バルジ大作戦
私はあまり、外に出て遊び回るタイプの子供ではありませんでした。
だから夏休みになっても、一日家にいて本を読んでいるか、テレビを観ている。
その頃は夏休みになると、テレビでは劇映画がよく放送されており、とりわけ多かったのは、怪奇映画と戦争映画だったように記憶してます。
『バルジ大作戦』はとにかく戦車が大量に出てくる映画で、戦車好きの子供にはたまらない映画でしたね。当時は戦車のプラモデルばかり作ってましたから(笑)。ただ、ドイツ軍のタイガー戦車という設定で、ソ連軍のT-34型戦車が出てきたりして、戦車好きであるがゆえに、そうした嘘が観えてしまって、「ああ、これが映画というものなのだな」と子供心に妙に覚った憶えがあります(笑)
ロバート・ショウ演じるドイツ軍の戦車隊長がカッコ良くてね。男の子ってのは、理屈抜きに「戦いモノ」が好きなものです。
「戦争アクション」というジャンルは、今や無くなってしまった感がありますが、この当時は「気軽」なアクションものとしての戦争映画が成り立っていたんですねえ。
『荒鷲の要塞』、『戦略大作戦』、『眼下の敵』等々
好きでしたよ、戦争アクション。
『パリは燃えているか』より、ゲルト・フレーベ演じるドイツ軍司令官
1966年の映画『パリは燃えているか』
ノルマンディ上陸作戦後、連合軍はパリ解放を目指して進撃、ヒトラーは、もし連合軍がパリに到達した時は、パリの街を灰燼に帰するよう、命令を下しています。
その命令を受けた、パリ駐留軍の司令官を演じていたのが、ドイツの俳優、ゲルト・フレーベです。
この司令官はパリの文化をとても愛しており、灰にするなどとんでもないと、内心は思っているわけです。
でもヒトラーの命令は絶対です。
苦悩した末に、彼が下した結論は…。
まあ、いまさらネタバレもなにもないので、言っちゃいますが、彼はパリを灰にしなかった。ヒトラーに逆らったんですね。
私はこの、ゲルト・フレーベに妙に惹かれまして、映画そのものより、ゲルト・フレーベばかりをみていたような気がします。
映画はオールスター・キャストで、カーク・ダグラス、オーソン・ウェルズ、アラン・ドロン、ジャン・ポール・ベルモンド等々、大スター目白押しでした。
でも一番よかったのは、やはり、ゲルト・フレーベでしたね。
この方、第二次大戦時には、ナチスの党員だったそうですが、その身分を隠れ蓑にして、実はユダヤ人を亡命させる仕事を、裏で行っていたそうです。
この事実が発覚したのは、戦後も随分時が経ってからのことで、御本人はずっと黙っていたそうです。そのため「元ナチス俳優」ということで、イスラエルではこの方が悪役を演じた『007 ゴールドフィンガー』は上映禁止になったのだとか。
ずっと黙っていた、というところが、いいですよね。
ドイツ人ですけど、なにか「サムライ」を感じさせるような。
もちろん私が子供の時分には、そんなこと知る由もなかったわけですが、何故かこの方に、強く惹かれたことを憶えています。
夏の昼下がり、たまには古い戦争映画など、いかがでしょう?
ゲルト・フレーベの「サムライ魂」に触れてみるのも、一興かと。