二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

駆逐艦『神風』の記録~艦隊これくしょん転生憑依物 第3話

2014-04-30 20:19:49 | 連載中SS

艦娘の人格と記憶に障害、デスカ。
金剛は改めてその言葉を振り返る。

艦娘

それはある日突然出現し、人類の海上航路を破壊した深海棲艦と同様に突然出現した。
どうして自分が前世とも言うべき艦の記憶を持ちつつ人間の形態でここにいるのか金剛には分からない。
俗に『始まりの艦娘』と言われる『吹雪』『叢雲』『電』『漣』『五月雨』の1人である叢雲に聞いた事もあるが。
叢雲もまた自分がどうしてここにいるのか分かっておらず、今なお答えは出ていない。

また艦娘と共に『妖精』と呼ばれる種族もどこから来て、どうして現れたのかまた分かっていない。
しかし、人類側としては原理が不明でも戦力として使えることが分かって以来、人類の守護者として活躍している。

そして艦娘の思考や基本的な構造は人類をベースとしつつも不明な所が多く、よく分からないままこれまでの日々を過ごしてきた。 
ゆえに、人格の変化に記憶喪失などといった例はこれまで無く金剛は内心でどうしすればいいのか分からない。

「どう…ぞ」

まあ、考えても仕方ないデスシ。
そう思った金剛はドアをノックする。
すると、部屋の中から低い声が聞こえた。

金剛はそのままドアノブを握り。
勢いよく押し、いつもの金剛らしく言葉を綴った。

「ヘーイ!神風大丈夫デスカー?」

個室の病室、ベットに少女がいた。
窓の外に写る青い海と空を背景に彼女、神風はいた。

やや伸びた銀髪。
普段は髪を纏めているらしく脇の机には髪留めが置いてある。
駆逐艦の艦娘の見た目は人類基準の年齢的に15~10歳程度であり。
神風は第6駆逐隊の『ヴェールヌイ』等と同じく、見た目は幼い体躯であった。

半身を起こしてこちらを向く表情は事前に聞いたとおり、無表情であった。
強いて感情を読み取るとしたら金色の瞳が僅かに大きくなった事に注目すればいいだろう。

「金剛……榛名……叢雲?」

ボソボソとした聞きにくいトーン。
だが、金剛と後ろにいる2人の名前を確かに言った。

「アンタ、どうやらわたし達の名前は分かるようね」

彼女はどうやら自分たちのことは知っていたらしい。 
背後の榛名が安心のため息をついたが、金剛は逆であった。
つまり、叢雲の言うように『名前は分かる』だけで後は何も知らない状態であると推測した。

現に表情こそ無表情なせいで感情が読み取れないが。
神風の視線は彷徨い、動揺しており明らかに感情が乱れていると推測できた。

「駆逐艦『神風』で相違ないな?」

どうしたものか?
と金剛が言葉を選んだ時、提督が言葉を続けた。
神風は提督をしばらくじっと見た後、無言で頷いた。

「貴官はこのリンガ泊地に着任する予定であったが……覚えているか?」
「……まったく」

そうか、と提督が悲しげに呟く。

「ならば貴官は一度検査も兼ねて本土へ帰還するように手配しよう。
 未だ人類にとって艦娘の構造は理解の範疇外であるが、研究調査、治療は本土の方が進んでいる。
 安心しろ、深海棲艦は我々だけでも食い止めることが可能だ、貴官はゆっくり休み、己を取り戻すといい」

口調は神風を案じたものであったが。
戦えない物はいらない、と言っているようなものだ。
深海棲艦と戦うために生まれてきたような艦娘からすればこれ以上ない侮辱に等しい。

しかし、金剛は知っていた。
提督は本気で神風の事を心配して言っていることを。

艦娘は突然現れたのと、唯一深海棲艦に対抗できる経緯から。
人の形をしていても捨て艦戦法を始めとして兵器として扱い、人間として扱われない場合がある。
しかし、提督はかつてのサーモン海域の飛行場姫との戦いで後方の参謀どもが恐喝恫喝とあらゆる手段で暗に捨て艦戦法を推奨したが。
最後まで捨て艦戦法をせず、自分たちをただの兵器として扱わず独立した自我を有する『人間』として扱ってくれた。

だから、今回もそうなのだろうと金剛は思った。
そして、だからこそ自分は提督を異性として好きであると確信する。
年齢差など、艦娘に意味はないし、この燃えるような情熱と愛を前に意味をなしえない。

そう考えれば考えるほど、感情の高ぶりが抑えられず。
金剛は今すぐ提督に抱きついて、頬ずりし、提督分を補給したい衝動に囚われた。

高速戦艦らしく早速行動に移そうとしたが、叢雲がさりげなく立ちふさがるように移動し、こちらを睨んできた。
金剛は思わずたじろぎ、続けて後ろから裾を引っ張られたので振り返ると榛名が何か言いたげに佇んでいる。

いや、正確に描写しよう。
表情こそ微笑し、笑顔を浮かべていたが。
「勝手は、榛名が許しません!」と瞳に怒りの炎を滾らせいた。

そう、提督を狙っているのは自分だけではなかった。
他にも提督に異性として惚れているのは榛名、叢雲を始め提督の指揮下にある艦隊の艦娘の多くがそうだ。

だが、上等だと金剛は思う。
そして最終的に提督のハートを掴むののは自分であると信じていた。

「返答は?」

金剛と榛名、叢雲で恋の冷戦が展開されている中。
当の提督は自分を巡って争っているいることに気づいておらず神風に答えを問うた。

提督の問いに神風はしばらく考えるような素振りを見せる。
一度眼を瞑り、周囲の注目の中。
神風は口を開いた。

「だが、断る」

神風の解答は拒否であった。



※  ※  ※


「金剛……榛名……叢雲?」
「アンタ、どうやらわたし達の名前は分かるようね」

いや、何せ薄い本。
それにMMDではパンツを覗いて散々息子がお世話に……ゲフンゲフン。
というか、原作キャラが行き成り3人も押し寄せて着ましたよ!?

まずは、アンタ呼ばりしてきた蒼銀の髪に金眼、歳は15ぐらいの少女は叢雲だろう。
頭にアンテナみたいな物は浮かべていないけど、このツンツンした言い方と姿は間違いなく叢雲だ。

うーむ、三次元で見るとなかなかの美人さんだ。
銀髪とかどこのラノベだよ、と突っ込むより前に三次元の叢雲が美少女すぎて辛い。

次に金剛、こっちは18~20といった所でこっちも美人すぎて辛い。
やや栗毛の長い髪は癖がなくサラサラだし、英国生まれなためか外人さんの特徴がある。
おまけに、顔の各パーツが整っていると、歳相応に成長しているからモデルみたいだ。

最後に榛名。
黒髪黒目で高くない鼻とか日本人の特徴を100パーセント受けついだ姿でやっぱり美人さんだ。
あと、金剛の後ろからこっちを覗いている姿が可愛くていい!

ああでも、第6駆逐隊がいないのは残念だ。
けど、この鎮守府にいることは間違いないだろう。

第6駆逐隊、それはロリコン提督にとって至宝にして至高の美の体現。
オカンな雷ちゃん、嫁の電ちゃん、レディ気取りの暁ちゃん、そしてクールな響ちゃん。

彼女達と出会うことはこの世界に来てすべき義務であり権利だ。
もちろん第6駆逐隊の面々と出会ったさい彼女達に嫌がることはしない。
お触りをする際には同意を得た上でやるし、無理やり触るとか絶対しない。

本当は紳士たるものは眺めるだけのYESロリータ、NOタッチ。
の精神で気高い精神で望まなければいけないけど、自分は欲望に打ち勝つことは無理だ。

何せ男のときなら問答無用で警察にターイホされるけど、今は同姓。
ゆえに、スキンシップとしてお触りすることはまったく不自然な行為でないし、むしろすべきだ(迫真)

そして、恒例のお風呂イベントでは……ふぅ。
む、いかんいかん、この場で一人妄想にふけるのは流石に不味い。

けど、前世ならニヤニヤと表情を浮かべていただろうけど。
今の鉄仮面な無表情は自分でも驚くほど動かないので、下心全開の妄想を気づかれる心配は全く無い。

つまり、いくら妄想してもバレない。
しかも同姓だからお触りもオッケー、いやっほおおお、最高だぜー!!

「駆逐艦『神風』で相違ないな?」

脳内が最高にヘブン状態であったけど、やたらゴツイおっさんがこっちの名前を聞いてきた。
詰襟式の白い軍服に金の7つボタンから見るに将校、それも肩についている階級から多分将官クラスの人間だな。

だとすると、このおっさんがT督なのか……?
いや、艦これの創作作品では提督は若い男でエロ同人誌ならばにゃんにゃんする展開だから忘れていたけど。
実際の艦隊指揮官たる提督クラスは会社で言うところ役員クラスの地位だからこれが自然か。

っと、名前を聞かれたから取り合えず軽く会釈。
どうもー今は神風らしいですけどコンチワー、今後ともよろしくお願いしまーす。

「貴官はこのリンガ泊地に着任する予定であったが……覚えているか?」
「……まったく」

御免提督さん、覚えてないっぽい!
と、軽くジョークも兼ねて夕立の真似をしたはずだが……口から出た言葉は全然違うのです?
おいおい、ここまで思考と言葉がリンクされていないのは可笑しいし、コミュ障ってレベルじゃねーよ!

「そうか」

なんてテンパっている自分を余所に、眼を伏せおっさん提督が呟いた。
そして周囲はしばらく沈黙し、さながら葬式会場と同じ空気が流れてしまう。

あ、あれ何この空気?
金剛、榛名そして叢雲までもが悲しげにしているし!?

「ならば貴官は一度検査も兼ねて本土へ帰還するように手配しよう。
 未だ人類にとって艦娘の構造は理解の範疇外であるが、研究調査、治療は本土の方が進んでいる。
 安心しろ、深海棲艦は我々だけでも食い止めることが可能だ、貴官はゆっくり休み、己を取り戻すといい」

まあ、普通そうだろうな。
ブラック鎮守府ならともかく、戦力にならない奴は前線から外れるのは。

僕がこの言葉に乗っても何の損はない。
何せ戦い方どころか、今の自分は妄想の類なのか分からない状態だ。
休んでていい、と言われたならば即座に休むべきだと思う。

けど、なんだ?
今の姿こそ幼い少女だが自分には男としての意地がある。
それに、どうやらこの世界は人類側が圧倒的に不利らしく、ここに逃げても先延ばしするだけだろう。

どうせ、本土。
日本に帰ってもいつかは戦わねばならない日が来る。
だったら、ここで提督やこの世界に来て初めて出会った彼女達と肩を並べて戦ったほうがいい。

戦い方は頭では知らない。
けど、何となくだが体は戦い方を覚えている気がするんだ。
そして、この心の底から湧き上がるこの闘争本能、とも言うべき思いは前世ではなかったものだ。
恐らく今の自分は艦娘、それも唯の萌えキャラではなく『兵器』としての本能が目覚めているからだろう。

弱音や悲しい思い、辛い思いに浸ることもあるだろう。
今でもこの世界に来た興奮と同時に前世の世界に返りたいという願いもある。

けど、今は目の前の事を全力で取り組んで行きたい。 
それこそ、秘書艦の書類仕事や訓練、実戦、なんでもござれだ。

「返答は?」

返答か、だから答えは決まっている。
覚悟は決めている、ゆえに言うべき言葉これだけだ。

「だが、断る」




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ヴァルハラの乙女 第10話「変化Ⅲ」(完成)

2014-04-29 20:35:06 | ヴァルハラの乙女



「真正面にネウロイ!」

先頭を飛ぶミーナが叫ぶ。
その視線御の先には遥か彼方の水平線で水しぶきを上げつつ突き進むネウロイがいた。

「エイラさんは私と共に直ちに攻撃に移ってください」

了解ーとエイラが解答する。

「リネットさん、宮藤さんはここでバックアップをお願いね」
「はい」
「はい!」

リネット、芳佳の2人は元気よくミーナの言葉に答えると、空中待機に移った。
バックアップというよりも置き去りのようなものでミーナとエイラの2人は彼女たちを引き離してゆく。
ふとミーナは首を後ろに回し、遠くに離れてゆく部下を見て憂鬱なため息をついた。

幼さが目立つまだ14歳の少女達、それとも一人前のウィッチである14歳というべきか。
ミーナはかつてその年に実戦に参加したが、彼女たちが引き金を指にする事態にならないことを内心で祈った。

「速い……直ぐに射程距離に入るぞ!」

エイラの声に反応し、視線を前に戻す。
たしかに速い、しかも低すぎて下からという攻撃の選択肢が阻まれる。
素人的には一見上から打ち放題と解釈可能だがネウロイからすれば攻撃される範囲が事前に知られる。

おまけに超低空なため墜落すれば直ぐに海面に叩きつけられるだろう。
保護魔法があるので衝撃は緩和するが、それでも御免こうむりたいものである。

「攻撃開始!」

しかし、そこに逃げるという選択肢はなかった。
ミーナの命令一言で2丁のMGから出た鉄の雨をネウロイに降らせる。

例え命中率が低くても理論上数撃てば当たる。
そして彼女たちはエース、ただのネウロイならば瞬殺されるだろう。

「速いっ…!!」

エイラが驚愕と歯ぎしり混じりに呟く。
相対速度が今まで以上に速く、なかなか当たらないのだ。
そしてミーナは基本戦術である一撃離脱は速度差で無理と判断。

代案を考える。
結論、相対速度を零にして張りつく他ない。

「後方に張り付きます、わたしに速度を合わせてください!」
「了解!」

2つの飛行機雲がカーブ、ネウロイの後方に張り付く。
その間にネウロイからの攻撃はなく、毎度の嫌になる量の光線は見なくて済んだ。

ミーナがエイラに無言に合図すると7.92ミリ弾で構成された鉄の暴風が再度出現する。
海面に無数の水柱が立ち、ネウロイはたまらず回避機動をしようとして速度が僅かに下がる。

そんな絶好の機会をエース2人は見逃さず多数の命中弾を与えることに成功した。
後部の推進機関と思しき場所と中心部に連続して着弾し、コアが露出する。

「コアよ!エイラさん、ここで仕留めます!」

エイラが頷くと赤く輝く宝石のようなコアを狙って撃つ。
何発かがコアに命中して、ネウロイから金属を引きずったような悲鳴を挙げる。

この時ミーナは勝利を確信した。
なぜなら、このままコアを破壊すればネウロイは崩壊するからだ。
そして、芳佳とリネットが戦場に出さずに済んだことに安心したが。

「分離した!?」

エイラが驚きの声を上げ、ミーナが息を呑んだ。
まさかトカゲの尻尾切りをネウロイがするなど誰もが想像できなかった。

ネウロイが後部を捨てると急激に加速、離脱に移った。
ミーナとエイラは逃がしてたまるかと、切り離した後部を避けてから食らいつくが徐々に離されてゆく。
魔導エンジンにありったけの魔力を注ぎ込み、最大の速度を持ってしてでもである。

「っ……なんて速さなの!?」

ミーナはその速さにスピード狂のシャーリーが頭に思い浮かぶ。
そして彼女、あるいは最新鋭機材を受けとった、バルクホルンでなければ追いつかないだろう。
けど彼女達はここにはいなく、いるのは自分達2人とネウロイの進行方向上にいる芳佳とリネットだけだ。

「宮藤さん、リネットさん、お願い、ネウロイがそちらに向かっているわ……」

結局最後に頼りになるのはその2人となってしまった。
ミーナが密かに唇を噛み、内心で己の不甲斐なさを攻め立てる。

が、すぐにミーナは頭を振る。
既に戻りようもない過去に執着して状況が変わるのか?
何も変わらないし意味が無いしそれに、とミーナは言葉を綴る。

「それに、戦争はいつだってこんなものだったわね」

ミーナは一人自虐のセリフを吐いた。



※  ※  ※



『宮藤さん、リーネさん、お願い。ネウロイがそちらに向かっているわ……』

ミーナとエイラの戦闘を観戦する形になっていたリネットと芳佳は。
インカムから聞こえたミーナの通信でたちまち観客の座から引きずり降ろされた思いであった。

「こっちにくるよ!」

芳佳が水平線の向こうを指を指し叫ぶ。
海面を這うように飛んでいるネウロイが米粒大の大きさから徐々に大きくなっている

リネットは戦場の緊張と興奮。
そして、芳佳の叫びに釣られてロクに照準に定めぬまま、引き金を引いた。

瞬間、腹の底まで響く。
対戦車ライフル独特のひと際大きな発砲音。
だが、当然のことながら明後日の方向へ弾は飛んで行った。

「…っ!!」

リネットはすっかり馴染んだ動作でボルトハンドルを上げ、手元に引く。
火薬が延焼した熱を保つ薬莢が排出され、硝煙の臭さが鼻につくがそれを意識する間もなく。

今度はハンドルを押して薬室を閉鎖。
薬室には新たな13.9ミリ弾がライフルの上部にあるマガジンから薬室へ装填される。

もう一度発砲、そしてまた外れる。
今度は最初とは違い狙って撃ったが、自らのボバリングの揺れでライフルの先がブレて弾を外してしまった。

その上、訓練の動かぬ的と違い実戦の動く的と独自の緊張感が飛行の集中力を乱す。
リネットは焦りと自らに対する怒りと共に、三度目の正直とばかりに体にしみ込んだ装填の動作を実行。

先の2回よりも集中力を高めて、弾道を計算。
飛行魔法と射撃制御の魔法のコントロールがぶつかり、脳内修正を繰り返す。
訓練通りの理想的なコントロールができていなかったけど、三度目の正直とばかりに慌てず焦らずゆっくりトリガーを引く。

発砲――――しかし、外れる。

「だめ、全然当てられない!!」

絶望の心情を吐くようにリネットが叫んだ。
何せ時間はない、もしもここで逃せば文字通り後がない。

ここを抜かれればネウロイは慈悲も情けも容赦もなく基地を蹂躙するだろう。
501の基地には着任して短いとはいえ愛着はあるし、なによりも基地にいる戦えない人間を見殺すことはできない。
やはり自分は何もできないままで終わってしまうのか?そんな焦燥感が精神を侵攻し、絶望がリネットの心を暗く閉ざしかけたが。

「大丈夫、訓練ではあんなに上手だったんだから」

芳佳からの励ましの声。
けれどもリネットは励まされる事実が己の不甲斐なさを強調された気をした。
何よりもこんな状況にも関わらず、いつもと変わらない態度にリネットは苛立ちを感じた。

「…っ飛ぶのに精一杯で、射撃を魔法でコントロールできないないから」

一瞬、芳佳に八つ当たりをしようと口を開きかけたが。
リネットの言葉は後半に入ってからさらに小さく弱弱しく変化する。
やはり自分にはできない、そう諦めのマイナス思考が脳に染み込んでゆく。

出撃のさいにあった自信が萎縮されてゆく。
しかし、宮藤芳佳はまだ諦めていないかった。

「じゃあ、私が支えてあげる。
 だったら撃つのに集中できるでしょ?」

「え?」

リネットが返事をする前に宮藤は行動に移る。
行き成り高度を下げてリネットの足の下にもぐりだした。
戦闘中の突然の奇行にリネットは呆然としたが何をしたかったかすぐに悟る。

「んっ……!!」

股間に芳佳のこげ茶色の柔らかな感触を感じ。
布越しのくすぐったさにリネットはつい色っぽい声を小さく挙げた。

「どう、これで安定する?」
「あ、あ・…はい」

股間の感触のもどかしさで顔が赤く染まる。
意味が分からずリネットはしばらく呆然としていたが、気づく。
そう、芳佳が支えてくれるおかげでボバリングは比べものにならないほど安定していた。
それに気づいたリネットは確かな希望を見出し、冷静さを確保し思考がクリアなものへと移行する。

「西北西の風、風力3。敵速、位置――-」

芳佳に感謝の言葉を行動で示すべく、しっかりとライフルを敵に向けて構える。
狙撃に必要な要素を声に出して思考をより狙撃に適したのへと暗示させ、銃と一体化する。

だが、リネットは満足していなかった。
これでもなおネウロイを仕留めるには足りない。
正確無慈悲にその数値を叩きだしてもまだまだ外してしまう。

一体何がたりない?
一体何が足りない?
短い時間だがぐるぐると思考が回転する。

「そうだ、敵の避ける未来位置を予測してしてそこに撃てばいいだ」

空戦の基本。
それは未来位置を予測してそこに弾を一度に叩きこむ。
言う事は簡単だがやるとなると経験則に依存する技術ゆえに非常に難しい。

人間は的を見て、的に合わせて狙いを定める癖がある。
的が低速で二次元での移動なら簡単に予測できてしまうが三次元空間である空中はそうはいかない。
上下左右、のみならず広大な空間は無限にも等しい選択の自由を秘めている。

そんな高等技術を習得した者だけが5機撃墜から始まるエースにやっと成れて。
250機撃墜記録を保持し、今も更新を続けるスーパーエースのエーリカ・ハルトマンの後を追いかける権利を得られるのだ。

「宮藤さん!」

だが、手は無くもない。
その方法を思いついたリネットは芳佳に呼びかけた。

同時に新たなマガジンを装填。
弾道修正、ライフルを持ち上げる。

リネット・ビショップの固有魔法は『弾道の安定と魔力付加』
念動力で放った弾丸をコントロールして、魔法力付加で威力と射程を底上げするという正に狙撃手向けの才能だ。
高い集中力を有するゆえに今の今まで訓練以外はまったく才能を生かせなかったけど、宮藤が支えてくれている。

「うん!」

芳佳はリネットの言葉に答えた。

「私と一緒に撃って!!」
「わかった!」

即ち、下の芳佳に機銃を撃たせて行動の範囲を限定させる。
この場合、予測して算出される機動は下は海面なので左右か上にネウロイは逃げる以外ありえない。
ここでリネットはネウロイが100パーセントそれ以外逃げようがないタイミングを図り、一撃必殺を狙う。

狙うは腹を見せることになる、体を斜め上に傾ける上昇機動。
だからリネットは視界の遥か先でネウロイが微妙に上に傾けた瞬間を逃さなかった。

「今です!」

刹那、ライフルと機関銃が光の矢を放つ。
重量60グラム、13.9ミリ徹甲弾の秒速747メートルの矢。
重量52グラム、12.7ミリ曳光弾の秒速780メートルの矢。
そんなちっぽけな金属の塊は光の軌道を青い空に曳き、人類の敵ネウロイに襲い―――リネットは見事に初戦果を挙げた。

ネウロイは宮藤の機銃弾を避けるため上昇した瞬間、大きく腹を見せる。
標的の面積が拡大した上にあらかじめ計算してリネットが放った対戦車ライフルの弾が黒いボディを貫く。
1発、2発と続々と命中し唯でさえ高威力だった上に固有魔法で威力が挙げられたため回復する余裕もなく、ネウロイは白く散り始めた。

「当たったぁ!!」

歓喜に解放感、達成感がリネットに満ちる。
彼女がようやく弱い自分、という名の敵に打ち勝った瞬間であった。

「リネットさん、すご……わぷっ!?」
「やった、やったよ。宮藤さん、私初めてネウロイを倒せたよ!」

リネットは喜びのあまり芳佳に抱きつき、ぎゅうぎゅう、と芳佳の顔を抱きしめてゆく。
芳佳はリネットのたわわに実った胸の柔らかみと、香りの心地よさに驚く。
そして、芳佳が今まで気づいていなかったオッパイマスターとして目覚めた瞬間でもあった。

『宮藤さん!リネットさん逃げて!!』

だが帰るまでが戦闘というルールであった。
油断大敵、という言葉の通り戦場では僅かな隙を作ったとたん簡単に命を落とす。
リネットはネウロイのコアを破壊したと思ったが、その実コアを『掠った』だけでネウロイはその場で直ぐに散らなかった。

無論、コアはミーナ達の攻撃を受けていたこともあり、リネットの狙撃が致命打となりネウロイはコントロールを失い自壊しつつある。
だが、ネウロイ崩壊しつつも海面を水切り遊びの石ころと同じく海面をバウンドしつつ、大質量の物体として彼女たちに襲って来た。

「――――――!」

リネットはミーナの声でネウロイの方角を見て、やっと気づくが遅い。
希望が絶望へと叩き落とされ、絶体絶命の危機に声を挙げる暇もなく――――。

「大丈夫」

リネットの視界に芳佳が現れ。
まるで王者を守護する騎士のごとくネウロイの前に立ちはだかる。

「私が友達を、リーネちゃんを守るんだから」

刹那、巨大なシールドが展開。
バウンドするネウロイをしっかりと受け止めた。

そしてそれが数分間の連続した緊張の糸が途切れ。
リネットの薄れゆく意識が見届けた最後の光景だった。




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ヴァルハラの乙女 第10話「戦争」Ⅱ

2014-04-28 22:37:26 | 連載中SS


『宮藤さん、リーネさん、お願い。ネウロイがそちらに向かっているわ……』

ミーナとエイラの戦闘を観戦する形になっていたリネットと芳佳は。
インカムから聞こえたミーナの通信でたちまち観客の座から引きずり降ろされた思いであった。

「こっちにくるよ!」

芳佳が水平線の向こうを指を指し叫ぶ。
海面を這うように飛んでいるネウロイが米粒大の大きさから徐々に大きくなっている

リネットは戦場の緊張と興奮。
そして、芳佳の叫びに釣られてロクに照準に定めぬまま、引き金を引いた。

瞬間、腹の底まで響く。
対戦車ライフル独特のひと際大きな発砲音。
だが、当然のことながら明後日の方向へ弾は飛んで行った。

「…っ!!」

リネットはすっかり馴染んだ動作でボルトハンドルを上げ、手元に引く。
火薬が延焼した熱を保つ薬莢が排出され、硝煙の臭さが鼻につくがそれを意識する間もなく。

今度はハンドルを押して薬室を閉鎖。
薬室には新たな13.9ミリ弾がライフルの上部にあるマガジンから薬室へ装填される。

もう一度発砲、そしてまた外れる。
今度は最初とは違い狙って撃ったが、自らのボバリングの揺れでライフルの先がブレて弾を外してしまった。

その上、訓練の動かぬ的と違い実戦の動く的と独自の緊張感が飛行の集中力を乱す。
リネットは焦りと自らに対する怒りと共に、三度目の正直とばかりに体にしみ込んだ装填の動作を実行。

先の2回よりも集中力を高めて、弾道を計算。
飛行魔法と射撃制御の魔法のコントロールがぶつかり、脳内修正を繰り返す。
訓練通りの理想的なコントロールができていなかったけど、三度目の正直とばかりに慌てず焦らずゆっくりトリガーを引く。

発砲――――しかし、外れる。

「だめ、全然当てられない!!」

絶望の心情を吐くようにリネットが叫んだ。
何せ時間はない、もしもここで逃せば文字通り後がない。

ここを抜かれればネウロイは慈悲も情けも容赦もなく基地を蹂躙するだろう。
501の基地には着任して短いとはいえ愛着はあるし、なによりも基地にいる戦えない人間を見殺すことはできない。
やはり自分は何もできないままで終わってしまうのか?そんな焦燥感が精神を侵攻し、絶望がリネットの心を暗く閉ざしかけたが。

「大丈夫、訓練ではあんなに上手だったんだから」

芳佳からの励ましの声。
けれどもリネットは励まされる事実が己の不甲斐なさを強調された気をした。
何よりもこんな状況にも関わらず、いつもと変わらない態度にリネットは苛立ちを感じた。

「…っ飛ぶのに精一杯で、射撃を魔法でコントロールできないないから」

一瞬、芳佳に八つ当たりをしようと口を開きかけたが。
リネットの言葉は後半に入ってからさらに小さく弱弱しく変化する。
やはり自分にはできない、そう諦めのマイナス思考が脳に染み込んでゆく。

出撃のさいにあった自信が萎縮されてゆく。
しかし、宮藤芳佳はまだ諦めていないかった。

「じゃあ、私が支えてあげる。
 だったら撃つのに集中できるでしょ?」

「え?」

リネットが返事をする前に宮藤は行動に移る。
行き成り高度を下げてリネットの足の下にもぐりだした。
戦闘中の突然の奇行にリネットは呆然としたが何をしたかったかすぐに悟る。

「んっ……!!」

股間に芳佳のこげ茶色の柔らかな感触を感じ。
布越しのくすぐったさにリネットはつい色っぽい声を小さく挙げた。

「どう、これで安定する?」
「あ、あ・…はい」

股間の感触のもどかしさで顔が赤く染まる。
意味が分からずリネットはしばらく呆然としていたが、気づく。
そう、芳佳が支えてくれるおかげでボバリングは比べものにならないほど安定していた。
それに気づいたリネットは確かな希望を見出し、冷静さを確保し思考がクリアなものへと移行する。

「西北西の風、風力3。敵速、位置――-」

芳佳に感謝の言葉を行動で示すべく、しっかりとライフルを敵に向けて構える。
狙撃に必要な要素を声に出して思考をより狙撃に適したのへと暗示させ、銃と一体化する。

だが、リネットは満足していなかった。
これでもなおネウロイを仕留めるには足りない。
正確無慈悲にその数値を叩きだしてもまだまだ外してしまう。

一体何がたりない?
一体何が足りない?
短い時間だがぐるぐると思考が回転する。

「そうだ、敵の避ける未来位置を予測してしてそこに撃てばいいだ」

空戦の基本。
それは未来位置を予測してそこに弾を一度に叩きこむ。
言う事は簡単だがやるとなると経験則に依存する技術ゆえに非常に難しい。

人間は的を見て、的に合わせて狙いを定める癖がある。
的が低速で二次元での移動なら簡単に予測できてしまうが三次元空間である空中はそうはいかない。
上下左右、のみならず広大な空間は無限にも等しい選択の自由を秘めている。

そんな高等技術を習得した者だけが5機撃墜から始まるエースにやっと成れて。
250機撃墜記録を保持し、今も更新を続けるスーパーエースのエーリカ・ハルトマンの後を追いかける権利を得られるのだ。

「宮藤さん!」

だが、手は無くもない。
その方法を思いついたリネットは芳佳に呼びかけた。

同時に新たなマガジンを装填。
弾道修正、ライフルを持ち上げる。

リネット・ビショップの固有魔法は『弾道の安定と魔力付加』
念動力で放った弾丸をコントロールして、魔法力付加で威力と射程を底上げするという正に狙撃手向けの才能だ。
高い集中力を有するゆえに今の今まで訓練以外はまったく才能を生かせなかったけど、宮藤が支えてくれている。

「うん!」

芳佳はリネットの言葉に答えた。

「わたしと一緒に撃って!!」
「わかった!」

即ち、下の芳佳に機銃を撃たせて行動の範囲を限定させる。
この場合、予測して算出される機動は下は海面なので左右か上にネウロイは逃げる以外ありえない。
ここでリネットはネウロイが100パーセントそれ以外逃げようがないタイミングを図り、一撃必殺を狙う。

狙うは腹を見せることになる、体を斜め上に傾ける上昇機動。
だからリネットは視界の遥か先でネウロイが微妙に上に傾けた瞬間を逃さなかった。

「今です!」

刹那、ライフルと機関銃が光の矢を放つ。
重量60グラム、13.9ミリ徹甲弾の秒速747メートルの矢。
重量52グラム、12.7ミリ曳光弾の秒速780メートルの矢。
そんなちっぽけな金属の塊は光の軌道を青い空に曳き、人類の敵ネウロイに襲い―――リネットは見事に初戦果を挙げた。

ネウロイは宮藤の機銃弾を避けるため上昇した瞬間、大きく腹を見せる。
標的の面積が拡大した上にあらかじめ計算してリネットが放った対戦車ライフルの弾が黒いボディを貫く。
唯でさえ高威力だった上に固有魔法で威力が挙げられたため回復する余裕もなく、ネウロイは白く散り始めた。




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駆逐艦『神風』の記録~艦これくしょん転生憑依物 第3話上

2014-04-25 20:43:51 | 連載中SS

艦娘の人格に記憶に障害、デスカ。
金剛は改めてその言葉を振り返る。

艦娘

それはある日突然出現し、人類の海上航路を破壊した深海棲艦と同様に突然出現した。
どうして自分が前世とも言うべき艦の記憶を持ちつつ人間の形態でここにいるのか金剛には分からない。
俗に『始まりの艦娘』と言われる『吹雪』『叢雲』『電』『漣』『五月雨』の1人である叢雲に聞いた事もあるが。
叢雲もまた自分がどうしてここにいるのか分かっておらず、今なお答えは出ていない。

また艦娘と共に『妖精』と呼ばれる種族もどこから来て、どうして現れたのかまた分かっていない。
しかし、人類側としては原理が不明でも戦力として使えることが分かって以来、人類の守護者として活躍している。

そして艦娘の思考や基本的な構造は人類をベースとしつつも不明な所が多く、よく分からないままこれまでの日々を過ごしてきた。 
ゆえに、人格の変化に記憶喪失などといった例はこれまで無く金剛は内心でどうしすればいいのか分からない。

「どう…ぞ」

まあ、考えても仕方ないデスシ。
そう思った金剛はドアをノックする。
すると、部屋の中から低い声が聞こえた。

金剛はそのままドアノブを握り。
勢いよく押し、いつもの金剛らしく言葉を綴った。

「ヘーイ!神風大丈夫デスカー?」

個室の病室、ベットに少女がいた。
窓の外に写る青い海と空を背景に彼女、神風はいた。

やや伸びた銀髪。
普段は髪を纏めているらしく脇の机には髪留めが置いてある。
駆逐艦の艦娘の見た目は人類基準の年齢的に15~10歳程度であり。
神風は第7駆逐隊の『ヴェールヌイ』等と同じく、見た目は幼い体躯であった。

半身を起こしてこちらを向く表情は事前に聞いたとおり、無表情であった。
強いて感情を読み取るとしたら金色の瞳が僅かに大きくなった事に注目すればいいだろう。

「金剛……榛名……叢雲?」

ボソボソとした聞きにくいトーン。
だが、金剛と後ろにいる2人の名前を確かに言った。

「アンタ、どうやらわたし達の名前は分かるようね」

彼女はどうやら自分たちのことは知っていたらしい。 
背後の榛名が安心のため息をついたが、金剛は逆であった。
つまり、叢雲の言うように『名前は分かる』だけで後は何も知らない状態であると推測した。

現に表情こそ無表情なせいで感情が読み取れないが。
神風の視線は彷徨い、動揺しており明らかに感情が乱れていると推測できた。

「駆逐艦『神風』で相違ないな?」

どうしたものか?
と金剛が言葉を選んだ時、提督が言葉を続けた。
神風は提督をしばらくじっと見た後、無言で頷いた。

「貴官はこのリンガ泊地に着任する予定であったが……覚えているか?」
「……まったく」

そうか、と提督が悲しげに呟く。

「ならば貴官は一度検査も兼ねて本土へ帰還するように手配しよう。
 未だ人類にとって艦娘の構造は理解の範疇外であるが、研究調査、治療は本土の方が進んでいる。
 安心しろ、深海棲艦は我々だけでも食い止めることが可能だ、貴官はゆっくり休み、己を取り戻すといい」

口調は神風を案じたものであったが。
戦えない物はいらない、と言っているようなものだ。
深海棲艦と戦うために生まれてきたような艦娘からすればこれ以上ない侮辱に等しい。

しかし、金剛は知っていた。
提督は本気で神風の事を心配して言っていることを。

艦娘は突然現れたのと、唯一深海棲艦に対抗できる経緯から。
人の形をしていても捨て艦戦法を始めとして兵器として扱い、人間として扱われない場合がある。
しかし、提督はかつてのサーモン海域の飛行場姫との戦いで後方の参謀どもが恐喝恫喝とあらゆる手段で暗に捨て艦戦法を推奨したが。
最後まで捨て艦戦法をせず、自分たちをただの兵器として扱わず独立した自我を有する『人間』として扱ってくれた。

だから、今回もそうなのだろうと金剛は思った。
そして、だからこそ自分は提督を異性として好きであると確信する。
年齢差など、艦娘に意味はないし、この燃えるような情熱と愛を前に意味をなしえない。

そう考えれば考えるほど、感情の高ぶりが抑えられず。
金剛は今すぐ提督に抱きついて、頬ずりし、提督分を補給したい衝動に囚われた。

高速戦艦らしく早速行動に移そうとしたが、叢雲がさりげなく立ちふさがるように移動し、こちらを睨んできた。
金剛は思わずたじろぎ、続けて後ろから裾を引っ張られたので振り返ると榛名が何か言いたげに佇んでいる。

いや、正確に描写しよう。
表情こそ微笑し、笑顔を浮かべていたが。
「勝手は、榛名が許しません!」と瞳に怒りの炎を滾らせいた。

そう、提督を狙っているのは自分だけではなかった。
他にも提督に異性として惚れているのは榛名、叢雲を始め提督の指揮下にある艦隊の艦娘の多くがそうだ。

だが、上等だと金剛は思う。
そして最終的に提督のハートを掴むののは自分であると信じていた。

「返答は?」

金剛と榛名、叢雲で恋の冷戦が展開されている中。
当の提督は自分を巡って争っているいることに気づいておらず神風に答えを問うた。

提督の問いに神風はしばらく考えるような素振りを見せる。
一度眼を瞑り、周囲の注目の中。
神風は口を開いた。

「だが、断る」

神風の解答は拒否であった。




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ヴァルハラの乙女 第10話「戦争」Ⅰ

2014-04-23 22:50:47 | 連載中SS


「真正面にネウロイ!」

先頭を飛ぶミーナが叫ぶ。
その視線御の先には遥か彼方の水平線で水しぶきを上げつつ突き進むネウロイがいた。

「エイラさんはわたしと共に直ちに攻撃に移ってください」

了解ーとエイラが解答する。

「リネットさん、宮藤さんはここでバックアップをお願いね」
「はい」
「はい!」

リネット、芳佳の2人は元気よくミーナの言葉に答えると、空中待機に移った。
バックアップというよりも置き去りのようなものでミーナとエイラの2人は彼女たちを引き離してゆく。
ふとミーナは首を後ろに回し、遠くに離れてゆく部下を見て憂鬱なため息をついた。

幼さが目立つまだ14歳の少女達、それとも一人前のウィッチである14歳というべきか。
ミーナはかつてその年に実戦に参加したが、彼女たちが引き金を指にする事態にならないことを内心で祈った。

「早い……直ぐに射程距離に入るぞ!」

エイラの声に反応し、視線を前に戻す。
たしかに速い、しかも低すぎて下からという攻撃の選択肢が阻まれる。
素人的には一見上から打ち放題と解釈可能だがネウロイからすれば攻撃される範囲が事前に知られる。

おまけに超低空なため墜落すれば直ぐに海面に叩きつけられるだろう。
保護魔法があるので衝撃は緩和するが、それでも御免こうむりたいものである。

「攻撃開始!」

しかし、そこに逃げるという選択肢はなかった。
ミーナの命令一言で2丁のMGから出た鉄の雨をネウロイに降らせる。

例え命中率が低くても理論上数撃てば当たる。
そして彼女たちはエース、ただのネウロイならば瞬殺されるだろう。

「速いっ…!!」

エイラが驚愕と歯ぎしり混じりに呟く。
相対速度が今まで以上に速く、なかなか当たらないのだ。
そしてミーナは基本戦術である一撃離脱は速度差で無理と判断。

代案を考える。
結論、相対速度を零にして張りつく他ない。

「後方に張り付きます、わたしに速度を合わせてください!」
「了解!」

2つの飛行機雲がカーブ、ネウロイの後方に張り付く。
その間にネウロイからの攻撃はなく、毎度の嫌になる量の光線は見なくて済んだ。

ミーナがエイラに無言に合図すると7.92ミリ弾で構成された鉄の暴風が再度出現する。
海面に無数の水柱が立ち、ネウロイはたまらず回避機動をしようとして速度が僅かに下がる。

そんな絶好の機会をエース2人は見逃さず多数の命中弾を与えることに成功した。
後部の推進機関と思しき場所と中心部に連続して着弾し、コアが露出する。

「コアよ!エイラさん、ここで仕留めます!」

エイラが頷くと赤く輝く宝石のようなコアを狙って撃つ。
何発かがコアに命中して、ネウロイから金属を引きずったような悲鳴を挙げる。

この時ミーナは勝利を確信した。
なぜなら、このままコアを破壊すればネウロイは崩壊するからだ。
そして、芳佳とリネットが戦場に出さずに済んだことに安心したが。

「分離した!?」

エイラが驚きの声を上げ、ミーナが息を呑んだ。
まさかトカゲの尻尾切りをネウロイがするなど誰もが想像できなかった。

ネウロイが後部を捨てると急激に加速、離脱に移った。
ミーナとエイラは逃がしてたまるかと、切り離した後部を避けてから食らいつくが徐々に離されてゆく。
魔導エンジンにありったけの魔力を注ぎ込み、最大の速度を持ってしてでもである。

「っ……なんて速さなの!?」

ミーナはその速さにスピード狂のシャーリーが頭に思い浮かぶ。
そして彼女、あるいは最新鋭機材を受けとった、バルクホルンでなければ追いつかないだろう。
けど彼女達はここにはいなく、いるのは自分達2人とネウロイの進行方向上にいる芳佳とリネットだけだ。

「宮藤さん、リネットさん、お願い、ネウロイがそちらに向かっているわ……」

結局最後に頼りになるのはその2人となってしまった。
ミーナが密かに唇を噛み、内心で己の不甲斐なさを攻め立てる。

が、すぐにミーナは頭を振る。
既に戻りようもない過去に執着して状況が変わるのか?
何も変わらないし意味が無いしそれに、とミーナは言葉を綴る。

「それに、戦争はいつだってこんなものだったわね」

ミーナは一人自虐のセリフを吐いた。





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