絶句してしまった。

まるで黄金のような髪、
意識がないためうっすら半眼になっていても分る、人外の証であるどこまでも深い紅の瞳。

そして外見、正面から彼女を見ているわけでもないにもかかわらず、
理想的な美女であることが分かり、存在の全てにおいて完結にして完璧で「人であって人でない」人物。


アルクェイド・ブリュンスタッドがそこにいたからだ。


いやなんで・・・・・。いやそもそも前方から来たから分かるはずなのに。

予想外にも程がある事態に思わずパニックに陥る。
前々から疑問に感じてはいたが無意識に認識阻害の術でも使っていたのだろうか?
冷静によく周囲を見れば十人中十人は思わず振り向いてしまいそうなくらい美人さんにも関わらず周りの人間はまるでこちらの存在に気ついていない。

おまけに志貴に分割されたせいで随分弱っているようで肝心な彼女はうんともすんとも反応がなさそうだ。
放置していくわけには・・・・・・・いかないだろうね。

「なんでさ」

ふと、某主夫の口癖をのたまってしまう。
交番に預けようにも見える範囲内にはないので、
ひとまず公園に連れていけばいいのかな、さすがに家は遠いし。

「よし、」

相変わらずぐったりしているが肩を担ぎ、引きずるように運ぶ。
買い物の荷物と合わせて運んでいるせいで運べないことはないが、ややきつい。
でも一つだけ役得な点はある。

おっきい、さすが88のオパ―イ

時々重心を変更するために持ち方を変えるのだが、その際に好きなだけその胸部装甲を堪能できた。
直接手で触れているわけでないが、今は同性だろうがこっそり堪能させていただく。
というよりこのくらいの報酬はあって欲しい、主にボク的に。



「う~ん、ここは?」

「あの、起きましたか?」

あれから約10分、ベンチで寝かしているお姫様がようやく起きたみたいだ。
ボクはというと、傍で暗くなりつつある景色を内心びくびくしながら待機していたけど、
思ったよりはやく目覚めてくれて正直助かりましたよ、ええ。

時々こっちによって来る猫やカラスが全て教授の使い魔かもしれないと思い、
さっさと逃げればいいのにと考えてはいたが、ついつい律儀に目覚めるの待ってしまい今に至る。

「すみません、ちょっとぼんやりしていたものですからぶつかってしまい。」

「え?あ、あれね。いーの、いーの。私も少しぼーっとしていたし。」

あははは、とあっけらかんに笑う。
彼女程の絶世の美人がこうもフレンドリーに話されると何か、こう色々魂がぶっ飛んでしまう。
同性でも思わずクラリと来てしまいそうだ。

「ちょっとバラバラにされちゃったから調子が悪くって。」

「はぁ・・・・。」

何気に「バラバラにされた」と不穏な事をのたまっているが無視だ、無視。

「でも、貴女も気も付けてね、最近ぶっそうだし。」

「いや貴方みたいにバラバラにされる要素はないですから。」

「それもそうね」

このまま会話をしてみたいという欲望にかられるが、時間を見れば既に6時を回っていた。
夜間外出はボクにとって死亡フラグなので急いで帰らせてもらうとする。

「すみません、そろそろ帰るので。」

「あっそう、一般人は危険だし早く帰った方がいいから。」

笑顔で答えるが志貴にやられた傷が痛むのか脇腹を押えている。
後、紅の瞳が暗くなるにつれ動物のように光っており、何だが怖い。

「バイバイ~」

それでも、わざわざ手まで振って見送ってくれた。
知っているとはいえ、まさかあれが吸血鬼だなんて何だが信じられない。

だが、もし今後の展開によっては恐らく二度と会えないだろう。
そしてこの貴重な出会いもいつかは忘れてしまうかもしれない。

けど・・・

「もう一度会えたら面白そうだな。」

かつて遠野志毅と『原作キャラ』としてでなく、『この世界に生きる者』として友達になれたように。
彼女と話し合える日が来たらどんなに素晴らしいことだろうか。

そう思いつつ、既に暗くなりつつある公園を振り返り正直な感想を呟いた。

コメント (2)
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