二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

駆逐艦『神風』の記録~艦隊これくしょん、転生憑依物 第5話「第二試練」

2014-07-25 22:35:00 | 連載中SS

時間は少し遡る。
鎮守府正面海域では2人の艦娘が高速で動き回り、戦っていた。
見たところ15程度の歳で蒼銀髪を持つ艦娘の名は叢雲で、彼女の表情は真剣であれどもどこか余裕を感じさせた。

もう一方の艦娘、銀髪で小学生高学年程度の幼い少女の容姿をした少女、
神風は表情は常に無表情なため、感情こそ読み取れないが時折口元を強張らせ、視線も怪しく余裕がないように見えた。

それもそのはず、
叢雲は初めて人類の前に現れた5人の艦娘の1人であり、
激戦続く深海棲艦隊との戦いで今日まで沈まずに生き残った歴戦の兵士である。

対して神風は記憶を喪失し、戦い方を亡失してしまった者だ。
ゆえに、神風の余裕のなさは当然であり、この戦いに負けるのは間違いないだろう。

が、

――――なかなか、しぶといわね。


叢雲は未だ持ちこたえる神風を前にそう独白した。
確かに、神風は長い軍歴の割には弱く、戦い方を忘れてしまったのは事実である言うほかない。
始めの反航戦で行き成りこちらが放った1発を貰った上に、その後の動きも妙に違和感を覚えるものであった。

「つっ!?」

神風の発砲。
同時に悪寒を感じ取った叢雲は咄嗟に身を屈める。
直後、放射線状の弾道を描いた模擬弾が屈める前にあった頭の場所を通過した。

叢雲が頭を上げるより先に、さらに数発模擬弾が飛来。
咄嗟に感で回避機動とり防御壁を展開、周囲に水柱が立ち全て回避したと思われたが、
水柱がなくなった後に現れた叢雲には小破判定の被害を受けていた。

「……やるわね、神風」

そう、時間と共に神風の動きは洗練されつつあった。
始めは海の上を走ることもどこかぎこちないものであったが、今は違う。
護衛任務から始まる便利屋にして高速で海上を機動し、戦艦を喰らうdestroyer、一人前の駆逐艦娘だ。

(これなら、私たちと一緒に戦えそうね)

少なくとこれなら戦闘に連れて行っても大丈夫だろう。
このまま続けば自分が勝つであろう事は分かっているが試験は合格である。

なぜなら、ここまで持ちこたえた事実。
そして徐々に洗練されつつある戦い方は実戦に参加しても遜色がないものだ。
この事実に、叢雲は神風が使えるかどうか見る役割を終えられた事に一安心する。

だが、叢雲が安心した直後。
彼女の金眼は鎮守府正面海域の水平線上に見慣れぬ人影を捉えた。
始めは哨戒部隊が帰還した、と思ったが直ぐに哨戒部隊にしては数が多い点に気づく。

さらに、蒼い空と蒼い海の狭間に浮かぶ人影に違和感を覚えるよりに先に人影から閃光が走る。
空気を切り裂く音と同時に、叢雲と神風の周囲に無数の水柱が立ち上った。

「なっ!?」

叢雲が驚愕の声を挙げる。
たしかに、鎮守府正面海域には敵が出没することはあるが、精々駆逐級だ。
だが、今この瞬間受けている攻撃は敵の主力部隊の物でまさかの展開に叢雲は驚きを禁じえなかった。
とはいえ、歴戦の艦娘である叢雲は直ぐに気を取り直し神風に呼びかけた。

「神風っ!!直ぐに鎮守府へ転進するわ、急いで!!」

臆病とは無縁の叢雲だが、
ここで突撃しても轟沈するだけであることを承知していた。
おまけに、今は自慢の酸素魚雷も含めて模擬戦の最中だったせいで模擬弾しかない。

ゆえに、ここは転進。
もとい戦略的撤退するのが正しい選択。
神風は叢雲の言葉が聞こえたようで無言で頷く。
叢雲と神風は鎮守府へ向けて180度転換、最大戦速で撤退を試みた。

鎮守府にも砲弾が降り注いでいるが、
ここにいても玉砕するだけであるのは明白。
2人は後ろを振り返らず、水飛沫を立てて海面を駆け抜ける。

ところが、自分達が逃げているのを捉えたのか、
深海水平線の先に見えた人影と異形の影が急速に自分に近づいてきた。

叢雲の舌打ちと同時に発砲の閃光と砲煙。
周囲に無数の水柱が再度立ち上る。

「くそ……」

悪態をつく叢雲。
直ぐに反転し、最大戦速で突撃。
敵の戦列に自慢の酸素魚雷をぶち込みたい気分だが今は何もできない。
模擬弾では駆逐級の装甲を貫通することは出来ず、派手な装飾を施すだけ。

おまけに厄介なことに駆逐艦が数隻進路の前方に回り込みつつある。
回避すれば鎮守府から遠ざかり、後方から追撃してくる敵の餌食となってしまう。
加えてここで戦闘して手間取ると後方から追撃した部隊と挟み撃ちされかねない。

どうすればいいか?叢雲は刹那の時間悩む。
が、先程から無言を貫いて神風が叢雲を決断させた。

「やる、しか、ない」

相変わらず聞きづらい言葉であったが、
その言葉に込められた意思は確かなものであった。

「そうね、正面突破。
 それしかないわね、神風」

叢雲が神風の言葉に同意を表明した。
時間が掛かる?別に敵の撃破ではなく突破だけなら問題ない。
それに、鈍速の戦艦や鈍亀の潜水艦にはない最大の武器、駆逐艦の足の速さがある。
と、ここまで考えたところで駆逐艦娘の血が騒ぐというべきか叢雲は妙な高揚感に満たされた。
神風も同意しているようで、叢雲の横にいた彼女は不器用な笑みを浮かべていた。



※  ※  ※



さて、色々調子こいて叢雲と戦っているのだが、
叢雲さん、すみません貴女を甘く見ていました、勝てるわけありません常識的に考えて。

というか、強ぇーーー!?
反航戦で行き成りこっとは一発もらったし、
こっちは弾幕はパワーだぜ!と言わんばかりに撃ちまくっているけど……全然当たらない。
叢雲はこっちの弾道を読んでいるようで、回避機動と障壁を張ることで避け続けている。

しかも、こっちが幾ら追いかけても追いつかない。
かつて世界がその性能に注目した特型駆逐艦の最大速度は38ノット。
対する神風型駆逐艦は睦月型以前のオンボロで、出せる速度は37.3ノット。

たかが、0.7ノットの差、されど0.7ノット。
叢雲は何時でも好きな位置から一方的に攻撃できるのに対して、
こっちは常に受身の態勢で、対応しなければならない場合が多くなってしまう。

性能差でも負けているなんて、これ無理ゲーな気がしてきた……。
だけど、だからと言ってここで諦めるわけには行かない。

ここで逃げたところで、元の世界に帰れることはない。
それに、艦娘である以上、いつかはこの戦争に参加しなければならない。
だったら、腹を括ってここで戦った方がまだマシかも知れない。

っと、ここだ!

「……そこ」
 
とっさに10cm連装高角砲を構え連射。
砲火が眩しく、眼がチカチカするがかまわず撃ち続ける。
こちらの砲撃を確認した叢雲は、乙字に回避機動を取るが未来位置を予想した放った砲弾が叢雲の進路上に続々と落下する。

全てを回避できないことを悟った叢雲は障壁を張ったが、
連続して数発命中し、障壁が割れて叢雲本人に命中弾を与えることに成功した。

たしかに、性能差、経験値的にはこちらが劣勢だ。
唯一叢雲に勝るものは10cm連装高角砲の連射性能だけだ。
けど、こいつのお陰で何とかここまで善戦できている。

10cm連装高角砲は多くの駆逐艦が装備とする、
12.7cm連装砲と比較すれば威力、さらには水上での目標に対する命中精度は劣る。
だが、時速数百キロで飛行する航空機用を補足することを目的としていただけに連射速度は速い。

つまり、その気になれば弾数で打ち勝てるわけである。
機動力は向こうは上だが、攻撃の際にはどうしてもこちらに接近する必要がある。

だから、叢雲は近づいたら即座に弾幕を張れば、何とかなる。
始めは戸惑う所もあったが、徐々に戦い方のコツも掴めて来た気がするからなお更だ。
とはいえ、状況がこれで挽回されるような事はなく相変わらず自分の方が劣勢だ。

そんな感じでひぃひぃ言いながら叢雲と戦ってたわけだが、
――――水平線の向こうから轟いた砲撃音と同時に周囲に着弾。
何が起こったかは、未だこの世界に慣れていない自分でも分かった。

そう、深海棲艦が鎮守府に攻めてきたのだ。
そんな状況はボクでも分かったけど……なんで鎮守府正面海域なのにガチ編成なんですかー!?

前世は眼鏡を必要とする程度に視力が悪かったが、
旧軍の見張り役の『暗闇で距離1万メートルのマストを見分ける』ことが出来るレベルに視力が良いため、
水平線の遥か向こうから接近しつつある、敵の陣容をはっきりと区別できたのだが。

重巡洋リ級1、軽巡洋ホ級2、駆逐イ級3。

合計6隻を一つとした部隊が複数、こちらに向かいつつあった。
鎮守府正面海域といえば駆逐級1だけだが、どう見ても平均的な水上打撃部隊です。
戦艦級がいないだけ、マシかも知れないけど駆逐艦娘2人でどうしろと、本当にありがとうございました。

ど、ど、どうする!?
こっちは訓練用の模擬弾しかないから、戦うことなんて出来ないぞ!
おまけに天龍のように近接戦闘用の武器なんてないし、近づかれたら対抗できない。
格闘技なんて、昔合気道を嗜んだ程度だったし……そもそもあいつ等に効くのか、合気道が?

「神風っ!!直ぐに鎮守府へ転進するわ、急いで!!」

なんてパニック状態であったけど、叢雲が撤退を指示。
そして、着いて来い!とばかりに鎮守府へ向けて走りだした。

色々テンパッていたけど、叢雲の言葉に正気を取り戻す。
うむ、難しい事なんて考えずに始めから逃げればいいだけだった、では逃げよう!

…って、うぉ!?

「…っう」

さらに周囲に着弾。
巨大な水柱が立ち上がり、降り注ぐ海水が顔を濡らす。

直ぐに拭うが、海水の塩辛さが顔に沁みる。
が、海水の塩辛さのみということはまだ被弾していない証拠。
先行している叢雲も被弾していないようでまだ大丈夫そうだ。

しかし、それでも不味い。
最初のものより散布界がずっと縮まっている。
もう1,2回の砲撃で夾叉(きょうさ)されそうだ。

「くそ……」

叢雲が顔を横に向けて、悪態をつく。
釣られて顔を横に向けると――――いた。

全長25m程の異形の化け物。
海面スレスレを飛行するように航行する駆逐イ級が数隻いた。
こちらと平行して進んでおり、まだ距離はあるが徐々に自分達の進路の前に出る航路を描いていた、

確かにくそ、と言いたくなる。
このまま進めば水上砲撃戦で最強の陣形、T字を描かれてしまう。
こっから航路を変えれば後ろから追撃してくる敵と今は横に平行して進んでいる敵と挟み撃ちにされてしまう。

ここは――――突破するしかないようだ。

「やる、しか、ない」

自然とそんな言葉が漏れた。

「そうね、正面突破。
 それしかないわね、神風」

こちらに振りかえった叢雲が賛同を表明した。
その表情は待っていました!とばかりに溢れんばかりの実にいい笑顔であった。
獲物を見て喜んでいる獣のような、実に攻撃的なものであったが。

だが、強行突破することがこれで決まりだ。
正直言えば緊張するし、今すぐ逃げ出したい気持ちはある。

現に手を見れば僅かだが震えている、
初めての実戦、本当の戦争に参加しているのだからしかたがない。
別にドンパチ遣り合うわけではない、落ち着いてやればきっとうまくいくだろう。

「…はぁ」

息を吸い、ゆっくり吐く。
この動作の数を数える、1…2…3…4…。
よし、ほんの少しだけだけど落ち着いて来た――――行こう。

「い、行こう」
「はっ、いいわ。着いてらっしゃい!」

海面を駆ける。
相変わらず後ろから砲弾が落下し続けるが無視する。
それより徐々に近づく駆逐級進路の前方に出るため、衝突する恐れがある。

いや、叢雲は進路を変えていない、このまま進撃する。
駆逐級が咆哮し砲撃を仕掛けるが当たらない。

緊張と恐怖に耐え――――抜けた!
直ぐ脇を髑髏を模した駆逐級が直ぐ脇を通り過ぎた。

振り返らなくても、分かる。
後は鎮守府までこのまま逃げるだけだ。

「神風!」

叢雲が叫んだ刹那、
背中を強打され、嫌な音が鳴る。
そして、体が宙に浮き視界が真っ白になり、意識が一瞬だけ途切れた。
その後、重力にしたがい落下するが、体が腕一本も動かない。

あ、やばい。
もしかすると背中の骨がやられたのかもしれない。

「…っと、しっかりしなさい!」

落下した自分を叢雲がキャッチしてくれたので、
海面に叩きつけられることはなかったが、こっちは相変わらず意識が朦朧としている。
叢雲が心配してくれているが、それに答えることができない。

「やばっ…!」

視界もおぼろけなため、
よく分からないが囲まれているらしい。

ああくそ、全て僕のせいだ。
自分尾命は惜しい、けどこの状況だと2人で生き残るのは難しい。
だとしたら、せめて叢雲だけには生き残ってほしい。

「み、見捨、てろ」

「アンタ、馬鹿なの?
 この私に味方を見捨てて逃げる、なんて言葉は存在しないのよ」

抱えた叢雲は即座に否定した。
見捨てない、その言葉は

そしてごめん、叢雲。
足手まといになった挙句、巻き込んでしまって。

連続して爆散。
閃光が暗くなりつつあった視界を照らす。
生き残った一部が反転し、逃亡を試みるが同じく爆散した。
海面は爆発した駆逐級の炎が立ち上り、その炎の中から敵とは違う人影が入る。

「まったく、世話がやけるねー。
 お待たせー、水雷屋のアイドルことスーパー北上さまだよー」

間が伸びた声、どうやら北上さまが来たようだ。
助かった…感謝の言葉を伝えたい所だがもう意識を保つのが限界だ。

少し、寝よう。











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