<大船渡温泉(2) 岩手・三陸>
大浴場入口ですれ違った先客で切れたのか、浴室には誰もいなかった。
(この内湯、晴れていればガラス越しに大船渡湾が一望できたのに・・・ちょっと残念だ)
岩手県の久慈から宮古までは車で何度か訪れていたのだが、宮古から南の太平洋岸はまったくの未踏だった。そこで一念発起して最近、宮城の石巻と気仙沼を訪ね、今回は釜石から大船渡に行ってみようと思ったわけで、珍しく温泉目当ての旅ではないのだ。
釜石から三陸リアス線で9駅、時間にして小一時間(50分)で盛駅に到着した。
盛駅からは、「JR大船渡線BRT快速(はやい話がバスだ)」に乗り換えて大船渡に向かった。バスは苦手だが、所要時間は20分もかからないので安心だ。
「大船渡温泉って、次の『大船渡』で降りればいいのでしょうか」
3つ目のバス停「大船渡駅」が近くなったので、運転席に近寄り尋ねたら、「あっと、違いますよ! もう3つ先の『大船渡丸森』というところで降りてください。降りたらすぐですから」。
言われた「大船渡丸森」の駅(バス停)で降り、雨に濡れながら「くの字」型の短い坂道をのぼると「大船渡温泉」の建物があった。腕時計をみるとまだ午後1時前だった。
チェックイン手続きだけ済ませ、部屋の用意ができるまで本でも読んで待つかと思っていると、先に温泉に入りますかと嬉しい勧めがあったのだった。
温泉はどうかというと、よく海岸ぺりにありがちな温泉である。たいしたことはない。もっとも今回は温泉目当ての旅じゃないから腹もたたないが。
もうひとつの薬湯っぽい小さな内湯にもサクッと入り、外の露天風呂へ出た。
雨脚がだいぶ強くなってきている。
目の前に広がるのは、雨にけむり鈍色だが、大船渡湾の絶景だ。温泉はさておき、この絶景は得難い。明日、天気になればいいなと思う。
雨で湯温が下がっているので、ぬるすぎる。露天から内湯に戻ることにした。
玄関出たとこで一服するかとロビー前を通りかかると、部屋の準備ができたと声がかかった。
眺望の悪い高層の部屋に入ると、だだっ広い駐車場に面した窓を全開にして煙草に火を点けた。本当は全館禁煙で、入口玄関脇の外に設置してある灰皿まで行かねばならないのだが、面倒くさい。ま、一本くらい、いいだろう。
「プルルルル・・・」
吸い終わり、吸殻を携帯灰皿に入れているとき、室内電話が鳴った。厭なタイミングである。ま、まさか・・・。
「フロントですが・・・。お客さまの階の廊下が煙草臭いとのことなんですが、お客さま、もしかしてお煙草をお吸いになられましたでしょうか?」
「あ、いや、その・・・つい、申し訳ない」
「くれぐれも、全館全室禁煙、喫煙は玄関入口横のみでお願いいたします!」
部屋の中のどこかに隠しカメラでも設置してあるのかと思わずキョロキョロみたが、階の部屋をメイクしている仲居の鼻のいい誰かからフロントにご注進がいったのだろう。
しまった。考えてみれば、たぶん超フライングのチェックインはわたしだけだから犯人探しはいとも容易かったはずだ。
それにしても、立て続けに3本吸ったならともかく、たった1本吸っただけで、宿側からいきなり真っ向唐竹割りに注意される、なんてことは初めてだ。従業員教育がしっかりしているようで、まるでなっていないような気もする。
岩手では煙草吸いがよっぽど嫌いなようで、扱いがキツイ。
― 続く ―
→「大船渡温泉(1) 岩手・三陸」の記事はこちら
大浴場入口ですれ違った先客で切れたのか、浴室には誰もいなかった。
(この内湯、晴れていればガラス越しに大船渡湾が一望できたのに・・・ちょっと残念だ)
岩手県の久慈から宮古までは車で何度か訪れていたのだが、宮古から南の太平洋岸はまったくの未踏だった。そこで一念発起して最近、宮城の石巻と気仙沼を訪ね、今回は釜石から大船渡に行ってみようと思ったわけで、珍しく温泉目当ての旅ではないのだ。
釜石から三陸リアス線で9駅、時間にして小一時間(50分)で盛駅に到着した。
盛駅からは、「JR大船渡線BRT快速(はやい話がバスだ)」に乗り換えて大船渡に向かった。バスは苦手だが、所要時間は20分もかからないので安心だ。
「大船渡温泉って、次の『大船渡』で降りればいいのでしょうか」
3つ目のバス停「大船渡駅」が近くなったので、運転席に近寄り尋ねたら、「あっと、違いますよ! もう3つ先の『大船渡丸森』というところで降りてください。降りたらすぐですから」。
言われた「大船渡丸森」の駅(バス停)で降り、雨に濡れながら「くの字」型の短い坂道をのぼると「大船渡温泉」の建物があった。腕時計をみるとまだ午後1時前だった。
チェックイン手続きだけ済ませ、部屋の用意ができるまで本でも読んで待つかと思っていると、先に温泉に入りますかと嬉しい勧めがあったのだった。
温泉はどうかというと、よく海岸ぺりにありがちな温泉である。たいしたことはない。もっとも今回は温泉目当ての旅じゃないから腹もたたないが。
もうひとつの薬湯っぽい小さな内湯にもサクッと入り、外の露天風呂へ出た。
雨脚がだいぶ強くなってきている。
目の前に広がるのは、雨にけむり鈍色だが、大船渡湾の絶景だ。温泉はさておき、この絶景は得難い。明日、天気になればいいなと思う。
雨で湯温が下がっているので、ぬるすぎる。露天から内湯に戻ることにした。
玄関出たとこで一服するかとロビー前を通りかかると、部屋の準備ができたと声がかかった。
眺望の悪い高層の部屋に入ると、だだっ広い駐車場に面した窓を全開にして煙草に火を点けた。本当は全館禁煙で、入口玄関脇の外に設置してある灰皿まで行かねばならないのだが、面倒くさい。ま、一本くらい、いいだろう。
「プルルルル・・・」
吸い終わり、吸殻を携帯灰皿に入れているとき、室内電話が鳴った。厭なタイミングである。ま、まさか・・・。
「フロントですが・・・。お客さまの階の廊下が煙草臭いとのことなんですが、お客さま、もしかしてお煙草をお吸いになられましたでしょうか?」
「あ、いや、その・・・つい、申し訳ない」
「くれぐれも、全館全室禁煙、喫煙は玄関入口横のみでお願いいたします!」
部屋の中のどこかに隠しカメラでも設置してあるのかと思わずキョロキョロみたが、階の部屋をメイクしている仲居の鼻のいい誰かからフロントにご注進がいったのだろう。
しまった。考えてみれば、たぶん超フライングのチェックインはわたしだけだから犯人探しはいとも容易かったはずだ。
それにしても、立て続けに3本吸ったならともかく、たった1本吸っただけで、宿側からいきなり真っ向唐竹割りに注意される、なんてことは初めてだ。従業員教育がしっかりしているようで、まるでなっていないような気もする。
岩手では煙草吸いがよっぽど嫌いなようで、扱いがキツイ。
― 続く ―
→「大船渡温泉(1) 岩手・三陸」の記事はこちら
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