今日のわたしのエッセー 「雨の日の夕暮れ」
雨の日。することがない。日が落ちようとしている。すると、寂しさが泉を造って零れて来る。何処かへ行って、若干の慰安を得たい。しかし、「おお、よく来てくれた」「ああら、いらっしゃい。あなたを待ってたわ」などと迎え入れてくれそうな人はいない。いるはずもない。入ろうとしても門はかたく閉めてあるはずだ。
赤提灯の下がる一杯飲み屋さんにでも行けばよかろう。そこによろよろと入って行ったところで、しかし、かくばかり老醜のする男はもはや話し相手にもされまい。若い客が立て込んでいる。手酌で勝手に飲んで、熱燗一合で酔ってしまう。ものの30分も時間は掛からない。寂しい孤独者の哀れさが増すだけだろう。
何処へ行くにも二の足を踏んでしまう。歓待を期待出来る場所なんてからっきし見当たらないのだ。雨の日の夕暮れはぽつんとしているしかない。畑に隠元豆の花が列を成して咲き出した。可愛い。「お前は可愛いなあ」と声を掛ける。それくらいがご老体に許された精一杯のところか。
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