温泉クンの旅日記

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伊豆天城・湯ヶ島温泉(2)

2017-09-24 | 温泉エッセイ
  <伊豆天城・湯ヶ島温泉(2)>

 風景は分け隔てなく誰にでも一種の安らぎをもたらしてくれる。そして、その風景の好みだが旅を重ねていくとたいてい変わっていく。


 
 規模は小さいもののたしかに幽谷の趣がある世古渓と、深く重なる緑のもとをほどよい幅をもって滑るように流れ、川面の岩にぶつかり波頭を砕けさせていく猫越(ねっこ)川の清流とを、わたしは茫然とみとれていた。 


 
 風や雨がいつのまにか熄むように、心がみるみる落ち着いてくるのをわたしは感じた。
 そうか・・・、わかった。
 部屋のベランダからの、どうということもない眼の前の風景に一瞬で魅了されたのは見える範囲に建物、電信柱、電線、看板といった人工物がいっさいなかったからなのだ。大河のはるか向こう岸を電車が走っていく、なんていうのもいいがこれはこれで味がある。

(さて、そろそろ一杯になったかな・・・)



 大浴場で陶器の壺風呂にはいらなかったのは、部屋にあるからだ。露天風呂付きツインベッド和室のシングルユーズである。泡銭を手に入れたので一丁太っ腹に使おう、というわけではない。





 浴衣を脱ぎすて、自分専用の壺風呂に身を沈めていく。
 
 湯が溢れ始めた頃合いで、蛇口を締めた。チェックアウトまで至福の時間をあといったい何度過ごせるだろうか、楽しみだ。今宵は深酒はやめておこう。

 宿泊料金だが、バカ高いのが当たり前の伊豆箱根値段からすれば信じられないほどの格安だ。露天風呂付き客室の二食付きで一名だと割高の一万五千円也。もっともポイントを投入したのでさらに数千円引きだ。二名以上ならサイトを選べばなんと一人一万円弱で泊まれる。



 道のどんづまりにあるこの宿に到着するまでに、廃墟となり果てた旅館をいくつも見かけてギョッとして不安が募ってしまったが、まさかこんないい宿だとは思わなかった。



 宿泊料金が手ごろなのは経営が「リブマックス」というビジネスホテルチェーンだからである。建物にかなりの年季が入っているのは十年前まで国民宿舎だったからだろう。客室はすべて綺麗に改装されているが、ロビースペース、大浴場やエレベーター、殺風景な食堂にその名残があった。



 夕食、朝食ともにビュッフェ形式なのも宿泊費を抑えるための人件費節約なので、想像した通りのレベルである。温泉メインのわたしは問題なしだが、食事を期待する旅人には向かないだろう。

 早朝、専用露天風呂を出て火照った身体のまま川面をみていたら、魚影が走ったような気がした。目を凝らして見回し、すばしこい渓魚の群れが回遊する狭い一角を発見した。



 あの小魚はアマゴの子どもだろうか・・・ずっとみていても不思議と見飽きない。身体が冷えると湯に戻り、温まるとまた渓魚を見物するのだった。



 お、そうだ。小銭入れを持って大浴場に髭剃りにいって、帰りに自販機の冷えたコーヒー牛乳でも買ってこよう。



  →「伊豆天城・湯ヶ島温泉(1)」の記事はこちら
  →「オリーブのガーリック・ピラフ」の記事はこちら



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