二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

続いたネタ44 GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり

2018-02-27 06:44:09 | 連載中SS

続いたネタ44 GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり


本稿は1966(昭和41)年に公開された「牧野侍従日誌」(牧野伸顕内大臣備忘録日誌)を抄録したものである。
今の世界と異世界の両方を征服すべしと上奏したと言われる「嶋田上奏文事件」に対して政府及び関係者の同意を得て公開を決定。

本稿においては日本政府が公式として採用する注釈付き、及び新仮名遣い版を採用した。



昭和20年8月10日 快晴。

早朝より銀座方面から宮中まで騒ぎが聞こえる。
各方面へ問いただすが不明確な回答のみが返ってくる。
やがて陸軍省より陸軍大臣の代理として栗林中将が参内す。

以下問答。

栗林「恐れながら陛下。
   詳細は不明ですが、
   今まさに帝都で戦争がはじまりました。
   陸軍省でも各人は武装し対抗している最中であります」

(註:宮城を挟んで銀座とは反対側の市谷本村町方面にも帝国軍の一部先遣隊が進出しこれと交戦中であった)

主上「何と」
   
主上、絶句される。
元寇あるいは薩英戦争以来の本土での戦争という予想外の回答ゆえに。

主上「嶋田総理は無事か?」

栗林「分かりません。
   陸軍省からの問い合わせにも回答はなく、
   伝令を出して安否の確認を急がしています」

(註:この時霞が関一帯は銀座から逃れる大量の避難民。
   加えて追撃してきた帝国軍が入り混じって混乱状態になっていた。
   首相官邸では警視庁の特別警備隊が決死の防衛戦を展開している最中であった)

主上「わかった。
   軍は直ちに事態へ対処せよ」

栗林「御意」

大元帥より命下る。
しかし事態は早急に悪化し二重橋前に臣民殺到す。

主上「門を開けて直ちに宮城に収容せよ。
   これは朕の命―――――すなわち勅命ぞ」

右往左往する宮中にて勅命下る。
宮内省の職員総出で避難誘導を開始する。
歩ける者は田安門を経由して後楽園方面へ脱出。
負傷し身動きが困難な者は近衛連隊の兵舎へ収容す。

やがて西洋の騎士。
あるいは羅馬軍のごとき軍勢が隊列を整えて宮城を包囲。
近衛歩兵連隊、皇宮警察が宮城と臣民を守護すべく配置につく。

主上「朕は出る」

私「おやめください、危険でございます」

栗林「陛下、どうか御文庫へ」

(註:御文庫とは防空壕のこと。
   また栗林中将がこの時点で宮城にいた理由として、
   近衛師団長がワイバーンに跨った騎士のランスチャージで串刺しにされて戦死したため)
   
主上「どこに行っても危険だよ」

陸軍の軍服を纏いし主上、颯爽と白馬にまたがる。
護衛の近衛兵、及び中将と私も慌てて続く。

石粒、矢弾が雨のごとく降り注ぐ中。
近衛歩兵、警察の戦いぶりをその目で見られる。

主上の存在に気づきし臣民。
士気、大いに高揚し力戦奮闘す。

やがて横須賀より飛来したわが軍の回転翼機。
及び攻撃機が敵軍をその火力で薙ぎ払う。

栗林「総員着剣、突撃せよ!」

栗林中将。
好機逃さず突貫突撃を開始。
銃剣の槍衾に敵軍はその陣形を崩され、敗走。
眼前で開幕されし一大戦舞台と御味方勝利に万歳の三唱が宮城に木霊する。

主上「かのヴェルダンンの戦いもこのような物であったのだろうか?」

しかし主上。
未だ蛮声に硝煙、血と汗の匂いが立ち込める戦場にて、
皇太子時代に今は亡き英国王ジョージ5世に勧められ視察された戦場の名を小さく呟かれる。

顔色悪し。



昭和20年8月11日 晴れ

各方面より帝都に兵力が集まる。
帝都にこれほどの兵が集まるのは関東大震災以来である。
市中に飛び交うデマなどを急ぎ取り締まり、沈静化を図る。
辻大臣が言うに良くも悪くも商魂逞しき人間はこの機会を利用して商売している模様。

午前10時、
嶋田総理参内。
疲労の色が目立つ。
しかし昨晩に続いて早急に奉上すべき案件が発生した模様。

以下問答。

主上「半世紀以上先の帝国・・・であるか?」

嶋田「より正確に表現すれば帝国が滅び、
   一度やり直した未来の日本でございます」

俄かに信じがたき事実が判明す。
かの銀座に現れた『門』の向こう側は異世界であるだけでなく、
異世界で立つもう一つの門の向こうには半世紀以上先の日本が存在するとのこと。

嶋田「今後の方針として向こう側の日本とは対話と交渉。
   ゆくゆく先の銀座事件の首謀者に対して共同に当たりたいと考えております」

(註:日本政府はこの時一連の出来事を『銀座事件』と命名した)

主上「それは内閣の総意か?」

嶋田「まさに」

以後、二三のやりとりをし、嶋田総理は退出す。

主上、午後より執務の合間を縫って玉音放送のため自ら推敲をはじめらる。
関係部署との交渉、銀座事件の後処理等で宮内省は徹夜が確定する。

主上より職員に対して恩賜の煙草、及び那須の蜂蜜が下賜される。

一同感激す。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おススメSS 何も銑十郎元帥

2018-02-22 01:39:11 | おススメSS

何も銑十郎元帥

架空戦記。
というIF歴史改変小説と評した方が的確かもしれません。
何せこうした作品では戦争はお約束である上に戦闘描写を掲載するのは必然ですが、
最初から今に至る最後まで政治、外交ターンで辛うじて戦争があっても終わった後の描写。

という徹底ぶりで、
派手な戦闘も特になく(何せ戦車の「せ」も出てこない)
飛行機の「ひ」は辛うじて空軍設立を検討云々で出ただけで、
よく転生系SSで出てくる品質改善やら技術革新による先取り云々もまったくありません。

このようになろうに掲載されている小説としてかなり異色でありますが、
当時の日本の政治状況、政党に選挙といった七面倒臭い案件をきっちり丁寧に書いてあり、
それが戦争、あるいは戦闘シーンがなくとも読み手に対して十分すぎる説得力を与えています。

特に自分が感心したのは以下のやり取りです。

「渡辺総監、私はね。空軍には陸軍の言う事を聞く存在でいてほしい。
 つまり統制を求めているのだ。時期はともかく、将来的には陸・海・空の三軍体制になるだろう。ここまではよいだろうか」

「当然ですね」

「…しかしだな、ここで問題が出てくる…今の憲法のどこに、空軍の存在が書かれている?」

「あっ」と寺内が声を上げ、あわてて周囲を見渡すと声をさらに潜めた。

「大元帥たる天皇陛下が陸海を統帥する。
 ならば空軍だけが統帥権の枠外だとでもいうのか。
 これはいかにも都合が悪い。
 バロン・滋野を考えてみればわかるが、戦闘機乗りには、陸海のそれとは違う独自の気質がある」

「法的に問題なしという結論が出たとしても、納得はせんだろうな」

寺内が渋い表情で自分の頭をなでた。
あえて空軍のみを名指しで違憲と言う馬鹿もいないだろうが、
同じ命を書けるのに自分達だけが書かれていないとあっては面白くはないだろう。
天皇機関説問題で批判を受けた渡辺は「その問題には触れたくない」といわんばかりに腕を組んで黙り込んでいる。
それを見て林はさらに続けた。

「とりあえずは航空総監という形で様子を見ようと考えている。
 跳ね返りの戦闘機乗り上がりの幹部を抑えられるのは、東條ぐらいのものだろう。
 無論、将来的な空軍創設を取りやめたわけではないというのは理解してもらいたい」

「しかし、型にはまらないからこその戦闘機乗りではないのか?
 東條流のやり方は航空部隊の実力と士気をそぐことになっては、本末転倒ではないか」

「陸軍中央の意向に従わない空軍こそ、意味がないのだ。
 海軍の連中を包囲して国防方針の策定や軍事作戦において陸軍の主導権を確立するという当初の目的にも反する…ということではどうだろうか?」

あえて「陸軍の利益」を前面に打ち出す林に、寺内は一も二もなく賛成を表明し、
黙り込んでいた渡辺は苦笑いを浮かべた。この男、いつの間にこんな立場の使い分けが出来るようになったのやら。

「陸相…いや、総理。つまり貴方は将来的に憲法改正を視野に入れておられるのか」

渡辺の問い掛けにぎょっとした表情で目をむく寺内とは対照的に、林はにこやかな表情で髭をねじるだけであった。


もしも空軍という独立軍を新たに作れば、
陸海軍のみを対象とした明治以来の憲法の範疇から外れた存在になり、
それが天皇機関説と同様に政治問題として国家を揺るがしかねない点となりうるという指摘。
さらにそれを踏まえた上で神聖不可侵と化した明治憲法の改憲を考えるなど普通のドンパチだけの架空戦記では思いつかない話です。
そこに至るまで少なくとも「戦記」を読み込みだけでなく戦前の「政治文化」を詳しく読み込む必要があるのですから。


ぜひ見てください。




余談ですが作者の言葉を借りれば史実日本で内閣を作ろうとすると、

・厄介なのは陸軍だけだと思った?残念、内務省も一筋縄じゃ行かないんだよ。

・なお外務省と海軍さんにも魑魅魍魎がいっぱいなんだなこれが。陸軍以上の●ガイだっているらしい。

・商工省や農林省は、「私有財産?なにそれ食べ物?」という母なるモスクワの本家が裸足で逃げ出すアカから、
 「国なんてなくてもいいんだよ」という米帝真っ青の自由放任論者まで多種多様な人材を取り揃えております。

・そして結局は財布を握る嫁さんと大蔵省主計局には勝てないんだなこれが。

・政党政治は崩壊したけど、政党は健在。
 社会主義政党から国粋主義政党まで多種多様!
 彼らの後ろには国民がいるから無視したらえらいことになるよ!
 そして議会でごねたら予算案一つ通らないんだって。

・社会主義かぶれの新聞や知識人は一年中悪口しか書かないし、言わないぞ!

・経済界には米帝自由主義全盛時代以上の環境で勝ち残ってきた怪物がわんさかいるよ!
 (なんせ独占禁止法も労働三法もない時代)増税?ハッハッハ!…あ?もしもし政友会(民政党)さん?
 ちょっとこっち来てくれる?(ほんま財界は伏魔殿やでぇ…)

・さあ、君もこれらを全て踏まえたうえで、好きな内閣を組織して第2次世界大戦に臨もう!

というムリゲー(白目)状態だそうで・・・。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おススメ書籍 「砲兵」から見た世界大戦: ――機動戦は戦いを変えたか (WW2セレクト)

2018-02-20 00:25:39 | おススメ書籍




こうした戦記を扱った本では戦車や歩兵の視点から見たものが多いですが、
敢えて砲兵というある種地味な兵科から過去の世界大戦について語った挑戦的な一冊です。

通説では第一次世界大戦末期に誕生した戦車こそが陸戦を支配した。
と言われていますがその認識に対して具体的なデータからむしろ砲兵の方が功績が大きいと論じています。

例えばイギリス軍が第二次世界大戦中の戦車喪失要因は北アフリカ戦線でドイツ軍の対戦車砲に40.3%、戦車38.4%。
と、拮抗していますがこれがイタリア戦線では対戦車砲で16%、戦車12%、間接砲撃・空襲他で42%と大きく変化しています。
そしてノルマンディ上陸作戦から始まる北西ヨーロッパ戦線では対戦車砲22.7%、戦車14.5%、間接砲撃・空襲他40.7%。
などと戦車同士の対決よりも砲兵による砲撃にそれ以外の要因に求めることができるとできます。

では第二次世界大戦初期の機動戦、
すなわち電撃戦の成功は何かといえば「お互い前世界大戦並の砲兵戦力を有していなかった」ことに尽きます。
さらに技術的に砲兵の早期に展開する能力、すなわち「無線一本で砲撃を要請できる」体制に未だなっていなかった上に、
砲兵自身の機動力の低さもあってフランスでの華やかな電撃戦、北アフリカでの巧妙な駆け引きが成立したのですと論じています。

本書では砲兵の歴史から始まり、
第一次世界大戦で塹壕を砲撃で如何に突破すべきか試行錯誤する様子。
さらにその後各国の砲兵ドクトリンの航跡を丁寧かつ詳細に描写しておりお値段以上の価値があると思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おススメSS 地球教勝利END

2018-02-14 07:07:49 | おススメSS

地球教勝利END

銀河英雄伝説では定番の悪役を割り振られる地球教。
銀河帝国、自由惑星同盟地、フェザーンのいずれかに転生者が割り振られることはあっても、
地球教徒側への転生者は華やかさがないこともあってほぼ皆無という不人気ぶり。
そんな中でこのSSはタイトル通り「もしも地球教徒が勝利したら」という一発ネタです。

自由惑星同盟を乗っ取った地球教が銀河帝国を滅ぼし宇宙の首都を念願の地球への遷都。
これで宇宙の平和が訪れるがそれはジョージ・オーウェルが描いた極端な監視社会の始まりであった。

地球教の正しさを立証すべく歴史の編纂作業、ねつ造を開始。
一般人が有する歴史的な記録は全て没収、逆らう人間は全て抹殺という恐怖政治。
銀河は暗黒の歴史に包み込まれたが同時に諦めの悪い欲に溺れた3人が密かに暗躍をしていた・・・



「本当に最悪だね」

平静を装ってそう口には出したが、じつのところ、自分の気分は高揚していた。
ここで働くようになってから、ド・ヴィリエ一派の活躍を新聞や立体TVで知ることが、ほとんど唯一の楽しみとなっている。
こうした勢力が存在するということ自体が、自分にとっての喜びであり、その活動を知ることが地球教に対する鬱憤晴らしなのだ。

「だろう?」

しずかな怒りを堪えるような態度でセレブリャコーフがそう言った。
同盟軍による悲惨な殲滅作戦をその目で見てきた彼はすっかり反抗心というものが折られてしまい、
地球教を否定するなんてことは考えるだけで身の毛がよだつ所業であるらしい。
彼は身の安全が保障されるならどのような扱いを受けてもいいから、
何も変わってほしくないと強く願っており、そういう考えを持つ恭順者は多い。

しかし地球教に対する反発
(面に出したら宗教警察に捕まってどんな目にあわされるかわからないので絶対にださないが)
を抱えているにもかかわらず、自分は彼らに同情的である。
納得できなくても感情的に彼らの思いに共感できてしまうのだ。
あまりにも途方もなく完璧な方法で、一切の反撃を許さず。
まるでこの世の真理を司る神や悪魔といった超常的存在が本当に地球教に偉大なる加護を与えているのでは、

と、思わずにはいられないのである。

だが、仮にそうだったのだとしても、人間は神や悪魔を轢殺し、
人間の世界を作ることができるはずだ、と、自分は信じたいのだ。
徹底的に管理され、同じ仕事を繰り返し、時間の感覚が曖昧となり、
時として自分は生きているのか死んでいるのかといった疑問さえ抱くことがある状況が打破される日が遠からずくると信じたいのだ。

銀河帝国の学芸省で権力者の都合の良い歴史家をやっていた頃、幸福であったとは言うまい。
愚かしい貴族に媚を売り、あほらしい命令に忠実に従い、
それでろくな成果をあげることができなかったら自分のせいにして激しく怒り狂う貴族どもに対して、ストレスを多く溜め込んでいた。
しかしそれでも、自分というものを感じることができていたはずだ。自分は人間なのだと思うことができたはずだ。だが、今の自分は……!!

自分は都合の良い道具ではないはずなのだ。
いや、都合の良い道具であったとしても、自分は人間であるはずなのだ。
生きているはずなのだ。休日に自由に街中を散歩し、すれ違った人間と挨拶を交わして世間話を興じ、
馬があえば友誼を結び一緒に酒場で飲みあって連絡先を交換する。
そんなありふれた日常は、学芸省の道具であっても享受することができたはずなのだ。

だからこそ、ド・ヴィリエ一派にしずかな期待を寄せずにはいられない。
おお、大神オーディンよ、どうか、彼の者達に地球教を打倒させたまえ。この牢獄のような世界を崩壊させたまえ。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続いたネタ43 GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり

2018-02-12 23:57:01 | 連載中SS

ようやく会えた緑の人と土色の人たち。
炎龍を一度撃退したという彼らならば故郷を救うことができるかもしれぬ。

そうヤオ・ハー・デュッシは期待していた。
しかし得られた回答は否定。

曰く、炎龍がいる場所は国境の向こう側。
軍が国境を超えるということはどういう意味か?
その理由は言わずとも分かるはずである。

ゆえにお引き取り願いたい。

「・・・・・・分かった」

その回答を聞いたヤオは絶望を胸にしつつ部屋を後にした・・・。


「と、いう感じのやり取りをしたのだが、
 現在我々は国境を越えての活動はできない。
 しかし『野生生物』である炎龍は今こそ一か所に留まっているが、
 何時かは偵察隊が遭遇したように再び我々の前に現れる時が来るであろう」
 
「ゆえに、改めて問おう。
 もしも炎龍と対峙した時の対処法にについて各自意見を述べて欲しい」

狭間陸将、栗林中将は会議の参加者たちに対して問いかける。
参加者は自衛隊の戦闘団団長、日本軍の連隊長、さらに航空隊の指揮官。
とアルヌスに駐留している主たる部隊の幹部たちが揃っていた

「では航空隊から一言発言します」

日本軍側から「痛い子中隊」を配下に置いた高木順一朗大佐が立ち上がる。

「ハッキリ申しまして我が軍の航空隊単独での炎龍撃退は不可能です。
 九七式双戦の20ミリ機関砲、さらに斜め下向きに装備している40ミリでもあの龍に有効打撃を与えることは無理です。
 加えて少し前にお宅の噴進機でも撃墜こそされませんでしたがあの破損ぶりですからわが軍のレシプロ航空機ではとてもとても・・・」

九七式双戦の火力は機首に20ミリ機関砲4門とフォーマル大陸のワイバーンを簡単に撃墜できる程度の火力がある。
しかし『第三世代主力戦車』並みの装甲を纏った生物である炎龍には分が悪すぎた。

加えて少し前に自衛隊のF4が炎龍と遭遇。
これと交戦した結果、炎龍に対して下した評価は。

・機動力はハリアーか戦闘ヘリ並
・頭脳は野生動物の中でも賢い。
・旋回半径は第一次世界大戦時の複葉機より小さい。
・攻撃力はF4の電子機器を破損させる程度の威力を有するブレス。

と端的に言って脅威としか言いようがない存在であることが判明した。

「神子田さんとも話しましたが、
 自衛隊のAAM(空対空ミサイル)も相手が装甲纏っている以上有効打撃となりません。
 よって航空隊の使い方としてせいぜい牽制程度。炎龍を『自由に空を飛ばせない』ために使うべきだと思います」

そう締めくくった。

「加茂です、
 74式のAPFSDSならば貫通は可能なハズです。
 しかし相手は三次元を機動する生物ゆえに地面に釘付けにしていただけ無ければ困ります」

「最悪、一方的に空から蹂躙されることとなります。
 戦車はブレスにこそ耐えることはできると思いますが、
 歩兵が乗る機動車、それに各種車両はそれに耐えれれるか疑問です。
 また戦車も炎龍が空から押しつぶして来たら対処しようがありません」

加茂一等陸佐、島田中佐が戦車部隊の代表としてそれぞれ見解を述べる。

「・・・LAMが通用するのは伊丹が率いていた偵察隊で実証済み。
 しかし、だからと言って普通科単独、あるいは少数の精鋭による奇襲等は期待するのは無謀と考えています」

「火力だ、兎に角弾幕はパワー!
 確実にあの龍を打倒するにはそれしかない、
 砲兵の弾幕射撃とアルヌスにある航空機全てを動員して制圧。
 その上で戦車から釣る瓶打ちをするしかないと健軍一等陸佐と結論づけている!」

健軍一等陸佐、一木少将が事前に纏めた結論を述べる。

「諸君らの話を聞くとつまり、
 戦車、航空機、砲兵による立体的な攻撃が必要というわけか」

栗林中将がそうつぶやく。

「と、なると規模は最低でも1個戦闘団、または連隊。
 それに加えてヘリに航空機となると規模はかなりおおきくなりますね・・・」

「それだけではないぞ、八原参謀長。
 アルヌスの周囲に出現した時ならばそれで済むが、
 例えば今世話になっているイタリカに炎龍が襲撃した時、我々はそれを見捨てることはできない。
 道中の治安は以前よりも改善されているとはいえ、それは我々がアルヌスで陣取っているが故の保証だ。
 『アルヌスから軍がいなくなった』ことで妙な勘違いをする輩が出てこないように別個警戒の部隊を配置する必要がある」

ただ炎龍を戦うだけではなく、
戦っている間に蠢動する輩の動きを封じ込めるための部隊配置。
加えてイタリカを見捨てればアルヌスの間を結ぶ交流が打撃を受ける。
しかもイタリカは今や非公式とはいえ【帝国】とアルヌスを結ぶ中間地点と化しており、
政治的にこれを見捨てるのは非常にまずい、という意味を込めて狭間陸将が意見を述べる。

「改めて意見を纏めると厄介だな、
 龍を一体倒すだけにもこうも戦力が必要とは。
 まったく異世界であるならば魔王を倒す勇者に頼れたらどれほどよかったことやら」

栗林中将の冗談に場が笑いに包まれる。

「勇者、ではないですが。
 武神様であらされるロウリィならいますよ」

「ふふふ、それは良いかもしれないな。
 だが、彼女に頼り切ることはできない。
 それにいくら武神とはいえ空を飛ぶ相手では荷が重かろう――――ゆえに我々が倒すのだ」

八原参謀長の冗談に狭間陸将が同意を示したが、
炎龍を倒すべきは自分たちであると高らかに宣言した。

「神秘の存在が身近にあるこの世界で炎龍は最大の脅威であり、畏怖された存在だ。
 もしも我々の手で炎龍を仕留めることができればアルヌスから出ない我々を侮る【帝国】も考えを改めるであろう」

陸将の言葉に一同はハッと気づくと同時に真剣な眼差しで頷く。
如何に炎龍を倒すかばかり考えていたが得られる政治的な効果に気づいたのだ。
 
「我らに物語に出てくるような勇者はいないが、
 勇敢な隊員と兵士たちがいることを私は知っている。
 あらゆる事態を解決する万能の天才はいないが優秀な頭脳を持ち、
 各自が知恵を出し合い、最適な解決法をひねり出すことを我々は知っている」

一拍。

「さあ、諸君。
 議論を深めようではないか。


予定の時間より会議が長引きそうだ。








 


コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする