<読んだ本 2011年7月>
七月の初めにものすごく暑い日が続いて、ふと不自然なことに気づいた。
(異変か・・・)
蝉の声がしないのである。
もしかして大震災が地中の彼ら幼虫にも災厄をもたらしたのか。
そう、秘かに心配していたら、最近は蝉の鳴き声がしはじめたのでほっとしている。
さて、こんなに暑いと自称「ビール嫌い」のわたしでも、よく冷えたビールを一杯くらい呑みたくなってくる。
どうせ呑むなら老舗のビアホールがいい。

今月は書きたいことがいっぱいあるので、では、呑みながらということで。構成、文脈が乱れてもお許しいただきたい。


チェーホフは、作家として高い評価を受けてモスクワで華やかな暮らしをしていたが、突然と言った感じで、地の果てのサハリンに出かけてしまう。
「1Q84」のなかで、その理由を考察するような会話が出てきた。
「・・・(略)・・・ただ単にそこに行ってみたくなったんじゃないかな。地図で
サハリン島の形を観ているうちに、むらむらとやみくもにそこに行きたくなった、
とかね。僕にも似たような体験はある。地図を眺めているうちに、『何があっても、
ここに行ってみなくっちゃ』という気持ちになってしまう場所がある。・・・(略)」
うん、気持ちになる、わかるわかる、同感だ。
わたしなど、地図だけではなく写真やらテレビの場面やら小説の舞台やらで、その土地へ行ってみたくなることは案外と多い。
さて、ここで読んだ本ですが今月は6冊、累計で47冊。今月は久しぶりに二重丸がひとつ付いた。
1.○食べられた男 阿刀田高 講談社文庫
2.○羊をめぐる冒険(下) 村上春樹 講談社文庫
3. ○雲竜剣 鬼平犯科帳15 池波正太郎 文春文庫
4. ○ライスカレー(シナリオ) 倉本總 理論社
5. ◎1Q84 BOOK1 村上春樹 新潮社
6. ○鬼平犯科帳14 池波正太郎 文春文庫

脚本「ライスカレー」は、ブログの記事「森のカレー」を書くために読んだ。
「羊をめぐる冒険」。
美しい耳を持つガールフレンドと羊を探しに北海道に渡る。いるかホテルに宿泊し、羊博士にめぐり合い、ついにその牧場がある場所をつきとめる。
ここらへんまではグイグイと読ませてくれたが、羊男が出現したころから最後の肝心のクライマックスあたりが、ちょっともの足りなかった。
それでも、読者を先へ先へと引っ張る力は相当なものだ。

鬼平の15巻目「雲竜剣」の最後のへんが眼についてしまった。
「ときに今日は佐嶋さんの顔が見えませんな」
「明日からは、盗賊どもの取り調べで、またぞろ役所へ詰め切りになる。それで
今日は、久しぶりに休ませたのだ」
「なるほど・・・・・・」
「今日は朝から、組屋敷の与力長屋で大酒をのんでいることだろうよ」
「大酒を・・・・・・佐嶋さんが?」
「いざ休みとなれば、一升も二升ものむ」
「まさか・・・・・・?」
「ふだん、この役宅へ出て来ているときの佐嶋忠介は、わしの相手にのむときも、盃に
三つ四つほどすごすだけだが・・・・・・」
「ははあ・・・・・・」
左馬之助が呆れ顔に、
「わからぬものだなあ・・・・・・」
「それよ」
「え・・・・・・」
「人というものは、わからぬものということよ」
たしかに、たしかに。「ひとというものはわからない」とわたしも心底から同感してしまう。

「1Q84」。
なにをいまさらのベストセラーだが、図書館だと人よりだいぶ読むのが遅くなってしまう。まあ、わたしはまったく気にしないが。
主人公のうちのひとりである青豆(女性)は大仕事をこなしたあと、男が欲しくなりバーでハゲをハントする。ターゲットの男はハゲの中年なのだが、そのへんのところで思わず笑ってしまった。
「・・・(略)・・・私はね、ただあなたのその禿げ頭が好きなの。その形が好き
なの。わかった?」
「しかしそう言われてもまだ禿げているってほどじゃない。たしかに生え際あたりは
少し・・・」
「うるさいわね、もう」と青豆は思い切り顔をしかめたくなるのを我慢しながら
言った。それから声をいくぶん柔らかくした。相手を必要以上に怯えさせてはならない。
「そんなことどうだっていいでしょう。お願いだからもう、とんちんかんなことを
言わないで」
本人がなんと思おうと、それは間違いなくハゲなの、と青豆は思った。もし国勢調査に
ハゲっていう項目があったら、あなたはしっかりそこにしるしを入れるのよ。天国に
行くとしたら、あなたはハゲの天国にいく。地獄へ行くとしたら、あなたはハゲの地獄
へ行く。わかった? わかったら、事実から目を背けるのはよしなさい。さあ、行き
ましょう。あなたはハゲの天国へ直行するのよ、これから。
この作者にしては、ここらへん、特に「国勢調査」あたりは、けっこう笑えたのである。
→「読んだ本 2011年6月」の記事はこちら
→「森のカレー」の記事はこちら
七月の初めにものすごく暑い日が続いて、ふと不自然なことに気づいた。
(異変か・・・)
蝉の声がしないのである。
もしかして大震災が地中の彼ら幼虫にも災厄をもたらしたのか。
そう、秘かに心配していたら、最近は蝉の鳴き声がしはじめたのでほっとしている。
さて、こんなに暑いと自称「ビール嫌い」のわたしでも、よく冷えたビールを一杯くらい呑みたくなってくる。
どうせ呑むなら老舗のビアホールがいい。

今月は書きたいことがいっぱいあるので、では、呑みながらということで。構成、文脈が乱れてもお許しいただきたい。


チェーホフは、作家として高い評価を受けてモスクワで華やかな暮らしをしていたが、突然と言った感じで、地の果てのサハリンに出かけてしまう。
「1Q84」のなかで、その理由を考察するような会話が出てきた。
「・・・(略)・・・ただ単にそこに行ってみたくなったんじゃないかな。地図で
サハリン島の形を観ているうちに、むらむらとやみくもにそこに行きたくなった、
とかね。僕にも似たような体験はある。地図を眺めているうちに、『何があっても、
ここに行ってみなくっちゃ』という気持ちになってしまう場所がある。・・・(略)」
うん、気持ちになる、わかるわかる、同感だ。
わたしなど、地図だけではなく写真やらテレビの場面やら小説の舞台やらで、その土地へ行ってみたくなることは案外と多い。
さて、ここで読んだ本ですが今月は6冊、累計で47冊。今月は久しぶりに二重丸がひとつ付いた。
1.○食べられた男 阿刀田高 講談社文庫
2.○羊をめぐる冒険(下) 村上春樹 講談社文庫
3. ○雲竜剣 鬼平犯科帳15 池波正太郎 文春文庫
4. ○ライスカレー(シナリオ) 倉本總 理論社
5. ◎1Q84 BOOK1 村上春樹 新潮社
6. ○鬼平犯科帳14 池波正太郎 文春文庫

脚本「ライスカレー」は、ブログの記事「森のカレー」を書くために読んだ。
「羊をめぐる冒険」。
美しい耳を持つガールフレンドと羊を探しに北海道に渡る。いるかホテルに宿泊し、羊博士にめぐり合い、ついにその牧場がある場所をつきとめる。
ここらへんまではグイグイと読ませてくれたが、羊男が出現したころから最後の肝心のクライマックスあたりが、ちょっともの足りなかった。
それでも、読者を先へ先へと引っ張る力は相当なものだ。

鬼平の15巻目「雲竜剣」の最後のへんが眼についてしまった。
「ときに今日は佐嶋さんの顔が見えませんな」
「明日からは、盗賊どもの取り調べで、またぞろ役所へ詰め切りになる。それで
今日は、久しぶりに休ませたのだ」
「なるほど・・・・・・」
「今日は朝から、組屋敷の与力長屋で大酒をのんでいることだろうよ」
「大酒を・・・・・・佐嶋さんが?」
「いざ休みとなれば、一升も二升ものむ」
「まさか・・・・・・?」
「ふだん、この役宅へ出て来ているときの佐嶋忠介は、わしの相手にのむときも、盃に
三つ四つほどすごすだけだが・・・・・・」
「ははあ・・・・・・」
左馬之助が呆れ顔に、
「わからぬものだなあ・・・・・・」
「それよ」
「え・・・・・・」
「人というものは、わからぬものということよ」
たしかに、たしかに。「ひとというものはわからない」とわたしも心底から同感してしまう。

「1Q84」。
なにをいまさらのベストセラーだが、図書館だと人よりだいぶ読むのが遅くなってしまう。まあ、わたしはまったく気にしないが。
主人公のうちのひとりである青豆(女性)は大仕事をこなしたあと、男が欲しくなりバーでハゲをハントする。ターゲットの男はハゲの中年なのだが、そのへんのところで思わず笑ってしまった。
「・・・(略)・・・私はね、ただあなたのその禿げ頭が好きなの。その形が好き
なの。わかった?」
「しかしそう言われてもまだ禿げているってほどじゃない。たしかに生え際あたりは
少し・・・」
「うるさいわね、もう」と青豆は思い切り顔をしかめたくなるのを我慢しながら
言った。それから声をいくぶん柔らかくした。相手を必要以上に怯えさせてはならない。
「そんなことどうだっていいでしょう。お願いだからもう、とんちんかんなことを
言わないで」
本人がなんと思おうと、それは間違いなくハゲなの、と青豆は思った。もし国勢調査に
ハゲっていう項目があったら、あなたはしっかりそこにしるしを入れるのよ。天国に
行くとしたら、あなたはハゲの天国にいく。地獄へ行くとしたら、あなたはハゲの地獄
へ行く。わかった? わかったら、事実から目を背けるのはよしなさい。さあ、行き
ましょう。あなたはハゲの天国へ直行するのよ、これから。
この作者にしては、ここらへん、特に「国勢調査」あたりは、けっこう笑えたのである。
→「読んだ本 2011年6月」の記事はこちら
→「森のカレー」の記事はこちら
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