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私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




Thomas Morley: The First Book of Consort Lessons
Ricercar RIC 251
演奏:La Caccia

トーマス・モーレイ(Thomas Morley, 1557/1558 - 1602)は、イングランド東部のノーウィッチで生まれ、おそらく1570年代の初めにウィリアム・バードの教えを受けたと思われる。1588年にオックスフォード大学の学位を取得し、その後間もなくロンドンのセント・ポール教会のオルガニストに就任した。モーレイは、バードの影響下にイタリアのマドリガルをイギリス化した、イギリス・マドリガル楽派の代表的作曲家である。器楽曲としては、鍵盤楽器のための作品が、フィッツウィリアム・ヴァージナル・ブックに9曲含まれている。
 1599年にウィリアム・バーレイによって出版されたトーマス・モーレイ編纂の「コンソート教本第1巻*」は、エリザベス朝のイギリスにおいて広く流行した器楽アンサンブルのための代表的な曲集の一つで、種々の楽器からなるアンサンブル、いわゆる「ブロークン・コンソート」のための作品集である。コンソートには、一種類の楽器、例えばヴィオールやリコーダーから成るものと、管楽器や弦楽器を含んだアンサンブルとがある。このモーレイの曲集は、リュート、バンドーラ、シターン、ソプラノ・ヴィオール、バス・ヴィオール、リコーダーの6つのパートから成っており、「モーレイのコンソート」とも呼ばれている。シターンは、ルネサンスの撥弦楽器で、通常は4コースの弦から成っており、リュートより簡便な楽器である。バンドーラは、シターンの低音楽器である。1599年版だけが残っているが、もともとパート譜で出版されたもので、完全な形では残って居らず、幾つもの図書館に分散して保存されている。バス・ヴィオールのパートは1933年になって初めて発見され、リュートのパート譜は、依然として見付かって居らず、他の原典や他のパートをもとに復元されている。この様な原典の状態は、この曲集が出版された当時、王侯貴族だけでなく市民の間でも、様々な楽器の演奏が行われており、この楽譜もそれぞれの楽器を演奏するものが保有していたために生じたものと考えることが出来る。



モーレイの「コンソート教本第1巻」の表紙。
The Renaissance Cittern Site当該ページ掲載の写真)

 この「コンソート教本第1巻」には23曲が含まれ、作曲者のすべてが明らかには成っていない。なお、少なくとも1611年には再版され、それには他に2曲が含まれていたものと思われるが、その楽譜が残っていないため、はっきりとしたことは分かっていない。それぞれの曲に作曲者が明示されては居らず、曲名の中に作者と思われる名前がある他は、他の原典に於いて作者が分かっているもの以外は、推定の域を出ない。そのような状況ではあるが、この曲集には、リチャード・アリソン(Richard Al(l)ison, c. 1560-1570 - before 1610)、ジョン・ダウランド(John Dowland, 1563 - 1626)、ピーター・フィリップス(Peter Philips, c. 1560 - 1628)、トーマス・モーレイ、ウィリアム・バード(William Byrd, c. 1539/1540 - 1623)等の作品が収められている。曲の多くは、緩やかなパヴァーヌのような曲に速いテンポのガリヤルドが組になっている。この曲集のための編曲が、トーマス・モーレイによって行われたものかどうかは、明らかではない。アリソンの曲に関して特に入念に編曲されていることから、彼が編曲に関与してのではないかという推定も成されている。
 今回紹介するCDは、リュートのフィリップ・マルフェイ、ソプラノ・ヴィオールのリアム・フェネリ、バス・ヴィオールのトマ・ベアテ、シターンのフランク・リジョア、バンドーラのウィム・マジル、リコーダーと指揮はパトリック・デネケ、それにヴァージナル独奏をギ・パンソンが担当する、ラ・カッチャというグループの演奏によるリチェルカール盤である。収録されている21曲の内、モーレイの「コンソート教本第1巻」からは16曲、他にフィリップ・ロセターの「コンソート練習曲集(Lessons for Consort)」(1609年刊)から2曲、ヴァージナル独奏で3曲が演奏されている。演奏に際しては、シドニー・ベックによって復元され、1959年に出版された楽譜にもとづいているが、リュート奏者のマルフェイは、ベックの復元版に様々な変奏を加えている。ソプラノヴィオールとリコーダーも時折そのパートを交換して演奏している**。
 録音は2006年11月にベルギーのレシーヌで行われた。使用楽器は、ヴァージナルがアンドレアス・リュッカースの1620年作のミュゼラールをもとにアントワープのジェフ・ファン・ボーヴェンが製作したものであること以外何も触れられていない。演奏のピッチも不明である。

発売元:Ricercar

* The First Booke of Consort Lessons, made by diuers exquisite Authors, for six Instruments to play together, the Treble Lute, the Bandora, the Cittern, the Base-Violl, the Flute & Treble-Violl

** 添付の小冊子に掲載されているジェローム・レジェンヌによる解説による。

注)「コンソート教本第1巻」の曲目リストは、”Period Sources of Printed Music for Cittern, Bandora, & Orpharion”を参照のこと。

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