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もんく [とある南端港街の住人になった人]

自由とか

最近、「自由」について考えることが多い。
大きな理由は建築を勉強しているからなのだが、それに加えてそう言う話題を振る人が別に何人かいると言う偶然が重なっているためだ。


もう10年以上前の8月、デンパサールでインドネシア独立記念日のパレードが大通りを闊歩するのを見ていたことがある。パレードと言っても見た目はカーニバル、またはデモ行列に近いもので赤白の国旗を掲げた人たちが普段着や思い思いの服装で歩いていたり自動車の窓から乗り出すように叫んでいたり仮装していたりと案外ラフなものだった。

それを見たとき、「独立」と言う言葉に2つの意味があるのだと言う事が、何故かすぐにわかった。

彼らは独立後50年経っていたにも関わらず、占領からの独立を祝っているとわかったからだ。ボロボロの自動車の窓から半身を乗り出して、おそらく玩具だろうけれども長い銃らしきものと国旗を振るその姿。カーキ色の軍服に似たようなシャツ、過激なパフォーマンス。我々にとってどれもが映画でしか見ることができない戦争の匂いのする光景だった。

他者の支配からの独立、彼らが祝っていたのはそれだ。
自らの足で立てる、自分の事は自分で決められると言うようなものではなくて、支配からの開放、その瞬間を記念して祝うものだったのだ。

当時のインドネシアは未だスハルト政権下にあった。であるから人々の心の底には権力による「支配」の問題は大きな問題として存在していた。祭り以外で一定以上の人数を集めた集会と認められる行為は禁止されていたほどだったし、政府を批判すると思われかねない話は家族友人でもできなかった。

ただ、外見上はとても平和な場所であって観光客から見ればゆったりとした時間の流れの中にある神秘の国には違いなかった。そんなポーズをとりながら生きている、そうした条件下においては間違いなく良い所だったと思う。


条件付きの平和、独立、自由。
それは平和、独立、自由と言えるものなのか。

それは仮釈放ではないのか。



あの独立記念日を見てから数年後、インドネシアの映画監督が確か日本のテレビ局の支援を受けたか何かでジャワのストリートチルドレンのドキュメンタリー風の映画を作った。日本ではテレビの深夜枠で公開されていた。

当時のインドネシアでは国民の貧困などを扱った映画などは禁止されていた。それは政府への批判に繋がるからだ。もちろんその映画の趣旨も体制批判に違いないものだった。後にその映画の評判は、インドネシア以外の国では良かったと聞いた。


だが、その映画の視点には疑問が残る。

ストリートチルドレンがあんなに増えた理由、スラム街が増え続けている理由、そこには独裁政府の支配とそれに対する自由と言う問題があるのは確かで、外国メディアはそれに対する批判映画として受け止めたようであったが、それは違うと感じたからだ。

結論から言えば、それは人間の「自由」などと言った問題を扱ったものではなくて、「分配」の問題を扱ったに過ぎない。独占する者がいて、貰えない者がいると言う社会構造についてだ。

もし当時のインドネシアの社会構造がもう少し分配についてしっかりしたシステムを持っていたならば、つまりお金がもう少し末端まで流れる仕組みであれば彼はこの映画を作ることはなかっただろう。

持てる者 - 持たない者、その構造の間に批判者がいて、全てがお金と言う直線で繋がっている。批判しているようであっても同じ視点で見ていて、自らがその直線の上のどこに属すか、そして単に他者が自分より下の位置にいることを気遣ったに過ぎないのだ。

つまりお金と言う条件さへ満足すれば、彼らには自由が手に入ると考えていた。

それを一番うまくやったのがスハルトで、一番しくじったのがストリートチルドレンと言う構図だ。



これらは全てインドネシアでの事であったけれども、今の日本の社会を見ていてあの時のあの状況とそれほど違わないのではないかと感じる。条件を上手くクリアして甘い汁を吸う者とそれに失敗する者と言う構図。

そんな1本の直線上をぞろぞろ列をなして歩くのはどんなものか。直線のこちら側は自由であちら側は拘束。ちょっとでも出口に近い方向へと満員電車の中を進むに似ているような気がしないでもない。

自分の足で歩けば良いのに。
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