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もんく [マレーシアで働いて13年→2022猫を連れて日本]

きなこ

これを書くかどうか迷った。

書いてしまうと書いた部分だけが彼の記憶になってしまうようだし、書かないとただ忘却の中に全てが沈んで行きそうで、どちらにしても何かが大きく欠落する気がするから。

でも書く事にした。どうせ人間の脳はネガティブな事を忘れよう忘れようと作用するだろうし、そしていつか今の生活が普通になってしまって何も無かったようにしてしまうのがオチだ。ここに書けば親切にもgooブログはきっかり1年後にこれを見せてくれるだろう。そしてその頃ここ数日の出来事が頭の中でどうなっているかと思うと、gooブログに金槌でガンを殴ってもらうべきだろうし。

2020年11月28日、早朝の5時頃、きなこはいつものように夜遊びから帰ってきてカリカリを食べた。そして外を出て行った。それもいつも通りだ。けれど、いつもなら朝日が昇る頃には家の近くにいて、それは隣家の駐車場とか、そのあたり。そしてまた家に入って来て家の中のどこかに寝るか、2階の窓の外に庇とも言えないちょっとした突き出しに登って寝ていたりする。

しかしその日はきなこは帰らなかった。たまに他の家の車の下に入ったりもするので待っていたが夜になっても帰らなかった。雨が降った。雨が降ると少し小降りになった隙を狙った帰るのだが、帰らなかった。深夜まで待ったが帰らなかった。

次の朝、いつもの5時にも帰らず。住宅地の連絡網に写真をアップして尋ねたらだいぶ離れたところで似た猫を見たと言う人が1人いた。探しに行ったがいない。他人から見れば猫などどれも同じに見えるかも知れないし、本当にいたかも知れない。何度も探した。夜になっても数回探したがいなかった。

いろいろな場所を探した。いつも行く裏の空き家、遊水池の周辺、縄張りにしていた場所。いない。住宅地の外の溝も探したし、広い道路の反対側のスーパーマーケットの周辺まで。結局その日も帰らなかった。

今朝、雨で流されたと言う最悪の可能性も考えて道路排水が流れ込む川の下流の遊水池まで歩いて探した。何もヒントになるものは無かった。


最近、彼は顔を汚して帰る事が多かったからどこか狭いところに入り込んで何かしていたと思う。排水口の中に入る場所が1箇所あって、そこでネズミやヤモリを探していたのかも知れない。そこに急な雨が降った。そう言う可能性が一番高いのかと思う。それとも数ヶ月前には肝臓が弱って死にかけたからそれが爆発したと言うのも考えられる。


きなこ、生まれてから5年と8ヶ月。何度も死にかけている。病気もあったし、喧嘩で怪我して感染症にかかったり尻尾を失うかと思った事もあった。その度にクリニックに連れて行き10日程度の薬漬け。食欲が無い時には嫌がってもちゅーるをシリンジで口に押し込んだ。だいたい3日目で熱が下がり始めて1週間で元に戻る。その間に体重は1キロ弱落ちた。そんな事の繰り返しだった。

子供の頃は甘えん坊で、キャサリンが近くのスーパーに行くのについて来てしまって行けなかった事もあるし、一緒に家の周りを散歩する習慣もきなこが最初だった。

去勢してからもきなこはオスらしい行動が残った。家の外に出て低い塀に乗りずっと外の車道を走る車を見ていた。仕事から帰るとそこにきなこが座ってこちらを見ているのがわかる時期も長かった。弱かったが野良のオスとよく喧嘩したり、猫のいる他人の家に行って猫を追い出して餌を食べていたりもした。非常にクリエイティブだと思ったのはきなこの場合、道路に落ちている石ころや木の枝を見るつけて一人で遊ぶ事ができた事だ。

そしてだんだんと行動範囲を広げたり、そのうち怪我して家にしばらく閉じこもったりしながら、まだ自分で外でいろいろやる事を見つけて来て夢中になっていた。猫なんて家で飯食って寝てればそれで良いようなものだが、きなこはそう言う猫じゃなかった。それでも家に帰ると一緒の散歩に行こうと誘うし、歩いているとぴょんと飛んで頭を足にぶつけてきたり、歩いている足のサンダルに飛びかかってバリバリと爪を立てて遊んだりした。つまりは何か自分自身でいろいろやってみようといつも思っているようなところあった。

その点メスのつぶあんとは、同じ親から生まれた子であるにも関わらず真逆と言える。オスとメスの違いから始まっているかも知れないが、ずっと一緒に暮らしていながら徐々に生活のスタイルや志向が変わってしまった。知らない人から見れば別にどうって事もないだろうが、きなこは振り返って考えると面白い、そしてすごい猫だ。自分の生き方とかスタイルを親もいないのに、そして仲間らしき猫も全くいないのに自分で編み出してやっていた。そしていくらかの縄張りを治めるに至ってすらいた。

一方でそれはリスキーな生き方だったのはわかっていた。道路の脇で平気で横たわっていたりして、車なら音でわかるが電気スクーターや自転車に踏まれるかも知れなかったし、他の猫を追いかけて走り、車に轢かれる可能性もあると思っていたが、それはどうにもしてやれなかった。時々、外に出て行くと、もうこれがきなこを見る最後になってしまうのでは無いかと何度も思った。そして病気になり体重が減る度に今度こそ最後ではと、何度思った事か。

そして、それがこの日に来るとは。そして思いも寄らぬ消え方で。道路で轢かれた形跡は無いし、川に流されて引っかかってもいない。この歩いて周れる住宅地を探すだけ探してもどこにもいない。喧嘩した形跡もない。跡形もない。と言う事は見えない場所、つまりは下水管の中のような場所で、お気に入りの狭いどこかで顔を汚しながら何かしていて事故にでも遭った可能性が高いだろう。もし死んだなら家に帰りたいと思ったか、助けて欲しいと思っただろうか?それともそんな事を思う間も無かったか?

もし万一、生きているとしたら、今までの事は少しも覚えていなくてもいい。ここは帰れないならそれでも構わない。もう少しでも長く生きられる何かの方法を見つけて可能な限り生き長らえて欲しい。心配なのはきなこはママのオッパイを終えてからカリカリしか食べた事が無い事。美味い肉や魚があってもそれを彼は食べ物と思えないのだ。
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