二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

第21話「未来可能性」Ⅷ

2014-01-31 23:24:32 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

「で、管理者である遠野家に未通達で貴女はどうしてここに来たのか教えて貰えますか?」

冬木が遠坂家の管理下にあるならば三咲町は遠野家の管理下にある。
通常裏の住民が三咲町に訪問、あるいは活動するさいには遠野家に許可を得なければいけない。
そしてボクは無許可で入り込むモグリの連中を〆て追い出すことが主たる仕事となっている。

「あ、いやー忘れてた……てへペろ」

あ、今少し殺意が沸いた。

「冗談よ冗談。
 にしても貴女随分と仕事熱心なのね、
 わざわざ直接顔を見せるなんて、でも安心しなさい、
 わたしはただ高校のころの知り合いに会うだけだから」

高校のころの知り合いねぇ……久遠寺さんと静希さんのことだろう。
久遠寺さんなんて出会った瞬間、志貴やアルクェイドさんを巻き込んで殺し愛に突入したし、
静希さんは静希さんで無駄のない動きでボクの心臓を潰し、生死を彷徨う羽目になったのは……色々思い出したくない記憶だ。

今でも久遠寺さんは「実験材料となって」と迫るし、
静希さんは戦闘訓練でこっちが吸血鬼なせいか、人畜無害な顔をしてるのにまったく手加減ないし……。

「こら、そこ!なに遠くを見ているのよ。
 それよりわたしは久々にあの2人に会うのだけど、あの2人に何か変わった所があった?」

「ええ、まあ相変わらずというべきか、
 久遠寺さんは琥珀さんとタッグを組んで怪しげな薬を作るし、
 静希さんはあっちへフラフラこっちへフラフラしていますよ、ただ――――」

ボクと違ってあの2人もまた歳をとった。
今でこそまだ若いがその次の10年後はどうなっているか考えたくない。
彼らもまたいつかは寿命に勝てずに亡くなる定めなのだろう。

「……まあ、人間だから仕方ないわよね
 それが自然の摂理、わたし達のような人間こそ異常なのだから」

眼を細めどこか達観するように魔法使いは呟いた。
その態度にボクはふと気づく、彼女の姿が始めて会った時からさほど変わっていない事実に。

「青子さん、もしかして貴女も――――」

「知りたい?フフン?
 でも教えない、乙女は秘密があるのよ」

ボクの疑問に対しこれ以上ないドヤ顔で、
この魔法使いは自らを乙女と言い切ったシリアスが台無しな上に――――乙女はないわー。

そう思った瞬間、顔の真横にビームが走った。





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第21話「可能性未来」Ⅶ

2014-01-28 21:47:00 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

やっかいだな。
しかも知り合いであるしこの人は――――。



※  ※  ※



ボクは支度を済ませると直ぐに行動に移った。
間もなく日付が変わろうとしている時間にも関わらず人は多い。
世間は世界規模の不況に悩まされているが、繁華街を歩く人々に笑顔が絶えない。

「あれだ!次はあれを!」
「……買い食いに来たわけじゃなないんだぞ」

で、この金髪お嬢様はあっちこっちで買い食いし、口に突っ込んだ食べ物で頬を膨らませていた。
一度彼女を屋敷に戻そうと思ったが本人が駄々を捏ねて結局ついて来たがご覧の有様だ。
おまけに彼女の見た目的に金髪美少女なせいかかなり目出っており、周囲からの好奇と関心の視線が痛い。

なお、代金はボク持ちである。
既に夏目漱石さんが数枚財布から消えている。
別にそのくらい奢れるだけの収入は得ているからかまわない。
ただ、彼女がはしゃぐ姿を見ていると、どうしても今は眠っている彼女を思い出す。

「―――――」

彼女だけでない、
多くの人間と出会い過ごした短くも濃厚な青春の日々。
そして、二度と戻ってこないあの日々が思い起こされる。

「はぁ……」

いけない、どうも歳を取ると過去の事ばかり考えてしまう。
肉体こそボクは成長し老化しないが、精神は確実に老化してゆく。
そして永い年月の果てに精神が老化して磨耗した果てには――――やめよう、考えるのは。

ただ今の仕事に集中しよう。

「本業に戻るぞ。こっちだ、アルク」

今度はシュークリームをほお張っていた彼女を引っ張り、路地裏へ入る。
繁華街の喧騒と眩しいばかりの光はなく、そこは本当に静かであった。
天にそびえるビルの両側の僅かな隙間とたまに出現する広い空間を次々と超えてゆく。

上を見上げても星空は見えず、碌な明かりもなく、地面と流れる冷たい風は体の芯まで届く。
進めど進めどビルしか見えずさながらドイツの黒い森、シュヴァルツヴァルトのようだ。

しばらく入り組んだ路地を歩き、やがてその先に目的の人物がいた。
向こうからすると自分たちは後ろからやって来た上に寒い時期であるため上着を羽織っているため、
男女の区別は光の角度によって赤髪にも見えなくもない長い髪だけでしか判断できない。
そして、妙に頑丈そうな皮のケースを脇に置いている。

「こんばんわ、いい夜ね。
 でもわたしの後ろにいるとビームと一緒に蹴り飛ばすわよ」

「ゴルゴですか貴女は、
 いや強ち間違ってはいないけど。
 はい、こちらこそこんばんわ、お久しぶりです――――蒼崎青子さん」

そう、今回の対象は魔術師であることに違いないが正確には魔法使い。
志貴にとって生きるための人生の切欠を作った恩人そして世界で数人しかいない魔法使いの1人、

蒼崎青子が今回の対象であった。



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第21話「可能性未来」Ⅵ

2014-01-27 21:41:16 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編
※  ※  ※



そんな風に回想しつつ黙々と歩き続け我が家にたどり着いた。
古びたマンションの階段を上がり、ドアに手をかけるが誰もいない部屋から人の気配を感じた。
だが気配から毎度屋敷から抜け出す不法侵入者であることはわかっていたのでそのままドアを開ける。

「遅い、待ちくたびれた」

待っている間に読んでいた漫画から眼を離し、少女が顔を上げる。
そのさい、少女の金糸のような、長く美しい髪が少しの間だけ宙を舞う。

見た目は10~13といった所だろうか。
女という言葉はまだ似合わずやっと少女になった幼い肉体と顔をしている。
しかし、黄金の瞳には見た目には似合わない高い知性と理性を宿しており、それが当たり前であると思わせた。

今時見かけない古典的な白いブラウス、
首元を黒いリボンでピッチリと締め、露出度が低い黒のロングスカート。
靴はブーツとそんな隙のない姿と少女の完璧な造形と合わさってまるで西洋人形のような出で立ちである。

そのせいか古ぼけた事務所を改装した部屋と全然合っておらず少女は異彩を放っていた。
おまけに、不法侵入した挙句真っ先に言い放った言葉が待っていたと言わんばかりの物であった。

「そりゃどうも。で、それより見たところまた無断で屋敷から抜け出したのか?
 あれほど勝手に屋敷から抜け出し、翡翠さんを困らせるなとボクは言ったはずだけど、お嬢様?」

「む、確かに用事から無断で抜けたのは事実だが、
 別に重要なものではないし、何よりも暗示で誤魔化しているから問題ない」

「なおさら悪いわ!!」

口調と気品こそ教育の賜物か素晴らしいお嬢様で在らされるが、
このアーパーと自由人気質は間違いなく両親の、それも両方から受け継いでいる。

「しかたがないだろ、
 屋敷では琥珀の部屋に行かなければテレビもゲームもない。
 漫画もさつきの所に行かなければ読めないし、何よりも小遣いが少ない…………」

先程までの尊大な態度とは打って変わって、
遠くを見るように眼を細め呟き、落ち込む姿に妙に哀愁を誘う。

小遣いは日500円(昼食代扱い)
アルバイトは当然禁止で門限は夕方まで、
夜10時を過ぎれば屋敷内を動き回るのすら禁止。
おまけに居間にテレビはなく在るのは新聞だけでテレビやゲームなどの娯楽品も禁止。
遇に待遇改善デモを琥珀さんと一緒に行っているようだが、勝ったためしがないとか何とか。

――――嗚呼、親子二代で鬼妹に絞られるとは。

「あーオホン、話を戻そうアルク。
 ボクの所に来たのはただ漫画やゲームをしに来ただけではないんじゃないか?」

この娘がここに来たということは、
ボクにとって親戚の子供が遊びに来ただけでなく仕事の依頼が来たという事である。
吸血鬼になって以来、遠野の屋敷に世話になり、メルブラなど神秘絡みの事件を解決してゆく内に、
今では怪異や神秘絡みの事案を遠野家が依頼する形で調査、解決する三咲町を守る正義の味方といった所だ。

某喫茶店やカレイドステッキには梃子摺ったが、大抵は自分が強力な吸血鬼なため穏便に済んでいる。
ただ昔、秋葉さんに頼まれたとはいえ、若さと勢いで志貴を追って欧州までブイブイ言ったせいでたまに厄介な事案もあるけど……。

「ああ、これだ」

彼女がファイルを差し出し、すぐに受け取り概要に眼を通す。
簡単な仕事を期待していたがどうやら今日はそうでないらしく実に面倒なものと来た。
だから読み終えた後、ボクは思わず口にした。

「魔術師か、」


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第21話「可能性未来」Ⅴ

2014-01-25 22:54:31 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

視線の先にはアルクェイドさんがいた。
しかし、ボクが知るアーパー吸血鬼な彼女ではなく、
真祖の姫にして真祖の最悪の処刑人であるアルクェイド・ブリュンスタッドであった。

表情こそ無表情であったが、
天上から照らす月の光で混じりけのない金髪が黄金色にぼんやりと輝く。
人の形をしていながらその造形が出来過ぎているせいで却って、この世ならざる者の空気を出している。
その彼女が粛々と歩き、長いドレスが風に揺られる姿にボクはその美しさに一瞬息が止まった。

「ああ、そうか」

ロアがポツリと呟く。
そして、驚いたことにあのロアの瞳に涙が溜まっていた。

「本当は根源探究のためではない、
 私はこうしてただ姫を見ていていたかっただけなのだ。
 にも関わらず――――私は何のために永遠を目指したかもを忘れてしまった」

今のロアは死徒27祖でも三咲町を騒がせた吸血鬼でもなく、
涙を零し、ただただ自らの過ちと後悔を嘆くミハイル・ロア・バルダムヨォンであった。
永遠の時を過ごし、目的と手段を見失った事に死んだ今ようやく知った哀れな男がそこにいた。

「………………」

そして、ボクはロアを笑うことも哀れむこともできなかった。
吸血鬼になった今、永遠の時を過ごした末の末路が目の前にいる以上他人事ではないからだ。

いつか、この世界の両親、志貴やシエル先輩の事を忘れてしまった時。
果たしてボクはどうなっているのだろうか、ボクの未来の可能性について考えさせる。

そう、いつかボクも皆との出会いを忘れ、
ただ殺戮を楽しむ吸血鬼に堕ちる日が来るのかもしれない。
そんな嫌な未来の可能性に逃避するため、何気なく天上を見上げボクは気づく。

「空が……っ!」

故障し砂嵐状態のテレビ画面のようにボロボロと空が欠けてゆく。
空だけではない、地面の花や草、見える全ての空間が消滅しつつあった。

「時間が来たようだ」

ロアに振り返れば体全体が半透明で向こうの風景が見えるほど、
存在がすっかり薄くなってしまい、とうとう別れの時間が来た事実を悟った。

「お別れだ、弓塚さつき。
 私が言っても君は喜ばないだろうが、君と姫の人生に幸福あれ」

「ロア……!」

その時は何て言えばいいのか思いつかなかった。
ただロアの名を口にして手を伸ばしたがそこで意識が消え、
ボクは志貴やアルクェイドさん、シエル先輩が待っている現実世界へ帰還した。





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第21話「可能性未来」Ⅳ

2014-01-24 23:48:21 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

「ならば、これは餞別だ。受け取れ」

刹那、頭に膨大な知識が流れ込んできた。
錬金術、数紋秘、魔術、幾何学、神秘に関するあらゆる知識が続々と頭に刷り込まれる。
軽く頭痛がするが、これは……。

「シエル先輩と同じ」
「然り、あの娘も蘇った後は不死耐性だけでなく私の知識を継承した」

【原作】の設定を思い出す。
シエル先輩の経歴はかつてロアに乗っ取られ殺戮を演じるが、まだ殺人機械であったアルクェイドにより滅ぼされる。
だがシエル先輩の霊的ポテンシャルは世界が生かそうとする程に優れていたので後に蘇生を果たしてしまった。

同時に世界にとって矛盾した存在つまりシエル先輩に憑依したロアこそ死んだが、
ロアは次の宿主に転生し、シエル先輩はシエルでありながらロアでもある存在となった為、死ねない肉体になったのである。

天才魔術師だったロアの知識が丸ごとあるので魔術協会の最上位の魔術師、王冠(グランド)に匹敵する魔術知識を持つ。
しかし、ロアだった頃を思い出してしまうために魔術を使用は控えているが、任務遂行のためなら使う事も躊躇しない。

そんな設定であった、
そして今度はボクはその知識を継承することになる。

「今後世界が君の言うところの【鋼の大地】か、
 あるいは【Fate/Extra】に進むにしろこの知識は君のためになるだろう」

「……サービスと話が良すぎて逆に怖いな」

ボクが知るロアとはネタキャラで、
もっと粗暴な印象が強いせいで先ほどから主導権を握れず調子が狂いっぱなしだ。

「どの道私は消え、あの娘は魔術を使いたがらない。
 ならばまだ私の魔術を継承し継続して研究してくれる可能性がある君に、
 私の一生を求めて追求した神秘の奥義、その全てを君に継承させるだけだ」

「随分と期待してくれているようで、どうも」

少しばかりロアに対する見方が変わった。
やはり過去のロアはボクが知るロアとは随分と違うものらしい。
思うにロアは下手に知識があった上に、永遠という名に固守しすぎた。

転生を繰り返してゆけば、
遠野四季に寄生したロアのように転生先の人格に大いに影響される。
ロアという人格は変容し、寄生先の人格との境界が曖昧になる。
それではロアという人格は消耗し、何れなくなってしまう。

もしかするとロアは理性では承知していたが、
アルクェイドに見惚れて以来、それすら承知で転生を繰り返したのだろう。

「――――あ」

ふと、ロアが口を開け惚けた声を漏らす。
眼を見開き、硬直しているロアに不審に思ったボクは彼の視線の先を振り返った。





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