二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

ヴァルハラの乙女 第5話「バルクホルンの憂鬱Ⅱ」Ⅲ

2014-02-28 23:17:51 | 習作SS

ダン!やタン!ではなくズドン!
と腹まで響くようなひときわ大きな発砲音が蒼い海と空に轟く。
そして、立ち上る硝煙の香りが鼻を刺激させた刹那、双眼鏡越しに捉えていた目標に穴が開いた。

「命中、見事だリーネ」

距離は約800メートル。
目標の大きさは1メートル四方のもので、
これだけ離れていると、肉眼ではまったく見えない。

しかもだ、リーネが使用している銃器はボーイズ対戦車ライフル。
全長1.5メートル、重量は16キロと重たいことこの上ない代物で、
対戦車ライフルであるため、もしも人間に当たれば胴体が2つに割れること間違いないであろう。
なお、55口径(13.9ミリ)ゆえに反動も大きいが魔法力のおかげで伏射状態でバイポッドを立てずに撃てる。

「リネットさんすっごーい!あんな遠くの的を当てるなんて!」

隣にいる宮藤が率直な感想を述べる。
精々100メートル前後で射撃訓練を受けている彼女からすれば、
リーネのやり遂げたことは凄いことなのだろう、しかし。

「そんなこと、ないです」

リーネの反応は悪かった。
照れるより卑屈ゆえにしゅん、と獣耳と尻尾が下がった。

いつもならその可愛らしさと属性と相俟って
「ゴツイ銃器と美少女、しかも獣耳付きなんて萌えるなぁ!後ついでにモフらせろ!」
と内心でワクテカするのだが……はぁ、やっぱりリーネのメンタルはあまり良くないないみたいだ。

「自虐する必要はないぞリーネ。
 その距離で当てるとなると流石のわたしでも難しいからな」

「そうだよ!リネットさん!私なんて今でも全然当たらないし!」

「……そう、ですか」

わたしと宮藤の2人が褒めるが本人は生返事である。

…まあ、仕方がないと言えば仕方がない。
訓練校から行き成り精鋭部隊へ配属され周囲に気圧され、
挙句自分より後から入った新人、宮藤芳佳は巨大なシールドを張って『赤城』を守り、
訓練初日からいきなり単独飛行に成功させたのだからこれで劣等感を刺激されないほうがおかしい。
おまけに【原作】でも

「訓練もなしに行き成り飛べた宮藤さんとは違うの!」

と言った様に今わたしの横にいるこの主人公は飲み込みが異様に早いと来た。
確かにへっぽこな所があるが、それを改善させる力がやたらと高い。

指揮官として即戦力として非常にありがたい人材であるが、
彼女らの上司、戦友として考えると、特にリーネの心情を思うと実に難しいものだ。



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ヴァルハラの乙女 第5話「バルクホルンの憂鬱Ⅱ」Ⅱ

2014-02-26 19:52:52 | 習作SS



しかし、こんな平和な時間の間にも訓練は続けられている。
特に自分が連れてきた宮藤芳佳、そしてリネット・ビショップに対する訓練は、
バルクホルンの指導の下、徹底的に指導している最中である。
現に今は射撃訓練なのか、時折発砲音が窓の外から響いている。

(こうした時間が長ければ長いほど、訓練に割り当てることが出来るのだが)

数日も過ぎればネウロイが襲来する可能性が高い、
そのことを知っている坂本少佐は悔しげに顔をゆがめた。

規模によるが最悪彼女ら2人を連れて行くような事態になれば、
当然それだけ激戦となってベテラン勢がひこっ子2人の面倒を見る暇がなくなり、
最悪の場合2人揃って二階級昇進、つまり戦死する可能性が高くなってしまう。

実戦は半年分の訓練に勝る。
という言葉があっても基本ができていなければ意味がない。
だが、その時間が圧倒的に足りないのが現状で、敬礼の仕方や軍人としてのマナーといった、
教育課程を飛ばしてひたすら訓練、さらに訓練、訓練漬けの日々を遅らせているがなお足りない。

(何時もなら単機か少数のネウロイだから、
 2人が出撃するような事態は低いといえるが、万が一の事を思うと気になるな)

窓の向こうの蒼い空を見上げる。
あの空に飛んだのが11か12のころだっただろうか?
その時と場所は違い、遥々欧州までやってきたがそれでも空の色は変わらない。

当然のことだ。
しかし、人類とネウロイが戦う日々もまた変わらないのだろうか?

(私も随分と長い間戦ってきた。
 けどもうすぐ20歳だ、ウィッチとして戦えるのは良くてあと1年。
 最悪今年の間に魔法力の減退が始まって、飛べなくなってしまうかもしれない)

魔法が使えなくなるウィッチの寿命は古来より20歳だ。
ゆえに今年で19歳の坂本少佐に残された時間は僅か1年でしかない。

(……っ何を弱気になっているんだ!
 せめて宮藤が、あの宮藤博士の娘が一人前になるまで私は辞めるわけにはいかない!)

父親が既にこの世にいないことを知り、
泣き崩れ、そして真っ直ぐな瞳で戦場に立つことを決意した彼女、
宮藤芳佳をウィッチとして育て、導いていかなければいけない。

そして坂本少佐は呟いた。

「宮藤、私がウィッチとして寿命を迎えるその日までお前を守ろう。
 例え私がシールドが張れなくなり、わが身を犠牲にしても――――私はお前を守る」

自分以外誰もいない部屋で、坂本少佐は静かに決意を固めた。 
空は変わらず蒼く、夏の日差しが変わらぬある昼のことであった。



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おススメ動画 ビッテンフェルト提督が鎮守府に着任しました

2014-02-25 07:37:46 | おススメ動画
ビッテンフェルト提督が鎮守府に着任しました



『銀河英雄伝説』のビッテンフェルト提督が、
北方海域で全戦単縦夜戦殲滅戦をするだけの動画。





噂の戦艦4、加賀が中破したけど、
「怯むな!反撃だ!我が艦隊に退却の文字はない!!」
お、おう。




夜戦で殲☆滅。
「猪突猛進こそ我らの本領よ!
 敵に如何なる奇計奇策があろうとも力で打ち破ってくれるわ!!」

もうやだ、この提督。




霧島大破、赤城小破。
弾薬欠乏、けど当然のことながら。




「ひるむな、前進しろ!
無理やりにでも接近戦に持ち込めば勝機はある!」




そしてこのドヤ顔である




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ヴァルハラの乙女 第5話「バルクホルンの憂鬱Ⅱ」Ⅰ

2014-02-24 21:37:20 | 習作SS

「む?」

ぼやけた視界にぼやけた思考。
当初は何も理解できなかったが両者は時間が経過するにつれて原因が判明する。
何でもない、ただ自分は執務室で書類仕事の途中で寝てしまったのだ。

「……まったく、私は書類仕事が苦手なんだがな」

黒髪の少女、坂本美緒が涎を拭きつつぼやいた。
しかも、机に寄りかかる形で寝ていたせいで体のあちこちが痛い。
寝ていたことも加え、かなり長い時間書類と睨めっこしていたせいか目がショボショボする。

眼帯を付けていない方の眼をこすり、米神を抑えて目の周囲の血行を良くしようとする。
本当なら、台所にいるだろう宮藤に温かいタオルでも準備してもらった方がいいが、そうはいかない。

横には山ほどに積まれた書類、これを何てしてでも終わらなさなければならない。
手早く済まさなければ午後のティータイムに間に合わないだけでなく残業になりかねない。

いくら下士官から佐官まで上り詰めた程実力があるとはいえ、
坂本美緒という人間は根本的に戦以外を知らぬ「もののふ」ゆえにとことん現場主義者で、こうした仕事には慣れていない。
ふと、ロンドンまで予算を分捕りに行ったミーナはいつもこんな仕事をしていることを思い出し感謝の念を送った。

「ふぁぁぁ」

今日は青海な空で降り注ぐ太陽がもたらす熱は温かい。
周囲に部下もいないことも加え、こうして欠伸をするくらい心地よい日だ。

「………………」

また意識が朦朧と仕出す。
いかんな、また寝てしまいそうだ。
等と隙だらけな思考を巡らせる程心地よい昼下がりだ。

「慣れない仕事はするものではないな―――いや、駄目だ給料分は働かなければ」

兵卒ならそれが許されたが、残念ながら佐官。
多くの特権が与えられると同時に給料以上の責任と義務を要求される階級にいる。
血税で養われている身なので、あまり長く休むことは坂本美緒の形成されて来た精神と主義に反する。

(では、手早く済ませて見せるか。)

決意を新たにして再度書類の山との戦闘を開始する。
内容は様々だ、補給品関係でも食料、武器弾薬、被服、資金と体系でき、
ここからさらに細かく分岐してゆき、分岐した後でもさらにその先と分岐してゆく。

組織とは常に連絡、報告が義務づけられているからそれこそトイレットペーパー1つまで報告書が提出される。
馬鹿らしいと考えてしまうが、それこそが公平で一定の法則に従った組織の存続の避けられぬ運命。
まして軍も国家の官僚組織の一種類にすぎず、記録を残す事に情熱を掲げる官僚組織は民間以上に書類に執着する。
よって、大量の書類の過半数はどうでもいい日常的業務の報告書が占める。

そして本当にトイレットペーパーの消費量について注意を促す書類が出てきて、坂本少佐はゲンナリした。
いくつものサインがなされ、年頃の少女ばかりの部隊にそんな書類をよこした連中の顔を想像する。
すると、50代のおじ様と結婚したというウィルマの夫が脳に映し出された。

「却下」

人の趣味嗜好はそれぞれだというがあまりよろしくない。
リネットには悪いが流石の自分でもその年の差はマズイと思うな、と坂本少佐は考えた。
結婚式で見た感じ、本人たちは嬉しそうだったが……なんと言うか周囲の空気は実に微妙であったのをよく覚えている。

「少佐ー書類できたよー」

などと回想している最中、外から二度ノック。
そいて聞こえた声で部屋にいた彼女側は注目をドアへと向ける。

「おう、入れ」

返答と共に開いたドアから人が滑るように入って来た。

「ちぃーす、こんにちわー」
「ふむ、シャーリーか。何の書類だ?」

書類をぷらぷらと手で振りながら部隊一のナイスバディが入室した。

「この間の戦闘報告書」
「ああ成る程、ご苦労」

書類を机に置く際に少し前かがみになり、
たわわに実った2つの果実が坂本少佐にこれでもかと強調する。
ペリーヌが見たら嫉妬と女性としての羨望で狂いそうな光景だ。

もっとも、このもののふは、

(でか過ぎると反って邪魔だな)

とまったく女性の思考が欠けた感想を抱いた。
そして、書類に書き忘れや書式が間違ってないか不備がないか簡単にチェックして言った。

「うむ、ご苦労。
 問題ない、後は好きにしていいぞ」

「了解ー」

いやー書類仕事は面倒だなー、
とボヤきつつシャーリーは部屋を後にした。
彼女が立ち去った後部屋に響く音は窓の外から響く海と風の声だけで、
他に雑音はなく、残された坂本少佐はポツリと呟いた。

「…………平和だな、」







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ヴァルハラの乙女 第4話「バルクホルンの憂鬱」(完成)

2014-02-23 12:39:39 | ヴァルハラの乙女

『生まれながらにして勇者は存在しない、ただ訓練のみによって生まれる』

とは古代ローマの偉い人が述べたコメントである。
軍隊とは常に訓練をしなければ即座に練度が低下し戦力として成り立たない。
それを考えるとこの言葉は、日々の訓練の重要性を我々に教えてくれる貴重な助言であり、真理である。

だからこそミーナはドレットノート級に、
ケチな財務担当者から如何にして予算をむしり取るか思考をめぐらせ。

部隊管理をある程度任されている、
わたしのような中間管理職は常に足りない費用を如何に効率的に使うかを考える。
そして各種手続き書類の作成、サインのために筆を走らせ、打ち合わせに走り回らなければいけない。

ただ、正面の敵と戦っていればいい。
という思考は近代の軍隊では存在の余地はない。
ましてや、指揮官達は部下が安心して訓練に励めるようにしなければいけない。
まあ、ようするに。わたしがやっている事はネウロイとドンパチする事を除けば、
その辺のサラリーマン、あるいは公務員のように書類と格闘するのが普段の日常だ。

だけど1944年の夏。
ここブリタニアにて私が第501統合戦闘航空団基地上空で響く悲鳴、
そして罵声は面倒な書手続きの末に手に入れた訓練機材をいっそ清々しいほど破壊してゆく姿であった。

『きゃあぁぁぁ~~!!』
『旋回が遅ーい!』

ブリタニアに寄港する途中にネウロイと遭遇、
落下するネウロイに対してシールドを張り、見事に『赤城』を守り抜いた期待の新人。
宮藤芳佳軍曹は飛行訓練の一環で阻止気球の間を抜ける訓練をしているが、何の遠慮なく破壊していた。

「…………ねえ、トゥルーデ。
 宮藤さんは『赤城』に匹敵するほど巨大なシールドを出せたわよね」

そうだ、あの日『赤城』にネウロイが落下し、
もう間に合わないと思った矢先『赤城』を守るように巨大なシールドが展開された。
唖然、呆然とするわたし達であったが、やがてシールドに阻まれたネウロイは、
元々深手を負っていたため、そのまま白い結晶と共に散った。

確かに彼女、宮藤芳佳はこの世界の鍵を握る人物だ。
【原作】でも散々「ウィッチに不可能はない!」と熱血主人公のように何度も逆転劇を演じた。
それを知った上で、この世界の常識に当てはめて言うと――――主人公まじチート。

つーか、何なんだよ!?
『赤城』並にデカいシールドなんて個人で出せるレベルじゃないし!
しかも色々あって今日始めて501の隊員として入隊したのだが、
普通なら先に教官と2人でする練習用の機材で飛行し、経験を積んでから単独飛行をするのだけど。

「いや、宮藤単独で飛行してもらう。
 何?流石に無理だって?心配性だなバルクホルン。なーに、ウィッチに不可能はない!」

で、一発で飛行成功しましたよこの主人公は。

【原作】でも一発で飛行に成功していたとはいえ、
あればネウロイに『赤城』が沈められそうになり精神的にも追い詰めれた状態であった。

この世界では変わりにシールドを張ったため、
彼女はまだ飛行しておらず、ゆえに常識論として通常通りの手順に沿った訓練を提示したが、

坂本少佐、もといもっさんの向日葵のような笑顔と共に却下され、
宮藤芳佳にはいきなり単独飛行を行い――――これに成功しつつあった。

「ミーナ、現実逃避は良くないぞ。
 我々の眼に映るものは宮藤軍曹がクソ高い気球につっ込み、次々と壊してしているシーンだ」

ボン、ボンと割れる音が連続して響く。
盛大に、それこそ爽快に破壊しているのは見ている側として乾いた笑いしか出ない。
現在進行形で器物破壊活動を行っている現行犯は後で注意を促すことで済むが。
壊されてしまった物は二度と戻って来なく、後始末はこちらがしなければいけない。

『きゃあああ!!』
『宮藤ぃ~!!』

あ、最後の1基が爆発した。
巻き込まれたが……まあ、魔法力の保護があるか大丈夫だろう。

「……宮藤さん、今まで飛んだことがないのに一回でここまで飛べたからすごいわよね」

「そうだな、確かに凄い、普通ならばこの水準までには数ヶ月かかるし。
 それよりミーナ、たしか気球は1基あたり30~40ポンドだったよな……予算、あるのか?」

「………………」

わたしの問いに対して、
ミーナは明後日の方向を向いてしばし沈黙する。
思わず沈黙は金、雄弁は銀、という言葉がふと浮かんだ。

「…………ロンドンまで行って予算を取ってくるわ」

背中に哀愁を漂わせてミーナが呟いた。
ああ、やっぱりか…という事はこちらはこちらで工面する必要があるな。
まずは近隣の部隊に掛け合って気球を借りるか、嗚呼また書類が必要だな……。

で、さらに問題がある。
視線を横にずらし、宮藤芳佳の飛行を見物しているその他ギャラリー陣を見る。

「おいおい、見ろよルッキーニ!!
 宮藤の奴ったら気球を全部壊しちゃったぜ!
 私も散々備品を壊して来たけど着て早々とかは流石になかったぜ、これは負けたな!」

「にひひひ、これは後で始末書だねシャーリー!」

シャーリーとルッキーニのジャッキーニは2人して彼女の下手糞な飛行を見て大うけしている。
というか君たち、散々始末書を書いては何度も反省したはずだけどまったく懲りずに今でも始末書を書いているよね?
そしてエイラ、そして珍しくこの時間帯に起きているサーニャーは2人で仲良く並んで鑑賞していた。

「あ、う……う、うううう???」
「……エイラ?」
「はっ、何でもない!何でもないぞサーニャ!」

ただ、エイラがサーニャと手を繋ぐか繋がないかで、
悶々と悩んでいる所を見ていると相変わらずヘタレ具合は改善されていないようだ。
まあ、それでもエイラーニャ教徒でもあったわたしからすれば十分萌える光景でもあるのだが……ふぅ。

「まったく、坂本少佐が連れてきた新人ですから、
 さぞ優秀な方だと期待しておりましたのに、これでは期待はずれですわ。
 というか、どうして少佐は昨日今日始めたばかりの素人をここに連れて来たのかしら?」

ペリーヌは1人紅茶を片手に宮藤芳佳について論じているようだ。
結構きつい事を言っているが、ペリーヌは坂本少佐一筋だからなぁ……。

「うりゃー!」
「ひゃあ!!?」

あ、ルッキーニがペリーヌの胸を掴んだ。

「どうだった、ルッキーニ?」
「残念賞、成長してなーい。リーネよりちっちゃいまま」
「お、おだまりなさーい!?」

涙目になりながら胸を押さえペリーヌが叫んだ。
ペリーヌに胸の話をするなよ…本人は結構気にしているのだし、
時折同じ歳のリーネや一つ上のシャーリーの胸とか結構ガン見しているのを知っているのだろ?
この間なんか乳が重いから肩がこるなんてボヤいていたら、殺意を込めて睨まれたというのに懲りないなぁ…。

けどまあ、こうして騒がしく過ごすのが一番いいことは確かだ。
度が過ぎれば流石に問題であるが、しかしこの程度ならば問題なかろう。
しかし、そんな騒がしい中で一人だけ沈黙を保っている人物がいる。

「………………」

薄い金髪で一本の三つ編みを後ろに垂らした少女が、ただぼんやりと空を見上げていた。
時折俯き、何かを呟いているが服の裾を震えと共に強く握っているのを見ると、あまり良い傾向とは言いがたい。

彼女もまた、最近第501戦闘航空団に着たばかりの新人で、
優秀なウィッチを自国の部隊に残したいという政治的理由で訓練部隊から直接ここに来ており、
今日一日で飛行に成功した宮藤芳佳に思うところがあるのだろう――――主に劣等感的意味合いで。

彼女の名は、リネット。
リネット・ビショップである。

「ミーナ、リネットなんだが」

「リネットさんね、
 坂本少佐は宮藤さんが刺激になれば良い、
 と思っていたようだけど――――これでは逆効果のようね」

細かいことを気にせず豪快な性格をしている少佐、もといもっさんは、
宮藤芳佳の存在が引っ込み思案のリネットを刺激させ、奮起することを期待していたのだろう。

坂本少佐の発想はまあ、ありだろう。
しかし世の中、そうして奮起するよりもより劣等感に悩まされる場合がある。
元々ここ501は各国のエースが集まった精鋭部隊であるため、リネットに常に緊張を強いてしまった。
無論、出来る限り友好的な態度でわたし達は接してきたけど、それでも彼女の精神的緊張を解すことは出来なかった。

「リネットさんは訓練では悪くないのよ、
 少なくても、今の宮藤さんのように気球を全部壊すような真似はしないし。
 けど実戦では緊張で魔法の制御がおぼつかなくて、飛ぶだけがやっとなだけ」

「ああ、それに実戦に出した際、戦えなかったのが痛いな」

宮藤芳佳が来る前、リネットは何度が実戦を経験している。
主に4人で威力偵察も兼ねた哨戒飛行で同じく哨戒飛行をしているネウロイに対して攻撃するのだが、
1度目は緊張のあまり腹痛で引き返し、2度目は戦闘に突入したが魔法の制御が出来ずに海に墜落。
と、こんな感じでミスが続いたせいでリネットは自分に自信を持てずにいる。

『宮藤ィ~』
『あうう、坂本さんごめんなさい』

む、着陸するな。
気球もなくなったから午前の訓練はこれで終了と見た。

『気にするな、機材なんて壊してもまた持ってくればいい!』

いやいや、気にして下さい。
それをまた持ってくるのがすごく大変なのですから。

「美緒の言葉は正しいのよね、
 だって機材は予算さえあれば何度でも蘇るけど、
 人材はそうはいかないから、けどね、予算が、予算がね……」

「……そう、だな」

少佐ェ……。

『それに今日は飛べただけでも上出来だ、
 明日からは、リーネも加えてさらにびしばし行くから覚悟しておけ』

『は、はい!』

疲労の色を隠せない宮藤芳佳であるが、
その瞳は輝いており、口からは元気な声が出ていた。

「っ……」

しかし、それを聞いていたリーネは逃げるように格納庫へ走っていった。

「リーネ……」

明日からは自分も含めて訓練する。
そのさい、今日一発で飛行に成功した宮藤芳佳と自分が比べ、
劣っているのが分かってしまうのに、耐え切れなかったのだろう。

【原作】からネウロイが来た際、
主人公と強力して撃破してからようやく自分に自信が持てた。
だからと言って、このまま放置するのは彼女の上司としてできない。

だが、問題はどうやって彼女の劣等感を払拭すべきか?
こればかりは本人が変わらなければ、周囲がいくら言っても変わる事はできない。

「難しいな、」

ウィッチは美人そろいで、
一見華やかに見える職場であるが、
わたしの様な立場になると、こうして色々考えなければいけない。

この場合役に立つのは前世知識ではなく、経験。
それもこうした人様の悩みを解決し導くことに長けてなければならない。
そして、この世界でもそこそこ経験を積んだとはいえ、残念ながら自分はそこまでできていない。

けどまあ、

「出来ることをするしかないな」

知っておきながら、
出来ないから放置するのはわたしには出来ない。
彼女が【原作】キャラというだけでなく彼女の上官、そして501の仲間として。











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