由布院（１）

　　＜由布院（１）＞

　阿蘇をあとにすると、一路由布院を目指した。
　もちろん、やまなみハイウエイを通ってだ。



　運良くいい季節なので、緑一色の風景のなか、快調に車は走る。



　わたしは由布院が大好きである。
　近場の熱海、草津、那須以外には、あまり同じ温泉になんどもいかない。なの
にである、横浜の人間なのに、九州大分の由布院には五度以上訪れている
　由布院にいけば、たいていは泊まる。安い宿にも高い宿にも泊まったことが
あるのだが、その毎回がそのどこでもが決して失望させない温泉地なのだ。わた
しには。
　
　由布院は、街自体がブランドである。温泉もいいのだが、観光地としてもレベ
ルは高い。土産物店、飲食店も、客を失望させないように頑張っている。
　とにかく、由布院は大のお気に入りだ。



　由布院という名前に雰囲気ぴったり駅のそばの駐車場に車をいれる。



　味のある駅舎を背にして、まっすぐな通りが由布岳に向かっている。由布院と
いう言葉を聞くにつけ、この風景はよく思いだしてしまう。

　歩き出して、すぐ左のわき道にある肉屋さんはテレビでもたびたび登場して
いる。



　金鱗湖を目指して通りを歩いていく。足が丈夫でなくても歩きやすい平らな
道だ。
　行列のできる洋菓子店のところのY字路を右のほうの路にはいる。



　どこの店も、由布院の雰囲気を損ねないような配慮が窺える。



　そろそろ腹が減ったので、眼についた洒落た店にはいった。　
　メニューを見て、いつもの笊蕎麦ではなく温かい肉蕎麦をオーダーした。由布
院では、牛肉もけっこうこれが旨いのである。



　禁煙の店だったので、食べ終わると早々に退散した。



　金鱗湖のそばの広場で、煙草を一服する。

　　―　続く　―
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