私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 



›Corelli & Co‹
BIS CD-945
演奏:Dan Laurin (Recorders), Parnassus Avenue

アルカンジェロ・コレッリ(1653 - 1713)の12曲のヴァイオリン・ソナタは、1700年にローマで出版されて以来繰り返し再版された、いわばベスト・セラーであった。前半の6曲は、基本的には緩急緩急の楽章構成からなる「教会ソナタ」、後半の6曲は、前奏曲とアルマンド、クーラント、ジーク、サラバンドなどの舞曲から構成される「室内ソナタ」となっている。これらのソナタは無論、本来はヴァイオリンと通奏低音で演奏されるものであるが、当時としては、他の楽器で演奏することは、当然のこととして行われていた。ロンドンの音楽出版人ウォルシュは、1707年に「室内ソナタ」のリコーダー編曲版を出版している。
 ここで紹介するCDは、›Corelli & Co‹(「コレッリと仲間たち」とでも訳していいのか・・・)と題されて、コレッリの作品5の11番のリコーダー編曲のほか、6人の作曲家による作品を収めている。この6人の作曲家は、いずれもコレッリより一世代後に活躍しており、コレッリの影響を受けていたという観点から、「仲間たち」とされたものであろう。
 リコーダーを演奏しているダン・ラウリンは、オーストラリアのリコーダー製作者、 フレデリック・G・モーガン(Frederick G. Morgan, 940 - 1999)作の楽器を用いている。コレッリのソナタは、ウォルシュ版とは異なり、原曲のヴァイオリン・ソナタと同じホ長調で、Eアルト・リコーダーを用いて演奏している。ディオジェニオ・ビガリア(Diogenio Bigaglia, 1676 - 1745)のイ短調のソナタは、「4度のリコーダーで(a Fluta di quatre)」と指定されているが、Bリコーダーでは、Cリコーダーでニ長調=ロ短調を奏する場合と同じく、もともと♭の付いた調性に向いているリコーダーにとって、音程に問題があるため、Gアルトで演奏している。 ジウセッペ・サンマルティーニ(Giuseppe Sammartini, 1695 - 1750)の2本のリコーダーと通奏低音のためのソナタは、ラウリンがモーガンのデナー・タイプのアルト・リコーダー、ハネケ・ファン・プロースディがP. ファン・デア・ペール作のステインスビーII世のFアルト・リコーダーを演奏している。サンマルティーニのもう1曲、ホ短調のソナタは、Esアルト・リコーダーで演奏している。ジウセッペ・ガエターノ・ボーニ(Giuseppe Gaetano Boni 生死年不明)のソナタニ短調は、Bソプラノ、いわゆるFourth Fluteで演奏している。あと、フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ(Francesco Maria Veracini, 1690 - 1768)のイ短調のソナタ、フランチェスコ・バルサンティ(Francesco Barsanti, 1690 - 1772)のハ長調のソナタおよびベネデット・マルチェッロ(Benedetto Marcello, 1686 - 1739)のニ短調ソナタの3曲はいずれもモーガンのFアルト・リコーダーで演奏している。この使用楽器リストを見ると、サンマルティーニのトリオ・ソナタでのデナー・タイプを除くと、基になった楽器の作者名が記されていない。おそらくブレッサンのリコーダーなど、バロックの代表的なリコーダーをもとに、モーガンが独自に設計したものと思われる。ビガリアのソナタを演奏しているGアルト・リコーダーは、その響きから、初期バロック型の楽器ではないかと思われる。
 通奏低音を演奏しているParnassus Avenueは、ある音楽祭でラウリンと競演したことがきっかけとなって組織された、サンフランシスコに拠点を置くラウリンと3人の通奏低音奏者(鍵盤楽器、テオルボ、チェロ)からなるグループである。タニヤ・トムキンスのチェロ以外は、いずれも復元楽器を用いている。
 コレッリのソナタにおける即興的音型の挿入に関してラウリンは、解説の中で、コレッリより後に時代の様式に依った記している。それによって、他の作曲家と同時代となり、「仲間たち」というこのCDの意図がはっきりすることになる。
 イタリアン・バロックのリコーダー・ソナタを演奏したCDは数多く存在するが、この”Corelli & Co”は変化に富んだ曲目と明快で美しい録音で、一聴に値するCDといえよう。

発売元:BIS

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