二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

西住「飛んで!あんこう!」 (ガールズ&パンツァー×沈黙の艦隊)

2013-10-23 00:23:27 | 習作SS

「駆逐艦が3隻、接近しているぞ」

聴音機を回していた冷泉麻子が呟く。
発令所は俄かに緊張感に包まれ、思わず天井を見上げる。

「このまま静座してやり過ごします、全員音を立てないでください」

西住みほが声をひそめて命令する。
彼女の言葉を聞いた部員は素早くその意思に従い音を立てずにじっと待つ。

聖グロリアーナ女学院戦で緊張感に耐えられず騒いでしまった一年生も、
この時は口に手を当てて音を出さないように健気に堪え、恐怖に耐えていた。

やがて、聴音機を付けている冷泉だけでなく、
発令所にいた部員も駆逐艦のスクリューが海中をかき回す音を耳にした。

駆逐艦特有の甲高い音が真上を通過する。
ここで爆雷が投下されるかどうかは、まさに神のみぞ知ること。
だから、どうか見つかりませんように、神様仏様と各々が祈りを込める。

操舵担当の五十鈴華は特に祈らずぼんやりと天井を見ていたが、
周囲から祈りの声が聞こえたので、視線を隣の親友に移動させると日本の神や仏だけでなく、
北欧の多神から地中海の神々と多岐にわたって眼を瞑ってぶつぶつを祈っているのを見る。
そんなに祈った所で御利益が分散するような、そんな疑問を抱きながらさらに周囲を見渡す。

発令所は10人にも満たない人員しかいないとはいえ辺りはシン、と静まりかえっている。
魚雷室担当の風紀委員や別室の聴音担当の冷泉麻子がどうしているかは分らないが恐らくここと同じような感じだろう。
生徒会のメンバーなども神やら仏に頼んでいたが、西住みほだけでは違っていた。

彼女だけは一寸の隙間なく、
まるで真上を通過する駆逐艦を睨むように真っすぐ上を見ていた。
普段のどこかぼんやりと、悪くいえば気が抜けた雰囲気は抜け落ち、
代わりに今の彼女は「完璧な潜水艦の艦長」としての空気を纏っていた。

――――このギャップが西住さんが皆を引きつける要因かもしれませんね。

ふと、五十鈴華はそう思った。

そして、10分程だろうか?
やがて、駆逐艦の音は徐々に遠ざかり、元の静寂に満ちた海へと戻った。

「ふぅー、なんとか気付かれずにすみましたね、西住殿」

秋山優香里が顔に吹き出た汗をふきつつ言う。
なお、彼女はマニアが高じた結果、艦長に次ぐポジョンの副長担当である。

「だが秋山。見つからなかったのはいいが、何時までも静座しているわけにはいかないぞ」
「そうそう、西住ちゃんどうする?」
「早く沈めないとまけちゃいますし…」

同じく冷や汗をぬぐい問いかける河嶋桃と角谷杏、小山柚子の生徒会メンバー一同。

さて、ここで一つ解説したい。
この「潜水艦道」では2つの武道が合同で行うものである、
すなわち「潜水艦道」と「対潜道」の両者が対決し、それぞれが

・輸送船団を護衛する護衛艦隊
・それを襲撃する潜水艦群

といった形で行われ、
潜水艦側は無人誘導の輸送船、または護衛を沈めることでポイントを稼ぎ、
制限時間内に稼いだポイント数によって「潜水艦道大会」のトーナメントに勝ち上がる。

対して護衛艦隊側は如何に素早く潜水艦を沈め、
また、輸送船を守り切るかでポイントが付き「対潜道大会」試合の勝敗を決める。
なので、大洗校潜水艦部はいつまでもじっとしているわけにはいかず、いずれは襲撃しなければいけな

ただし、問題があるとすれば相手が聖グロリアーナ女学院に次ぐ「対潜道」における名門校こと、
アナポリス大学付属大学サンダース高校で、護衛空母を含んだ40隻以上の艦船を有しており、

昨年までは全ての公式戦では参加艦船の制限が掛っていたが、
より大会を盛り上げることを名目に、それとは別に無制限ルールの大会が今年開始された。
これを聞きつけた角谷杏は、学校存続の危機を回避するには一か八かでより派手な実績を証明しなければならなかったため、
強引に参加した結果、たった1隻の潜水艦が40隻近くの艦船に追いまわれ、現在に至る。

「はい、一応考えはあります。
 ――――中島さん来てくれませんか?」

伝令管から機関室担当の自動車部を呼ぶ。

「はい、はーい、西住艦長。どうかしましたかー?」

直ぐにスパナを片手に機関担当の中島が陽気な声と共に発令所に来た。
油汚れがツナギだけでなく頬にもついていたが、元々自動車部、
というより整備部の名称が似合うほどの機械オタクだったので本人は全く気にしていなかった。

「中島さん、最大速度。どのくらいだせますか?」
「…艦長、それはあのいまいち聞き分けの悪い子、ヴァルターちゃんを含めてですか?」

中島はみほの質問に意図にわくわくし、面白そうに答えた。

潜水艦は水中を機動するため、排気ができないため水中は基本電気推進である。
だが、燃料推進と比較して燃費に馬力に欠けており、電池が切れたら燃料推進で水上航行し電池を溜めなければいけない。

水上を航行する潜水艦はただの的でしかなく、潜水艦の最大の武器である「潜水」が意味をなさない。
なので、現実において永久に潜り、かつ移動できる反応炉推進の潜水艦が各国で建造された。
そして、もう1つ別の道として1937年に考案されたのが非大気依存推進機関、
つまり現在に続くAIPの始まりであり、それがヴァルターちゃんことヴァルター機関である。

基本的な原理は潜水艦内部で酸素を作ってしまい、
内燃機関に送り込んで通常の内燃料機関と同様に動かしてしまう事である。
が、問題があるとすれば高濃度の過酸化水素を使用するため扱いは極めて慎重に行わねばならず、
池や泥に沈んだ戦車でも完全に復活させてしまうだけの技量を有する自動車部でもやや扱いは難しかったが、

「過酸化水素タンクの容量もあるけど、
 できれば一度に長時間の運用はおススメできないね。
 ――――けれで、あれこれ弄ったから5分間の全力なら26ノットは出せるはずだよ」

26ノット!その言葉に発令所にいた部員はどよめく。
まさか、学園艦の奥で眠っており、とりあえず装備したはずが最大の武器になるとは誰もが予想し得なかった。

「――――わかりました、それなら何とかなりそうです」

そして、その言葉でみほは決意を固め、艦内マイクを手に取り口を開いた。

『みなさん、聞いてください。
 これより浮上してサンダースを迎え撃ちます』

サンダースを迎え撃つ、
ついに始まったと部員は興奮するが同時に不安の気持ちが出る。

『海上には合計40隻の艦隊が待ち受けています
 ――――けど、訓練通り落ち着いて行動してください
 例え相手が40隻でも全部沈めてしまえばいいだけです』

一度、言葉を区切る。

『初めての大会、そして初めての困難。
 みなさんの不安は間違っていません、わたしも今この瞬間も不安で一杯です――――けど諦めたら負けなのです』

再度区切る。

『諦めたら負けなのです』

そして繰り返し強調した。

みほは何時の間にやら持ち場を離れて発令所に集合した全員を見渡す。
幾ら策はあるとはいえ、博打な代物だしそれは全員の協力があってこそ成功するものである。
だからこそ挫けた士気を盛り上げるためこうして激励したが、彼女らの瞳には戸惑いしか浮かんでいない。

「……っ」

やはり無理だったのだろうか?
やっぱり自分は「潜水艦道」に向いていないんじゃないのか?
みほはそこまで考え、スカートの裾を握りしめたが、

「…西住殿の言うとおりです」

秋山が呟く。

「わたしたち、諦めたら負けなのです!」

そして心を込めて叫んだ。
それが切欠に皆の心に一本の杭が打ち込まれた、諦めたら負けだと。

「諦めたら、負けか…」
「そうだな、諦めたらまけでござるよ」
「いや、浮上ってもう無理……だけど頑張るか」
「うん、諦めた負けだよね!」
「うんうん、そうだね―――ーだったら頑張ろっか」

皆がして口にする、諦めたら負けだと。
わたしたちはまだ戦える。だから、次の指示を。
そう視線がみほに集中する。

「みぽりん、行こう」
「西住さんとなら、私はどこまでも付いていきます」

武部沙織、五十鈴華がみほの手を握る。

「……みんな」

信じあえる仲間と友達。
一度無くしてしまったもの、手から零れ落ちたもの。
それらが今みほの目の前にあった。

「やれやれだぜ、感動のシーンだけど――――今の声で気づかれたぞ」

聴音機を忙しなく回す、冷泉麻子。

「これは…すごいな、全部こっちに向かって来ているぞ」

その言葉の意味にいち早く気づき、動いたのはみほだった。

「全員配置についてください!!機関始動!メインタンクブロー!!」
「了解!機関始動、メインタンクブロー!」

みほの一声で部員たちは一斉に持ち場へ戻る。
非常灯に切り替わり、戦闘態勢へと以降する。
電気推進の機関の振動が低く響き、あんこう号ことUボートXXI型、
ヴァルター機関装備改装型は30度の角度で海底から海面へ飛翔する。

「これよりサンダースを迎え撃つ、トビウオ作戦を行います――――ヴァルター機関、接続、全速浮上!」

みほの言葉に応じるようにあんこう号はさらに加速し、待ち受けるサンダース校の真正面から突撃を開始した。





「蒼き鋼のアルペジオ」のイオナの中の人か西住殿だったからこんなネタが思いついたww
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第14話 「対峙」

2013-10-20 13:25:20 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

「おやおや、お互い楽しそうでなによりです」

こんな穏やかな時間が永遠に続けばいい、そう思っていいたが、
楽しげな言葉であるが冷やかな音声を伴った第三者の声が聞こえた。

「先輩…」
「こんばんわ、遠野君」

振り返った先にはカソック服を纏ったシエル先輩が佇んでいた。
先輩は何時ものように笑顔を浮かべていたが、学校で見せる笑顔とは違っていた。
そう、まるで獲物を見つけた肉食獣のような笑顔であった。

「弓塚さんも、こんばんわ」

現に弓塚に対しては眼がまったく笑っておらず、
言われた側は肩をビクリと震わせ反射的にアルクェイドの後ろに隠れた。

まさか、
シエル先輩はネロとやりあったあの日の夜と同じく、
弓塚を吸血鬼として今度こそ断罪するつもりなのだろうか?

だとしたら、させない。
なぜなら、今こうして3人で居られる光景こそが俺が望むものだから。
それが間違いだと言うなら俺はそれを否定してやる、例えそれが先輩であったとしても。

「先輩――――『まったく、遠野君ったら学校でも噂になっていましたけど、
 真夜中に女の子を2人も連れまわすなんて意外とプレイボーイなんですね』――――はい!?」

ポケットのナイフを手にして覚悟を決めて、
先輩に問いつめようとした矢先、先輩が言いだした突拍子のない話に呆けてしまった。

いやいや、待て女の子を連れまわしているとかまあ、
確かに事実と言えば事実かもしれないけど、学校で噂になっているってなんでさ!

「遠野君、知らなかったのですか?
 今日学校で夜な夜な金髪の美女と可愛い系の女子を連れまわしている、と噂になっていましたよ」

思わずアルクェイドと弓塚を見る。
確かに、考えて見れば金髪赤眼のアルクェイドは目立つ容姿をしている上に、
鼻立ち、眼の大きさ、といった1つ1つのパーツの精度が高く全体的に完成されており、
絶世の美女とは誰か?と言われたら俺はクレオパトラではなく眼の前の彼女を選ぶであろう。

一方、弓塚はアルクェイドほど派手な容姿をしていないが、
眼などの顔を構成するパーツのバランスが良く、こまめに整った顔立ちをしており、
アルクェイドが美女ならば、弓塚は美人というより年頃の可愛い女学生といった感じだ。

そんな2人と一緒に真夜中を徘徊する俺はどう見られるのだろうか?
――――怪しさ万点である、あるいはダブルデートをしている色男とでも見られても可笑しくない。

……有彦に知られたら、殴られるかもな。

「雑談するために来たのかしら?わざわざこんな極東の島国まで御苦労さまね、代行者」

アルクェイドが口を開く。
その言葉に普段の能天気さは消えて刺を含んでいた。

「なに、遠野君の学校における先輩としてちょっとだけ振舞っただけですよ。
 いくら私でも人間はそうした遊びが必要ですからね――――もっとも、吸血鬼である貴女には関係のない話かもしれませんが」

「へえ――――?」

ジクリと冷たい空気が肌を刺す。
先輩とアルクェイドが出し合う殺意がぶつかり合い、険悪な空気が流れる。
しばしの間ピリピリとした緊張感を漂わせ、睨みあいを演じていたがシエル先輩が口を開いた。

「まあ、警告ですよ、警告、主に遠野君に。そう、貴方は今とても危険な状態にいます」
「お、俺?」

思わぬ指名に驚く。

「吸血鬼の吸血衝動、というものを知っていますか遠野君?」
「吸血衝動?」

聞き覚えのない単語に首をひねる。

「吸血衝動とは、要は吸血鬼が血を吸いたいという強い衝動です。
 吸血鬼は超越種としての特権の代償として血を吸わなければいけません。
 普段はそれこそ輸血パックで満足できますが、生命に瀕した時などは
『眼の前の人間を殺してでも』血を吸いたいという衝動に飲み込まれてしまいます、私を一度殺した弓塚さんのように」

さりげなく弓塚に視線を寄こす先輩。
先輩に恨みといった感情はなかったが、弓塚は気まずげに視線をそらす。

なるほど先輩の話は分る、だけど――――。

「けど、先輩。だったらそんな危険な目に合わないようにすればいいんじゃないのか?」

だったら、そういた状況下に俺が、
いや俺たち3人が協力し合えばいいだけだ。

だけど、なんで先輩はこんな話をするのだろう?
仮にロアと戦う事自体が危険だというなら目的が同じ先輩を含めた4人で戦えばいいだけなのに。

「成程、一理ありますが遠野君。
 まだ話の途中だったので勘違いしているようですけど、
 私が遠野君により注意して欲しいのは、弓塚さんよりもむしろ真祖アルクェイド・ブリュンスタッドなのですよ」

「え、アルクェイドを?」

またもや意外な答えに、
間が抜けたように言葉を出してしまう。

「アルクェイド、いいえ。
 真祖の吸血鬼と呼ばれる生き物は普通の吸血鬼と違って血は飲んではいけない物なのです」

「血を飲んではいけない?吸血鬼なのに?」

血を吸う鬼、
と書いて吸血鬼と読むにも関わらず血を吸わない。この矛盾はどういうことだろうか?
そういえば、弓塚こそ血を吸っていたがアルクェイドが血を吸う姿を俺は一度も見ていない。

「真祖とは吸血鬼というよりも精霊に近しいもの。
 彼らはあらゆる面で人類を超越する存在でしたが、1つだけ欠点がありました」

間を置き続けていう。

「それは血を吸いたいという、吸血衝動。
 その強さはもはや単純に精神のみで押さえ込めるようなレベルではなく、
 真祖の能力の過半が抑制に費やされてしまうほどで、
 1度血を吸った真祖はそれ以降の吸血衝動の苦痛は倍加し、
 これに耐えられなかった真祖は無差別に血を貪り、人間では打倒不可能な魔王と成ります
 ――――かつて彼女はそうした魔王の処刑人、いいえ兵器でした、ある人間の姦計に手に掛るまでは」

俄かに信じられない。
アルクェイドが人外的な強さを持っていることは知っていたけど、
そうした人外の存在を狩る役割をアルクェイドが担っていたなんて。
そして、「ある人間の姦計の手に掛るまで」と先輩は言ったけどまさか、それは。

「そう、その人間こそこの街を騒がす吸血鬼ことロアです。
 その男はアルクェイドに自らの血を飲ませて、
 自身は強力な吸血鬼になると同時に彼女は暴走して真祖を全滅させしまいました。
 その上、一度遠野君に殺されて分っているはずです、アルクェイド・ブリュンスタッド。
 貴女はその吸血鬼衝動を抑えるために永遠の眠りにつくか、自ら命を絶つしかない、ひびが入ったグラスであることを」

シエル先輩の険しい視線がアルクェイドに突き刺さる。
嘘だ、アルクェイドが永遠の眠りか命を絶つかの二択しかないなんて、そんなはずがあってたまるか。
だから、アルクェイド、いつものようにあの能天気な笑顔で否定してくれ――――。

「そんなことは――――」

けど、現実は非情であった。
口こそ否定の言葉を発していたが、
眼の前の彼女は何時ものアルクェイドには似合わない焦りと悲壮の表情を浮かべていた。

「そうですか、」

でしたらこの程度の動きに反応できますよね?
そう言い終わると先輩は弾丸のごとくアルクェイドに肉薄し、
アルクェイドにから、え?と気が抜けた言葉が出た刹那、彼女はシエル先輩に吹き飛ばされた。

「な――――!?」

俺がようやく反応できたのはアルクェイドが派手に土埃を揚げて、転がって行った時であった。
弓塚もまた反応できず、アルクェイドに巻き込まれる形で吹き飛ばされた。

「驚きました、弱体化していることは予想してましたけど、まさかここまでなんて」

拳を突き出した姿で淡々と呟く先輩。
アルクェイドに仕出かしたことに腹が立つ前に、
一瞬で人を吹き飛ばせ、なおかつ冷静、というより冷酷すら思わせる態度に俺は戦慄を覚えた。

「遠野君の傍から立ち去りなさい、吸血鬼。
 おままごとはここまでです、アルクェイド・ブリュンスタッドそして弓塚さつき」

懐から投剣のようなものを取り出し、2人に突き付ける。
どうやら、先輩は俺のためにしているようだけどさっきから俺の話は聞いてもいない。
まったく、どいつもこいつも俺を除者にして事を進めようとする。

「さっきから聞いていれば、いい加減にしてください先輩!」
「………………」

先輩はピタリと動きを止め、視線を俺に変える。
青い瞳には遊びはなく、一寸の隙間もない冷酷さを宿していた。

「先輩は俺のためといっているけど、
 俺は俺の意思でこうやって一緒に居たいと思っているんだ。
 先輩がそれでも、駄目だというなら――――俺にだって覚悟はある」

ナイフを取り出して構える。
魔眼殺しの方ははずしていない。
といよりも、俺は覚悟があると言いつつも結局先輩を殺すことなんてできない。

例え先輩は言った、この街に来たのはロアを倒すためだと。
だから、こうしてシエル先輩を先輩と認識しているのは多分偽りの記憶なのだろう。
けれでも、俺はそれでもシエル先輩は先輩だから、先輩を殺すことは出来ない。

「……浅はかですね、たしかに遠野君は驚異的な体術と魔眼を使いこなしていますが、
 たかがナイフ一本で代行者、それも埋葬機関第七位にして「弓」の二つ名を頂く私に立ち向かうおつもりですか?」

ネロに匹敵するプレッシャーが襲いかかる。
この現在、俺と先輩との関係は学校の先輩後輩ではなく、殺し会いを演じる関係であった。

いや、違う。正確には狩るか狩られるかの関係、
それも狩る方は先輩で狩られるのは俺であり、襲いかかるプレッシャーで脂汗が吹き出て胃が悲鳴を挙げる。

「………………」
「………………」

お互い言葉を発さぬまま沈黙の時間がただ流れる。
見つめあった状態で動かなかったが、先に行動に出たのは先輩の方であった。

「はぁ、まさか遠野君が、
 ここまで頑固者だったなんて。
 前に関わらないように言ったつもりでしたのに」

肩を落とし、ため息をつく。

「先輩…その、」

「突然ごめんなさい、遠野君。
 けど、真祖が暴走したさいに、
 真っ先に犠牲となるのは彼女の傍にいる遠野君なのです」

剣をしまい、話し続ける。

「それに遠野君はわざわざこちらの世界に入らなくてもいいのです。
 ロアにしろ、何にしろこんなことは私のような人間に全て任せてもいいのです。
 帰るべきです、こんな暗闇の世界ではなく、日の当たる人の世界に帰るべきなのです、それでも――――」

「それでもなお2人と共にいますか?」そう先輩は質問した。
そんなこと始めから分り切っており、迷いはなかった。

「ああ、元々そのつもりだから」

「……そうですか、後は遠野君に判断に任せましょう、
 私が言える義理じゃないですけど後悔がないように頑張ってください」

話はこれでおしまい、
とばかりに先輩は背を向けて公園の外へ歩き出した。
そして、俺は2人が転がっているはずの場所へ振り返ったが――――あれ?

「アルクェイド?弓塚?」

そこには誰もおらず、
僅かに乱れた土の後が人がいた証拠を残していた。
くそ、2人共どこにいったんだ!?

「遠野君、アルクェイドは公園東の方角に走った後に気絶しています。
 恐らく遠野君に吸血衝動の事実が聞かれた事にショックを覚えて逃げたけど、
 弱体化していたから途中で倒れたのでしょう、弓塚さんは先ほど彼女のために水を取りに行きました」

背を向けたまま、東に指を指し先輩は淡々と見たことを口にした。

「ありがとう、先輩。
 やっぱり先輩は先輩で優しいのですね」

「優しい、
 じゃなくて自分がただ甘いだけです。
 ついでに、これはただのお節介、贅肉のようなものです。
 さあ、早く行きなさい、あの2人の下に行くべきです。」

言い終わると先輩は一度も振り返らず立ち去った。
先輩は自虐していたけど、何だかんだと言って俺が知っている先輩で嬉しかった。

さて、俺は2人の所へ行こう――――。
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おススメSS 闇が深くなる夜明けの前に~機動戦艦ナデシコ×銀河英雄伝説

2013-10-19 21:05:36 | おススメSS
闇が深くなる夜明けの前に~機動戦艦ナデシコ×銀河英雄伝説
SFとはサイエンス・フィクションの略ですが、
サイエンスの部分が先鋭化しすぎて小説がまるで科学論文のようなありさまと成りました。

俗にSF「すごくふしぎ」と揶揄され、
SFが読者からするとあまりにも難解なものと成り、結果SFブーム終焉の一つの要因であることに間違いないでしょう。

そんなSFものですが、「銀河英雄伝説」は今日でも根強い人気を誇り、
今もなお数多くのSSが書かれており、今晩は銀河英雄伝説のSSを、それもクロスオーバーネタのを紹介します。

タイトルから分るようにクロス先は90年代のアニメ「機動戦艦ナデシコ」です。
ストーリーはナデシコがジャンプをした際に気づいたら、未来。それも数万隻の艦隊戦が行われる世界にいた、
というように世界移動型クロスSSで、ユリカは自由惑星同盟の保護のもと帝国軍と戦います。

『ビュコック提督、まだ終わったわけではありません。
 緒戦では敗れましたが充分に戦える戦力があります。
 まだ嘆くには早すぎますよ。我々には幸運の女神もいることですしな』

『おお、そうじゃったな。ミスマル提督のおかげでウランフは助かったのだからな』

『ええ、よくがんばってくれました。まさに戦女神です』

一斉に各艦隊司令官の視線がユリカに集中した。
白い制服に身体を包んだ駆け出しの女性艦隊司令官は気恥ずかしそうに頬を染め、肩をちょっとすくめてかしこまった。

「いえ、私が至らないばかりにウランフ提督にはご負担をおかけしてしまいました。
 より早く救援に駆けつけることができれば犠牲はもっと少なかったでしょうに……」

『そんなことはない。貴官の行動と勇気がなければウランフもどうなっていたかわからんじゃろ。
 ボロディンも早々と撤退などできず、わしの艦隊はもっと犠牲を出していたかもしれん。
 ミスマル提督、貴官は流れを変えるために最大限努力してくれた。
 もっと自分の行動と能力に誇りを持ってよいのじゃよ。貴官は立派な艦隊司令官じゃ。
 ここに集う艦隊司令官はみなそう思っておる。いや、貴官を認めておる。まだ全てが終わったわけではないが感謝しておるよ』

ビュコックが頭を下げると、各艦隊司令官も同意したようにユリカ向かって敬礼した。

「ありがとうございます。まだまだ力不足ですが最後まで責任を全うさせていただきます」

ユリカは感動し、同時に身の引き締まる思いがした。凛々しい敬礼で司令官たちに敬意と感謝を表明した。


と、こんな感じに帝国領侵攻作戦に艦隊司令として参加し、歴史を変えてゆきます。
銀英的派手な艦隊戦も読めるし何よりも長編で2年以上連載し、今もなお連載しております。

ぜひ、見てください。




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おススメSS 保身なき零距離射撃、始めます!

2013-10-17 17:19:30 | おススメSS
保身なき零距離射撃、始めます!

10月のクセに暑いと思えば急に寒くなるような日々ですが皆さまはどうですか?
お体は大丈夫ですか?自分は特に問題なくSSの執筆とピクシブで良作SSを探る日々であります。

さて、今日はピクシブで発掘した短編SSを紹介します。
お題は「ガールズ&パンツァー」のクロスネタSSで、クロス先は「パンプキン・シザーズ」であります。

聞こえてくる通信にエリカは息を呑む。
今更聞かされなくても、その伝説は十二分に見知っている。

「たとえその瞳を灼かれても、たとえその腕をもがれても……、奴らは決して歩みを止めない。
“死沼へ誘う鬼火”に導かれるまま“保身なき零距離射撃”を敢行する。
 生を捨てた跫音。死を産み散らす銃爪。――対戦車猟兵“命を無視された兵隊”。
 それが、裏西住流! 元黒森峰女学園戦車道副隊長、西住・みほ!!」

……私が、憧れ目指した存在ッ!
彼女のようになりたくて西住流を学んだ。
そして、実際に裏西住流を体験し、……挫折した。
あれは、人の身で修得出来るようなものではない。
その不可能を当然のように行う西住・みほ。

だが、自分の憧れを手にした少女は、その力を忌避していた。
……それが悔しく、許せなかった。――だから、私はッ!?


…軍神じみた西住殿がより人外に近付いているけど、あんま違和感がない件について(汗)






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おススメSS セイバー、アルク、式の三人がアーネンエルベでさらにぐだぐだと

2013-10-15 01:32:13 | おススメSS
セイバー、アルク、式の三人がアーネンエルベでさらにぐだぐだと

またもやピクシブよりSSを紹介します。
今回はタイプムーンシリーズ、通称型月のを紹介したいと思います。

このSSでは、奇跡の魔法のバーゲンセル状態な平行世界ネタで公式でも出た喫茶店アーネンエルベで、
型月三大ヒロインが公式ドラマCDのようにネタな談話や女子会的会話を繰り広げるSSです。

作者はそうしたアーネンエルベネタSSを書いていますが、
今回は「空の境界」の「未来福音」が映画化されるとのことで「未来福音」のネタが使用されています。

「……避妊?」
「おい」
「そういえば避妊された経験が記憶にありませんね」
「志貴がゴムとか付けてるところ見たこと無いかも」
「これだからっ! これだからエロゲ出身の住人はっ!」
一歩間違えば差別になりかねない式の発言であるが、エロゲ界隈における避妊率の少なさについては純然たる事実であった。


wwwwと、こんな感じなSSでサクサクと読めなお且つ読み応えがあります。
「未来福音」の映画が放映中ですしぜひ見てください。
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