<超楽しかった乗馬>
ときたま乗馬したときのことを思いだす。
ある年、北海道浦河で馬に乗った。七十分乗馬コースである。
ローハイド(古いなあ)のような皮製の脚当てと、キャップというのかヘルメッ
トみたいのを装着し、お相手の馬を紹介された。挨拶代わりに馬面にでかい目で
ガン飛ばされ、「なにぶんよろしくね」とへりくだっておもねるように小声でいう
と、小さな馬場までそれぞれ自分で馬をおっかなびっくり引いて行った。
「さあ、それでは左足を鐙にかけて、鞍を持って馬に乗ってみてください」
げっ、踏み台が無い。
馬に乗るのは二回目といっても、前回は曳き馬であったのだ。顔ぶれに自分より
年寄りそうな人がいたので、なんとかなるだろうと甘く思ってしまった。
西部劇みたいに馬に乗るのかぁ・・・正直参ったなあ、やめとけばよかったと
激しく後悔していると、他の人たちが次々と乗り始めて焦る。女性にはインストラ
クターがいそいそとお尻やわき腹に腕を貸している。
えーいままよ、「はあっ! おーりゃあっ!」と掛け声を発し、鞍にかけた腕に
満身の力をこめて、筋肉は少ないが体重は重く硬い体を、馬の上に一気に引きずり
あげる。
実際にはとても一気とは行かず、二気か三気かかった。
短い右足を振りあげた瞬間に、脚が思ったほど広がらなくて馬の途方もなく太い
腹の上の鞍まで届かず、わき腹と背筋が悲鳴をあげて、そのままの形で背中から
ウワァーと落ちそうになり内心あせった。乗る前に落馬したら実も蓋もありゃあ
しない。
鞍をつかんだ両腕で無茶苦茶に変則な懸垂をするようにして、ようやく崖の上
じゃなかった馬の上に尻がたどりつく。わき腹と背筋に、プロ野球なら登録抹消
なみの痛みが走ったが無視する。
というより短足胴長で馬上であるために目の位置が極端に高く、そのうえ馬が
動くので安定が悪いのでひたすら怖いのだった。
脚の虻を追うのに急に馬が頭をさげるので、一本背負いをくらったように前方に
投げ出されそうになる。
全員の乗馬完了を確認すると、手綱の持ち方を教えられたあと、鐙から足をはず
せとの非情な指示がありうろたえる。
手綱を持ち、鐙をはずした状態で馬場に囲いのなかで歩かせる、止まらせる、
曲がらせるなどの基本をみっちり三十分ほど、落馬せぬよう冷や汗をかきながら
していると不思議と慣れてきた。
体が馬の動きにうまく反応している。基本の最後で両方の鐙をつけたときには
なにやら自信がついてニコニコ顔になっていた。
そのあと外のコースを四十分ほどアスファルト道路から、クローバー畑と化した
大きな馬場のあいだをとおり、小学生がサッカーをしている広場の端をゆうゆうと
闊歩した。
思いもよらぬ楽しさを心に、激しい尻の痛みと筋肉痛を体に残してくれた乗馬で
あった。
あの楽しさは無上であり、格別なものであったと、しみじみ思いだすのである。
ときたま乗馬したときのことを思いだす。
ある年、北海道浦河で馬に乗った。七十分乗馬コースである。
ローハイド(古いなあ)のような皮製の脚当てと、キャップというのかヘルメッ
トみたいのを装着し、お相手の馬を紹介された。挨拶代わりに馬面にでかい目で
ガン飛ばされ、「なにぶんよろしくね」とへりくだっておもねるように小声でいう
と、小さな馬場までそれぞれ自分で馬をおっかなびっくり引いて行った。
「さあ、それでは左足を鐙にかけて、鞍を持って馬に乗ってみてください」
げっ、踏み台が無い。
馬に乗るのは二回目といっても、前回は曳き馬であったのだ。顔ぶれに自分より
年寄りそうな人がいたので、なんとかなるだろうと甘く思ってしまった。
西部劇みたいに馬に乗るのかぁ・・・正直参ったなあ、やめとけばよかったと
激しく後悔していると、他の人たちが次々と乗り始めて焦る。女性にはインストラ
クターがいそいそとお尻やわき腹に腕を貸している。
えーいままよ、「はあっ! おーりゃあっ!」と掛け声を発し、鞍にかけた腕に
満身の力をこめて、筋肉は少ないが体重は重く硬い体を、馬の上に一気に引きずり
あげる。
実際にはとても一気とは行かず、二気か三気かかった。
短い右足を振りあげた瞬間に、脚が思ったほど広がらなくて馬の途方もなく太い
腹の上の鞍まで届かず、わき腹と背筋が悲鳴をあげて、そのままの形で背中から
ウワァーと落ちそうになり内心あせった。乗る前に落馬したら実も蓋もありゃあ
しない。
鞍をつかんだ両腕で無茶苦茶に変則な懸垂をするようにして、ようやく崖の上
じゃなかった馬の上に尻がたどりつく。わき腹と背筋に、プロ野球なら登録抹消
なみの痛みが走ったが無視する。
というより短足胴長で馬上であるために目の位置が極端に高く、そのうえ馬が
動くので安定が悪いのでひたすら怖いのだった。
脚の虻を追うのに急に馬が頭をさげるので、一本背負いをくらったように前方に
投げ出されそうになる。
全員の乗馬完了を確認すると、手綱の持ち方を教えられたあと、鐙から足をはず
せとの非情な指示がありうろたえる。
手綱を持ち、鐙をはずした状態で馬場に囲いのなかで歩かせる、止まらせる、
曲がらせるなどの基本をみっちり三十分ほど、落馬せぬよう冷や汗をかきながら
していると不思議と慣れてきた。
体が馬の動きにうまく反応している。基本の最後で両方の鐙をつけたときには
なにやら自信がついてニコニコ顔になっていた。
そのあと外のコースを四十分ほどアスファルト道路から、クローバー畑と化した
大きな馬場のあいだをとおり、小学生がサッカーをしている広場の端をゆうゆうと
闊歩した。
思いもよらぬ楽しさを心に、激しい尻の痛みと筋肉痛を体に残してくれた乗馬で
あった。
あの楽しさは無上であり、格別なものであったと、しみじみ思いだすのである。
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