二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

おススメSS 「Fate/Grand Order IF 星詠みの皇女」

2020-04-16 21:57:09 | おススメSS

 

Fate/Grand Order IF 星詠みの皇女 - ハーメルン

凡人と己を蔑む少年は、それでも何かを掴む事を諦めきれなかった。 彼の呼び声に応えたのは1人の皇女。 無辜の民に奪われ、貶められた事で全てを諦...

ハーメルン - SS・小説投稿サイト-

 



「もしもカドックがぐだ男と共にグランドオーダーを駆け抜けたら」
という誰もが一度妄想したネタを体現したSSで7つの特異点全てを駆け抜け描ききった稀に見る大作です。

よく二次創作あるあるで「原作の展開そのまま」なのもなく、
同時に世界観と登場人物たちの思考性格を崩さずに原作とはややちがう展開を見事に描写しています。


ぜひ見てください。

 

「終わったわ、マスター。いつまで隠れているつもり?」
「あ、ああ・・・」
 
土塊の小屋から恐る恐る顔を出す。
改めて見下ろした魔術師の少女は、どこか浮世離れした小さな女の子だった。
瓦礫の街に似つかわしくない白いドレス。
儚げだがどこか芯の強そうな眼差し。
その手には人形のような何かが大事そうに抱えられている。
育ちの良いどこかのお嬢様にしか見えず、間近で見ていたにも関わらず彼女が異形を鎮めた事が
今でも信じられなかった。
 
「マスター、何を呆けているの? それとも呼び出したのが私では不満なのかしら?」
 
冷ややかな目でこちらを見つめながら、キャスターは不満げに問いかける。
見透かされているかのような強い眼差しに、カドックは思わず居住まいを正した。
 
「いや、大丈夫だ。えっと・・・キャスター、で良いんだよな」
 
魔術世界における最上級の使い魔。
英霊の座にアクセスし、過去に存在した数多の英雄、英傑。
神話や伝承に語られる存在を呼び出し使役する。
それがサーヴァントと呼ばれる使い魔だ。
一見すると深窓の令嬢にしか見えない彼女もまた、その内に強い力を秘めた
綺羅星の如き英霊の1人なのだろう。
本来ならばこの特異点探索における緊急時の武力手段として、
カルデアのバックアップのもとで英霊召喚を行う予定だったが、
どうやら彼女は自分が独力で召喚したサーヴァントのようだ。
意識すれば魔力のパスがきちんと繋がっており、
彼女が自分の使い魔である事をはっきりと感じ取れる。
念のため両の手を確認すると、右手の甲にサーヴァントを召喚した証ともいえる3画の令呪が
しっかりと刻まれていた。
ふと小屋の中に視線を向けると、瓦礫と埃に塗れた床の上に召喚の魔法陣が
うっすらと描かれているのが見えた。
恐らく、破れかぶれで行った召喚の魔術がこの魔法陣と同期したのだろう。
ここに来る前にペペロンチーノが冬木市で聖杯戦争が行われていたらしいと言っていたが、
まさかここはそれに参加していた魔術師の工房なのだろうか。
 

 

 

 

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ACT.14「蹂躙」

2020-04-15 16:44:30 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

シオンに襲われてまた寝込んで一晩。
街に漂う気配は不穏かつ不気味な空気をより一層濃く纏っている。

ネオン輝く繁華街も明かりは消え失せ、
オフィス街で働いていた人々は既に我が家へと帰宅済み。
と、まるで図ったかのように人の気配が早々と街から消え失せている。

元々タタリが流す不穏な噂で人々が怯えていたこともあるが―――――人の気配が無さすぎる。
そのくせあの神殿の名を冠したビルを軸として妙に血生臭い空気と臭いが街全体に漂っている。

だから黒レンに叩き起こされた時から直ぐに悟った。
いよいよタタリが動きだしたと。

タタリがどこにいるか調べなくとも『知っている』
そして志貴たちはどこへ行って戦っているは『分かっている』
だから屋敷から飛び出し、公園を通り抜けてあのビルへと急いでいたのだが・・・・・・。

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

気配すらもなかったにも関わらずいきなり目の前に現れた不審人物。
姿、形から誰であるかは察しはつくけど、

「おいおい、沈黙なんて酷いじゃないか?
 俺との仲だろ、怖い顔して何処へ行くんだい?」

「で、誰?
 お約束だから名前を聞こうか?」

音声から既に察したが改めて問いただす。

「吾は遠野志貴の面影、七夜志貴。
 吾は糸を巣と張る蜘蛛―――――。
 ようこそ、この素晴らしき惨殺空間へ」

そうドヤ顔でそう宣言した。
この着崩した制服を纏った青年の名を知っている。
遠野志貴の裏、「七夜」の部分が出た偽物、七夜志貴なのだが・・・。

「うわ、うわ、うわぁ・・・・・・」

知ってたけど、知っていたけど!
三次元で聞いて、見て、言われると・・・ドン引きだよ!
『中二病乙WWW』なんて笑い飛ばす余裕なんてまるでなかったぜ!
これが自分の深層心理と知ったら本人は恥ずかしさのあまり憤死まったなしだよ!?

これ以上ないドヤ顔なのが見ていて痛々しいし、
こーいうのが好きな白レンって・・・・・・ま、まぁ、好みは人それぞれだし。

「ハハハ・・・っ!
 そんなに固くなるなよ、
 俺とさつきで仲良く本音をぶつけ合って愛し合うだけだろ?」

「愛は愛でも殺し『愛』でしょ?」

「よく分かってるじゃないか!
 眠っていた俺が偽の肉の檻を得て起きたことは、殺せってことだ。
 さあ、殺し合おう!同級生同士で殺し合いをするなんてなかなかそそるじゃないか!」

「あー、はいはいはい、知ってたし・・・・・・」

型月ではもはやお約束となった概念「殺し愛」を正面からぶつけられ、
表情がチベットスナギツネみたく何とも言えない虚無の感情が出ていることは自分でもよーく分かった。

それは兎も角。
ここでこの七夜を倒さない限り先へと行けないことは確かである。

で、あるならやることは一つ。
最初はグー、じゃーんーけーん・・・。

「死ね―――――!」

公園の砂利を七夜へ向けて巻き上げるように蹴飛ばす。
吸血鬼の馬鹿力で飛ばされた砂利はさながら散弾銃から放たれた散弾のごとく高速かつ広範囲で散らばる。

常人ならばそのまま全身穴だらけ。
いや、潰れたトマトか挽肉になり「見せられないよ!」な状態になること待ったなしである。

「成程成程。
 点ではなく面で潰しに来たか、怖い怖い」

しかし相手はあの七夜。
この程度避けることなど彼にとっては造作ない。

「いい挨拶じゃないか、ええ?
 お陰様で腕を一本持っていかれたじゃないか」

とはいえ流石に全てを避け切ることはできなかったようで、
土煙から現れた時、左腕側の肘から先が無くなっていた。

「・・・だからと言って、
 そっちは服だけを切り裂くとかどういう了見だ!
 このエロガッパ!絶倫眼鏡!すけこまし!天狼星の代役!」

で、こっちも腕の一本くらい取られると思っていたけど、
何故か服だけ切り裂かれて上半身ブラジャー姿であった・・・痴女だよこれ!?

「仕方ないだろ?
 さつきは俺が腕を切った瞬間のカウンターを狙っていただろ?」

「・・・否定できない」

真正面から戦えば必ず負ける。
よって初手は面で制圧、それを突破してきたら相打ち覚悟のカウンターをする。
だが、この程度の考えなど戦闘民族な七夜には通用しなかった。

「それにしては―――――欲情するなぁ」

などと言いつつナイフを舐める事案案件な変態が目の前にいた。

「秋葉さんに言いつけるぞ、この変態」

ボクは元男なので七夜の視線や仕草からして、
本気なのが手に取るように分かる、分かりたくないかったけど。

「ああ、それなら問題ない。
 むしろ互いに殺し合う都合が出来たと言える」

「同級生がラッキースケしたので妹に言いつけると言ったが、妹と殺し会いする良い切っ掛け」と返された件について。
・・・・・・おっかしーなー、ここは「シ○ルイ」の世界線か?

「秋葉とオレは兄妹。
 だから殺さなきゃ本当の関係じゃない。
 そして秋葉なら確実にオレを殺しに来る!
 一切の躊躇も、遠慮も、隠し事もしない最高の妹だ!」

そして「全力で殺しに来るであろう妹」を称賛する兄がいた。
というか七夜であった・・・薩摩のぼっけもんもビックリな倫理観だよ・・・。

しかも「主人公を殺すほど愛している」型月ヒロインの一人である秋葉さんなら、と確信できるのが余計に嫌だ・・・。
これが漫画とかアニメ越しで一読者一ファンとして知るだけなら登場人物たちの個性に胸をときめかせたであろう。


が、ここは残念残酷無常無惨な現実。
当事者として関わっているボクとしてはもう頭が痛いどころでなく、帰って寝たい気分だ・・・。

「もっとも秋葉はさつきと違って服を剥いでも面白くない体だがな」

言わなくてもよい一言を言ってしまう。
いや、言ってしまい逝ってしまうのは志貴とまったく同じである。

遠野であろうと七夜であろうと何だかんだで根は同じ「志貴」なのを知りえたのは少しホッとする。
とはいえ、この後発生するであろう残酷無惨残虐劇場の開幕についてはもう自業自得と切り捨てるしかない。


何せ今夜がタタリとの決戦だと気づいてボクは【屋敷の主と共に飛び出た】のだから・・・。


「ぎ、ぎゃああああ、ぁぁぁあああああ!!!?」

突然七夜が絶叫する。
血とあらゆる体液が混ざった嫌な臭いが噴き出る。

七夜と言えども「全身から気化した体温が蒸気となって穴と言う穴から噴き出す」
という、ファラリスの雄牛のごとく責め苦に晒されては流石に痛みを表現するようだ。

屋敷を一緒に出る前に、
ボクが先行してタタリが使役する偽物と対峙し、
そっちはここぞといタイミングで介入すると話したけど・・・本当に容赦ない。

そしてこれを躊躇なくやってのける人物をボクは知っている。
いや、改めて見ると本当よく生き残ったなぁ、ボク・・・・・・。
何の魔術的前兆もなく強制的に対象の体温を略奪することができる人物なんて一人だけしかいない。


「あらあらあらあら、ミディアム程度で悲鳴を挙げるなんて情けないですわ―――――兄さん」


いや、絶対初手からウェルダンしてきたでしょうーに。
と、突っ込みを入れたいトコだが、空気が読める平均的日本人兼吸血鬼なボクは黙っておく。
何せ今の秋葉さんはかつてボクと対峙した時より絶好調―――――というか、ぶっちゃけコワイ!?

「弓塚さん」
「は、はい!?」

秋葉さんの呼びかけに対して思わず直立不動の体勢を取る。

「七夜については私にまかせてください。
 ああ、弓塚さんが心配なさらずとも大丈夫です、
 兄さんは逃げ足が速いのはよく知っているので、先に足腰を念入りに潰しました・・・」

「逃げられないように兄の足腰を潰した」とのたまう妹がいた、鬼だ、鬼だよこれ。
本当、型月ヒロイン道は茨道どころか覚悟完了、修羅道上等なのが多すぎぃ・・・。

「じゃあ、お言葉に甘えて!!」

ビシッと挨拶を決めてその場から即座に離脱する。
ボクの気持ちは一分一秒でもこの場から離れることとしか頭にない。
一瞬、七夜と眼が合って「タスケテ」なんて言ってたような気がするが多分気のせいだ、気のせい。


ネイビー。

 

 

 

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おススメSS「Another Love Stories」(銀河英雄伝説)

2020-04-12 13:00:16 | おススメSS

 

#1 涙の日 Ⅰ | Another Love Stories - 軒しのぶの小説シリーズ - pixiv

「提督! ヤン提督! フレデリカさん! ユリアンです、どこにいらっしゃいますか!」 巡航艦レダⅡ号の狭い通路を、ユリアンはそう叫びながら、全...

pixiv

 

 

「もしもフレデリカがインフルエンザにかからずヤンと同行していたら」から始まるIFの銀河英雄伝説ネタです。
このIFネタとして今までありそうで意外となかったとい点でポイントが非常に高い上にシリーズ合計100万字を超える長編。

などと非常に読みごたえがある作品であり、
「黄金獅子亡きあとのヤンは帝国にとって爆弾的存在となるのでアンネローゼと政略婚約させる」という展開にはそう来たかと感心した次第です。

ぜひ読んでみてください。


「提督……!」

だが、その声に、ひどくのろのろと、座り込んでいた人物が顔を上げた。

「提督!」

ユリアンは一転して歓喜の声を上げて、その元に駆け寄ろうとした。

「ご無事だったんですか、よかった、お怪我はありませんか、フレデリカさんは……」

駆け寄りかけて、ユリアンは床に転がっている物体に蹴つまずいた。
あやうく転びかけてユリアンはその物体を見下ろし、はっと息を呑んだ。

帝国軍服を着た男の死体。
そのまま流血の海をつたって、ユリアンはゆっくりと目を上げた。
見たくはない、きたるべき事態に直面したくはないのに、彼は視線を動かした。

流血の池の岸には、真紅に染まった金褐色の髪があった。
そして、半ば血にひたされた、ベレーをかぶった女性の顔。

フレデリカの。
よく見ると、その手にはブラスターが握られたままで、その向こうにも転々と、男たちの死体が転がっていた。
それは、彼女が単身、司令官の夫を守るために、いかに勇戦したかの証明だった。

事態を悟って呆然と、ユリアンはヤンの方を振り返った。
そして、かつて見たこともない師父の表情に、立ちすくんだ。


 

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おススメSS 反物盗人(虚構推理×ルパン三世)

2020-04-08 01:02:14 | おススメSS

 

#虚構推理 #クロスオーバー 反物盗人 - 緑茶葉の小説 - pixiv

“大奥の反物”と呼ばれる宝がある。 江戸城の明け渡しという形で大奥が終焉を迎える日の少し前。御台所や側室に仕えていた女中達が主の物を軍に奪わ...

pixiv

 

 

登場人物たちの個性が非常に強い上に独特な言い回し。
加えて推理物、というより頭を使う頓智物ゆえか「虚構推理」を扱ったネタは少ないです。
その中で本作はクロスオーバー、しかも「ルパン三世とのクロスと無謀極まる挑戦をしています。
しかし読んでみれば両作品に出てくる登場人物の思考と発想を上手くトレースできており、違和感を覚えません。

特に最後のオチは「虚構推理」らしい終わり方であったのがポイントが高いです。
ぜひ見てください。

 

「うどんと言えば、上方落語に『時うどん』なんていうものがありますね」


財布から小銭を取り出し、投入しようとしていた手を止める。
振り返れば、娘は箸を宙に向け、箸の先でくるくると円を描いていた。

「言い回しが古典落語の『時そば』と少し異なりますが、大方の流れは同じという演目です。ご存じですか?」
「もちろん。『時そば』も『時うどん』も両方知ってるぜ?」

娘が何を言いたがっているか――否、何をさせたがっているか、
予想ができたルパンは財布の中を確認した。どんな偶然か、演じれそうな枚数が入っている。

「一文は現在の価格にすると約25円。でもって、このうどん自販機のうどんは一杯300円。つまり12文ってわけだが・・・」

娘に近づいて、
テーブルの上に小銭を置く。

百円玉が二枚に十円玉が十枚。
十二文ではないが、計十二枚あることになる。

「『時そば』をご所望かい?」
「所望というわけではありませんが、天下のルパン三世さんは自販機さえ騙くらかせるのかを知りたいとは思いますね」
「いいぜ。恋人に置いてけぼりをくらって傷心しているお嬢さんの心が少しでも癒えるなら」

十二枚の小銭を手に自販機に向かう。
基本的に試されるのは嫌いだが、少し変わった娘の興に乗ってみるのも悪くないと思ったのだ。
正直、妙に大人びているあの娘の驚いた顔が見てみたいと思ったというのもある。

自販機を蕎麦屋の主人、投入口を主人の手として見立て、口を開く。

「おい、蕎麦屋さん。生憎と細けえ銭っきゃ持ってねえんだ。落としちゃいけねっから、手ェ出してくれ」

全て演じるわけではない。数える場面だけだ。
けれど、それだけで十分だったようで、背後から「おお」という声が聞こえた。


投入口に小銭を一枚一枚数えながらテンポ良く入れていく。

「一(ひい)、二(ふう)、三(みい)、四(よう)、五(いつ)、六(むう)、七(なな)、八(やあ)。そういや嬢ちゃん、今何時でい!」
「そうですね、九つですよ」
「十(とう)、十一、十二。へい、御馳走様!」

十円を一枚手の中に隠したままボタンを押す。
すると、自販機は音を立て、稼働した。調理をしているのか、
ボタンを押してから三十秒後、取出口にプラスチックの安い器が現れた。中にはうどんと具が入っている。

「おや、これはこれは。なんとも面妖な自販機があったものですね。人語を理解するとは」

 

 

 

 

 

 

 

 

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ACT.13「胎動」

2020-04-07 00:37:54 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編


根源を目指す魔術師という人種は真理を探究するとい点において科学者と同じである。
違うのは方向性が未来でなく過去であり、過去の再現を以て未踏の領域を目指すことにある。

しかし過去を目指すがゆえに魔術は衰退することが決まっていた。
ならば一致団結してこの問題に対応しているかといえばなかった、できなかった。

魔術師といえども人間であり、探究より象牙の塔に籠り権力闘争を楽しむ。
ということは魔術師の貴族主義的な仕組みと合わさってもはや当たり前の現象と化していた。

そんな中。
今から500年ほど前にある錬金術師が現れた。

男は天才錬金術師であった。
そして真面目で理想主義者であった。
だからこそ魔術協会における三大部門の頂点の1つにたどり着けた。

しかし男には悩みがあった。
どう計算しても人類滅亡という未来の予想を覆すことができなかった。

人間の平均寿命より先。
親、子、孫、と幾世代もの先の先の未来の予想であり、
人類滅亡より先に男が寿命で亡くなる方が先の話であるので自分には関係ない。

そう開き直る選択もできたが男は真面目で理想主義であった。
ゆえに男は諦めることを認めず考えて、考えて、考え続け―――――――狂った。

魔法に挑むが敗退。
肉体は滅び霊子で漂う存在となり果てる。
しかしそれでも男の意思は存在し続け、いつ来るか奇跡の日まで待ち続けた。
その過程で大勢の人間が亡くなることも「些末な事象」と切って捨てつつ生き続けた。

だがそれも今日で終わる。
今宵こそ必ずや奇跡に届くと男、否タタリは確信していた。
何せこれまでの舞台を予想を上回る役者たちが揃いつつああったからだ。
役者が豪勢であればあるほど人々の噂は誇張され、タタリの術式はより強化される。

自身の能力の強化。
存在の強化ともいうべき行為は奇跡へ近づくと同意義である。

―――――ズェヌピアはアトラスの禁を破り外界で研究を重ね果てに吸血鬼となった。
          結果エルトナムの権威は失墜しエルトナムの者は一生消えぬ罪を負わされました・・・。

そんな時、男の子孫が呟いた。
これに対して男は未だ自身と向き合わない彼女に対して嘲笑する。
すでにこの街の隅々まで把握しているのでこの場にいなくとも彼女の言葉を聞けた。
シオン・エルトナム・アトラシア。
彼女が障害になることは万が一にもないことは計算済みである。
哀れな舞台観客として、悲劇のヒロイン役として今宵にて命を落とすであろう。
 
―――――君は戦う前からワラキアに負けるつもりか?
 
シオンに付き添っていた青年、遠野志貴が言葉を口にする。
これに男は人の形として顕現していないにもかかわらず心臓の鼓動が高ぶりと感情の揺らぎが発生する。
そして一連の現象が久々に人間らしい感情の揺らぎ、すなわち動揺という物であることを思い出す。
 
タタリとなって以来あり得ない事象に一瞬思考が停止。
すぐに再開するが表現しがたい感情に支配されかけ男は久方ぶりに苛立ちを覚える。
 
やはり、脅威とみなすならこの男と弓塚さつき、という吸血鬼もどきに違いない。
 
そう男は確信する。
異能を有し、才能に恵まれてはいるが2人とも魔術の「ま」を知っていても実力は素人当然。
しかし、幾度も幾重も何度も計算するたびに真祖の姫と共に最大の障害として立ちふさがる結果がでる。
 
埋葬機関、代行者、錬金術師、鬼。
これらを差し置いて脅威として立ちふさがる結果がでるのは『違和感』を覚える。
抑止力、という可能性も考えたがそれに相応しいのは―――――。
 
ほう、言峰め。
なかなか良い顔をするではないか。
例え幻であろうと貴様の人間らしい欲望の発露、実に甘美だ。
 
足止め役として出した第四次聖杯戦争におけるセイバーのマスターと対決しているのは冬木より来た代行者。
何故かマスターでもある代行者を手助けせず見物に徹しているサーヴァント、アーチャーが呟く。
 
―――――相応しいならこのサーヴァントであろう。

第四次聖杯戦争のサーヴァントが未だ現世に留まっており、
しかもこの三咲町へこのタイミングで来たのは抑止力の存在を後押しを証明する。
加えてサーヴァントとしての真名も「人類最古の王」であることはさらに抑止力の存在を肯定する。
 
だが、同時にいくら過去の人類史における英霊。
と言えどもサーヴァントは根本的には『魔術師の使い魔』という枠からはみ出た存在ではない。
 
加えてサーヴァントのマスターは代行者であるが魔術師としては大した存在ではない。
しかもサーヴァントはやる気がなく昼は町を散策し、今もなお何故かマスターに助力していない。
何を考え、何をする、そうした行動原理が不明確でありながら強い力を有した存在であるがやる気がないのは確かであり、
 
―――――例え人類最古の王であれども、
     現象にすぎぬこの身を滅ぼすことは不可能であり、何人たりともこの身を止めることは叶わぬ。
 
そうタタリはそう結論を下し、
意識を間もなくエレベーターから現れる子孫へと向けた。
 
しかしタタリは気づいていなかった。
いや、気づくはずがないと思い込んでいた。
 
視界に映っていたサーヴァント、
英雄王ギルガメッシュの赤い瞳はタタリを捉えており―――――。
 
「精々励めよ、雑種」
 
と呟いていたことを。
 
 
 
 
 

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