ウルトラマンは光であり人である。
光とはなんでしょう。
例えば太陽の光は、誰彼の区別なく、地上のすべてのものたちに、遍く降り注ぐ。
一切の差別なく。一切の見返りなく。
光とは慈愛。光とは勇気。
光とは、希望。
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ガイアとアグルは、虫の掃討に掛かりますが、掃っても掃っても虫たちは次々と現れる。さらには何千何万という虫たちが合体して怪獣となり、ガイアとアグルに襲いかかります。両ウルトラマンは光線技で対応しますが、倒してもたおしても次から次へと虫たちが現れては合体し現れては合体し、
これではキリがない。
その時突然、目映い光とともに、ウルトラマンが小人に見えるほどの超巨大な「天使」が降臨します。
「天使」は虫たちを打ち払い、ウルトラマンに優しげな笑みを向けます。
ガイアは直感的に警戒を示しますが、根が素直なアグルは引き込まれるようにフラフラと天使に寄って行きます。
と、その天使の指先から光線が発射され、アグルは弾き飛ばされてしまう。これを見たガイアが天使に向かって行きますが、やはり弾き飛ばされてしまいます。
哄笑する天使。天使の姿を借りた破滅招来体に、両ウルトラマンは果敢に立ち向かいますが、まったく歯が立たない。ついにエネルギーが枯渇し、ガイアとアグルはその身の光を失い、倒れ込んでしまいます。
ガイア、アグルはウルトラマンの姿を維持することができず、人間体へ戻ってしまいます。この時、唯一回線が開かれていたテレビ局KCBが、このウルトラマンのウルトラマンの戦いを中継していました。田端ディレクターが指揮をとり、井上“リンブン”カメラマンが必死の撮影を敢行。吉井玲子レポーターがスタジオにいて実況中継しておりました。
彼らはウルトラマンの戦いを見せることで、人々に勇気を与えようとしたのです。しかしウルトラマンは負けてしまった。そして人間体へと…。
玲子は撮影をやめるように進言しますが、リンブンは撮影を続行、ついにウルトラマンの正体が人間であったことが、全世界に知られてしまう。
人類の間に動揺が走ります。「ウルトラマンはただの人間だった…」「神様じゃなかった…」「ただの人間が、破滅招来体に勝てるわけない…」
そう、これこそが破滅招来体の狙いだったのです。ウルトラマンの負けを人類に見せつけることで、人類を絶望の淵に叩き込む。そのために、テレビ回線だけを開けていたのです。
この中継を、我夢の両親も見ていました。「そんな馬鹿な…」と父親は目を背けようとします。しかし母が「ちゃんと見て!あれは私たちの我夢よ!あの子、私たちにも黙って…」その後は声にならない。我夢の覚悟と苦衷を察したのでしょう。この母にして、この子あり。
我夢の親友、マコト、サトウ、ナカジは、我夢を救い出すためにアパートを飛び出します。このままでは我夢が暴徒に襲われる。
親友三人の機転とKCBトリオの協力によって我夢は難を逃れますが、藤宮が行方不明でした。しかし我夢には心当たりがありました。
自分の原点を見つめなおすために藤宮が向かうところ。それは藤宮が、初めてアグルになった場所。
プロノーン・カラモス。
その頃、世界中に地球怪獣たちが出現し、“虫”に攻撃を仕掛けます。彼らもまた、地球を守るために立ち上がりました。
G.U.A.R.D.環太平洋部隊の柊准将は、かつて憎んだ怪獣たちが地球のために立ち上がったのをみて、怪獣援護のために全部隊を出撃させます。ここで人間がなにもしないわけにはいかない。
上層部に反逆した人間が、ここにもいました。
怪獣たちは体内の核融合炉のエネルギーを虫たちに発射していました。これを見たアルケミー・スターズのキャサリンが、もう一度ウルトラマンを復活させる方法を思いつきます。
怪獣たちの発するエネルギーを習合させて、我夢と藤宮に与えることができたなら…。
藤宮はプロノーン・カラモスにいました。
プロノーン・カラモスは、ニュートリノなどの素粒子研究のため、地下に巨大な水槽を湛えた施設です。藤宮は水槽の前に佇み思案していました。と、水槽の中にキラリと光るものが。
「チェレンコフ光よ」
どこからともなく、女性の声が聞こえてきました。ふと目をやると、そこには亡くなったはずの稲森京子博士の姿が。
稲森博士は、藤宮がアグルになる以前の研究の相棒であり、恋人でした。しかし藤宮の危険な思想を諭すためにある行動を起こし、命を落としてしまったのです。
「こんな時でも、ニュートリノは地球に降り注いでいるわ」
謎の言葉を残し、稲森博士は幻影のように消えていきました。
ニュートリノは地球の地殻をも貫通する素粒子です。稲森博士の言葉に、藤宮はニュートリノを使った通信システムを開き、XIGやアルケミー・スターズと連絡を取ることを思いつきます。
そこへ駆けつける我夢とKCBトリオ。
「我夢、俺たちにはまだやることがあったぜ!」
どういうことか尋ねる我夢に
「稲森博士が教えてくれた」
不敵な笑みを浮かべる藤宮。
XIGとの通信が繋がり、アルケミー・スターズのキャサリンのアイデアを聞く我夢と藤宮。
やるしかない。我夢と藤宮はKCBの車に乗って、再び東京へ向かいます。
キャサリンのアイデア。それはXIGの戦闘機XIGファイターの推進システムであるリパルサー・リフトを利用して、リパルサー・フィールドを発生させ、怪獣たちの発射する核融合エネルギーつまり太陽エネルギーをリパルサー・フィールドにぶつけ、鏡のように反射させて地球のある一点、我夢と藤宮がいる場所にすべてのエネルギーを集束させるというものでした。
怪獣は動き回る。したがってフィールドの角度の計算はとても難しく、コンピューターではとても追いつかない。あとはアルケミー・スターズお得意の頭脳と勘で計算するしかない。とても無茶で無謀な計画でした。
しかしやるしかないのです。
XIGファイターチーム。「チーム・ライトニング」「チーム・ファルコン」「チーム・クロウ」の各メンバーと「チーム・シーガル」の神山リーダーがファイター機に乗り込み、世界各国の怪獣たちの元へ飛び、地上部隊「チーム・ハーキュリーズ」が我夢と藤宮の援護に回ることになりました。
全メンバーを前に、これがXIG最後の戦いであることを告げる石室コマンダー。
「Get A Grory! ミッションネームは【ガイア】」
石室コマンダーの檄とともに各持場へと散ってゆくXIGメンバーたち。
「我夢、みんな自分ができることをがんばっているよ」
敦子がつぶやきます。
瓦礫と化した東京の一角に立つ我夢と藤宮。
一瞬の静寂の後、怪獣たちの放ったエネルギーが、我夢と藤宮の元へと降り注ぎます。
新たなエネルギーを得て復活するガイアとアグル。二人のウルトラマンは新たな力であっという間に虫たちをすべて駆除してしまう。
そこへ再び現れる天使。
しかし今度のガイアとアグルは強い。天使は苦戦を強いられ、天使の姿を脱ぎ捨て、超巨大怪獣ゾグとなって、ウルトラマンに襲いかかります。
ガイアとアグルは何度も弾き飛ばされながらも必死に喰らいつき、二人の光線技を合わせてゾグに撃ち込み、ついにゾグを倒します!
夕陽の中に立つガイアとアグル。駆け寄る人々。
KCB吉井玲子レポーターが実況を続けます。
「これが地球の光です。地球にはウルトラマンがいます。こんな素晴らしい星が、破滅なんか絶対にしません。私たちがさせない努力をしていく限り」
ウルトラマンは光。そしてその光は人がなったもの。
玲子はきっと、こう言いたかったのでしょう。地球の光、ウルトラマンは人なのだ、だから。
私たちはみんな、ウルトラマンになれるんだと。
地球は、ウルトラマンの星なんだよ、と。
地球に再び平和が戻り、我夢は学生生活に戻りました。
藤宮は一人、旅へと出ます。
路上のコンクリートの隙間から一生懸命芽を出している草を見つけた我夢は、愛おしげに草を見つめると、手にしたペットボトルの水をそっとかけてあげます。
一陣の風が吹き渡ります。我夢には周囲の風景がみなキラキラ輝いているように見えました。
「そうか、これが地球なんだ」
周囲のものすべてに、愛おしそうな目を向ける我夢。なんともいえず、歓喜の想いが我夢を包み込みました。
「おーい!」
まるで地球のすべての存在に呼びかけるかのような、我夢の声が響き渡ります。
〈終わり〉
【地球には怪獣がいて、ウルトラマンがいる。
この美しい星を、私たちはもっと愛していきたい】