帝国士官冒険者となりて異世界を歩く
某ビッチ巫女を執筆された北部九州在住様が執筆された『帝国の竜神様』
の物語の一部分を「小説家になろう」向けに再編集したもので、内容は「第二次大戦世界にF世界の物が召還された」です。
『帝国の竜神様』は昭和16年12月1日。
戦争の影が色濃く覆っていた大日本帝国に、帝都東京に異世界から竜が来訪。
同時期に世界各地に現れ、ハワイを襲撃されたアメリカ等と全世界を混沌の渦に叩き込む。
日本に現れた竜とその眷属は己が力の行使を代償に彼女と彼女の眷属の保護を求め、
戦争続く世界情勢とは他所に俄かに異世界と関わって行くが…………。
萌えネタ、エロネタ、さらにはキャラのやり取りに、
矛を交えない緊迫した情景、下手なラノベよりも魅力的で読み応えがあります。
ぜひ見てください。
「マダガスカル制圧おめでとうございます。
これで名実ともに、インド洋は大英帝国の物になりましたな」
去年の十二月に竜達がやってきた。
ハワイに住み着いて合衆国を追い出し、東京に住み着いて国民党を水攻めにし、アイスランドに住み着いて北大西洋を氷づけにし、マリアナ沖で超巨大鯨に巻きついて遊泳し、シチリアに住み着いてアフリカのイタリア軍が勝手に崩壊すると、世界は竜達によって引っ掻き回されているのである。
「いやいや、これも貴国が戦争などという最悪の選択をせずに真の勇気を発揮したおかげです」
日本大使の世辞に、首相は儀礼的返答をもって答えた。
外交など無いに等しい日本に比べて、英国はその外交力によってひたすら本土を独逸の手から守ってきたのだ。
竜で合衆国があてにならぬと踏んだら即座に、日本が暴発しないように第三国法人設立の抜け穴を教えてあげた。
大陸からの足抜けによる満州の兵の集中でソ連極東軍を動かさずに日本を牽制し、ドイツとソ連の軍事パワーバランスを整えて双方血を流すように仕向けた。
そして独逸向けの日本船を見逃す代償に、
インド洋で対日戦用兵力として点在する艦隊と部隊を使ってマダガスカル制圧し、余剰戦力を一気に地中海に集中させたのだ。
北アフリカ戦線は、竜によるイタリアの裏崩れによって今はチュニジアが主戦場となり、極東艦隊と地中海艦隊の総力をあげて独逸占領下クレタ島を攻略する作戦を計画していたが日本大使はそこまでは掴んでいない。
「さて、大使。
少し政治の話をと思いまして」
「政治の話ですか?」
「ええ。貴国は失業率が上がるので大変でしょう」
「はて、本国の話は聞いてないですなぁ」
日本大使はしらじらしくとぼけるが、それが通用するほどこの首相は優しくは無かった。
失業率が上がる。それは戦時動員の解除を指しているのだから。
「大陸での戦争も終息に向かっているとか。
平和になるというのは、戦争をしている我が国にとってはうらやましい限りです。
もっとも、我が国も第一次大戦終結時に、貴国と同じような問題を抱える羽目になりましたがな」
白々しく笑う大英帝国首相閣下。
日本大使は既にころ老人の老獪な力に引きずり込まれて、ただ愛想笑いを返すのみ。
「で、我が大英帝国がその失業率解消に協力しようかと」
「ほぅ。英国本国にまで輸出をさせていただけるので?」
困惑しながらも皮肉な笑みを浮かべた日本大使に似たような笑みを返して、首相は目を細めて本題を切り出してきた。
「いえね。
我々はナチと戦争をしていまして。
失礼。貴国は同盟国でしたな。
兵器と兵がいくらあってもたりないのですよ」
優雅に紅茶を味わっていた日本大使の手が止まった。
「連合国の盟主であられる大英帝国首相のお言葉とは思えませんな」
日本大使はゆっくりと言葉を吐き出して首相の思惑を探ろうとするが、
葉巻を楽しんでいるこの首相は何を当然の事と言わんばかりの顔を日本大使に向けた。
「当然のことでしょう。
私は、あのナチを打倒する為なら悪魔とも手を組むと公言している男ですぞ。
ましてや、貴国はかつての同盟国ではないですか。
しかも、三国同盟についたのは対ソ戦のためであって、わが国と戦う為では無いはず。
その証拠に我々はこうして優雅にお茶を飲み、紫煙をゆらめかせているでしょう?」