「さて、神風。
ルールは極めて単純明確なものよ。
模擬弾で撃ち合い、大破判定を受けた時点で負け。
範囲は鎮守府正面のこの海域のみ、港に逃げるとかはなしよ」
「了解……」
「元気がないわね?」
ボクのボソボソした回答に叢雲さんが突っ込んだ。
あ、うん。その点は自覚しているけど堪忍してつかぁさい、叢雲さん。
頭の中ではちゃんと考えているのに、どうしても、無口になってしまうんですよこれが。
「で、金剛、判定お願いねー」
『了解デース!私に任せてくだサーイ!』
無線越しに審判の金剛の元気な声が響いた。
微かだが他にも金剛の以外の艦娘のノリがいい声も聞こえた。
『あ、あの。神風さん!』
お、この声は全世界のロリコンT督が恋に落ちている電ちゃんじゃないか!
そんな彼女、否。天使とも言える存在が話しかけてくれた。ひゃっほぉぉぉ!!最高だぜー!
『無理をせずに頑張ってください!』
…………。
………………ふぅ。
まさか電ちゃんから励ましの言葉をもらうとは。
一瞬トリップしちまったぜ、まったく、駆逐艦は最高だな!
「期待されているわね、神風。
アンタの戦いたいという意思は素晴らしいと思うわ。
けど、記憶がない、戦い方が不明、本来なら神風は後方で静養するべきなのよ。
それでも、神風。『貴女』は此処に居たいと言うのだから、その意思を力を私達に見せてみなさい!」
あ、そうだったボケッとする暇はなかったな。
ロリコン万歳とハッスルしていたけど、叢雲の言葉に現実へ戻る。
目の前にいる叢雲はアンテナを模した槍をこちらに向けて、全身からこれでもかと闘争心を出している。
ビリビリと当てられる殺意、そして気迫。
どうやら、向こうは手加減とか一切するつもりがないようだ。
つまり、こっちもふざけていないで本気で向かい合わなければ叢雲に失礼だ。
「……知っている、だから戦う」
戦うと決めた以上ここで引き下がれるか。
今こそ幼い少女のなりだが、心は日本男子のままだ。
それに海戦ものならウォーシップガンナーで、
スーパー北上プレイと駆逐艦縛りで散々遊んだからな、叢雲こそ油断するなよ!
『準備はいいようネー!では用意ーー』
金剛の合図が始まる。
今後の運命を決める戦いがもう直ぐ始まる。
緊張と高揚感が止まらないがかまわない。
息を吸い、そして、ゆっくり吐き、目の前に集中する。
叢雲も腰を落として、槍を構えこちらを見据えており準備は万端、後は戦うだけである。
『始メ!』
開始の言葉と同時に、ボクは海面を蹴った。