艦娘の人格と記憶に障害、デスカ。
金剛は改めてその言葉を振り返る。
艦娘
それはある日突然出現し、人類の海上航路を破壊した深海棲艦と同様に突然出現した。
どうして自分が前世とも言うべき艦の記憶を持ちつつ人間の形態でここにいるのか金剛には分からない。
俗に『始まりの艦娘』と言われる『吹雪』『叢雲』『電』『漣』『五月雨』の1人である叢雲に聞いた事もあるが。
叢雲もまた自分がどうしてここにいるのか分かっておらず、今なお答えは出ていない。
また艦娘と共に『妖精』と呼ばれる種族もどこから来て、どうして現れたのかまた分かっていない。
しかし、人類側としては原理が不明でも戦力として使えることが分かって以来、人類の守護者として活躍している。
そして艦娘の思考や基本的な構造は人類をベースとしつつも不明な所が多く、よく分からないままこれまでの日々を過ごしてきた。
ゆえに、人格の変化に記憶喪失などといった例はこれまで無く金剛は内心でどうしすればいいのか分からない。
「どう…ぞ」
まあ、考えても仕方ないデスシ。
そう思った金剛はドアをノックする。
すると、部屋の中から低い声が聞こえた。
金剛はそのままドアノブを握り。
勢いよく押し、いつもの金剛らしく言葉を綴った。
「ヘーイ!神風大丈夫デスカー?」
個室の病室、ベットに少女がいた。
窓の外に写る青い海と空を背景に彼女、神風はいた。
やや伸びた銀髪。
普段は髪を纏めているらしく脇の机には髪留めが置いてある。
駆逐艦の艦娘の見た目は人類基準の年齢的に15~10歳程度であり。
神風は第6駆逐隊の『ヴェールヌイ』等と同じく、見た目は幼い体躯であった。
半身を起こしてこちらを向く表情は事前に聞いたとおり、無表情であった。
強いて感情を読み取るとしたら金色の瞳が僅かに大きくなった事に注目すればいいだろう。
「金剛……榛名……叢雲?」
ボソボソとした聞きにくいトーン。
だが、金剛と後ろにいる2人の名前を確かに言った。
「アンタ、どうやらわたし達の名前は分かるようね」
彼女はどうやら自分たちのことは知っていたらしい。
背後の榛名が安心のため息をついたが、金剛は逆であった。
つまり、叢雲の言うように『名前は分かる』だけで後は何も知らない状態であると推測した。
現に表情こそ無表情なせいで感情が読み取れないが。
神風の視線は彷徨い、動揺しており明らかに感情が乱れていると推測できた。
「駆逐艦『神風』で相違ないな?」
どうしたものか?
と金剛が言葉を選んだ時、提督が言葉を続けた。
神風は提督をしばらくじっと見た後、無言で頷いた。
「貴官はこのリンガ泊地に着任する予定であったが……覚えているか?」
「……まったく」
そうか、と提督が悲しげに呟く。
「ならば貴官は一度検査も兼ねて本土へ帰還するように手配しよう。
未だ人類にとって艦娘の構造は理解の範疇外であるが、研究調査、治療は本土の方が進んでいる。
安心しろ、深海棲艦は我々だけでも食い止めることが可能だ、貴官はゆっくり休み、己を取り戻すといい」
口調は神風を案じたものであったが。
戦えない物はいらない、と言っているようなものだ。
深海棲艦と戦うために生まれてきたような艦娘からすればこれ以上ない侮辱に等しい。
しかし、金剛は知っていた。
提督は本気で神風の事を心配して言っていることを。
艦娘は突然現れたのと、唯一深海棲艦に対抗できる経緯から。
人の形をしていても捨て艦戦法を始めとして兵器として扱い、人間として扱われない場合がある。
しかし、提督はかつてのサーモン海域の飛行場姫との戦いで後方の参謀どもが恐喝恫喝とあらゆる手段で暗に捨て艦戦法を推奨したが。
最後まで捨て艦戦法をせず、自分たちをただの兵器として扱わず独立した自我を有する『人間』として扱ってくれた。
だから、今回もそうなのだろうと金剛は思った。
そして、だからこそ自分は提督を異性として好きであると確信する。
年齢差など、艦娘に意味はないし、この燃えるような情熱と愛を前に意味をなしえない。
そう考えれば考えるほど、感情の高ぶりが抑えられず。
金剛は今すぐ提督に抱きついて、頬ずりし、提督分を補給したい衝動に囚われた。
高速戦艦らしく早速行動に移そうとしたが、叢雲がさりげなく立ちふさがるように移動し、こちらを睨んできた。
金剛は思わずたじろぎ、続けて後ろから裾を引っ張られたので振り返ると榛名が何か言いたげに佇んでいる。
いや、正確に描写しよう。
表情こそ微笑し、笑顔を浮かべていたが。
「勝手は、榛名が許しません!」と瞳に怒りの炎を滾らせいた。
そう、提督を狙っているのは自分だけではなかった。
他にも提督に異性として惚れているのは榛名、叢雲を始め提督の指揮下にある艦隊の艦娘の多くがそうだ。
だが、上等だと金剛は思う。
そして最終的に提督のハートを掴むののは自分であると信じていた。
「返答は?」
金剛と榛名、叢雲で恋の冷戦が展開されている中。
当の提督は自分を巡って争っているいることに気づいておらず神風に答えを問うた。
提督の問いに神風はしばらく考えるような素振りを見せる。
一度眼を瞑り、周囲の注目の中。
神風は口を開いた。
「だが、断る」
神風の解答は拒否であった。
※ ※ ※
「金剛……榛名……叢雲?」
「アンタ、どうやらわたし達の名前は分かるようね」
いや、何せ薄い本。
それにMMDではパンツを覗いて散々息子がお世話に……ゲフンゲフン。
というか、原作キャラが行き成り3人も押し寄せて着ましたよ!?
まずは、アンタ呼ばりしてきた蒼銀の髪に金眼、歳は15ぐらいの少女は叢雲だろう。
頭にアンテナみたいな物は浮かべていないけど、このツンツンした言い方と姿は間違いなく叢雲だ。
うーむ、三次元で見るとなかなかの美人さんだ。
銀髪とかどこのラノベだよ、と突っ込むより前に三次元の叢雲が美少女すぎて辛い。
次に金剛、こっちは18~20といった所でこっちも美人すぎて辛い。
やや栗毛の長い髪は癖がなくサラサラだし、英国生まれなためか外人さんの特徴がある。
おまけに、顔の各パーツが整っていると、歳相応に成長しているからモデルみたいだ。
最後に榛名。
黒髪黒目で高くない鼻とか日本人の特徴を100パーセント受けついだ姿でやっぱり美人さんだ。
あと、金剛の後ろからこっちを覗いている姿が可愛くていい!
ああでも、第6駆逐隊がいないのは残念だ。
けど、この鎮守府にいることは間違いないだろう。
第6駆逐隊、それはロリコン提督にとって至宝にして至高の美の体現。
オカンな雷ちゃん、嫁の電ちゃん、レディ気取りの暁ちゃん、そしてクールな響ちゃん。
彼女達と出会うことはこの世界に来てすべき義務であり権利だ。
もちろん第6駆逐隊の面々と出会ったさい彼女達に嫌がることはしない。
お触りをする際には同意を得た上でやるし、無理やり触るとか絶対しない。
本当は紳士たるものは眺めるだけのYESロリータ、NOタッチ。
の精神で気高い精神で望まなければいけないけど、自分は欲望に打ち勝つことは無理だ。
何せ男のときなら問答無用で警察にターイホされるけど、今は同姓。
ゆえに、スキンシップとしてお触りすることはまったく不自然な行為でないし、むしろすべきだ(迫真)
そして、恒例のお風呂イベントでは……ふぅ。
む、いかんいかん、この場で一人妄想にふけるのは流石に不味い。
けど、前世ならニヤニヤと表情を浮かべていただろうけど。
今の鉄仮面な無表情は自分でも驚くほど動かないので、下心全開の妄想を気づかれる心配は全く無い。
つまり、いくら妄想してもバレない。
しかも同姓だからお触りもオッケー、いやっほおおお、最高だぜー!!
「駆逐艦『神風』で相違ないな?」
脳内が最高にヘブン状態であったけど、やたらゴツイおっさんがこっちの名前を聞いてきた。
詰襟式の白い軍服に金の7つボタンから見るに将校、それも肩についている階級から多分将官クラスの人間だな。
だとすると、このおっさんがT督なのか……?
いや、艦これの創作作品では提督は若い男でエロ同人誌ならばにゃんにゃんする展開だから忘れていたけど。
実際の艦隊指揮官たる提督クラスは会社で言うところ役員クラスの地位だからこれが自然か。
っと、名前を聞かれたから取り合えず軽く会釈。
どうもー今は神風らしいですけどコンチワー、今後ともよろしくお願いしまーす。
「貴官はこのリンガ泊地に着任する予定であったが……覚えているか?」
「……まったく」
御免提督さん、覚えてないっぽい!
と、軽くジョークも兼ねて夕立の真似をしたはずだが……口から出た言葉は全然違うのです?
おいおい、ここまで思考と言葉がリンクされていないのは可笑しいし、コミュ障ってレベルじゃねーよ!
「そうか」
なんてテンパっている自分を余所に、眼を伏せおっさん提督が呟いた。
そして周囲はしばらく沈黙し、さながら葬式会場と同じ空気が流れてしまう。
あ、あれ何この空気?
金剛、榛名そして叢雲までもが悲しげにしているし!?
「ならば貴官は一度検査も兼ねて本土へ帰還するように手配しよう。
未だ人類にとって艦娘の構造は理解の範疇外であるが、研究調査、治療は本土の方が進んでいる。
安心しろ、深海棲艦は我々だけでも食い止めることが可能だ、貴官はゆっくり休み、己を取り戻すといい」
まあ、普通そうだろうな。
ブラック鎮守府ならともかく、戦力にならない奴は前線から外れるのは。
僕がこの言葉に乗っても何の損はない。
何せ戦い方どころか、今の自分は妄想の類なのか分からない状態だ。
休んでていい、と言われたならば即座に休むべきだと思う。
けど、なんだ?
今の姿こそ幼い少女だが自分には男としての意地がある。
それに、どうやらこの世界は人類側が圧倒的に不利らしく、ここに逃げても先延ばしするだけだろう。
どうせ、本土。
日本に帰ってもいつかは戦わねばならない日が来る。
だったら、ここで提督やこの世界に来て初めて出会った彼女達と肩を並べて戦ったほうがいい。
戦い方は頭では知らない。
けど、何となくだが体は戦い方を覚えている気がするんだ。
そして、この心の底から湧き上がるこの闘争本能、とも言うべき思いは前世ではなかったものだ。
恐らく今の自分は艦娘、それも唯の萌えキャラではなく『兵器』としての本能が目覚めているからだろう。
弱音や悲しい思い、辛い思いに浸ることもあるだろう。
今でもこの世界に来た興奮と同時に前世の世界に返りたいという願いもある。
けど、今は目の前の事を全力で取り組んで行きたい。
それこそ、秘書艦の書類仕事や訓練、実戦、なんでもござれだ。
「返答は?」
返答か、だから答えは決まっている。
覚悟は決めている、ゆえに言うべき言葉これだけだ。
「だが、断る」