二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり46

2018-06-26 23:37:02 | 連載中SS


ロリカ・セグメンタタ、と称される鎧がある。
古代ローマ軍が装備していた鎧でその作りは非常に先進的である。
どこか、と問われればそれはロリカ・セグメンタタがプレートアーマーである点に尽きる

西暦2、3世紀の時代。
鎧といえば極論すれば「革をうろこ状に重ねた」代物から。
あるいは鎖帷子、鉄の小札を張り付けるスケイルメイル。

などがあるが全て「小さな皮ないし金属」を生産、
管理する技術しかなかったためそうした鎧が主流となった。

しかしそんな中で金属を薄く平らに形成する板金の技術を有し、
なおかつ「安定的に量産」する管理体制を有した国はローマだけであった。

しかも鎧自体の性能も元々プレートアーマーゆえに、
斬撃や刺突には強い上に複数の板金を組み合わせた構造ゆえに、
「打撃」に対しても衝撃を受け流し、逸らすことができた。

その上重量も後のローマ軍で採用された鎖帷子よりも軽く、
修理修繕も「板金など部品を交換するだけ」で済み、収納も「分解して保管」可能。

などと良いこと尽くめであった。
そのため長らく考古学会では存在自体疑われていたが、
ハドリアヌス帝の長城で現物が発掘されたことで実在があきらかになったのだが・・・。

「すばらしい!
 レリーフでしか知ることができなかった鎧の構造が現物で確認できるとは」

「しかもついこの間まで使用していたから、
 年月を得て錆びていない、新品そのものだ!」

この時代は未だ発掘されておらず、
それを踏まえた上で銀座の門から侵略してきた軍勢はローマ軍によく似ている。
そのため大量に鹵獲した各種武器、鎧その他文章類は古代史を研究する学者からすれば宝の山であった。

何せ歳月を得て風化、損傷していない現物を手に取ることができる。
しかも唯でさえ異世界という研究者の知的好奇心を刺激してやまない存在な上に、
社会文化が古代ローマに近いため古代ローマの研究を前進させることが期待されていた。

「あー分かっていると思うが、
 考古学的な参考ではなく【帝国】に関する研究についてしっかりとやってくれ」

レアなコレクションを発見して騒いでいるオタク共に、
色んな意味で身に覚えがある東条英機が米神を抑えつつ発言する。

【帝国】に関する情報はレレイ監修で完成した日本語=帝国語の翻訳。
そして現地に派遣されている部隊の語学力の向上とアルヌス生活協同組合を通じた情報収集。

などといった要因が重なり情報の精度と量は飛躍的に上昇した。
とはいえ、収集した情報全てを現地部隊そして軍だけで評価、分析するだけでは限界がある。

地理、歴史、文化、産業、経済。
各部門のスペシャルリスト達に協力を求めて今に至っているが・・・。

魔導書を無我夢中に読んでは物理学な解釈で議論する八木秀次に湯川秀樹。
羊皮紙の公文書から【帝国】の産業形態の計算を試みている伏見康治。

を筆頭に歴史に残る著名人たちが揃っていた。

「無論です東条閣下。
 陸軍を集めた各種情報、例えば地理、経済、歴史。
 そして産業に対する分析、調査が我々の本来の仕事であることは認識しています」

日本で古代ギリシャ、ローマ研究の基礎を築いた村川堅太郎助教授が堂々と述べる。

「とはいえ、
 【異世界】という非常に得難い研究材料ゆえ、
 少々の脱線は何卒どどうかご容赦を・・・・・・」

「わかっている、その辺は『よく』わかっている・・・」

ギラギラと欲望に忠実過ぎる目線を前にして、
常識人である東条に言えることはそれだけであった。

「それより、閣下。
 聞くところによると魔導士でなおかつ日本語に堪能な人材がいるとか・・・。
 是非とも魔法を映像や書物だけでなく実際に実演していただきOHANASIをしたいと考える次第で・・・」

徹夜と知的興奮による麻薬作用のコンボが決まり、
非常に危ないギラついた目で登場に湯川博士が問いかける。
なお周囲の物理学者連中も一斉に東条に視線を集中させてくる。

(レレイを連れてきたら解剖しかねないぞ、このマッドども!?)

方向性は知的なものとは言え、
生々しすぎる欲望の視線にさらされた東条は内心ドン引きする。

「・・・陸軍として彼女にはまだまだ門の向こうで協力して貰いたいと考えている」

普段なら夢幻会の席上でふざけて、
「陸軍としては海軍の提案に反対である(ドヤ)!」
と言う程度にハッキリと物事を述べるがよく塗れな亡者を前にして東条はヘタレた。

「・・・そうですか、ならば仕方ありませんね『今は』待ちましょう」

不穏極まる事を口走ったが聞かぬふりをする。
ここで「善処する」や「努力する」など典型的な官僚の逃げ答弁をしても延々と追及してくるからだ。

(・・・ち、ちくしょう!
 機密を守るには夢幻会の人間がいい。
 という事で決まったとはいえこのマッドどもを纏めるのが自分の役割だなんて!)

何せ立場上『陸軍が管理する異世界研究施設の総責任者』であるため、
可能な限り集めた学者先生の『要望』には応える義務があり――――――我欲塗れな真理の探究者たちを今後も相手にしなくてはならない事実に頭を抱えた。




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GATE~続いたネタ45 夢幻会、彼の地にて戦いけり

2018-04-15 16:22:09 | 連載中SS

帝都郊外の帝室庭園で開かれた園遊会。
という名目で始まった講和交渉とデモストレーション。

遠距離から易々と甲冑を貫通させる銃の威力。
爆発の雨を降らせる迫撃砲などを実際に体験し実感して
講和派議員はようやく自衛隊と日本軍の力の差を思い知るに至る。

そしてその最中。
呼ばれていない突然の来訪者の登場。
講和派議員を守るべく自衛隊の高機動車に乗せて退避させた・・・。

「で、誰が来たのだ!?」

『あー。
 そのことですけど、
 ピニャ殿下からの連絡によればゾルザル殿下だそうです』

「・・・っそうか!」

高機動車に揺られる最中。
デュシー侯が前部座席に座る伊丹に質問する。
そして帰ってきた返答に対して一瞬言葉を詰まらせた。

「それでゾルザル殿下は園遊会で出された、
 あの数々の美食に夢中になってたらふく食べて帰ったわけだな!!」

『よくご存じで・・・ええピニャ殿下も愚痴をこぼしていました。
 取り巻きともども妾だけでなく使用人の分まで食べて行ってしまった、と』

「何、元老議員ゆえに殿下の性格は『よく知っている』からな」

そう言うなりデュシー侯は座席に座った。

「キケロ卿、明日にはカーゼルに今日の事を知らせる必要がある」

「突然何を申される、デュシー候。
 まずは今晩再び集まって我々の間で講和について話し合いを・・・」

「乱入者はソルザル殿下だ」

「・・・殿下が?
 失礼を承知で言うが勇敢な『だけ』で在らされる殿下が?」

車酔いで表情を青いくしたままキケロ卿が呟く。

「ああ、その殿下だ。
 こちらも無礼を承知で言わせてもらうと、
 ゾルザル殿下とその取り巻きは揃いもそろって頭の中身は筋肉しかない。
 普通ならば園遊会の存在を嗅ぎ当てたりしないし、そもそも興味も沸かない方だ」

「つまり、誰かが告げ口をしたと、殿下に対して」

デュシー侯の独白に講和派議員の一人がやはり車酔いで顔を青くしつつ言う。

「ゾルザル殿下は並の人間の言葉に動きはしない。
 なぜなら皇太子という立場がある上に『あの』性格だ」

『あの』の言葉に一同沈黙する。
皇太子の粗暴な性格と態度には議員として嫌という程知っており、
そこらの議員の言葉で動くような人間でないこともよくよく知っていた。

「殿下のお気に入りの取り巻き?
 違うな、連中も所詮蛮勇なだけな連中だ。
 弟君のディアボ殿下?それも違うな断言してもよい、そもそも最もあり得ない、
 なぜならディアボ殿下の言葉にゾルザル殿下が絶対に聞く耳を持つことがないからだ」

「殿下が無視しない人間まさか・・・ランドール公爵閣下?」

「いや、あり得ない。
 あのお方はこのような火遊びをされる方ではない」

「では誰だと言うのだ!!」

「分からんからこうして議論しているのであろう!?」

ああでもない、
こうでもないと暫く議論が続く。

「・・・マルクス伯であろう。
 皇帝に近くゾルザル殿下も無視できない人間だ。
 何せ我々のように元老院派ではなく皇帝派であるからな」

その間沈黙を保っていたキケロ卿が言葉を発する。

「マルクス伯は内務相。
 内務相の権力が数ある官僚組織の中でも最も強力かつ巨大なものだ。
 帝国が敗北すれば伯は皇帝派ということもあり失脚する可能性は低くなく、
 その立場を守るためには帝国がジエイタイと二ホン軍との戦争に勝利する必要がある」

「マ、マルクス伯は正気か!?
 く、国が亡ぶかもしれないのだぞ!!」

「そういう我々かとて常備軍が壊滅したとはいえ
『アルヌスから動かぬ』という理由で楽観視していたであろう?」

ピニャ殿下から今日の光景を見るまでな、
とキケロ卿が自虐的に付け加えて周囲は沈黙する。
元々講和派といえどもあくまで『軍備を再建しつつ講和でアルヌスから敵を追い出す』
という程度の考えで敵についていささか楽観視していたことには身に覚えがありすぎるせいであるからだ。

「そしてこれは伯の、
 いいやマルクス伯が忠義を誓う皇帝からの警告であろう、元老院に対する」

「っ、皇帝が我々の動きに気づいたのかっ・・・!!」

「ありうる。
 唯でさえ常備軍が壊滅したのだ。
 講和が始まり帝国にとって不利な内容となれば、
 皇帝に対して責任を求める声が大きくなりかねない!」

方々で呻き、唸り声が発せられる。
事態が脳筋バカ(ゾルザル)が園遊会に乱入してきたとい事で済まず、
その背後で事態を操ったモルト皇帝の意思に対して思い知る。

「今回はあいさつ代わりの警告だろう、皇帝なりの。
 だが時が過ぎてゆけばどんな強権的な態度で出てくるか予想できない」

とデュシー侯は言い、一拍。

「議員諸君。
 状況はこのとおり非常に悪い。
 ゆえに早急に我々は意見と意思を統一させ講和へ邁進せねばならない。
 明日、私が主催する昼食会に誘う形でカーセルと共に今後について話し合おうではないか」

賛同する拍手と歓声の声はなく、
代わりに議員たちは黙って静かにうなずいた。

 



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続いたネタ44 GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり

2018-02-27 06:44:09 | 連載中SS

続いたネタ44 GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり


本稿は1966(昭和41)年に公開された「牧野侍従日誌」(牧野伸顕内大臣備忘録日誌)を抄録したものである。
今の世界と異世界の両方を征服すべしと上奏したと言われる「嶋田上奏文事件」に対して政府及び関係者の同意を得て公開を決定。

本稿においては日本政府が公式として採用する注釈付き、及び新仮名遣い版を採用した。



昭和20年8月10日 快晴。

早朝より銀座方面から宮中まで騒ぎが聞こえる。
各方面へ問いただすが不明確な回答のみが返ってくる。
やがて陸軍省より陸軍大臣の代理として栗林中将が参内す。

以下問答。

栗林「恐れながら陛下。
   詳細は不明ですが、
   今まさに帝都で戦争がはじまりました。
   陸軍省でも各人は武装し対抗している最中であります」

(註:宮城を挟んで銀座とは反対側の市谷本村町方面にも帝国軍の一部先遣隊が進出しこれと交戦中であった)

主上「何と」
   
主上、絶句される。
元寇あるいは薩英戦争以来の本土での戦争という予想外の回答ゆえに。

主上「嶋田総理は無事か?」

栗林「分かりません。
   陸軍省からの問い合わせにも回答はなく、
   伝令を出して安否の確認を急がしています」

(註:この時霞が関一帯は銀座から逃れる大量の避難民。
   加えて追撃してきた帝国軍が入り混じって混乱状態になっていた。
   首相官邸では警視庁の特別警備隊が決死の防衛戦を展開している最中であった)

主上「わかった。
   軍は直ちに事態へ対処せよ」

栗林「御意」

大元帥より命下る。
しかし事態は早急に悪化し二重橋前に臣民殺到す。

主上「門を開けて直ちに宮城に収容せよ。
   これは朕の命―――――すなわち勅命ぞ」

右往左往する宮中にて勅命下る。
宮内省の職員総出で避難誘導を開始する。
歩ける者は田安門を経由して後楽園方面へ脱出。
負傷し身動きが困難な者は近衛連隊の兵舎へ収容す。

やがて西洋の騎士。
あるいは羅馬軍のごとき軍勢が隊列を整えて宮城を包囲。
近衛歩兵連隊、皇宮警察が宮城と臣民を守護すべく配置につく。

主上「朕は出る」

私「おやめください、危険でございます」

栗林「陛下、どうか御文庫へ」

(註:御文庫とは防空壕のこと。
   また栗林中将がこの時点で宮城にいた理由として、
   近衛師団長がワイバーンに跨った騎士のランスチャージで串刺しにされて戦死したため)
   
主上「どこに行っても危険だよ」

陸軍の軍服を纏いし主上、颯爽と白馬にまたがる。
護衛の近衛兵、及び中将と私も慌てて続く。

石粒、矢弾が雨のごとく降り注ぐ中。
近衛歩兵、警察の戦いぶりをその目で見られる。

主上の存在に気づきし臣民。
士気、大いに高揚し力戦奮闘す。

やがて横須賀より飛来したわが軍の回転翼機。
及び攻撃機が敵軍をその火力で薙ぎ払う。

栗林「総員着剣、突撃せよ!」

栗林中将。
好機逃さず突貫突撃を開始。
銃剣の槍衾に敵軍はその陣形を崩され、敗走。
眼前で開幕されし一大戦舞台と御味方勝利に万歳の三唱が宮城に木霊する。

主上「かのヴェルダンンの戦いもこのような物であったのだろうか?」

しかし主上。
未だ蛮声に硝煙、血と汗の匂いが立ち込める戦場にて、
皇太子時代に今は亡き英国王ジョージ5世に勧められ視察された戦場の名を小さく呟かれる。

顔色悪し。



昭和20年8月11日 晴れ

各方面より帝都に兵力が集まる。
帝都にこれほどの兵が集まるのは関東大震災以来である。
市中に飛び交うデマなどを急ぎ取り締まり、沈静化を図る。
辻大臣が言うに良くも悪くも商魂逞しき人間はこの機会を利用して商売している模様。

午前10時、
嶋田総理参内。
疲労の色が目立つ。
しかし昨晩に続いて早急に奉上すべき案件が発生した模様。

以下問答。

主上「半世紀以上先の帝国・・・であるか?」

嶋田「より正確に表現すれば帝国が滅び、
   一度やり直した未来の日本でございます」

俄かに信じがたき事実が判明す。
かの銀座に現れた『門』の向こう側は異世界であるだけでなく、
異世界で立つもう一つの門の向こうには半世紀以上先の日本が存在するとのこと。

嶋田「今後の方針として向こう側の日本とは対話と交渉。
   ゆくゆく先の銀座事件の首謀者に対して共同に当たりたいと考えております」

(註:日本政府はこの時一連の出来事を『銀座事件』と命名した)

主上「それは内閣の総意か?」

嶋田「まさに」

以後、二三のやりとりをし、嶋田総理は退出す。

主上、午後より執務の合間を縫って玉音放送のため自ら推敲をはじめらる。
関係部署との交渉、銀座事件の後処理等で宮内省は徹夜が確定する。

主上より職員に対して恩賜の煙草、及び那須の蜂蜜が下賜される。

一同感激す。






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続いたネタ43 GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり

2018-02-12 23:57:01 | 連載中SS

ようやく会えた緑の人と土色の人たち。
炎龍を一度撃退したという彼らならば故郷を救うことができるかもしれぬ。

そうヤオ・ハー・デュッシは期待していた。
しかし得られた回答は否定。

曰く、炎龍がいる場所は国境の向こう側。
軍が国境を超えるということはどういう意味か?
その理由は言わずとも分かるはずである。

ゆえにお引き取り願いたい。

「・・・・・・分かった」

その回答を聞いたヤオは絶望を胸にしつつ部屋を後にした・・・。


「と、いう感じのやり取りをしたのだが、
 現在我々は国境を越えての活動はできない。
 しかし『野生生物』である炎龍は今こそ一か所に留まっているが、
 何時かは偵察隊が遭遇したように再び我々の前に現れる時が来るであろう」
 
「ゆえに、改めて問おう。
 もしも炎龍と対峙した時の対処法にについて各自意見を述べて欲しい」

狭間陸将、栗林中将は会議の参加者たちに対して問いかける。
参加者は自衛隊の戦闘団団長、日本軍の連隊長、さらに航空隊の指揮官。
とアルヌスに駐留している主たる部隊の幹部たちが揃っていた

「では航空隊から一言発言します」

日本軍側から「痛い子中隊」を配下に置いた高木順一朗大佐が立ち上がる。

「ハッキリ申しまして我が軍の航空隊単独での炎龍撃退は不可能です。
 九七式双戦の20ミリ機関砲、さらに斜め下向きに装備している40ミリでもあの龍に有効打撃を与えることは無理です。
 加えて少し前にお宅の噴進機でも撃墜こそされませんでしたがあの破損ぶりですからわが軍のレシプロ航空機ではとてもとても・・・」

九七式双戦の火力は機首に20ミリ機関砲4門とフォーマル大陸のワイバーンを簡単に撃墜できる程度の火力がある。
しかし『第三世代主力戦車』並みの装甲を纏った生物である炎龍には分が悪すぎた。

加えて少し前に自衛隊のF4が炎龍と遭遇。
これと交戦した結果、炎龍に対して下した評価は。

・機動力はハリアーか戦闘ヘリ並
・頭脳は野生動物の中でも賢い。
・旋回半径は第一次世界大戦時の複葉機より小さい。
・攻撃力はF4の電子機器を破損させる程度の威力を有するブレス。

と端的に言って脅威としか言いようがない存在であることが判明した。

「神子田さんとも話しましたが、
 自衛隊のAAM(空対空ミサイル)も相手が装甲纏っている以上有効打撃となりません。
 よって航空隊の使い方としてせいぜい牽制程度。炎龍を『自由に空を飛ばせない』ために使うべきだと思います」

そう締めくくった。

「加茂です、
 74式のAPFSDSならば貫通は可能なハズです。
 しかし相手は三次元を機動する生物ゆえに地面に釘付けにしていただけ無ければ困ります」

「最悪、一方的に空から蹂躙されることとなります。
 戦車はブレスにこそ耐えることはできると思いますが、
 歩兵が乗る機動車、それに各種車両はそれに耐えれれるか疑問です。
 また戦車も炎龍が空から押しつぶして来たら対処しようがありません」

加茂一等陸佐、島田中佐が戦車部隊の代表としてそれぞれ見解を述べる。

「・・・LAMが通用するのは伊丹が率いていた偵察隊で実証済み。
 しかし、だからと言って普通科単独、あるいは少数の精鋭による奇襲等は期待するのは無謀と考えています」

「火力だ、兎に角弾幕はパワー!
 確実にあの龍を打倒するにはそれしかない、
 砲兵の弾幕射撃とアルヌスにある航空機全てを動員して制圧。
 その上で戦車から釣る瓶打ちをするしかないと健軍一等陸佐と結論づけている!」

健軍一等陸佐、一木少将が事前に纏めた結論を述べる。

「諸君らの話を聞くとつまり、
 戦車、航空機、砲兵による立体的な攻撃が必要というわけか」

栗林中将がそうつぶやく。

「と、なると規模は最低でも1個戦闘団、または連隊。
 それに加えてヘリに航空機となると規模はかなりおおきくなりますね・・・」

「それだけではないぞ、八原参謀長。
 アルヌスの周囲に出現した時ならばそれで済むが、
 例えば今世話になっているイタリカに炎龍が襲撃した時、我々はそれを見捨てることはできない。
 道中の治安は以前よりも改善されているとはいえ、それは我々がアルヌスで陣取っているが故の保証だ。
 『アルヌスから軍がいなくなった』ことで妙な勘違いをする輩が出てこないように別個警戒の部隊を配置する必要がある」

ただ炎龍を戦うだけではなく、
戦っている間に蠢動する輩の動きを封じ込めるための部隊配置。
加えてイタリカを見捨てればアルヌスの間を結ぶ交流が打撃を受ける。
しかもイタリカは今や非公式とはいえ【帝国】とアルヌスを結ぶ中間地点と化しており、
政治的にこれを見捨てるのは非常にまずい、という意味を込めて狭間陸将が意見を述べる。

「改めて意見を纏めると厄介だな、
 龍を一体倒すだけにもこうも戦力が必要とは。
 まったく異世界であるならば魔王を倒す勇者に頼れたらどれほどよかったことやら」

栗林中将の冗談に場が笑いに包まれる。

「勇者、ではないですが。
 武神様であらされるロウリィならいますよ」

「ふふふ、それは良いかもしれないな。
 だが、彼女に頼り切ることはできない。
 それにいくら武神とはいえ空を飛ぶ相手では荷が重かろう――――ゆえに我々が倒すのだ」

八原参謀長の冗談に狭間陸将が同意を示したが、
炎龍を倒すべきは自分たちであると高らかに宣言した。

「神秘の存在が身近にあるこの世界で炎龍は最大の脅威であり、畏怖された存在だ。
 もしも我々の手で炎龍を仕留めることができればアルヌスから出ない我々を侮る【帝国】も考えを改めるであろう」

陸将の言葉に一同はハッと気づくと同時に真剣な眼差しで頷く。
如何に炎龍を倒すかばかり考えていたが得られる政治的な効果に気づいたのだ。
 
「我らに物語に出てくるような勇者はいないが、
 勇敢な隊員と兵士たちがいることを私は知っている。
 あらゆる事態を解決する万能の天才はいないが優秀な頭脳を持ち、
 各自が知恵を出し合い、最適な解決法をひねり出すことを我々は知っている」

一拍。

「さあ、諸君。
 議論を深めようではないか。


予定の時間より会議が長引きそうだ。








 


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(仮題)ヴァルハラの乙女 第32話「黒狐の雑談」

2017-10-01 22:15:55 | 連載中SS

欧州の夏は極東の某島国より過ごしやすい。
とはいえカーテンを閉め切った上で窓も閉じているせいで、
乙女たちが過ごすには少々不愉快な温度まで上昇し、寝汗を友としている。

「大尉ってさー」

そんな最中。
何気なくエイラがバルクホルン大尉の名を口にする。

「いい体してるよなァー」

「・・・見ても面白くないぞ、
 生傷の跡が結構残っている上に筋肉もあるから。
 それと早く寝ろ、宮藤とサーニャもさっき寝た所だろ」

バルクホルンが寝息を立てている2人を指さす。
既に慣れているサーニャだけでなく夜間哨戒に備えて朝から寝ろなんて言われても寝れない。
と愚痴を零した宮藤もエイラのタロット占いを受けてしばらくしてから夢の中の住民と化している。

「イヤ、寝れないし暇なんだヨ。
 だから私と少し雑談でもしないカ。
 部下の面倒を見るのも上官の務めだロ」

「ここまで図々しい部下はあのマルセイユ以来だな。
 それと厳格にカールスラントの軍規を適用すればその発言は上官侮辱罪に当たると警告しておこう」

ある種開き直った態度を取るエイラに対し、
バルクホルンはアフリカで活躍中の元部下の名前を思い出しつつ発言する。

「んんーー、どうせ軍隊での出世なんて興味ないから気にしなイ~♬」

「・・・ああ、知っていた。
 知っているとも、マルセイユといい問題児達は概してそういう考えだってことを」

対してエイラは【原作】で「雨が降っても気にしない~」
と口ずさんだフレーズのメロディーで自らの回答を表示する。
聞かされた側であるバルホルンは軍規で縛ろうとも問題児達は出世を気にしないという共通点を改めて再確認する。













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