おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「共犯者」 松本清張

2010年07月27日 | ま行の作家
「共犯者」 松本清張著 新潮文庫(10/07/26読了)

 日本の推理小説史に、その名を刻む巨星であるということが、納得できました。
 
 私よりもうちょっと世代が上の人は清張を熱心に読んだのだと思います。でも、私が大人になる頃には清張は相当の高齢になっていたか、没後だったかで、私にとっては、まったく「同時代」感がなく、「超有名であることは知っているけれど、ほとんど読んだことのない作家」でしかありませんでした。

 知人に「共犯者」を薦められた時も、実は、イマイチ、気乗りしていなかったのですが…、読み始めてみて「なるほどね~」と納得。熱烈なファンがたくさんいた(いる)ことはよくわかります。私も、もうちょっと同時代感があったら、思い切りハマっていたかも。

 表題作である「共犯者」は、強盗事件で奪ったカネを元手に商売で成功した男が、「共犯者がヒミツをバラしてしまうのではないか」「共犯者が、自分の成功をねたんで強請りに来るのではないか」と疑心暗鬼にかられるなかで、自己の破滅を招いていくというストーリー。犯罪をした瞬間から、たとえ、警察に捕まらなくとも、本当の意味で自由な人生を送ることはできないという教訓であり、また、実は一番怖いのは自分自身であるということを象徴的に現わしています。

 他、短編9編。「剥製」は、ニセモノであることに開き直って生きる人の姿にハッとさせられる作品です。

 当然のことですが、昭和って捜査手法もまだ未熟というか… 今の水準まで達していなくて、犯罪が大らかだなぁ…。今の時代に松本清張が生きていたら、どんな面白い作品を書いてくれたのだろう? 一方で、平成生まれの子たちにとっては、もはや、ニュアンスすら伝わらない作品なのかもしれない…などと思いました。



コメントを投稿