おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「おまえさん」 上・下巻 宮部みゆき

2012年02月06日 | ま行の作家

「おまえさん」上・下  宮部みゆき著 講談社文庫 

 

 江戸の町で起こった連続殺人事件の謎解きをベースとして、それに関わる人々の人間ドラマ。ネットで読書ブログや書評サイトなどいくつか見てみたけれど、おしなべて絶賛モードですな。独特の空気感があって、私自身も「これは固定ファンがいるんだろうなぁ」と思いながら読んでいました。

 

 でも、個人的にはかなり苦手な部類。上巻読み終えたあたりでドロップアウトの誘惑に駆られましたが、気力で頑張りました。

 

 決して、つまらないというわけではないのですが…。ふと頭に浮かんだのは、自転車で長い急坂を上る時に、なるべく斜面と水平になるように大きくジグザグを描くように上っていく光景。もちろん、最短距離の進路を取ることだけが最善の方法とは限らない。けれど、あまりにも細かくジグザグをとっていると、総走行距離がどんどん長くなって、結局は急坂を最後まで登りきらないうちに力尽きてしまうような感じ。

 

大きく蛇行しながら、あちらの斜面の花を愛で、こちらの斜面から眼下の街並みを眺めて…なんてことをしていると、注意力散漫な私は、目的が頂上に登ることだってことを忘れてしまいそう。この小説も、最短距離である直線コースからはずれて、ゆったりと蛇行しながら上っていく感じで、たびたび、サイドストーリーに気を取られているうちに、ストーリーの幹の部分を見失っていることがありました。

 

しかし、物語というのは、本来そういうもので、無味乾燥な最短距離の物語では、逆に面白みがないのかもしれない。要はバランスの問題なんだろうけれど、せっかちな私には、あちらの花を愛で、こちらの風景に見とれているよりも、もうちょっと蛇行が少ないコースでさっさと登りきってしまいたいのです。