二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

襲来-Ⅱ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-06-22 00:29:35 | 習作SS


―――見たいと思えば視える、魔法の基本は願うことだと思うよ。


懐かしい夢だ。
ネウロイ大戦初期の戦い、自分が未だ未熟で悩み、挫け、それでも前へと進んでいた日々の。
たしか1937年だったか、自身の魔法で悩んでいた時にガランドというカールスラントのウィッチと共にいた少女が言った言葉だ。

その少女の特徴はこげ茶色の髪を2つ結んだ自分より1つ年下で、名をバルクホルンと名乗っていた。
なんでも、同じ魔眼でもかなり異彩な魔眼だったので、実験とついでにストライカーユニットの試験要員として極東まで送られてきたとか。


―――そうかなぁ、って本当にあの坂本なのか?


対して自分はやや自信がなさげに回答する。
バルクホルンの『あの』とまで強調している意図かまったくわからなかった。


―――まあ、いい。
   ボク・・・いや、私が言う事はあくまで私の経験に基づくアドバイスにすぎないからな。
   

苦笑まじりに口を開く。
どこか達観というか、妙に大人びたというか、男くさいような不思議な感じがした。
なんというか、自分は彼女を知らないはずなのに彼女は自分に対して既に一定の印象を持っていたように見受けられた。


―――結果とは結局本人が努力してから得られるものだから、他人が言うだけでは何もならない。
   だから、坂本さんが努力の方向性を間違わなければきっと結果は出ると思うよ。
   今は思考錯誤を重ねてゆけば将来ネウロイのビームを両断できるくらいになれるはずだとボクは思うよ。


どうしてそこまで断言できるのかやはり不思議に思った。
だって自分が努力する前提で彼女は話しており、自分が絶対結果を得られると分っているような気がしてならなかったからだ。

とにかく、不思議な少女だった。
その印象を抱えたまま欧州へと渡り、後の欧州戦線で頻繁に顔を合わせて、
ブリタニアでは501の初期メンバー以来ずっと一緒になるとは考えもしなかった。




「む?」

ぼやけた視界にぼやけた思考。
当初は何も理解できなかったが両者がクリアに成るにつれて原因が判明する。
何でもない、ただ自分は執務室で書類仕事の途中で寝てしまったのだ。

「ふぅ」

机に寄りかかる形で寝ていたせいで体のあちこちが痛い。
寝ていたことも加え、かなり長い時間書類と睨めっこしていたせいか目がショボショボする。

坂本美緒は眼帯を付けていない方の眼をこすり、米神を抑えて目の周囲の血行を良くしようとする。
本当なら、台所にいるだろう宮藤に温かいタオルでも準備してもらった方がいいが、そうはいかない。

「まったく、私は書類仕事が苦手なんだがな。」

山ほどに積まれた書類を見てつい呟く。
早めに手早く済まさなければ午後のティータイムに間に合わないだけでなく、宮藤、リーネの訓練に支障がでかねない。
が、こうも難儀している理由は単に使用している言語が母語以外の、連合軍の共通言語であるブリタニア語だからではない。

いくら下士官から佐官まで上り詰めた程実力があるとはいえ、
坂本美緒という人間は根本的に戦以外を知らぬ「もののふ」ゆえにとことん現場主義者で、こうした仕事には慣れていない。
ふと、ロンドンに行ったミーナはいつもこんな仕事をしていることを思い出し感謝の念を送った。

「ふぁぁぁ。」

今日は青海な空で降り注ぐ太陽がもたらす熱は温かい。
周囲に部下もいないことも加え、こうして欠伸をするくらい心地よい日だ。

「・・・・・・。」

いかんな、また寝てしまいそうだ。
等と隙だらけな思考を巡らせる程心地よい昼下がりだ。

(慣れない仕事はするものではないな―――いや、駄目だ給料分は働かなければ。)

兵卒ならそれが許されたが、残念ながら佐官。
多くの特権が与えられると同時に給料以上の責任と義務を要求される階級にいる。
血税で養われている身なので、あまり長く休むことは坂本美緒の形成されて来た精神と主義に反する。

(では、手早く済ませて見せるか。)

決意を新たにして再度書類の山との戦闘を開始する。
内容は様々だ、補給品関係でも食料、武器弾薬、被服、資金と体系でき、
ここからさらに細かく分岐してゆき、分岐した後でもさらにその先と分岐してゆく。

組織とは常に連絡、報告が義務づけられているからそれこそトイレットペーパー1つまで報告書が提出される。
馬鹿らしいと考えてしまうが、それこそが公平で一定の法則に従った組織の存続の避けられぬ運命。
まして軍も国家の官僚組織の一種類にすぎず、記録を残す事に情熱を掲げる官僚組織は民間以上に書類に執着する。
よって、大量の書類の過半数はどうでもいい日常的業務の報告書が占める。

そして本当にトイレットペーパーの消費量について注意を促す書類が出てきて、坂本少佐はゲンナリした。
いくつものサインがなされ、年頃の少女ばかりの部隊にそんな書類をよこした連中の顔を想像する。
すると、50代のおじ様と結婚したというウィルマの夫が脳に映し出された。

「却下」

人の趣味嗜好はそれぞれだというがあまりよろしくない。
リネットには悪いが流石の自分でもその年の差はマズイと思うな、と坂本少佐は考えた。
結婚式で見た感じ、本人たちは嬉しそうだったが・・・両親とその姉妹は・・・。

「失礼します、報告書を届けにきました。」
「おう、入れ。」

外から二度ノック。
部屋にいた彼女側は注目をドアへと向ける。
返答と共に開いたドアから人が滑るように入って来た。

「ちぃーす、こんにちわー。」
「む、シャーリーか。」

書類をぷらぷらと手で振りながら部隊一のナイスバディが入室した。

「戦闘報告書を提出しに来ました。」
「ああ、ごくろう。」

書類を机に置く際に少し前かがみになり、
たわわに実った2つの果実が坂本少佐にこれでもかと強調する。
ペリーヌにミーナが見たら嫉妬と女性としての羨望で狂いそうな光景だ。

もっとも、このもののふは、
あんだけでか過ぎると肩やら戦闘やらで面倒くさそうだな、とまったく女性の思考が欠けた感想を抱いた。
さらに、それよりバルクホルンに冠する懸念事項について聞いてみるか、と考えていた。

「んじゃ、これで失礼しますー。」
「おっと、シャーリー。少しいいか?」
「?」

坂本少佐に呼び止められてシャーリーは仮に上官にも関わらず、怪訝そうな顔を隠さずに振り返る。
規律を重んじるカールスラントの軍隊が目撃したらその場で厳重注意と長々しい説教が為されるだろう。

「少し話を・・・。」

少し話をしよう、何そんなに時間を取らない。
おまえから見てバルクホルンはどう見える?

そう言葉を綴るはずだった。


警報


「・・・くそ、ネウロイの襲撃は早くても明日か明後日あたりだと予測していたが。」

ロンドンの司令部に向けありったけの罵声を心の中で叫ぶ。
無駄でただの感情論だと知っていてもだ。

「さて・・・。」

シャーリーは真っ先に格納庫へと走ったようで姿はない。
坂本少佐も緊急スクランブルに対応すべく出撃すべきだが、
今日はミーナがいないので代わりに基地で指揮を執らねばなるまいな。


電話の鈴がけたたましく鳴る音。
管制室からの報告だろう。


「坂本だ、状況を報告」
『はッ、ブリット東07地域。大型ネウロイが一機。すでに内陸へ入り込まれています。』

すでに内陸へ入り込まれたこと。
早めに潰さねば面倒な事になることに坂本少佐は表情を顰める。

(ブリタニアに攻めるネウロイは半ばローテーション化した日程で攻撃しに来る。)

恐らく苦手な海をわたるがゆえにだろう。
お陰さまで41年のバトル・オブ・ブリタニアと呼ばれる大規模航空戦では、
扶桑、ブリタニアそれにカールスラントが手を合わせて共同開発した新技術のレーダーと合わさって人類の勝利に至る。
迎え撃つ側として幾度も奇襲攻撃を許した扶桑海事変と違い、効率的な追撃が可能となった。

(それが、ここ最近ブレが応じてきている。新たな攻勢が始まる前兆か?)

戦力の集中、攻撃前夜は妙な行動に出るのはネウロイも人類も変わらない。
妙に静かだったり、逆に妙に積極的と行動に不自然さを感じた時に後からより大胆な行動に出るのが常だ。
よって、行動の変化は防衛側として最大限の警戒を以て当たるべきなのだ。

(まあ、念のため意見具申はしておくが。そこらへんの判断はロンドンの連中に任せよう。)

できれば、何事も起こらなければいいがな。
そう頭の中で思考を巡らして電話のボタンを操作し、内線を格納庫に待機しているだろう隊員へと繋げ、命令を下す。

「坂本だ――――。」








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襲来-Ⅰ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-06-17 18:25:03 | 習作SS

「大丈夫か、サーニャ。辛くないか?」
「大丈夫よ、エイラ。」

エイラにとって、そして
501メンバーから見てエイラがサーニャの世話をするのは当たり前となっている。

どうしてそうなったかは誰もよくわからない。
気付いた時には『自称』いつもクールでカッコいいエイラ少尉が妙に初々しい態度でサーニャに挑んでいる事実。
サーニャをネタにジャッキー(シャーリー、ルッキーニ)にエ―ゲル(エーリカ、トゥルーデ)のコンビにからかわれてようになっていた。

「んあ?」
「あら」

廊下で眠たげなサーニャと一緒にテラスに向かっていたエイラは、
同じくテラスに向かっていたペリーヌと鉢合わせた。

「なんだよー。ツンツンメガネかー。」
「なんですの、その残念そうなセリフは。」

むすっと答えるペリーヌ。
金色の瞳に同じ色の眉が釣り上がり「怒ってます」と顔が言う。
さらに、両手を腰を当ててないむすっと胸を張る。張ってもやはりナイムはナイムネであった。
それを見て、そんなのだからツンツンメガネはツンツンメガネなんだよなー等とエイラは思った。

「いい加減ちゃんと、わたくしの事をペリーヌと呼んでくださいませんこと?」
「あーはいはい、ペリーヌペリーヌ。」
「むっきぃ――。言っているそばからなんですの!?その含みのある言い方は。」

そうすぐ反応する奴にそう簡単に素直に言うわけないだろ。
と、エイラの考えは決して表にださない。

「ん、少佐だ。」
「え、ええ!!?どこです?どこですの?」

ひょいと、背を伸ばしペリーヌの後ろに人を見つけた動作をした。
無論、釣りである。ペリーヌの後ろどころか、この廊下では坂本少佐の影も形も存在しない。

「やーい。騙されてやんの。」
「エ・イ・ラ・さ・ん。」

肩を振わせこの侮辱にどうしようか、等とペリーヌは考えていそうだ。
まあ、騙したエイラも一体どこの小学生のレベルの悪戯なんだか。

「ペリーヌさん・・・シャンプーの香りがする・・・。」

それまで部外者だったサーニャが会話に介入する。
寝ぼけたまま、スンスンと小さな鼻を動かす。エイラに寝ざめの一言がそれかと突っ込む余裕はない。
代わりに、内心自分はどんなニオイがするのか。いやいや、サーニャに嫌われないだろうか、
ああ、風呂に入ればよかった。とヘタレな思考を巡らす。

「まあ、サーニャさん。よく聞いてくださいましたわね。」

ペリーヌの表情が明るくなる。
まあ、どうせ宮藤あたりが何かしでかしたんだなとエイラは当たりをつける。

「聞いてくださいまし・・・。」

宮藤さん、いえ。
あの豆ダヌキ、わたくしの髪にモップを被せたのですよ。
おまけに、隙だらけで謝りつつさらにモップを被せてきまして。

まったく、ついこの間まで民間人だったとはいえウィッチとしての心構えがなってませんわ。
坂本少佐が見込んだとはいえ・・・きぃ―――。なんですの少佐と同郷というだけでも羨ましいのに。
少佐にベタベタベタベタとくっ付いて、わたくしだってもっと少佐に構ってもらいたい、いえむしろ振り向かせるつまりなのに。

ああ、坂本少佐のお美しいこと。
長く美しい黒い髪。何事も動じない凛々しい瞳。
少佐はわたくしのあこがれでしてよ。

(うわぁ、またはじまっているし。)

エイラはペリーヌの少佐信者っぷりにやや引き気味だ。
もっとも、自分のサーニャ至上主義者っぷりはまったく気づいていない。

「・・・ペリーヌさんは、宮藤さんの事。キライなの?」

ここで、黙って聞いていたサーニャが口を開く。

「え?いえ。
 別にキライというわけでなくて。ただ気に入らないだけですわ。」

突然の問いにペリーヌは戸惑う。
ペリーヌにとってサーニャは幽霊みたいな者でこうして聞かれるのは初めてだからだ。

「でも、ペリーヌさん。
 なんだか嬉しそうに話していた。」

「そそそそ、何を馬鹿な事を仰っているのですの!?」

サーニャの意外な言葉にペリーヌはうろたえる。
白い肌がほのかに赤く染まり言葉を濁す。
大変わかりやすくうろたえている。

「あやしいなーペリーヌ?
 坂本少佐だけでなく宮藤も好きなんじゃないか。」

「貴女は黙らっしゃい!!
 だいたいそんな馬鹿なことがあってたまるもんですか。」

「ほんとかなー?」

ニヤニヤ、そんな擬音が聞こえてきそうな顔をエイラは浮かべる。
元より、悪戯っ子な性格を持つエイラにとってこのいかにも弄ってください。
と、言わんばかりに隙だらけなペリーヌを逃すはずがない。

「いいですか!
 宮藤さんはこの誉れ高き統合戦闘航空団、ストライクウィッチーズの一員でしてよ。
 ブリタニアの防衛を担う世界を代表するウィッチとしての自覚があの子のには足りないから、こう厳しく言っているだけです。」

流石はガリアのエースというべきか凄まじい気迫だ。
高貴な者だけが自然に得た高貴たるものカリスマが溢れている。
カールスラントのユンカー出身の厳格な将校団と渡り合えそうなくらいに。

ペリーヌの下にかつていた部下、アメリーなら泣きだしただろう。
もっとも今回は残念ながら、相手が悪すぎたが。

「ああ、つまりペリーヌの色に宮藤を染めてしまいたい、というわけか。」
「んな・・・染める・・・っ!?」

常にマイペースなエイラにその気迫は通用しなかった。
逆にさらなる弄りに邁進するのであった。

「いやー。
 ミーナ中佐に異性との恋愛は禁止されているから、同性に走るなんて思いもよらなかったよ。」

「同性っ!!は・・・破廉恥な~~~!!」

わざとらしく関心して。
これまたわざとらしくしきりにエイラは頷く。
無論、ニヤニヤと笑みを浮かべたままだ。

「大丈夫よ、ペリーヌさん。
 そんなペリーヌさんをわたしは応援しているから。」

「ち、違います。
 一体全体何を勘違いをしているのですかサーニャさんは!?」

一切の悪意のなく綴られた言葉にペリーヌは慌てる。
故意に煽るために言ったのではないのはペリーヌも知っているらしく。
怒鳴り散らすわけにはいかず、どう誤解を解けばいいのか悩み、しきりにうぬぬ、とかぐぬぬとか言葉を漏らす。

「知っています、大切なヒト。エイラのように坂本少佐を大事に思っているんですね。」
「はい!!?」
「うえっ、サーニャ!!?」

ここまで来てまさかの暴露というべきか。
サーニャが述べた発言に2人は混乱する。

「あらあら、愛されていますわねー。エイラさん。」

先に復活したのはペリーヌだった。
少佐を大切な人であると指摘されて心臓は鼓動するが、
勢いはペリーヌの方にある、散々弄った仕返しを実行する。

「愛されているなんて・・・恥ずかしいじゃないか。」
「ええい、くねくねしない!!」

別の意味でニヤニヤするエイラ。
恥ずかしそうに体を揺らしているが惚けやがったよこのヘタレは!

「と・に・か・く。
 少佐についてはあくまで尊敬の対象です。
 決して、決して、決して恋愛対象と見てはおりません。いいですか!!」

ふーふーと鼻息を荒くし、ペリーヌは天然とヘタレを睨みつける。
これ以上いたらどんどんボロがでそうなのでなおさら強気に出ているのだろう。

(あー相変わらずツンツンメガネは一直線だから扱いやすいな。)

エイラはそんな追いつめられ気味なペリーヌを見て思う。
普段ペリーヌは努めて理性的に振舞おうとしている。
が、その根本は感情の塊でできている。だからこそ、こうしてからかうと直ぐに反応してくる。

とはいえ、さすがにやり過ぎたかもしれない。
現在は例えるならば威嚇する猫。ふーふー息を荒げ全身の毛を逆立てている危険な状態。
からかいはお互い笑い飛ばせる範囲で限定すべきだか、やり過ぎだ。

「わかったわかった、正直やり過ぎたのは謝るよ。」
「ふんだ・・・最初からそうしていればいいものを」

弄りやすいお前を無視できないから、ムリダナとエイラが発言しようとした時。


警報。


「な・・・ネウロイ。」
「早すぎますわ!!」
「・・・・・・うん。」

毎度の不愉快な音が基地に木霊する。
よりにもよって当分来ないとされた嘲笑うようにやって来た。
しかも、この後ティータイムがあったはずなのに全て台無しだ。

「行くぞ!!ツンツンメガネ。」
「だぁーそんな事分ってますわ。後、先ほどその呼び方はやめなさいと言ったばかりでしょうが!!」
「わたしも・・・行く。」

3人はただの少女から戦乙女として意識を変えて格納庫へと走り出した。

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いつもの昼下がり-Ⅲ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-06-11 22:42:44 | 習作SS

ロンドン。

西の海を支配する海洋帝国の首都で、そのせいかミーナの祖国と違い海に近い。
古くは大国ヒスパニアの無敵艦隊を打ち破って以来、オランダ、ポルトガル等の欧州のライバルを打ち破ってきた。

海洋を支配することはすなわち貿易の富を独占するに等しい。
海上貿易がもたらす富は自給自足の経済よりも大きく、また陸上の貿易よりも規模が大きく見返りが大きく。
市場である植民地を世界各地に建設することで、経済の優位性を築き、世界帝国としての地位を実現させた。

無論、西洋文明の走りである偉大なる帝国、ローマと同じく衰退は免れなかった。
現在こそかつての植民地人であるリベリオンの追い上げが激しく、帝国としての地位が揺らいでいる。

だが、無邪気な大衆は未だに扶桑皇国とならぶ世界帝国としての誇りを抱いている。
それは現在という時間軸なら正しいが、将来と現状を予測できる人間、選ばれたエリート達の見解は違った。
ことに、部隊長のミーナだけでなく、ロンドンのカールスラント大使館で論ずる眼の前の男も同じだった。

「知ってるかね?ヴィルケ君。
 今この机に並んでいる菓子の原料の大半はリベリオンのレンドリリースで賄われていることを。」

部下が街角で購入した油っぽい菓子を掴みながらアイカシア大佐が言う。

「それは兵器にもいえて我が祖国も同じだ。
 正面装備こそ国産だが、トラックなどの補助は全部リベリオン産だ。」

「ええ、そのくらい。
 39年の時点で私も嫌という程、実体験しましたから。
 世界に冠だる偉大な祖国といえども植民地人の助けがなければ、今頃私自身もここに存在してなかったでしょう。」

苦々しい思い出とともにミーナが言葉を綴る。
頭脳に映像と共に映し出されるのはリベリオン製品が溢れかえっていた戦場での日常。
特にスパムの缶詰などもう見たくもないほど大量にあった。

ここで一つ<史実>の話をしよう。
電撃戦を初めとして対ソ連での戦争で戦史に名を残す機動戦を繰り広げてきたドイツは機械化された軍という印象がある。
しかし、以外かもしれないが、その実<史実>のドイツ軍は完全な機械化ができていなかった。

装甲師団に装甲擲弾兵師団(機械化歩兵師団)こそトラックは充足していたが、
通常の擲弾兵師団は何かと非難の的にされる旧日本陸軍と同じく、人の足と馬匹による移動力しかなかった。

なお、五カ年計画で軽工業を犠牲に達成された重工業国家のソ連も、
終戦までトラックはアメリカ頼りであり、当時自前で完全な機械化を達成できたのはアメリカだけであった。

「で、大佐。
 私はこの間出現した『特殊ネウロイ』に、
 ついて情報をもらえると聞いてここまでやって来たのでありますが。」

「おお、そうだった。
 すまない、自分はどうしてもこういった話が好きでね。つい、無駄話をしてしまった。」

にこやかに答えるアイカシア大佐。
が、その本心はミーナを試していたことは試された側は熟知していた。
ただの前線指揮官か、それとも大局から判断できる司令官かどうか。今後の昇進を左右するだろう。

「では、説明しよう。
 結論から述べれば人間が作り出した可能性がある。」

「な・・・っっっ!!!」

驚愕に声を挙げそうになったが、何とか耐える。
幾らブリタニアにある唯一のカールスラント領内でも、誰かが聞いているかもしれないから。
特にウィッチ隊に対してあまり友好的でない司令官、マロニー空軍大将などが。

「正直、我々も困惑している。
 冗談かと思ったが、様々な情報を整理した結果だ。
 信じたくないかもしれないが、『特殊ネウロイ』はブリタニアの手で誕生した可能性がある。」

淡々と大佐は語る。

「なんて、ことを。」

ミーナは頭がクラクラする感覚を覚える。
超えてはいけない倫理をついに人類は超えてしまった事実に衝撃を受けたのだ。
何せ、バルクホルンが言うには『生きたまま』怪物へ変化させていたと言う。

「本来、この件については、」

ミーナが衝撃から立ち直るのを見計らってやや間を置き、アイカシア大佐は口を開く。

「本来、
 君のは知らせないつもりだった。この件はあまりに危険すぎるから。」

続けて言葉をつなげる。

「だが、君が指揮する501はあまりにも政治的な位置にある。
 もし、501に何かあれば我が国の損害になるゆえ、君は知る義務がある。」

統合戦闘航空団は各国精鋭を集めた部隊。
その分、本来前線部隊にありえないはずの政治的争いの渦中に巻き込まれる危険が高い。
その気になれば、わざと特定のウィッチを使い潰し、特定国の発言権を削るよう裏から手をまわししかねない。
最近動きがあやしいマロニーなどは警戒するに越したことはない。

「味覚障害どもが考えることは、まだ完全に把握していない。」

部下が購入した油っぽい菓子をかじる。

「が、覚えておきたまえ、ヴィルケ君。
 君が愛する501は常に狙われていることに。」
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いつもの昼下がり-Ⅱ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-06-11 00:27:15 | 習作SS

「はぁ・・・。」

普段では見られない光景。
面倒臭い人間に出会い、自分と合わないと感じて吐くため息ではない。
もっと深刻な、暗い憂鬱を伴った深い、深いため息をエーリカはしたのだ。

「何を考えているのかわからない。」

とは、おえが言うなと言いたくなる煩悩まみれなミステリアス少女エイラの言だが、本当は超がつくほどのズボラ人間である。
それを知らない赤の他人はエーリカ・ハルトマンという人間に対する評価は大体『最強のウィッチ』としてのみで語る。

曰く、史上初の300機に届くかもしれない。
曰く、史上最強のウィッチ。
曰く、マルセイユと共に祖国が誇るウィッチ。

等などと彼女を直接知っている人間は皆、大爆笑間違いなしの評価が下されている。
ズボラなだけでなく軍隊の命令に幾度も背いた『悪い子』でそんな模範的な人間でないのを熟知していたからだ。

けど、その『悪い子』である原因は、
軍隊でありがちな効率を優先した命令である、仲間を見捨てて目標を達成する事。
それに反発して、強引に仲間を助けたがゆえに下された判定であるのも皆知っている。

地上ではぼんやりと気が抜けた態度を貫くが、一たび空へと駆ければ優秀な戦士。
それも仲間想いで、僚機を一度も失わせたことがないという伝説があるほどになる。
そんな彼女が深い憂慮がこもったため息をつくなど、深刻な事態である。

「・・・・・・馬鹿。」

エーリカの眼にはリビングのソファーで眠るバルクホルンが映っている。
こげ茶色の髪、長いまつげ、凛々しいという意味で整った顔は起きている時と変わらないが、今は少女らしい魅力を放っていた。
灰色の軍服ではなくピンクのヒラヒラの服なんて着せたらさらに魅力が上がっただろう。

その顔が苦痛に耐えるように歪んでいなければ。

「ごめん・・・なさい・・・・」
「ッ!!!」

刹那、寝ているはずのバルクホルンから言語が発せられる。
エーリカは驚いたがすぐにこれは寝言だと思った。

だが、誰に対する謝罪か?そんなの初めから知っている。
理由は話でしか知らないが、よく話してくれた妹のクリスに対するものだろう。
自分は決して姉馬鹿ではない。ただ手間のかかる子だと話していたが、実に嬉しそうに話していたのをよく覚えている。

けど、その子はもうこの世に存在しない。
その子がいたという記憶と記録だけしか存在しない。
バルクホルンの故郷で空襲に巻き込まれて死んでしまったのである。

そしてバルクホルンはその時、彼女を守れなかった。
挙句部下を殺した上におめおめと生き延びたと思い込んでいるのだ。

「トゥルーデさ、諦めてしまえば、楽なのに。」

諦める。
それはズボラな性格だから述べたのではない。
経験から導き出された生き残るために秘術である。

エーリカは辛い思い出に囚われて自暴自棄になった人たちを何人も見てきた。
知り合いではミーナなども一時期悲しみに暮れてそのフォローに追われたことがある。

ゆえに、この経験から出された結論は、
戦争とは人智に及ばぬ災害みたく『しかたがなかった』と思い込むこと、自分にはできないと諦めてしまうこと。
これで、未来に向かって前進する自信がつけるのだ。

しかし、バルクホルンは違う。
エーリカが考えるに一度忘れるころで楽になったが、結局根本は頑固までに諦めようとしない性格。
だからこそ、現在こうして悩んでいるのだ。もし、自分がもっと・・・という風に。

なお、<前世>で<原作知識>があったにも関わらず、
何もできなかったから余計にそうなっているのをエーリカは知らない。

「ん・・・んあ?」

エーリカが思考を巡らしていた最中。
バルクホルンが眼を薄く開けてもぞもぞと動き出す。

「んん・・・エーリカか?何をそんなに私の顔をじろじろ見てるんだ。」

トゥルーデが心配で、とは言わない。
過去を思い出させるような言動はせず、『いつもの日常』を演じ続けるのがリハビリにつながるからだ。

「とりゃー。」
「むが」

と、いうわけで手始めにバルクホルンに抱きつくことから始めた。
胸にバルクホルンの顔を押しつけてわしゃわしゃと髪をなでる。

「胸あたっているぞ。というか骨が固い」
「へへ、当てているだからー。」

これでも成長しているんだから、と続けて言うがバルクホルンは呆れた表情を作る。

「成長?成長というのはせめてペリーヌぐらいなければ話にもならん。」
「ぶぅー横暴だー。女の子のプライドを傷つけたー。」

エーリカはそう言うとバルクホルンを強く抱きしめる。
抱きつかれる側は頬に胸の柔らかみよりもさらにアバラ骨が押し付けられた感覚しかなかった。

「・・・いいかげん、離れてくれないか?」
「ちえ、トゥルーデは冷たいな。」

すくりと立ち上がり、バルクホルンを拘束から解放する。

「冷たいもなにも、おまえがな・・・。」

クドクドと始まる愚痴。
今の出来事だけでなく、これを機に言いたいことを纏めて言うつもりだ。
やれ、書類はしっかり書け。やれ、上層部にはストレートに文句を言わない。あと、ちゃんと起きろ・・・。

「ふふ、」

変わらぬ、日常。
それで、そのまま『現在の日常』に埋もれて『過去』を振りかえらなくなるまで、
この日常を作り続けよう、そうエーリカは思った。

「エーリカ、なんで笑っている?」
「なんでもないよー。」

この戦友が二度と離れるのを止めるために。
再び苦しみを味わらせぬためにも。
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いつもの昼下がり-Ⅰ (ヴァルハラの乙女たち)

2011-06-06 15:44:56 | 習作SS

夢を見ている。
私のトラウマである過去のできごとを。


1939年 東プロイセン カイザーベルク


「みんな、応答してくれ・・・たのむ、応答してくれ・・・。」

あれからどれだけ時間が経過したのだろうか。
時間を確認しようも腕に付けた時計は流れ弾に当たって以来その用途が発揮できていない。
感覚的にこの時間帯は本来暗闇と月が支配するはずだが、今日はまだ夕日のような赤い情景が映っている。

もっともその夕日とは故郷が燃えている炎である。

「・・・・・・・あ、ああ。」

現在高度はメートルで3000程。
保護魔法越しでも地上から出される熱風が熱い。
灰に煙の臭いが鼻につき、嗅覚がおかしくなってしまいそうだ。

「・・・だれか・・・お願いだから、返事をしてくれ。」

インカムの調子はいいが返事が返ってこない。
この事実から導きされる答案は辛うじて離脱できたロスマン以外は戦死したとしか言えない。
わかっているくせに私は現実逃避を続けているのだ。

あの奇襲攻撃を受けて、たちまち乱戦になってから。
状況を把握できずにま一人、一人堕ちていったのを目撃したのを忘れようとしている。
少女とは思えぬ断末魔を挙げて死んでいったのを覚えているクセに。

「・・・状況確認、基地は使用不能と見られ、
 隊員は私以外おらず、ネウロイは見られず・・・これより、救助に向かう。」

部下がいなければ帰るべき基地も燃えている。
見方を変えれば、軍人の果たすべき義務と責務からから解放されていると言っていい。
が、私だけの一人ぼっちの空でそのなものに意義はないし、解放などお断りだ。

だから、救助活動をという手段で己の意義を見出そうとする。
無能ゆえに招いた失敗を覆い隠すために。

「ん?」

高度を下げた時。
街中に見覚えのある顔が一瞬映った。

いや、まさか。
あの子、クリスは。
時間帯的には客船<ヴィルヘルム・グストロフ>に乗って脱出しているはずだ。
親戚に頼み込んでおいたから一人で出歩くなどありえないはず。
そんな、馬鹿なことがあって。

「・・・・!?・・・!!」

高度300まで下がった自分をふと見上げる子供。
視力が強化された瞳には涙で顔がぐちゃぐちゃになり、熱風で服がよれよれになったこげ茶色の髪をした少女がいた。
一見、どこにでもいる十代になったあたりの少女だったが、私はその子を肉親として知っている。

「クリス!!」

驚きのあまり、心臓が鷲掴みにされた気がした。
この時、我を忘れ。軍人という型から外れてクリスティアーネ・バルクホルンの姉となった。

「お姉ちゃん・・・おねーちゃーん!!」

むこうもこっちに気付いて手を振る。
先ほまでの絶望から生への希望を確かに掴んだ顔へと変わっていた。

「まってろ、お姉ちゃんが今助けて出すから。」

高度は5メートル。
まだ手を伸ばしても届かぬ距離でも手を伸ばす。
クリスも届かぬと分っていても背伸びしてもでも手を伸ばす。

「本当に、わたしのお姉ちゃんだ。」
「ああ、お姉ちゃんだよ。」

顔がはっきりと見える。正真正銘、私の妹だ。
たとえ、前世があっても肉親としての感情はある。
だから、こうして生きて会えたことが嬉しくて嬉しくて視界が涙でゆがむ。

届かぬ手がもどかしい。
はやくとどけ―――――。

「えっ」

正面。
クリスから後ろに別の人間が宙に浮いていた。
シェルエットこそ人だが、金属質な黒い表面はどう見ても人ではない。

私はそれに見覚えがある。
前世では<ストライクウィッチーズ>における物語のカギとして登場し、視聴者からネウ子という愛称で呼ばれたのを。
そして登場するのは1944年であるのを知っており、どうして奴がと考え。

「あ、」

赤い光線がクリスの心臓を貫いた。

「あ、」

これは私の声。
間抜けな声であるが、それしか言えなかった。
なぜならぐったりと倒れ込むクリスの姿を認めたくなかったから。
認めたくなかった、眼の前でクリスが死んだことを。

「あ、ああああああああ。」

視線を奴に向ける。
が、人型ネウロイはいずこへと消えていた。

「うぁああああああああ。」

訳の分らぬ音声。
目元が熱く、潮の味がする液体が流れる。
わけがわからない、唐突だった。あまりにあっさりとクリスが死んだ。

「うわぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁ!!!」

忘れたかったから獣ごとく叫ぶ。
こんな悲劇など見たくないから叫ぶことで現実から逃げようとする。
理性は無駄な努力だと囁いていたとしてもだ。

「あぁぁあああっぁぁああああ!!!」


1939年のとある日。
東プロイセンの中心地であったカイザーベルクは一夜で壊滅。
死傷者は残っていた住民の約半分である10万。市街地の60パーセントが破壊された。
私の親戚、フェリラ・ノルティング・フォン・バルクホルンは客船<ヴィルヘルム・グストロフ>で避難していたが、死亡の確認がとれた。
たまたま海へ出ていた大型ネウロイに客船ごと沈められ、漂流物となり果てたの一万体の遺体とともにいた。
後に、<前世>で最大の海難事件として記録された客船と同じであることに気付いたが、それも後の祭りであった。

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