おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

吉田簑助さんの「私の履歴書」読みました!

2008年05月21日 | 文楽のこと。
吉田蓑助さんの「私の履歴書」 日経新聞07年9月連載 (08/05/19一気読み)

 後輩が苦労して新聞の縮刷版をコピってくれて、昨年9月に連載されていた簑助さんの「私の履歴書」を一気読みしました。思えば、昨年9月に連載されていた時には、私の心に文楽というワードはこれっぽっちも引っ掛からなかったのです。何の興味も無かったというか…存在しないも同然でした。毎日、日経新聞は読んでおりますが、簑助さんの連載なんて、まるで記憶にございません。それが、今や、かなりミーハーなのめり込み。1年足らずで人生何が起こるかわからないものです。

 最初は、仕事の合間にちょこっと読むつもりだったのが…知らぬ間にどんどんと引き込まれ、仕事を放ったらかして没頭。入門前から文楽が好きで好きでたまらなかった子ども時代、文楽座の分裂から再統一までの苦労話など一つ一つのエピソードが生き生きと描かれていて、時にクスリと笑ってしまったり、時にホロリとさせられたり。簑助さんの文楽への愛情の深さがひしひしと伝わってくるのです。でも、やっぱり、脳出血で倒れて、苦しいリハビリを乗り越えて、舞台復帰を果たすところがハイライト。それまでも、鼻をグスリとすすりながら読んでいたのですが、ついに、決壊して、涙が止まらなくなってしまいました。(職場でなきながら新聞のコピーを読んでいるなんて、かなり、怪しいヒト?)
 
 簑助さんがリハビリで苦しんでいらした頃、私は文楽の存在さえもろくに認識しておりませんでしたが…でも、見事、復帰を果たされたことに心より感謝したい気持です。今、こうして、簑助さんの舞台を拝見できるのが、もしかしたら奇跡なのかもしれないと思うと、私は、なんてラッキーなんだろうと思います。これから、一回一回の舞台、ますます、心して拝見しなければなりません。文楽への深い愛情と、数々の苦労を乗り越えられた人生が、かわいらしく、たおやかなお人形ちゃんの所作へと結実しているのですね。

 そして、もう一つグッときてしまったのが、戦争中のエピソード。イデオロギーを超えて、戦争なんていやだ-という言葉の重みが伝わってきました。コピーは大切にとっておきますが…でも、是非に、書籍化していただきたいものです。珠玉の一冊となりますことでしょう。

「格闘するものに○」 三浦しをん

2008年05月21日 | ま行の作家
「格闘するものに○(マル)」 三浦しをん著 新潮文庫(08/05/21読了)

 三浦しをんのデビュー作。タイトルとはうらはらに、あんまり格闘しているとは思えないユルキャラの可南子ちゃんの就職活動模様(といっても、ろくに活動していないが…)を軸に、友人や家族との交流を描いた作品。肩こらず、頭固くせず、気楽にウフフと笑いながら読めます。だから、気分転換にピッタリ!でも、かといって、フワフワのマシュマロのように何も残らないわけではなくて、読み終わっても、ちょっと心に引っ掛かるものがある感じです。

恐らくは、三浦しをん自身を反映させていると思しき可南子ちゃんの脱力&ゴーイング・マイ・ウェイぶりが何とも気持ちがよろしいのです。潔いまでに「人は人、我は我」と割り切れる強さが、彼女の文筆家としてのバックボーンになっているのだと思います。 で、どうにも珍妙なタイトルは、ストーリーの中で出版社「K談社」の社員の発言として紹介されています。どう考えても「K談社」って、あの「K談社」以外に考えられないですよね。もしも、このエピソードが実話であるとすれば、これから、K談社の本を買うのをちょっと躊躇してしまいそうです。「いくらなんでも、出版社の社員としてはマズいでしょ」と突っ込みを入れたくなります。

大変、楽しかった。でも、私的には、やっぱり「仏果を得ず」の方が断然、好きです。