おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎

2008年05月20日 | あ行の作家
「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎著 新潮社 (08/05/20読了)

 今年の本屋大賞にして、山本周五郎賞受賞の話題作。さすが、巧妙な作りのストーリーだなぁと思いました。ケネディー大統領暗殺事件のオズワルドさながら、ある日突然、普通の若者が首相暗殺事件の犯人にでっち上げられてしまう。読みどころは一杯ありますが、当局情報を鵜呑みにして垂れ流すマスコミ批判は、なるほどなぁと思わされます。というか、さすがに今の日本で、普通の市民が政治謀略に巻き込まれて犯人扱いされることはないと思います(思いたい)が、でも、巧妙に群集心理が当局の思う方向に操られていたり、知らぬ間に個人情報が閲覧されていたり-というのは、既に、現在進行形で起こっていることなのだろうなぁと考えると、背中が薄ら寒くなります。

大きな賞を二つも受賞したのは(すみません、受賞理由等は一切、読んでおりませんが…)、恐らくは、構成の上手さも評価されているのだと思いますが、個人的には、場面が変わるたびごとに、現在だったり、数年前だったり、もっとずっと前だったりとタイムワープがあまりにも激しすぎるのは、ちょっと疲れました。でも、それ以上に、話の展開の面白さに引き込まれます。ハラハラドキドキのさせ方が、巧妙ですね。

 手に汗握るジェットコースターストーリー的でありながら、最後、ちょっとホロリとさせられます。とにかく、ありとあらゆるところに、伏線が埋め込んであって、「ああ、あれって、こういうことだったのか」という楽しさもあり、無駄な登場人物が一人もいないんですよねぇ。でも、究極的には、救いが無いというか…あまりにも、不条理な人生で終わってしまうのが、ちょっと悲しかったです。