ニョニョのひとりごと

バイリンガルで詩とコラムを綴っています

ソウルでの「1000回目の水曜デモ」の日朗読された詩 「謝れ」

2016-01-08 10:18:57 | 詩・コラム
当事者を無視し頭ごなしに決着をしようとする輩たちに抗議し、2011年、ソウルでの「1000回目の水曜デモ」の日、朗読された詩、モノローグ「謝れ」を再掲いたします。訳は小川さんと私がいたしました。


モノローグ「謝れ」

           イヴ・エンスラー作

私たちの話は私たちの頭の中にだけ存在する。
蹂躙された私たちの体の中にだけ
戦争の時間とがらんどうの空間の中にだけ
どの様な公式的な記録も文書も跡形も無い。
ひたすら良心だけ。
ただそれだけ。

私たちが約束されたこと:
私が彼らについて行けば父を助けられる。
仕事につくことができる。
国のために働ける。
行かなければ私を殺すという。
そこがもっと良いという。

私たちがみつけたもの:
山も無く
木も無く
水も無く
黄砂 砂漠
涙でいっぱいの倉庫
数千名の心配事だらけの少女たち
私の編んだ髪は切られ
下着をつける時間も無かった

私たちがさせられたこと:
名前を変えさせられ
ボタンの外しやすいアッパッパを着せられ
一日に50人の軍人の相手をさせられ
生理の時もさせられ
服も脱がず男根だけを出す軍人ともさせられ
あまりにも多くの男を相手にして歩けなくなってもさせられ
足を伸ばすことも体を曲げることができなくてもさせられた。

彼らが私たちに繰り返ししたこと:
ののしり 殴り
血まみれになるまで腹をえぐり
消毒して 注射して
また殴り
穴をあけ 穴をあけ

私たちが見たこと:
浴室で化学薬品を飲んだ少女
爆弾に当たり死んだ少女
銃に撃たれさらに撃たれた少女
壁に頭を打ち付けた少女
溺死するように川水に放り投げられた栄養失調になった少女の体

私たちに許されなかったこと:
体を洗うこと
出歩くこと
医師に診察を受けること
コンドームを使うこと
逃げること
赤ん坊を守ること
やめてと言うこと

私たちが貰ったもの:
マラリア 梅毒 淋病 死産 結核 心臓病 精神発作 憂鬱症

私たちが食べたもの:
飯 味噌汁 たくわん 飯 味噌汁 たくわん 飯 飯 飯
私たちがなったもの:
破壊され
道具になり
不妊になり
穴になり
血だらけになり
肉の塊になり
追放され
沈黙され
1人ぼっちにされ

私たちに残されたもの:
決して消すことのできない衝撃
死んだ父
無賃金
傷跡
男への憎悪
子もなく 家もなく
空っぽになった子宮
酒癖
罪の意識と羞恥心
何も 何も!

私たちにつけられた名前:
慰安婦
堕落した女たち

私たちが感じたこと:
私の胸は今も震えている

奪われたもの

私の生。

私たちは今、74歳
82歳
93歳

目は見えなくのろいけど準備はできている。
毎週水曜日日本大使館前で
これ以上恐れること無く

私たちが願うこと:
今すぐに
私たちの話がこの世から消える前に
私たちが死ぬ前に
日本政府よ
謝れ どうか

慰安婦の女性たちに悪かったと
私に謝れ
私に悪かったと謝れ

私に
私に
私に

謝れ
悪かったと謝れ
悪かったと。



*イヴ・エンスラーは <ヴァギナ・モノローグ>の作者

        ニョニョ・小川和子  共訳
          
                      2011年12月
コメント
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