「で、管理者である遠野家に未通達で貴女はどうしてここに来たのか教えて貰えますか?」
冬木が遠坂家の管理下にあるならば三咲町は遠野家の管理下にある。
通常裏の住民が三咲町に訪問、あるいは活動するさいには遠野家に許可を得なければいけない。
そしてボクは無許可で入り込むモグリの連中を〆て追い出すことが主たる仕事となっている。
「あ、いやー忘れてた……てへペろ」
あ、今少し殺意が沸いた。
「冗談よ冗談。
にしても貴女随分と仕事熱心なのね、
わざわざ直接顔を見せるなんて、でも安心しなさい、
わたしはただ高校のころの知り合いに会うだけだから」
高校のころの知り合いねぇ……久遠寺さんと静希さんのことだろう。
久遠寺さんなんて出会った瞬間、志貴やアルクェイドさんを巻き込んで殺し愛に突入したし、
静希さんは静希さんで無駄のない動きでボクの心臓を潰し、生死を彷徨う羽目になったのは……色々思い出したくない記憶だ。
今でも久遠寺さんは「実験材料となって」と迫るし、
静希さんは戦闘訓練でこっちが吸血鬼なせいか、人畜無害な顔をしてるのにまったく手加減ないし……。
「こら、そこ!なに遠くを見ているのよ。
それよりわたしは久々にあの2人に会うのだけど、あの2人に何か変わった所があった?」
「ええ、まあ相変わらずというべきか、
久遠寺さんは琥珀さんとタッグを組んで怪しげな薬を作るし、
静希さんはあっちへフラフラこっちへフラフラしていますよ、ただ――――」
ボクと違ってあの2人もまた歳をとった。
今でこそまだ若いがその次の10年後はどうなっているか考えたくない。
彼らもまたいつかは寿命に勝てずに亡くなる定めなのだろう。
「……まあ、人間だから仕方ないわよね
それが自然の摂理、わたし達のような人間こそ異常なのだから」
眼を細めどこか達観するように魔法使いは呟いた。
その態度にボクはふと気づく、彼女の姿が始めて会った時からさほど変わっていない事実に。
「青子さん、もしかして貴女も――――」
「知りたい?フフン?
でも教えない、乙女は秘密があるのよ」
ボクの疑問に対しこれ以上ないドヤ顔で、
この魔法使いは自らを乙女と言い切ったシリアスが台無しな上に――――乙女はないわー。
そう思った瞬間、顔の真横にビームが走った。