牛スピーカーを今のようにする間の考えについてざっくりまとめてみる。
最初、牛になる前に誰かがこの箱でスピーカーを作った。その時点では奥行きのあるただの四角い箱に今と同じ2つのユニットが取り付けてあってその下にバスレフの穴らしきスリットがあるスピーカーだった。
その状態で試聴してみたところ低音が全く出ておらず、なぜかバスレフの効きが悪いと感じた。だが、それ以外が音がかっちりしていて中音より上はきちんとできている気がした。
箱を開けてみるとスリットがバスレフの穴ではなく、なんとバックロードホーンの開口部になっていたと判明。普通バックロードホーンは開口部が広くなっているはずだがそうはなっておらず内部はただの複雑な通路だった。素人がテキトーに作った物だったが、メルカリで売られている自称バックロードホーン・ミニスピーカーの真似じゃないかと思われる。
そんな物に意味はないので即座に除去し作り直すことに決めた。
そこでどんなスピーカーにするか考えたが、最近多いバスレフにしたとしても素人にはまともな物が作れないだろうと考えた。
バスレフの問題点は、低音のある部分を増強できるにしても増強したくないそれより高い音の側、つまり中音にかかるところがダクトから漏れ出すのは避けられないので周波数特性を乱してしまう。これはきちんと測定できない素人に形は作れたとしても完全に解決できる気がしないのだった。
特に2Wayの場合、クロスオーバー周波数は一般に3kHzあたりになっていて、ウーファーのカバー範囲が広いからダクトから漏れる周波数をネットワークでカットできない。3Wayならできる可能性はあるが今回も2Wayなので不可能。
いくら世の中でバスレフが一般的だとしても、やるならスピーカーユニットメーカーの薦める箱を使う以外にまともな箱を作るのは無理だと考えた。ましてバックロードホーンなどどう調整してもできるわけがない。
ところで、バックロードホーンもオーディオメーカー以外の木工屋から売られているのが目立つがあれも危険だと考えている。たぶんまともな物とはとても言えないだろう。なぜなら昔の人がバックロードホーンをやったのは当時のアンプの出力が弱く、そしてスピーカーも能率を上げるのにコーン紙に工夫をしたり箱や空気の共鳴を積極的に使わないと大きな音が出なかったからで、そうした問題がユニットでもアンプでも解決できている現代にすべきこととは考えられないのだ。やるとしたら単にノスタルジーかあえて癖のある個性を強調したい場合だけだろう。
なので結論として密閉型しか選択肢は無い。
そして密閉型の作り方だが、箱の作り方にある問題があった。が、それは後に置いておいて・・・昔のスピーカーユニットと今のユニットの違いについて認識しておかなければならない。
上の図で昔は共振を最大限に利用していたと言った。昔のスピーカーにはコルゲーションと言うコーン紙の途中に凸で輪を何重にも描いたデザインが採用されていて直径も大きかった。低い音は外側まで一体になって前後に動き、高い音になるにつれて中央部だけ動く構造になっていたし、コルゲーションが無い場合でもコーン紙は逆富士山のようになっていたのは良い材質が開発されていなかったためだ。
今は軽量で強い材料があるしマグネットが強いのでコーン紙全体がほぼ一体で動いて高い音から低い音まで出せる。つまり同じように低音を出そうとすると小さなユニットでできるようになった。
ただ、それだけで解決できない問題もあって、低い音ほどスピーカーの周辺部に分散してしまうからユニットが出してはいてもリスナーのところに低音が十分に届かないということ。
というわけで今は小型スピーカーはバスレフにして低音を補うということになっている。
ここで、「でも測定できない素人には難しいよね」というさっきの話に戻るというわけ。やはり密閉型だなと。
しかし、ここに一つの大きな問題がある。問題があると言っても、世間ではそれが問題だと認識されていない。それは密閉型では箱を「単なる容積」としてしか認識していないということ。この単なる容積というのはそれこそ7〜80年代もそうだったわけで、少なくとも自作の現場においてはそこから何も進歩していないということだ。
ちなみにあるスピーカーキットメーカーさんの仕様決めについてはそのやり方が公開されていて読ませていただいているが、そこでも箱は「容積」扱いでしかなかった。スピーカーのコーン紙の前に出る音への考え方と後方、つまり箱の中へ出る音と扱いが違うことに誰も何も問題を感じないのか?ということだ。
この部分の疑問が今回の牛スピーカーの作り方の要点になった部分だ。
そしてある部分において解決に至ったので良い結果が得られたと考えているのと同時にまだ試せていないことがいくつかあるとも考えている。次に作るにはこれをやって確認しなければとは思うのだが、個人で置く場所をとるスピーカーをそう高くはならないにせよお金をかけて作れるか?という技術とは別の問題があるので次の解決と作成はしばらくお預けとなる。
なので牛スピーカーの「秘密」もここではお預けとさせていただく。悪しからず。