おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「となり町戦争」 三崎亜紀

2008年04月28日 | ま行の作家
「となり町戦争」 三崎亜紀著 集英社文庫 (08/04/28読了)

 タイトル通り、とある地方都市(どうも、東京や神奈川ではないらしい雰囲気)で隣町同士が戦争をするというストーリーです。奇想天外でありながら、どこか、隠喩的というか、現代が抱える問題を描き出しているような…。そして、お役所仕事のばかばかしさを痛烈に皮肉っていたりと、読みどころはそれなりにあるのですが、なんか、盛り上がりに欠けるストーリーでした。
 
 主人公の北原修路は役場からの召喚状で唐突にとなり町との戦争に組み込まれ、敵情視察のために役場の女性と偽装結婚までしてとなり町に潜入居住して、戦争によって人が死んでいくことに心が痛むようでいて、戦争の実感がないもどかしさも味わうのですが…。理不尽に戦争に巻き込まれながら、北原がそれに抵抗しているフシがほとんど無い。“もどかしさ”を感じながらも、全てを受け入れて、流れに身を任せていることに、読む側は“もどかしさ”を感じてしまうのです。その実感のなさこそ、現代を象徴しているのである-ともしかしたら著者は言いたいのかもしれませんが…。やっぱり、奇想天外な割りには淡々としすぎているように思います。改めて、「図書館戦争」(有川浩著)の突き抜けたハジケっぷりが清清しく思い起こされます。



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