二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり47

2018-09-14 22:17:03 | 習作SS
帝都南東門界隈。
帝都の中でも一番低い場所にあるこの地区は水はけが悪い。
そのせいで貧民が集中し、はやい話貧民街となっていた。

外見は人間が主導権を握る帝国においてここでは学都ロンデルのごとく、
人種、民族、獣人の坩堝と化しており見るものに多様性と活気を感じさせる。

しかしここは貧民街。
ゆえに見た目こそ多様性と活気があるが、
麻薬に殺人、売春を筆頭に暴力と犯罪が日常世界と化した陰性を帯びたものであった。

そんな街の夜。
唯でさえ夜は一層暗くなる街でひと際大きな光が轟音と共に放たれる。

一部の功名心と火事場泥棒根性を発揮したのを除けば、
大半の住民は余計な義侠心でも発揮すれば自分の命が危ないことをよく知っているのでこの異常事態を無視する。

「ベッサーラ家の根拠地が破壊されたか、
 ジエイタイと二ホン軍はよほどの凄腕の魔道師を有しているのようだ」

そしてそのどちらでもない第三者。
ボウロは感心するように事の成り行きを観察していた。

そもそも・・・。

「ベッサーラ家がジエイタイと二ホン軍を襲撃する、とタレコミを入れたのは自分なのだからな」

つまりこの光景はボウロが仕組んだものであった。
イタリカまで一度進軍したがそこから先に進まず実態が掴めないジエイタイと二ホン軍の実力を測る。
そのためには何らかの形で騒動を巻き起こす事が必要であった、しかも今後の事を考えて帝国を巻き込まずに。

手始めにジエイタイと二ホン軍がこの悪所に拠点を構えてから始めだした、
お人好しな行動を「噂」という形で密かに宣伝し悪所の顔役達に記憶させる。
都合の良いことにジエイタイと二ホン軍は金をばら撒く割には顔役達に上納金を一切収める気はなかったので効果はすぐに現れた。

結果は顔役のベッサーラ家の大敗北。
アルヌスに籠っている異世界の軍隊が有する予想以上の実力を垣間見れるなど目的を完全に達成した。

「ボウロ」

と、ここで暗闇からぬっと人影が現れる。
頭巾をすっぽりかぶっているのでどんな人物か判別できないが、
口調と音声はボウロがよく知る人物のもの、ハリョの戦士ウクシであった。

「ベッサーラの人間が逃げている。
 念のために聞いておくが・・・好きにしていいよな?」

好きにしてよい。
という意味に具体的な内容を尋ねるほど無粋な真似はしない。
特にこの暴力と貧困が同居している帝都南東門界隈では。

「当然だ。
 身に着けている金品に女は全てハリョの戦士たちの物だ」

「・・・分かった。
 ところでいいのか?
 帝都にジエイタイと二ホン軍が拠点を作っている。
 この事実をテューレを通じてあの皇太子に通報できなくもないが」

ウクシが疑問をぶつける。
アルヌスから出てこないせいで、
帝国と奇妙な休戦状態ともいえる中でよりにもよって帝都の中に拠点を作られた。
この事実を無視するのは帝国に与するものとして一応どうかという意味を含ませて問う。

「必要ないな。
 何せその方が都合がよい」

ボウロが断言する。

「我らの目的は帝国の暗部に食い込み浸透、蚕食すること。
 それには帝国は強い状態よりもむしろ弱い方が大変都合がよい――――混乱にこそ我らが台頭しうるのだ」

かつて革命が起こった国はその前段階にひどい混乱、社会不安に見舞われていた。
フランス革命は凶作と重税による閉塞感と社会不安、ロシア革命では終わらぬ戦争による厭戦感からの社会の混乱。

そしてその崩れた秩序から誕生した皇帝ナポレオンにレーニン率いるソヴィエトロシア。
両者は共に秩序が崩れたからこそ台頭しえた。

無論、ボウロにそうした地球の歴史知識はないが、
これまで積み重ねた経験と知識から地球と同じ結論に至り、その歴史的展開を狙っていた。

「それに帝国が弱ることはテューレ自身も望んでいる。
 つまり誰も困る事などないわけだ、帝国自身を除けば」

そう結論付けて嘲笑する。

「なるほど!
 貴様にはこき使われているから、
 文句の一つ二つを言おうと思ったが久々に良い話が聞けた!」

ボウロの回答にウシクが大笑いする。
人間至上主義的な政策を掲げる帝国が弱ることは、
様々な種族が混じっているがゆえに「半端者」扱いをされたハリョからすれば痛快この上ない。

「今晩は気分が良い!
 この高揚した気分を発散しに、
 少し早いがベッサーラの人間を殺しに行くとしよう!!」

言い終わるよりも早くウシクは姿を瞬時に消した。

「・・・行ったか?
 ふん、戦士とやらは血の気が多い」

しばらく人気がなくなったのを確認してからボウロが呟く。
先ほど帝国を嘲笑したのと似たような響きを含ませている。

「だがハリョは使える、せいぜい俺のために頑張ると良い。
 しかし――――さて今後のことだが、生き残るのは俺か?帝国か?それとも門の向こうにある国か?」

いずれにせよ、
帝国、異世界、ハリョ、何もかもを利用してのし上がる。

そんな黒い情念をボウロは内心で吐露した。




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【予告】ヴァルハラの乙女 第29話「黒猫の夜」

2016-08-31 22:57:12 | 習作SS

「———————————————」

月光を背に雲海を上を銀髪の魔女が飛んでいた。
夜間飛行は昼間と違い、視界が効かず距離感覚が掴めないため、好んで飛ぶ魔女はいない。

しかし彼女はその例外に属する。
頭部に光る魔導針がネウロイだけでなく己の位置を常に把握し続けているゆえ、
例え月夜がない夜でも飛ぶことが苦とならない。

彼女の名はアレクサンドラ・ウラジミーロヴナ・リトヴャク中尉。
501ではサーニャと呼ばれている彼女には秘密がいくつかある。

例えば固有魔法の「全方位広域探査」
そして訓練で習得した魔導針で同じナイトウィッチ同士で通信を交わし合っている事。

今は披露する機会があまりないが、
ネウロイが侵攻する前まではウィーンで音楽を学んでいたから歌が上手な事。
料理も得意でオラーシャのお国に料理であるボルイシチだけでなくケーキだって作れる事。

どれも501の皆に話したいが、
サーニャ自身も自覚している引っ込み思案な性格。
そして主な活動時間が夜間哨戒に飛び立つ夜と早朝に限られているから、話す機会もあまりない。

例外はエイラ、それとエーリカ・ハルトマンである。
さらに他の例外と言えば・・・。

『こんばんわ、サーシャ』

突然男性の声がサーニャの耳に届いた。

「こんばんわ、ビック・ガン」

サーニャはそれに驚かず、
魔導針で声の主の位置を確認してからいつも通りに挨拶を返した。








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【予告】ヴァルハラの乙女 第28話「魔女達の後始末」

2016-07-31 22:21:59 | 習作SS

「ふぅ・・・」

ペンを置き、
ミーナはようやく終えた安堵から息を吐いた。

しかし、絶え間ない頭脳労働と、
同じ姿勢で長時間ペンを握って書類を処理していたため、
頭脳と体が疲労の声を叫んでおり、ミーナは力を抜き椅子に背を任せる。

「何とか間に合ったけどもうこんな時間なのね・・・」

窓の外を見れば既に太陽は半分以上水平線の彼方へ沈んでおり、暗闇が世界を包み込みつつあった。

「夕食、食べ損ねたわ」

腕時計の時刻はとっくに夕食の時間は過去のものであると表示しており、
仕事に没頭していたから感じなかったが、今になって空腹をミーナは感じ始めた。

「やあ、ミーナ。
 夕食を持ってきたぞ!」

久しぶりに自分で作ろうかしら、
そう考え始めた時に坂本少佐が部屋に入室してきた。
手にはバスケットを抱えており、香ばしい香りが漂ってきそうだ。

「態々持ってきてくれたの、美緒?
 丁度お腹が空いたところだから助かるわ」

「何、ミーナのお陰で我々は安心して戦えるからな。このくらいするさ」

「ふふ、ありがとう」

善性を帯びた笑みを浮かべる坂本少佐にミーナは微笑ましく感じる。
ふと、ネウロイと戦うよりも困難な軍官僚との戦争で幾度も挫けそうになった時。
不安を感じない彼女のこの笑みに何度も救われた事をミーナは思い出す。


















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【予告】ヴァルハラの乙女 第25話「パスタ娘の悪戯」

2016-04-20 23:20:23 | 習作SS

バルクホルン、シャーリー、そして芳佳が食堂で夜食を取っている中。
わずかな明かりしか灯していない格納庫に小さな人影が動いていた。

より具体的に描写すると日に焼けた肌、
短いツインテールに縞パン…ではなく縞ズボンを履いた少女が格納庫で人を探していた。

「シャーリー?
 ねえ、シャーリーいないのー?」

501で最も年少のルッキーニだ。
彼女もまた小腹を空かして消灯時間に起きてこっそり夜食を食べた人物である。

そのまま寝る気にはなれず、
いつもなら格納庫でユニットの整備をしているシャーリーと遊ぼうと、
格納庫に来訪したが食堂にいることを知らずルッキーニは探し回っていた。

「シャーリーがいないなんて…。
 まだ眠くないのに、もう、つまんなーーい!!」

天井までよじ登って探してもシャーリーが見つからず諦めたルッキーニが駄々をこねる。
ミーナがいれば子供は黙って寝る時間と諭すような時間帯であったが、
昼間や夕方に寝た分まだまだ元気なルッキーニは退屈していた。

「あーこうなったらサーニャと遊ぼうかな…。
 でもサーニャの夜間哨戒が終わって戻ってくるのは朝だしなぁー」

格納庫の梁の上に寝ころびながらルッキーニが呟く。
夜に活動しているのは基本サーニャ・V・リトヴャク、サーニャだけだ。

実のところルッキーニとサーニャとの接点は割とある。
夜遊びの時間と哨戒のために夜の格納庫で待機しているサーニャとの時間が同じで話す機会があるからだ。

シャーリーと違って大好きな胸は薄いが、
それでもシャーリーと違う優しさを持つサーニャのことをルッキーニは好感を抱いていた。

「退屈だなーーー」

寝がえりし、呟く。
周囲に面白いことや、面白い事を起こしてくれる人物はいない。
その事実を享受しつつ、しばらくルッキーニはぼんやりと時間を過ごす。

しかし、時間が5分進んだ時。
ルッキーニはこの退屈な時間を乗り越える策を唐突に閃いた。

「そうだ!
 悪戯しちゃおう!」












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【予告】ヴァルハラの乙女 第24話「主人公の観察」

2016-04-03 23:25:45 | 習作SS

「足が痛い……」

己の欲望を満たした代償に朝から海軍仕込みの水練、
さらにそれ以降の地獄の扱きですっかり筋肉痛となった宮藤芳佳がよろよろとした足取りで歩いていた。

時刻は間もなく消灯時間で後は寝るだけの態勢であったが、
いつもより激しい運動をしたためか小腹を空かせた芳佳は夜食を頂く。
海軍用語でいうところのギンバイをすべく食堂に向かっていた。

「うーん、ご飯はもうなかったはずだし。
 乾燥した麺もこの間に切らしちゃったらパンかな…?」

空腹が脳を刺激させ独り言が出る。
欧州ではまず手に入らない扶桑の米は備蓄こそあるが、
今日炊いた分は既になく、この時間から炊き込むには時間が掛かり過ぎる。

素麺やうどんといった麺類も夏という季節ゆえに消費量が激しく、
備蓄を切らしてしまい、次の扶桑からの補給待ちとなっている。

だから芳佳はパンなら沢山あるしサンドイッチにでもしようか、
と思いながら食堂のドアに手を付けた時、先客がいることに気付いた。

「誰だろう?」

ドアの向こうから人の気配を感じる。
どうやら自分と同じことを考えている人間がいるようだ。

「……もしかしてミーナ中佐かな?」

隊員の行動を規則規則と縛り付けることを好まないミーナだが、
少し前の夜食で騒ぎがあり、自粛するように強く要望したミーナが見に来たのだろうか?

そう思い、食堂に入らず回れ右で自室へ戻って素直に寝るべき。
と頭の理性が訴えたが、

「……お腹、空いたなぁ」

それ以上にお腹が空腹であるとの肉体的な悲鳴を前に芳佳は屈した。
だから大丈夫、きっと隊長は理解してくれる、だから大丈夫。
と自分に言い聞かせながらドアノブをゆっくり回しそっと食堂を覗いた。

「カレーホットドック、
 それにホワイトシチューなんて豪勢だな!
 いやー感謝感謝、ユニット整備だけじゃなく夜食まで作ってくれるなんて恩に着るよ!」

「そこまで感謝する必要はないぞ、
 ソーセージは焼いてパンに挟む、
 シチューは缶詰のを温めただけだから基本手抜きだ」

そこには意外な人物たちがいた。
バルクホルンとシャーリーであった。















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