バルタン星人の奇妙な野望
ウルトラマンのバルタン星人とGATEのクロスネタSSです。
種族が滅亡する原因となった事故のせいでウルトラマンがいない宇宙。
すなわち銀座に門が開き、バルタン星人が特撮の悪役として描かれている世界に漂流。
人類が生まれる前から地球に暮らし、
そして生まれてからは人間社会へ溶け込んで密かに暮らしていたが・・・。
『ああ、もう一ついいかな?』
ぎょっとした。
いつの間にか、議場の端に何かがいたのである。
空いていた席に座っていたのは、異形だった。
バルタン星人。
日夜議論されていた問題の一つが、
何にも気づかれず、誰にも気づかれずに足を組んで座っていたのである。
議員たちは騒然となった。
彼らは自分が腰かけていた席から動けないでいた。
バルタン星人のせいではない、彼らの身体自体が固まってしまっているのだ。
喉がからからに乾いていく。
口がうまく動かすことができない。
嫌な汗がふつふつと沸き上がっていく。
『緊張しているな、……まあ、無理もない』
そう言ってフォッフォッフォッフォと笑う。
勇気のある控えていた警備員たちが議員を後ろにやり、自分を楯とする。
警棒を構え、対峙する。
バルタンに動きはない。
椅子に座り足を組んだまま、人々の姿を眺めている。
『……皆さん随分とお疲れのようだ。
今日わたしがここに来たのは、そんな君たちの懸念を一つ払拭してあげようと思ってね』
ゆっくりと、バルタン星人が立ち上がる。
警備員たちが身構える。
『国会への召集の日、私も参加させてもらおう。
そこで私と、君たち地球人との間柄について決着をつけようではないか。政治的に、完全に』
一同は呆然と立ち尽くしている。
不気味な、バルタン星人の笑い声だけが議会の中でこだましている。
バルタン星人の姿が、光を伴って白くなっていく。
そして、彼の姿がそこから消えたのだった。
『ああ、言い忘れていたが、サプライズゲストを呼んである。楽しみにしていてくれたまえ』
そう不吉な言い分を残して。