
Handel: Harpsichord Suites 1720 & 1733
ERATO 0630-14886-2
演奏:Olivier Baumont (Cembalo)
ヘンデルは、バッハと同様、生涯を通じてチェンバロ、オルガンなどの鍵盤楽器を演奏していた。出版された曲集としては、1720年に出版された組曲第1集と、1733年にロンドンの出版社ウォルシュから出版された組曲第2集などいくつかある。しかしこの第2集は、ヘンデルの監修なしに出版され、後に改編版が出されるなど混乱があり、最初の全集版(HG)では、曲の内容が初版とは異なっている。 これらの作品が出版されたのは1720年あるいはそれ以降だが、作曲されたのはかなり早い。第1集に含まれる作品については、作曲年ははっきりしないが、第2集の組曲の中には1703年頃まで遡ることが出来るものがあり、シャコンヌト長調(HWV 435)も1705年から1717年までの間に作曲されたものと考えられている。第1集の組曲は、前奏曲や序曲に始まり、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグなどの舞曲が続く。第2集の組曲には、このような前奏曲や序曲はなく、舞曲で始まる。いずれの場合も舞曲の表題ではなく、アレグロとかアダージョと題された楽章もある。第1集の第5番ホ長調の第4楽章は、「調子の良い鍛冶屋」の主題による変奏曲として知られ、単独で演奏されることも多い。また、シャコンヌト長調はヘンデルにより手を加えられたいくつもの異本が存在している。スペイン起源の舞曲に由来する、ゆっくりとしたテンポの3/4拍子8小節の主題提示に続いて、21の変奏が展開する。この曲では、第9変奏から第16変奏までト短調に転調して、テンポもアダージョとなる。第17変奏でト長調にもどり、最後の第21変奏は、両手の上行分散和音で華麗に終わる。
ここで紹介するCDには、この作品1の組曲集から第1番イ長調(HWV 426)と第7番ト短調(HWV 432)、作品2の組曲集から第2番のシャコンヌト長調(HWV 435)と第4番ニ短調(HWV 437)、それに加え5曲の小品が収録されている。
演奏しているオリヴィエ・ボウモン(Olivier Baumont)は、1960年生まれのフランスのチェンバロ奏者である。ラモーやクープランなどフランスの作曲家の作品をはじめ、バッハ、ヘンデルなどバロック時代の多くの作曲家の作品を録音している。
このCDでは、3台のチェンバロが用いられている。1677年製の無名のイタリアンタイプのチェンバロでは4曲の小品を、作品1と作品2の組曲は1652年ヨハネス・クーシェ作のフレミッシュタイプと、1707年ニコラ・デュモン作のフレンチタイプのチェンバロで演奏している。プレリュードニ短調もクーシェのチェンバロで演奏されている。このクーシェ作のチェンバロは、おそらく後にフランスで改造の手が加えられたものと思われる。これら3種類の異なったタイプのチェンバロの音、イタリアン・チェンバロの軽い響き、フレミッシュ・チェンバロの明瞭で美しい響き、フレンチ・チェンバロの豊かな響きを楽しむことが出来るのも、このCDの魅力である。なお、これら3種の楽器については、こちら>>>も読んでみてください。
発売元:ERATO
筆者が持っているCDは、Erato Disques S.A. France 1996のクレジットがあるもので、その後ワーナー・グループに吸収されたため、現在では廃盤になっているようで、現在のカタログには掲載されていない。

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